日本内科学会雑誌
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60 巻, 4 号
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  • 菊池 弘明, 佐藤 東, 富田 重照, 鹿野 真勝
    1971 年 60 巻 4 号 p. 299-304
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Distigmine bromideは機能基である4級アンモニウム2個がヘキサメチレン基で結合した構造を有し, true cholinesterase (true ChE)と結合て抗ChE作用を発揮する薬物である.最近,本薬は弛緩性便秘に用いられて高い有効率が報告されている.われわれは,本薬が腸管組織のいかなる部位に入りその作用を現わすのかを知る目的で,3Hを標識したdistigmine bromideを使つて,白蝋で腸管からの吸収,臓器内とり込み,さらにautoradiographyで腸管組織における局在を検討した.その結果吸収率は投与120分後で約80%,臓器別とり込みは肝に3~5%と最も多く,その他,脳,心肺,腎には1%前後であつた.autoradiographyで腸管組織内の3Hの存在部位を調べると,銀粒子は,Auerbach神経叢を除く筋層にびまん性にみられたが,この所見は腸管のChE分布を組織化学的にみたDonhofferの報告にみるtrue ChEの存在部位と一致するものと思われる.
  • テレメーター心電図の長時間連続観察を中心として
    金沢 英夫
    1971 年 60 巻 4 号 p. 305-316
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    安静狭心症の発生機序の解明と診断の1方法とすることを目的として,安静狭心症,労作狭心症発作のない対照など,計53例の症例にテレメーター心電図の長時間連続磁気テープ記録を行ない,次の成績を得た. 1)狭心発作時筋後の心電図を記録し得た20例中90%の高率にST・Tの変動を認めた. 2)安静狭心症では,胸痛のない時期にST Tのダイナミックな変動が70%にみられたが,労作狭心症や狭心発作のない対照ではかような変動がみられなかつた.かようなST・Tの変動は,非発作時におげる冠不全の一過性増悪を示しているものと推定される. 3)安静時狭心発作で降下がみとめられた症例の78%は運動負荷でも同じ変化を示した. 4)狭心発作の自覚に心電図変化の先行するものが76.4%,狭心発作終了後も心電図変化の持続するものが88.5%みられた. 5)安静時狭心発作の際の心拍数の変動は,狭心発作直前では,ほとんど増加せず,発作のtriggerとしての意義は少ない. 6)安静時狭心発作の直前血圧の上昇を認め,血圧上昇が発作のtriggerと考えられるものもあるが,異型狭心症の例で,発作前心拍数増加も血圧上昇も認められないものもあり,心拍数,血圧の面から必ずしも発作の発生を説明し難い例もあつた.
  • 酵素(LDH)アイソザイムについて
    水野 成徳, 高松 滋, 玉田 友一, 佐々木 幸三, 角田 笑美, 管原 英保, 平賀 英男
    1971 年 60 巻 4 号 p. 317-324
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    脳血管障害後遺症の病態を代謝面から観察する目的で患者の血清乳酸脱水素酵素(LDH)のアイソザイム分析を行ない,各分画を活性絶対量(国際単位)により表わし,測定成績の検討を行なつた.心電図上,心筋傷害を示す患者では心電図正常な患者に比べ,陽極側のLDH1気および総活性に有意の増加がみられた.これは酵素学的立場から,心筋傷害の虚血性心疾患としての意義を明らかにしたものであつて,リハビリテーションのジスク管理において心筋傷害を示す患者には特に注意を払わねばならないことを示したものである.また,心電図正常な患者を発作からの経過期間によつて分類し比較すると,発作後の経過の長い患者では発作後間もない患者に比べてLDH1に活性低下の傾向がみられた.心電図正常な患者と対照とを比較すると,患者にLDH1 LDH2, LDH4および総活性の有意の低下がみられた.われわれは,心電図正常な患者におけるこれらの成績を,患者の病像や,従来からの骨格筋LDHにかんする知見と比較・検討して,患者の血清LDH活性の低下は,片麻痺に伴う骨格筋の萎縮によるものと考えた.血清LDH活性の測定は日常臨床に広く行なわれているがその基準となるべき健康時の血清LDHの由来はいまだ不明の点が多い.われわれの成績は複雑多彩な脳血管障害後遺症の病態の一面を酵素学的に明らかにしたと同時に,健康時の血清LDHのかなりの部分が骨格筋に由来することを示したものといえるであろう.
  • 難波 経彦
    1971 年 60 巻 4 号 p. 325-335
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    起立性低血圧の病態生理を脳循環動態の面から検討する目的でhead-up tilting60°による体位変換で行ない,正常血圧者と対比した.さらに起立性低血圧のうち高血圧,糖尿病を伴つているものについても検討を行なつた.正常血圧者はtiltingによる変動はみられないが,起立性低血圧はPvO2は臥位36.1よりtilting5分33.2, 10分後31.5と減少し,V-Sat. O2も減少がみられ, CBFも10分間で23.5%減少した.また起立による血圧下降とPvO2, %CBFの減少度との間には有意な相関関係が認められた.高血圧,糖尿病を伴う起立性低血圧もほぼ起立性低血圧の脳循環動態と同じ傾向がみられた.さらに高血圧者にC6を投与し,人為的に起立性血圧下降を惹起させると投与後は起立性低血圧と同じ変動を示し,一方,起立性低血圧にDHEを投与して投与前後で比較すると投与後は,血圧の改善のみならずPvO2, V-Sat. 02,CBFともに改善の傾向が著明であつた.
  • 本間 行彦, 桐沢 俊夫, 本間 濶, 大崎 饒
    1971 年 60 巻 4 号 p. 336-340
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例1.67才の女性.発熱および全身倦怠感を主訴とし,胸部写真で両側の中肺野から下肺野にかけて網状ないし索状陰影を認め,心電図で洞性頻脈および右脚ブロックを認めた.肝機能検査ではアルカリフォスファターゼ(alk-P-ase)とトランスアミナーゼの上昇がみられた.Miyagawanella CF抗体価は4×, 8×, 8×と有意の上昇がみられなかつたが,高令なためと強力な化学療法の結果によるものと考えられた.症例2.45才の男性.上気道炎の症状を主訴とし,胸部に軽度の胸膜炎様陰影を認めた.Miyagawanella CF抗体価は16×, 64×と有意に上昇していた.症例1と2は同一家族であり,インドより直輸入されたインドオウムが感染源と推定された.
  • 中沢 次夫, 小林 節雄, 七条 小次郎, 山路 達雄
    1971 年 60 巻 4 号 p. 341-344
    発行日: 1971/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    牧草花粉症および牧草花粉喘息はわが国でもかなり報告されているが北海道以外での報告は少ない.最近われわれは牧草の一つである,かもがや花粉による気管支喘息の1例を発見し種々検討を加えたので報告する. 1)患者は37才の主婦で昭和26年牧畜業を開始してかもがやを栽培したところ,約4年後に咳嗽,喘息,呼吸困難などの喘息症状が出現してきた. 2)かもがや花粉および室内塵が皮内反応で陽性を示したのでPrausnitz-Küstner反応および吸入誘発試験を行なつたところかもがや花粉のみに陽性を示した. 3)上記のことにより本例をかもがや花粉による気管支喘息と診断し,該抗原を用いて約1年間減感作療法を行なつたところ著効が得られた.
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