日本内科学会雑誌
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60 巻, 9 号
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  • 水野 成徳, 高松 滋, 山田 悦輝, 逸見 一穂, 玉田 友一, 小野寺 庚午, 一柳 一朗, 管原 英保, 謝 福山, 角田 笑美
    1971 年 60 巻 9 号 p. 811-819
    発行日: 1971/09/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    脳血管障害後遺症の病態を代謝面から観察するため,内分泌機能との関連が深いβ-glucuronidaseを取上げ,患者血清の活性測定を行なつた.患者では健康人に比べて活性が低下していた,血圧・心電図異常の有無,病型,発作後の経過月数の差異によつて患者の活性には差がみられなかつた.入院後の経過月数および日常生活動作テスト(ADL-T)値による比較を行なうと,入院後の経過が長い患者, ADL-T値の高い患者の活性が有意に高かつた.これらから脳血管障害後遺症患者の血清β-glucuronidase活性には入院後のリハビリテーションの効果が反映されていると考えることができる。ADL-Tは従来にはみられぬ画期的な治療判定法である.しかし評価には観察者の主観に影響されるところが大きい.われわれの成績はこのような主観的要素が濃いADL-Tに明らかな客観性が存在していることを示したもので,今後のリハビリテーション医学発展にとつてきわめて意義深いものといえる.
  • 吉岡 正人
    1971 年 60 巻 9 号 p. 820-829
    発行日: 1971/09/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    食餌性脂質および蛋白質が,血清の脂質代謝に及ぼす影響を家兎を用いて実験した.家兎は高脂肪食群,低脂肪食群の2群に分け,おのおのにコレステロール(コと略),塩化コリンを負荷し,蛋白質の投与量によりさらに三段階に分け, 2カ月間飼育した.その結果,血清コ,総脂質,総リンは高脂肪,低脂肪食のいずれの群においても,蛋白投与量が多い群ほど高値であつたが,中性脂肪のみは蛋白投与量の少ない群ほど高値であつた.ガスクロマトグラフィーによる血清脂酸分析では,両脂肪食群ともパルミチン酸の増加,ステアリン酸の減少がみられ,その他の脂酸は食餌組成によりいろいろに変化した.肝の脂酸分析は血清に類似していたが,大動脈壁ではパルミトオレイン酸の割合が増加した.実験成績より,動脈硬化症発生には脂質,蛋白質ともに重要であり,そのいずれのバランスがくずれても,脂質代謝には異常な影響があらわれ,動脈硬化症を起こす大きな要因となることが推定された.
  • 宮川 祥一
    1971 年 60 巻 9 号 p. 830-840
    発行日: 1971/09/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    慢性心疾患17例,慢性肺疾患10例にpropranolol 5mgを肺動脈内に注入し,その前後の心機能ならびに肺循環について比較検討した. propranolol投与後,両疾患群とも,心拍数,心指数,心仕事量の減少をみたが,右室のrate-pressure productの変化は,心疾患群では減少し,肺疾患群では,軽度増加する傾向がみられ,酸素消費量の増加する傾向と併わせて,右室筋における酸素需要の増加および呼吸仕事量の増加が推察された.さらに, propranolol投与後,肺疾患群においては,心疾患群に比べ,肺血管抵抗増大は大きく,かつ,肺血圧の軽度上昇をきたし,心疾患群と対照的であつた.このことは,心疾患群においては,心拍出量減少によるpassiveな肺動脈圧の下降と考えられ,一方,肺疾患群における肺血管抵抗増大は心拍出量減少のみによるものではなくてpropranololによる肺血管収縮作用による可能性が考えられた.以上から,肺疾患患者におけるproprano1olの投与は,肺循環障害を増悪させることがうかがわれ,その適応にかんしては慎重でなければならない.
  • 留置 辰彦, 中谷 昭子, 沢井 増子, 丸山 定之, 上出 正信, 古田 浩二
    1971 年 60 巻 9 号 p. 841-844
    発行日: 1971/09/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    わたくしどもは,声変わりや初潮が気管支喘息に影響を及ぼすかどうかという問題に重点を置き,和歌出県日高郡内における小・中学校気管支喘息児童の統計学的観察を企画し,次の結果を得た, (1) 小学生および中学生を合わせた全体の喘息児童頻度は男子1.31%,女子0.73%で,男女比は1.8:1である. (2) 小学生男子の頻度は1.62%,中学生男子は0.66%,小学生女子は0.91%,中学生女子は0.34%であり,男女とも小学生の方が中学生よりも多い. (3)小・中学生の気管支喘息は,中学3年末までに大部分が治る. (4) 男子では声変わりの時期より1, 2年遅れて中学2年から喘息児童頻度の減少がみられ,女子では初潮の時期に一致して小学5年より減少がみられる, (5)気管支喘息の治癒時期は,男子では声変わりからその後2年間に16名中9名で55%,女子では初潮からその後2年間に13名中6名で46%治癒している.
  • 久貝 信夫, 粒良 邦彦, 四元 秀毅, 折茂 肇, 藤田 拓男, 吉川 政己
    1971 年 60 巻 9 号 p. 845-850
    発行日: 1971/09/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    牛乳飲用により下痢や腹痛を起こす牛乳不耐症は,日本人には比較的多く,牛乳摂取が増加するにつれて,その原因および対策がますます問題となつてきている.最近われわれは牛乳不耐症のため牛乳飲用を中止したところ,低カルシウム血症と思われる症状を呈した1例を経験し,この症例に対して乳糖分解酵素(lactase)を使用し,有効であつたので報告する.症例は45才の女性. 35才より牛乳飲用による下痢が出現, 40才より牛乳飲用を中止したところ,振せん,筋攣縮などの症状が出現した.牛乳不耐症にかんして諸検査を行ない, lactase deficiencyが疑われた.また,振せん,筋攣縮などの低カルシウム血症に起因する症状は,潜在性副甲状腺機能低下症および牛乳飲用中止によるカルシウム摂取低下によるものと考えられた.本症例にlactaseを使用し,牛乳不耐症は改善し,低カルシウム血症による症状も消失した.
  • 小林 逸郎, 山下 義之, 山崎 博男, 奥田 正治
    1971 年 60 巻 9 号 p. 851-854
    発行日: 1971/09/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Diphenyl-hydantoin長期服用中に発症したSLEを報告する. 24才,男子. 38°Cに及ぶ発熱,蛋白尿を主訴として入院.生後5カ月後に後頭部を強打,以後てんかん様発作が出現し,昭和36年より10年間diphenyl-hydantoin O.15~0.3g/日服用.入院時発熱,浮腫,多彩な尿沈渣所見のみで, SLEのいわゆる多種多彩な臨床像はみられなかつた.しかし血清挙的所見(LE細胞,抗核抗体,補体価),病理学的所見(腎生検像はlupus腎炎)からSLEが強く推測された.なお調査可能な限りの血縁家族の抗核抗体は陰性であつた.当初dipheny1-hydantoinにより誘発されたSLEと考えhydantoinを中止しsteroid薬投与を開始したが, hydantoin中止9週後にsteroid薬減量中病状の再燃を認めた.腎生検像所見ともあわせ,かかる経過はhydantoinによつて誘発されたSLEと考えるよりも, hydantoin服用中にたまたまSLEが発症したものと考えられた.またlupus diathesisの存在は否定的であつた.
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