日本内科学会雑誌
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61 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 心内腔観察と炭酸ガス注入の心肺動態
    谷口 興一
    1972 年 61 巻 2 号 p. 129-141
    発行日: 1972/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    心臓鏡の方法と炭酸ガス注入による心肺動態は,内外において数少なくない研究である.最近細い柔軟性fiberscopeの開発により,装置の分野に一縷の光芒をもたらしたが,視野を得るための血液排除の方法は,まだ満足すべきものはない.著者は炭酸ガス注入による新しい非開胸下心臓鏡を試みた.本法による心内腔の観察は明確な像が得られ,心内操作も自由に行なえるが,炭酸ガス注入直後に出現する心室性期外収縮により房室弁は開放したままである.炭酸ガス注入による呼吸,循環動態は一過性の肺塞栓による急激な変化で,肺動脈圧上昇,血圧下降,過換気, hypercapnia, hypoxiaが出現するが,ほゞ1分以内に回復する.血圧の急激な下降は最初の2, 3秒は血流杜絶,その後に続く血圧下降は心拍出量低下のためである.心内に注入された炭酸ガスの運命は一部はHenryの法則により血中に溶解し, Pco2上昇の要因となるが,大半は気体のままで肺胞に達し逆拡散により排出される.炭酸ガスの肺胞膜通過速度は著しく速いので,炭酸ガス排出は指数凾数的減衰曲線のパターンを呈し, 1分以内に排出される.本論文の結論は,炭酸ガス注入による新しい心臓鏡は心内腔の観察と操作が可能で,炭酸ガス心内注入の呼吸,循環系に対する影響が速かに消失し,危険性がないことを指摘した.
  • とくに中枢神経系の関与について
    小林 健二
    1972 年 61 巻 2 号 p. 142-157
    発行日: 1972/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ジギタリスおよび各種抗不整脈薬(プロカインアミド,アジマリン,プロプラノロール,ジフェニルヒダントイン)の中枢神経系を介しての作用機序を検討する目的で,家兎を用いて実験をした.これら薬物を耳静脈より投与し,脳波と心電図とを同時記録しながら,その経時的変化を追求した.対照群に上記薬物を投与すると,脳波に鋭波,速波などの発生と同期して心電図にはQRS延長, A-Vブロック,各種不整脈が比較的早期に出現した.あらかじめ脳幹抑制薬としてのフェノバルビタールを投与した群や視床下部を除去した群では上記の心電図変化がきわめて遅れて出現した.一方視床下部以外の脳を除去した群では,逆に心電図変化が促進して発生する傾向を示した.以上よりジギタリスおよび各種抗不整脈薬の作用機序は,直接心臓に作用するのみではなく,脳とくに視床下部を介しての経路が存在すると推定された.
  • 血小板崩壊と血清遊離タウリン
    堀 浩子
    1972 年 61 巻 2 号 p. 158-163
    発行日: 1972/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    かつては,血小板崩壊を実測する方法は皆無であつた.この方法は森田らにより開発された.それは遊離タウリンが,他の血液分画に比して血小板に圧倒的に多い事実の発見を基礎とする.著者はアミノ酸自動分析計を用いて,血清遊離タウリンを測定し,緒種血小板減少症および血小板減少状態における血小板崩壊の程度を窺つた.その結果,特発性および続発性血小板減少症の多くの症例に,血小板の崩壊がその減少の主因をなすものでない事を知つた.また,鉄欠乏性貧血の血小板増多が鉄療法開始と共に速かに消退する際,血小板崩壊はほとんど関与しない事を明らかにした.
  • 蛍光抗体法との比較検討
    松本 美富士
    1972 年 61 巻 2 号 p. 164-171
    発行日: 1972/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    全身性紅斑性狼瘡における抗核抗体(ANF)の染色パターンにかんして,蛍光抗体法,酵素抗体法を用いて比較検討を行ない,併せて酵素の標識法についても検討を加えた.その結果,酵素抗体法によるANFの染色パターンは蛍光抗体法のそれと一致せず,相互に一定の関連性を有しなかつた.新たに酵素抗体法による染色パターンを以下の五つのタイプに分類を試みた. 1) diffuse type, 2) perinuclear type, 3) flecked type, 4) fine granular type, 5) thready type.これら染色パターンの由来を抗体側以外に核の側からの考察が必要と思われる.また,酵素抗体法では患者血清希釈によるパターンの変化や,固定条件の差による影響はなかつた.酵素の標識には精製抗体にglutaraldehydeを用いるのが,標識液の収量,感度,保存性で優れているが,蛍光抗体法の方が感度,保存性で酵素抗体法に比して,はるかに優れていた.
  • 西田 昂平
    1972 年 61 巻 2 号 p. 172-180
    発行日: 1972/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    起立性低血圧の病態を血漿遊離脂肪酸(NEFA)の面から検討する目的でtilting60°による体位変換を行ない,正常血圧者および各種疾患と対比した.さらに各種起立性低血圧(高血圧性,脳血管性,糖尿病性,特発性)についても検討を行なつた.正常血圧者では, tiltingによりNEFAの上昇がみられたが,起立性低血圧ではtiltingによる交感神経系の反応が欠如し, hypotone型に比し, hypodyname型にNEFAの上昇抑制が著しく,起立による血圧下降の程度とNEFAの上昇抑制とは平行関係が認められた.疾患別では特発性のものでNEFAの抑制が最も強く,糖尿病性においては軽度であつた.さらに人為的に起立性血圧下降を惹起させると,起立性低血圧と同様なNEFAの反応を示した.治療薬として, DHEおよび9-α-fluorohydrocortisoneを投与して,その前後における比較を行なうと,投与後は血圧の改善のみならず, NEFAの反応も正常化傾向を示した.
  • 石川 勝憲, 山本 章, 五十嵐 暢, 井上 利道, 宮下 孟士, 西川 光夫
    1972 年 61 巻 2 号 p. 181-186
    発行日: 1972/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    178cm, 172kgという著明な肥満を呈した21才,男のLaurence-Moon-Biedl症候群を報告する.本症例は多指症以外の5徴候を有し,異常脳波と細尿管異常を疑わせる腎機能障害を認めた.本症例の内分泌機能にかんしては,甲状腺,副腎に異常はないがmetyrapone (metopirone)に反応せず,またインスリン低血糖に際しGH分泌が全くみられないことから,間脳・下垂体に何らかの異常が窺われる.一方,ゴナドトロピン測定,テストステロン分泌低下,睾丸組織所見,染色体等の所見からnormo-hypergonadotropic hypogonadismがあり, gonadal hypoplasiaと考えられる.さらに耐糖能の低下,インスリン過剰分泌があり,血漿FFAは,糖負荷後一旦低下してからの再上昇が悪いが,空腹時FFA値は正常値を示し,単純性肥満と異なつた所見であるが,これは恐らく,著明な高インスリン血症およびGH分泌不全によるものと思われる.
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