日本内科学会雑誌
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61 巻, 4 号
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  • 高橋 日和
    1972 年 61 巻 4 号 p. 341-354
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    約5年間に14例の自発性低血糖症を経験した.そのうちインスリノーマ5例,ラ島過形成2例を中心に術前後の糖代謝検査成績を追求した.インスノーマの診断に各種糖代謝検査が利用されているが,各症例でその反応の仕方は一定していない.インスリン分泌過剰がみられない場合や血糖低下が著しくない場合は総合的判定が必要である.著者は,インスリノーマではGTT時の耐糖能低下, ΔIRI/ΔBSの低下と, L-leucine test時の血糖動揺が有力な診断根拠となりうることを知つた.またラ島過形成例ではL-leucineに対する過敏性は同一個体でも一定しなかつた,肝グリコーゲン量の低下の予想される肝疾患時にも低血糖はもたらされるが,その鑑別にGlucagon test時の血糖, IRI同時測定が有用である. Tolbutamide testについては,血糖下降度と術後効果判定の面から否定的な結果がえ糖低下の危険性を考えると必須の検査とはいい難い.またインスリノーマの部位判定には腹腔動脈おられ,特に血よび上腸間膜動脈造影が必要であるが,手術時腫瘍の発晃は裏面よりの触診によることが多いことも注目する必要がある.
  • 特に骨髄と末梢血細胞の比較について
    山田 欽, 清水 進, 土屋 喬, 当摩 正美, 沢 泰彦, 蓮村 幸兌, 秋山 雄一
    1972 年 61 巻 4 号 p. 355-365
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    目的:多層式重層遠心分離法を行ない骨髄性白血病の末梢血と骨髄における細胞の関連性と由来を細胞比重の面より追求した.対象: acute myeloid leucemia (AML) 9例, monocytic leucemia (ML) 2例, chronic myeloid leucemia (CML) 9例につきその末梢血と骨髄の細胞分布比重の範囲,各比重層を構成する細胞の種類を比較検討した.成績:一般に比重が軽い程幼若な細胞であつた. AMLでは末梢血に細胞の存在しない軽比重層でも骨髄に白血病細胞が認められた. CMLの末梢血の細胞比重は,悪化に従い軽くなり,軽比重層に幼若細胞の出現をみた.この細胞は骨髄には存在しない.また化学染色態度が骨髄芽球と酷似する分葉核球を悪化時の末梢血に認めた. 3H-thymidineの成績も比重別に異なるだけでなくAMLは骨髄に高く, CMLの悪化時は末梢血に高値であつた.断案:急性型と慢性型は骨髄と末梢で骨髄芽球の比重が逆の関係にあり, 3H-thymidineの成績も同様に逆の関係で,両者の分裂能は部位および比重によつて相異があるものと考えられる.
  • Erythropoietinの産生機構について
    千葉 省三
    1972 年 61 巻 4 号 p. 366-372
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    正常動物より摘出した腎臓を用いて, erythropoietin (以下Epo)の抽出を試みた.腎のタイロード液homogenateを嫌気的に孵置する操作により,飢餓ラット法による測定で,高い造血活性,およびdose-responseの関係を示す物質が抽出された.しかしながらこの腎抽出物は,多血マウスに対しては,全く造血活性を示さないことから,血中あるいは尿中に存在するEpoとは異なつた機序で,造血反応をもたらすものと考えられる.一方,腎抽出物を投与されたラット血中のEpo値は上昇しており,このEpo値の上昇には,被投与ラットの腎臓を必要としない.また, in vitroで腎抽出物を正常血漿と孵置することにより, Epoを生ずるとの実験成績を得た.以上の知見および他の臨床成績にもとづき, Epo産生に腎が不可欠であることは間違いないが,その産生過程に, Epo前駆物質とその活性化の如き,より複雑な機序が存在する事を推論した.
  • 上田 英雄
    1972 年 61 巻 4 号 p. 373-381
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    東京大学第二内科教室の入院疾患の時代による変遷を1902年から1970年にわたり検討した.入院患者は毎年約600例であり68年間では3万名を越える. 1902年頃主要な疾患であつた脚気・結核・腸チフス・パラチフスは消失または激減し,急性肺炎,寄生虫疾患・梅毒は著減した.ほとんど同様の頻度を続ける疾患は胃腸疾患・神経疾患・腎疾患・血液疾患である.増加している疾患には高血圧・糖尿病・肝硬変・悪性腫瘍とくに肺ガンと急性白血病などの古典的疾患と心筋硬塞・胆嚢胆道疾患・膵炎・心内膜炎・くも膜下出血などの昭和前期出現の疾患がある.第二次大戦後に出現し,または新しく疾患単位とされたたもののうち増加を続けるのは膠原病・自己免疫疾患・慢性肝炎・早期胃ガン・肺性心・肺気腫・虚血性心疾患・痛風・腎血管性高血圧などである.これら内科疾患の時代による変遷の原因としては医学の進歩・衛生の改善・文化経済の向上・寿命の延長・栄養過多・運動不足・ストレス増加・戦争の影響・公害・免疫アレルギー変化・遺伝疾患の存続・ビールス疾患の抵抗性などが考案される.
  • 荻野 鉄人, 今井 康雄, 柿内 史堂, 鈴木 修二, 野田 茂寿, 村中 正治, 浦野 順文
    1972 年 61 巻 4 号 p. 388-397
    発行日: 1972/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    22才,女.既往歴にアトピー性皮膚炎(2~19才)がある.顔面,手足の腫脹,皮疹,歩行時の呼吸困難を主訴として来院した.両肺野のびまん性陰影,末梢血で80%の成熟型好酸球と17.5%の異型リンパ球を含む20万/mm3の白血球増多,著明な好酸球増多を示す過形成性の骨髄像,肝脾腫,血清中のLDHの高値, IgEの増量,および好酸球浸潤と異型リンパ球の混在を示す皮膚生検像を認めた.主な臨床症状は,肺症状で,しばしば重篤な呼吸困難をきたした. hydrocortisoneが効果を示し,症状と胸部X線所見を改善させたが,最後には感染を合併し死亡した.剖検で肺胞内と肺胞壁に好酸球浸潤を主とする新旧病変がびまん性にあり, aspergillus, pneumocystis cariniiの感染を伴つていた.左心には内膜下の好酸球浸潤を伴う小壊死巣,壁血栓を認めた. Löffler's endocarditis,播種性好酸球性膠原病, Löffler's syndrome,好酸球性白血病の疾患概念にかんして若干の考察を加えた.
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