日本内科学会雑誌
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62 巻, 5 号
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  • 長瀬 清
    1973 年 62 巻 5 号 p. 463-473
    発行日: 1973/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    哺乳類のaldolaseには筋肉型,肝型,脳型の3種のisoenzymeの存在が知られており,それらはヒトおよびラット諸臓器,血清に一定の比率で含有されているが,種々疾患においてその比率に変化を来たす.本論文では種々の方法を用いて肝疾患とくに肝癌時のaldolase isoenzymeの変化を検討した.急性および慢性肝炎,肝硬変症,肝癌など種々の肝疾患時,肝組織および血清のFDP, FIP aldolase活性は著しく変化する.しかし, FDP/FIP比をみると,肝癌以外の肝疾患ではあまり変動がみられないが,肝癌では癌組織および血清で著明な高値を示し極めて特異的であつた.電気泳動によるzymogramをみると,肝癌組織では正常肝組織のそれに比べると,肝型aldolaseの増加がみられた. 'phosphocellulose column chromatographyによる分析では肝癌組織は正常肝組織に比ベ, columnに吸着される分画が減少し,非吸着分画が増加した.
  • 高松 滋, 水野 成徳, 逸見 一穂, 玉田 友一, 山田 悦輝, 竹川 弘美, 一柳 一朗, 菅原 英保, 柳 一雄, 村上 秀一, 吉田 ...
    1973 年 62 巻 5 号 p. 474-478
    発行日: 1973/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    脳血管障害後遺症の病態には中枢神経系をはじめ,骨格筋,心血管系などの異常が複雑に関与し合つている.われわれはこのような病態の解明に従来から,酵素化学的追究を続けてきた.今回はこの一環として患者および対照の健康人の血清についてbenzylamine oxidase (BAO)の活性測定を行なつた.患者の活性は対照に比べて有意に増加していた.これらの活性は患者の年令,病型,血圧・心電図異常の有無,発作後および入院後の経過月数によつて差がなく,日常生活動作テスト(ADL-T)値が良好な患者では高値を,腎機能が低下している患者では低値を示していた. BAOはmonoamine oxidase (MAO)の一種で,結合織代謝に関連があり,かつ,成長hormone,甲状腺hormoneなどの内分泌機能の影響を受けている.以上から,われわれは血清BAO活性の測定は本症の病態解明に有用であり,かつまた,患者の運動機能の回復には結合織代謝や内分泌機能の関与があるものと考えた.
  • 佐野 忠弘, 横田 修, 小久江 浅二, 大熊 信也, 服部 孝夫, 河野 綾子, 平野 光彦, 小田 浩之, 沼野 藤江, 山崎 博男
    1973 年 62 巻 5 号 p. 479-484
    発行日: 1973/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Von Willebrand病は,血小板凝集能は正常,粘着能は低下の傾向にあるとされて来たが,われわれの経験した20才,男子症例は,そのcitrated platelet-rich plasma (CPRP)を用いての血小板凝集能はBornのoptical density methodでadenosine diphosphate (ADP)により一次・二次凝集曲線を得,その凝集の強さも正常範囲内,また,倍数稀釈したADPをCPRPに加えて凝固の起こる閾値をみても, 2-13mg/mlと正常であり,また, Moolten and Vromanの方法による粘着性栓球数測定では,全栓球数に対する粘着性栓球数の割合が16%と,正常に比し著明に低下していた.しかし, Swankのscreen filtration pressure法によるクエン酸加全血を用いての凝集能は,正常者に比し明らかな低値を示した.最近,血小板の粘着と凝集は密接に関連し画然と区別し得ないのではないかとの批判がなされており,本例の所見は,本症の病態のみならず,血小板機能測定法の意義にかんしても興味深い.
  • 鬼頭 昭三, 西川 富美子, 大森 安恵, 今井 三喜
    1973 年 62 巻 5 号 p. 485-489
    発行日: 1973/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    著者らは, 28才の女性で高熱,頭痛をもつて急性発症し,髄膜刺激症状,尿閉,意識障害などの症状をもつて,約17日間の経過で死亡した症例について剖検した.その結果, Pette-Spatzのperivenous parainfectious meningoencepharomyelitisの所見をえた1例を経験した.その病理所見を総括すると,肉眼的には脳の腫脹と軟脳膜の軽度混濁の他に著変はなく,組織学的には髄膜,脳,脊髄の全般にわたる静脈周囲性円形細胞浸潤がみられ,これは白質に強く脳幹下部で著明であつた.この他髄膜の炎症性変化,脱髄,Gliaの増殖がみられた.脱髄は脊髄上部で著明であり,延髄,橋,基底核,海馬回にも小脱髄巣がみられた.なお,血清補体結合反応は陰性,脳固定材料の電子顕微鏡的観察でもvirus感染を確証することは出来なかつた.この症例は髄膜炎症状を主として急激に経過し,剖検的にはvirus感染に伴う髄膜脳脊髄炎の病理像を呈した例として報告する.
  • 水谷 哲郎, 友松 達弥, 吉武 桂
    1973 年 62 巻 5 号 p. 490-496
    発行日: 1973/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    後天性メトヘモグロビン血症の1例を経験し約10年間の経過を観察した.発症当時,患者は20才の女性で,約1年4ヵ月の易疲労感,頭痛,四肢脱力感の自覚症の後に初めてチアノーゼの出現を認めた.チアノーゼ出現期には歩行障害,四肢冷感とともに口褐,多尿などの多彩な臨床像がみられた.患者赤血球の代謝的検により,赤血球内還元機構は正常であるが,酸化防禦機構の障害のためにメトヘモグロビン血症が発生したことを明らかにした.さらに赤血球外因子の関与を推定したが,明確にはし得なかつた.患者は4ヵ年に及ぶ間歇的チアノーゼ出現期を経過した後,漸次自覚症状の改善とともに,チアノーゼの出現を認めなくなつた.チアノーゼ非出現期に患者赤血球の代謝的検索を含めた血液学的検査は正常化を示し,現在にいたるまで再発を認めていない.
  • 毛利 昌史, 鈴木 侑信, 野中 泰延, 武田 忠直, 北郷 修
    1973 年 62 巻 5 号 p. 497-501
    発行日: 1973/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    大動脈炎症候群は,わが国に比較的多く,欧米では希な疾患であるが,その成因は,現在まだあきらかとされていない.しかし,本症の発生機序に,なんらかの免疫機構が関与している可能性は十分考えられるとされている.本症の経過は,急性期と慢性期に分けられるが,実際は発病時期がはつきりしない場合が多く,また,初期に発熱などの全身症状がたとえあつても,本症に特有な臨床所見が出現するまでは,本症を診断することはきわめて困難である.われわれの報告例は21才女子で,比較的早期に本症と診断された症例である.本例の診断は,最終的には,手術時に得た腹部大動脈および腎動脈の病理組織像によつて確認された.本例にみられた興味ある所見は,1) Kveim反応が陽性であつたこと, 2)入院時のッ反(PPDs 0.5/γ 0.lml)が陰性で,ステロイド投与後,あきらかに陽性となつたこと,の2点である.このような現象は,元来,サルコイドーシスに特有とされて来たものであるが,本例にもみとめられたことは,まことに興味深い.しかしながら,本症と,サルコイドーシスとの関連性,などにかんしては,今後の検討を必要とする.
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