日本内科学会雑誌
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62 巻, 6 号
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  • とくに実験的肺塞栓症におけるLDH, LDH isoenzymesを中心として
    本間 濶
    1973 年 62 巻 6 号 p. 571-582
    発行日: 1973/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺塞栓症における血清生化学的診断法として, LDH値上昇, GOT値不変,ビリルビン値上昇がいわゆる生化学的三徴候といわれている.今回著者は家兎において高脂肪食餌下に慢性反復性同種微小凝血塊肺塞栓実験を行ない,血清ビリルビン値, GOT, GPT, LDH活性, LDH isoenzymesおよび組織LDH isoenzymesの変化を検索し,生化学的三徴候とくに血清LDH値上昇の機序について検討した.実験家兎は容易に右心不全状態に至り,しばしば黄疸を示し,血清ビリルビン値, GOT, GPT, LDH値ともに上昇し, LDH isoenzymes分画別活性絶対値にてLDH1,4,5の上昇がみられ,慢性心不全に伴う肝障害と溶血機転の存在が推察された.また大動脈,肺動脈の中内膜層,肺のLDH isoenzymes分画像は,いずれもM型への移行を示し,組織における慢性の酸素欠乏状態に対する,酵素の適応現象を示唆した。また肝では逆にH型への移行がみられ,酸素欠乏による組織の破壊過程を反映しているようであつた.
  • 外因性脂質の処理面よりの検討
    重松 洋
    1973 年 62 巻 6 号 p. 583-592
    発行日: 1973/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    高トリグリセライド(TG)血症の成因は,処理障害の面,内因性TG合成の面から,研究されている.高脂血症の成因の中での外因性脂質の役割を明確にする目的で, 10%イントラリピッドを静注する方法での脂肪負荷試験を施行し,K1 (直線的TG除去率), K2 (指数関数的TG除去率)を求め,同時にTG,コレステロール(CH), FFA,血糖,インスリン,脂酸構成を求めた.K1は空腹時TG, CHと有意な相関を示さず,K2は空腹時TG, CHと有意に負の相関を示した.糖尿病群は,非糖尿病群に比しK2が有意に低かつた. K1, K2はいずれもpost heparin lipolytic activityと有意な関係はなく,処理能の一指標として独立して用いることが可能である.わたくしどもは現在K1はtriglyceride lipase, phagocytosis或いはpinocytosisに支配され, K2はヘパリン投与により, K2相の変化を認めたことより, triglyceride lipaseに一部支配され,その他血流,酵素基質競合,組織代謝を反映していると考える. TG, FFAの脂酸構成の変化では, C18: 2が一番早く処理される.
  • 近藤 啓文
    1973 年 62 巻 6 号 p. 593-600
    発行日: 1973/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    抗DNA抗体はSLEに最も特異的な自己抗体であるが,その産生機序は不明である.抗体の産生に抗原処理機能が重要である点に注目し, SLEにDNA代謝異常の存在を想定した.その点を証明するために血清DNase I活性とその易熱性抑制因子を測定し, SLEの活動性,抗DNA抗体価との関連を検討した.さらに他の膠原病などの炎症性疾患と比較した. SLEのDNA分解能は抗DNA抗体価が高い活動期に低く,症状の軽快とともにいつたん高くなり,非活動期で再び低下した.長期間続いた非活動期にもDNase抑制因子は高値を維持した.活動性PSS, RAではDNase抑制因子は高かつたが, DNA分解能は活動性と一定の傾向がなく,感染症などの炎症疾患では炎症時にのみ抑制因子の上昇を認めた.以上SLEにはDNA代謝異常が存在し,抗DNA抗体の産生に重要な役割をはたすものと考えられた.さらにSLEの緩解期でもDNA分解能の低下がみられ,ルプス素因としての可能性を考案した.
  • 西田 皓一
    1973 年 62 巻 6 号 p. 601-609
    発行日: 1973/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    従来より,発作性頻拍症は精神的緊張により惹起されやすい事は良く知られた事実であるが,その真の発生機序については現在のところ明らかにされていない.それ故に,神経性因子,とくに交感神経緊張状態が発作性頻拍症の発生,および,その維持機構に,如何なる影響を及ぼすかについて検討した.まず発作性頻拍症の患者の大部分が交感神経緊張状態に頻拍発作が起こりやすい事実より, epinephrine (6γ/kg)の筋注による誘発試験を20例の発作性上室性頻拍症の既往を有する患者に試みたところ,11例に頻拍発作を誘発し得た.臨床例,また実験結果でも心房性および心室性期外収縮がtriggerとなつて発作性頻拍が発生する事より,発作性頻拍症の発生には,1)発作性頻拍の発生のtriggerとなる期外収縮が惹起する事,2)一旦発生した頻拍を持続させる維持機構が存在する事の二つの条件が必要不可欠である.臨床例,および動物実験で検討した結果,交感神経緊張状態は発作性頻拍症の発生のtriggerとしてのみならず,その維持機構にも重大な影響を及ぼす事が判明した.
  • 小林 哲郎, 白石 正勝, 大原 弘通
    1973 年 62 巻 6 号 p. 610-619
    発行日: 1973/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    二,三の甲状腺機能にかかわる因子と血中TSHを測定し,さらにTRH刺激に対するTSHの反応性の面から老年者の下垂体-甲状腺系の機能動態を検討した.対象は60才以上94才までの健康とみなされる老年者で, 25~35才の健康成人を対照とした.老年者群のtriiodothyronine resin uptake rateは成人対照群に比較して有意な低値を示すが,血中総T4は変化を示さない,遊離T4 indexも老年者群で低値を示した.一方血清TSHは,老年者群では成人対照群の正常域を越えて高値を示すものが見られ,比較的少量のTRH (100μg)投与による血清TSHの反応性を検討すると,老年者群での反応性は高く,かつ反応状態は遷延する傾向を示した.またTRH量(300μg)を変えてTSH反応をみると,成人対照群では用量に比例した反応を認めるが,老年者ではその間の反応差はほとんどみられない.これらの成績から,老年者における甲状腺機能は低下しているが,見かけ上の甲状腺ホルモンは代償されており,かつ下垂体TSHの予備力も若年者はより低下しているが,甲状腺機能の特異性に対応するTSHの被刺激性は高まつているとの特徴を明らかにした.
  • 大橋 晃, 入宇田 能順, 仲 紘嗣, 山田 一範, 河内 秀希, 佐藤 富士夫
    1973 年 62 巻 6 号 p. 620-625
    発行日: 1973/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    珪肺症にSLE様の多彩な病像を伴つた症例を報告した.患者は71才,男子で約30年にわたる珪肺症を有し,初診時急性肺炎を起こしていたが,その数ヵ月前から多発性関節炎を有し,肺炎の治癒後も持続した.血沈尤進,高γ-globulin血症, LE細胞,抗核抗体,抗DNA抗体,リウマチ因子が強陽性で,遅延型反応の低下,血清補体価の低下等, SLEに酷似した多彩な免疫異常を呈した.この病像の発生機序について,肺に沈着した珪酸粒子が組織蛋白を変性させ,そのadjuvant効果によつて長期かつ強力に生体を感作したため免疫機構の変調を紹来したため生じたものであり,ヒトadjuvant病としての性格を有するものであることを述べた.
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