87例の急性心筋硬塞患者の尿中catecholamine(norepinephrineおよびepinephrine)を測定し,臨床像との関係および経時変化につき検討した.各種心疾患の中,急性心筋硬塞,頻脈性不整脈,中間冠状症候群,急性心不全においてcatecholamineの有意の上昇がみられた.また心筋硬塞急性期にみられる合併症の中,心室頻拍,心破裂,ショック,頻脈性不整脈群に著明な上昇を認めた.硬塞部位およびその大きさとcatecholamineとの問には,有意の相関はなかつた.同時期に測定された一般臨床検査成績とは, norepinephrineと血清GOT, epinephrineとCRPおよび血清cortisolとの間に,低いながらも正の相関をみた. epinephrineとcortisolの正の相関は,急性心筋硬塞における副腎の反応を知る上で,興味深く思われた.発症後10日間の尿中catecholamineを連続的に測定し得た32例を,そのパターンより4群に分類した.二つのピークを有するA群には,頻脈性不整脈の合併が多くみられた.初期ピークのみを有するB群には,頻脈性不整脈に加えて,心不全,ショック等の重篤な循環障害を合併する症例が多かつた.終始低値を示したC群には,後壁硬塞が多く,洞房および房室ブロックがみられた.しばしば経験される後壁硬塞と徐脈性不整脈の合併が, catecholamineの低い群で観察されたことは,心臓における自律神経分布のバランスを示すものとして注目される.特徴のないD群では,臨床像もまた様々であつた.
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