日本内科学会雑誌
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63 巻, 3 号
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  • 松本 陽子
    1974 年 63 巻 3 号 p. 227-236
    発行日: 1974/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    87例の急性心筋硬塞患者の尿中catecholamine(norepinephrineおよびepinephrine)を測定し,臨床像との関係および経時変化につき検討した.各種心疾患の中,急性心筋硬塞,頻脈性不整脈,中間冠状症候群,急性心不全においてcatecholamineの有意の上昇がみられた.また心筋硬塞急性期にみられる合併症の中,心室頻拍,心破裂,ショック,頻脈性不整脈群に著明な上昇を認めた.硬塞部位およびその大きさとcatecholamineとの問には,有意の相関はなかつた.同時期に測定された一般臨床検査成績とは, norepinephrineと血清GOT, epinephrineとCRPおよび血清cortisolとの間に,低いながらも正の相関をみた. epinephrineとcortisolの正の相関は,急性心筋硬塞における副腎の反応を知る上で,興味深く思われた.発症後10日間の尿中catecholamineを連続的に測定し得た32例を,そのパターンより4群に分類した.二つのピークを有するA群には,頻脈性不整脈の合併が多くみられた.初期ピークのみを有するB群には,頻脈性不整脈に加えて,心不全,ショック等の重篤な循環障害を合併する症例が多かつた.終始低値を示したC群には,後壁硬塞が多く,洞房および房室ブロックがみられた.しばしば経験される後壁硬塞と徐脈性不整脈の合併が, catecholamineの低い群で観察されたことは,心臓における自律神経分布のバランスを示すものとして注目される.特徴のないD群では,臨床像もまた様々であつた.
  • 西戸 孝昭, 山根 一秀, 奥田 正治
    1974 年 63 巻 3 号 p. 237-244
    発行日: 1974/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    SLEにみられるPN様血管病変について,自験のSLE剖検8症例を観察対象として,とくにその出現頻度,およびclassical PNと対比して,臨床的,病理組織学的特徴像の検討を行なつた. PN様血管病変は, 8症例中,全経過約5年の14才女子症例1例にのみ全身性の出現が認められ,残る7症例には全くみられなかつた. SLEにおけるPN様血管病変の特徴として, (1)臓器分布に偏りがみられ,主として腎皮質層,消化管に認められた. (2)小動脈の中でもより小さいものに障害が顕著にみられた. (3)病相時期が均一であり,その病変は血管壁のフィブリノイド壊死が目立ち,炎症性細胞浸潤はあまり顕著でなく,主として血管周囲性に認められた. (4)浸潤細胞はいわゆる単核細胞が主体をなし,好中球は少なく,好酸球は全くみられなかつた,などの諸点を指摘しうると考えられた.これらの知見から, SLEにおけるPN様血管病変の出現頻度は非常に希であろうと推察される.また, PN様血管病変の本態は, S L Eのterminal stageにおいて,血管壁の壊死性変化が基盤となり,炎症性細胞浸潤は,その二次的修復反応として生じたものではなかろうかと考察された.
  • 柏崎 禎夫, 高橋 唯郎, 斉藤 豊和, 田崎 義昭, 平沢 康, 有富 寛
    1974 年 63 巻 3 号 p. 245-250
    発行日: 1974/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチの診断で治療を受けていた55才の女性が多発性関節痛とともに,下肢浮腫,開口障害,舌呈出障害が出現したため来院した.入院時,両側頭下顎骨,肩,肘,手指近位指節間関節などに運動制限,圧痛,滑液膜肥厚,および屈曲拘縮を認めた.検査成績では尿Bence-Jones蛋白陽性,リウマトイド因子陰性, M蛋白陽性(λ-G type),骨髄像では,有核細胞数の減少,異型性を伴う形質細胞の増多があつた.膝関節滑液膜および直腸の生検で,アミロイド物質の沈着を証明し,多発性骨髄腫に随伴したamyloid arthropathyと診断した.本症例はamyloid arthropathyの生前確診例としては本邦初例である.本例の鑑別診断の問題点とともにamyloid arthropathyを中心に文献的考察を行なつた.
  • 高橋 功, 難波 昌弘, 喜多島 康一, 岩崎 一郎, 平木 潔, 園部 宏, 小川 勝士, 辻田 源伍
    1974 年 63 巻 3 号 p. 251-258
    発行日: 1974/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    24才の女性.慢性腎不全の状態で入院し82日目に死亡.患者は幼少時より発育遅延があり, 14才時に肝生検にて糖原病の診断を受けている.その剖検所見では著明な肝腫,組織学的には肝細胞の膨化,核水腫等が認められ,陽性物質の異常な蓄積と集合像が特徴的であり,本物質は唾液消化試験陽性で糖原病に一致するものであつた.一方,腎は高度に萎縮しその割面で髄質内に限局した数コの嚢胞形成が認められ,組織学的にはperiglomerular fibrosis,間質の円形細胞浸潤と線維化,尿細管の萎縮または嚢胞様拡張等が特微的であつたが, foam cellの出現や糖原沈着は認められなかつた.本例の両親は血族結婚で,同胞7人中1人(27才,本例の姉)は当時慢性腎炎にて加療中で,その臨床像,腎生検像,腎機能所見等程度の差こそあれ本例と極めて類似するものであつた.以上より本例は糠原病に家族性腎疾患,とくに臨床検査,病理学的所見,臨床像の推移等よりFanconiのいうfamilial juvenile nephronophthisisの合併したものと考えられた.
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