日本内科学会雑誌
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64 巻, 12 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 西川 光夫
    1975 年 64 巻 12 号 p. 1335-1352
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 獲得性IgA単独欠損症3症例の証明
    加納 正, 丹羽 靱負, 山口 希
    1975 年 64 巻 12 号 p. 1353-1360
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    IgA単独欠損症は健康人にみられることがあるが,多くの場合各種の疾患に随伴する.しかし,それらの疾患との関係は不明であり,今日広く採用されているWHO分類でもIgA単独欠損症は原発性免疫不全症の一病型として取扱われている.今回著者らの示した3症例,すなわち(1) 1947年生女性, SLE慢性甲状腺炎, (2) 1913年生男性,結節性動脈周囲炎(疑), (3) 1952年生男性,髄膜腫による症候性癲癇・Recklinghausen病などでは,いずれもIgA単独欠損症が経過中に発現したことを確認し得たものである.現在までに,同様の症例は2例知られているが,単なる事実の確認に終り,免疫学的検索がなされていないし,その成因についても考察されていない.著者らの3症例はIgA単独欠損症の獲得型が明らかに存在することを示す貴重な症例である.また少なくとも症例3ではIgA欠損が可逆的であることも示された. IgA単独欠損症のすべてが原発性もしくは先天性であるとする見解は否定された.獲得型の成因にかんしては, (1)抗IgA抗体による自己免疫機序(続発性獲得性), (2)薬剤(この場合抗癲癇剤)の直接関与もしくは自己免疫機序を介しての関与(続発性獲得性), (3)原因不明(原発性獲得性)などが考えられた.
  • 加納 達二
    1975 年 64 巻 12 号 p. 1361-1370
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    冠状動脈硬化についての病理学的研究は数多くなされているが,冠状動脈入口部の硬化による狭窄の意義について報告はすくない.著者はこの冠状動脈入口部の形態・動脈硬化病変に注目し,無作意に選んだ剖検心70例について,臨床病理学的研究を行なつた.冠状動脈入口部は特有なくぼみ,いわゆるロート構造をもち,その形態は多種多様であるが,右は二重輪,左はコメット形が多い.組織学的にはロート構造は内側を放射状に走る縦走筋と,外側をとりまく輪状筋が特殊構造をつくつている.入口部の動脈硬化は加令とともに強くなるが,左にくらべ右入品部で動脈硬化が強い.動脈硬化の出現部位は‘ひさし’形成を含めて,右ではロート部上縁に,左では右上縁に出来ることが多い.入口部の動脈硬化による狭窄は,右では70例中11例, 15.7%,左では7例, 10%,両入口部狭窄は4例, 5.7%にみられる.心筋硬塞はこの入口部狭窄群14例中4例, 28.5%にみられ,対象に比べて心筋硬塞の合併率が高かつた.以上の研究から冠状動脈入口部は一種独特の形態をもち,また虚血性心疾患では冠状動脈自体の病変ばかりでなく,冠状動脈入口部の硬化,および狭窄病変にも注目すべきことを示した.
  • 齋藤 寛, 塩路 隆治, 古川 洋太郎, 有川 卓, 齋藤 喬雄, 永井 謙一, 道又 勇一, 佐々木 康彦, 古山 隆, 吉永 馨
    1975 年 64 巻 12 号 p. 1371-1383
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    明治初年以来高度のカドミウム環境汚染をうけてきた秋田県小坂町細越地域の35才以上の住民137人(男58人,女79人)の健康調査を行なつた.昭和47年1月から昭和49年10月にいたる期間の4回の検尿において尿蛋白,尿糖同時陽性者の検出率は常時13%以上であり,対照地域の同時陽性率2.5%に比し著しい高率であつた.この4回の検尿により尿蛋白・尿糖同時陽性者33例(男18例,女15例)を見出し,かつこのなかから腎機能検査の結果10例(男5例,女5例)の多発性近位尿細管機能異常症(multiple proximal tubular dysfunctions)を診断した.この10例についてその原因疾患を検討した.特発性,遺伝性疾患,ならびに慢性重金属中毒以外の後天性疾患はいずれも否定された.多発性近位尿細管機能異常症を含む尿蛋白・尿糖同時陽性者の大部分が尿中カドミウム排泄の異常高値(10.0~45.0μg/d)を示した.小坂町細越地域の土壌,産米などにはこれまでくりかえし高濃度のカドミウムが検出されており,また同地域住民の多数が尿中カドミウムの異常高濃度(10.0μg/l以上)を示すことが秋田県の調査により明らかにされている.すなわち同地域住民は長年にわたり異常カドミウム曝露をうけてきたことが確実であつた.以上により同地域住民の多数に認めた蛋白尿,糖尿の多発,さらには多発性近位尿細管機能異常症にまでいたる一連の腎障害は長年にわたり,主に食物を介して体内に異常大量摂取されたカドミウムによる慢性カドミウム中毒であると結論した.
  • 清水 勝, 渡部 和則, 山田 昌夫, 渡辺 嵯峨彦, 若原 達男, 高井 哲, 室 隆雄, 高橋 善弥太, 下川 邦泰
    1975 年 64 巻 12 号 p. 1384-1390
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    大腸ポリポージス,骨腫,軟部組織腫瘍を3主徴とするGardner症候群は,常染色体性優性遺伝し,比較的希な疾患とされている.今回,著者らはこの3主徴に,さらに両側副睾丸腫瘍,鼻腔ポリープ,骨奇形,知能障害を合併した症例を経験した.かかる症例は文献上でも希有な症例と考えられるので報告した.症例は17才の男性で,出産は安産であつたが,歩行・会話が普通より1年遅れ, IQ低下を指摘されていた. 5才頃より左下肢の過長と左手中指の異常に気づき,その後さらに頭部腫瘤,左手示指・中指・環指,右手示指の過長と腫瘤形成を認めるようになり,また10才頃より右陰嚢腫脹に気づいた.これらの異常は入院前3年間で急に増悪し,下血による顔面蒼白,心悸亢進を主訴として入院してきた.注腸造影および大腸ファイバースコープにより横行結腸から直腸にかけて多数のポリープを認め,組織学的には悪性化は見られなかつた.また頭蓋骨に骨腫,両側指骨の骨軟骨腫,左第4趾の線維腫,右鼻腔の腺腫様ポリープ,両側副章丸の乳頭状嚢胞性腺癌が合併し,さらに左下肢の過長,頚椎1個過多などの骨奇形および球状水晶体を伴つていた.最近,大腸ポリポージスにかんして,多発性腫瘍発生素因の存在が注目されているが,本症例は5種類もの腫瘍が同一個体に存在し,その上骨奇形・知能障害が合併しており,腫瘍発生の先天性素因を強く示唆する症例であると考えられる.
  • 山根 清美, 矢島 一枝, 塩沢 瞭一, 安芸 基雄, 紫芝 良昌, 沢野 真二
    1975 年 64 巻 12 号 p. 1391-1398
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    中枢性高Na血症については内外に多数の報告がみられるが,それに関連して周期性四肢麻痺を生じたと考えられる例は希である.われわれは臨床的に視床下部腫瘍と診断された症例で正常脳圧水頭症,下垂体機能低下症,および,渇中枢障害, ADH分泌障害に基づく高Na血症を呈し,それに関連して周期性四肢麻痺を生じたと考えられる36才,男性の症例を経験した.ここに症例を報告すると共に,麻痺の発生機序について考案を試みた.当例ではchlorpropamideの投与,および適当な水分補給により血清Naを正常に保つことにより,四肢麻痺の発生をコントロール出来た.従来のspironolactone, acetazolamideなどの経験的薬物以外にもある種の周期性四肢麻痺ではchlorpropamideが有効な場合もあると考えられる.
  • 若田 宣雄, 里吉 営二郎, 木下 真男, 高沢 靖紀
    1975 年 64 巻 12 号 p. 1399-1404
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例: 19才女子,会社員. 17才頃,ソフトボールの試合中,休んでいたら右上下肢の脱力が出現,約1日で回復したが,その後,運動後休息中によく脱力発作が起きるようになり,また,スイカを食べて少ししても起きるようになつた.父親も同じようにスイカを食べると脱力発作が生じるという.入院時,四肢近位筋のごく軽度の脱力と,わずかな叩打後筋不随意収縮を認めた. KCI5g経口投与により,血清カリウムは最高7.5mEq/lに達し,腰がふちつき,歩行困難となつた.また, 30分間,自転車をこいだのち休息していると,血清カリウムは3.7から4.7までしか上昇しなかつたが,やはり脱力発作が出現した.一方,ブドウ糖およびインスリン負荷試験では,血清カリウムは4.7から3.6まで変化したが,脱力発作は見られなかつた. acetazolamide 1g/日連続投与でも麻痺は起こらず,これらの結果から,家族性高カリウム血性四肢麻痺と診断した.しかし,麻痺は高カリウム血の時にのみ起きるとは限らず,過去にも,正カリウム血性として報告されたものが,のちに高カリウム血性として再報告されたこともあり,両者の区別は必ずしも本質的ではないと考えた.また, acetazolamideに対する態度などから,低カリウム性のものとも一部には共通点を有する面もあり,血清カリウム濃度の相違からのみ,周期性四肢麻痺の発現機序を論じることは正しくないのではないかと考えた.
  • 黒沢 元博, 政本 啓, 大沢 奈津子, 川北 勲, 下条 宏, 小林 敏男, 小林 功, 小林 節雄, 上野 達雄, 島野 俊一, 土屋 ...
    1975 年 64 巻 12 号 p. 1405-1411
    発行日: 1975/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    原発性シャント高ビリルビン血症と思われた1例を経験した.本疾患の病態生理は,骨髄内無効造血によるビリルビン生成過剰性黄疸であり,さらに赤血球自体の欠陥,処理機構の異常の関与などが考えられているが,現在のところ不明である.われわれは本例においてカロリー制限テスト,ニコチン酸テストを行ない,その結果Gi1ber症のような肝の非抱合ビリルビン処理異常に対しては否定的な結論を推定した.また,ニコチン酸テストを同胞に行ない,潜在性黄疸の検出を試みたが,家族性は認められなかつた.さらに3年間の臨床経過において自然寛解ともいえる状態が観察され,利用率の変動とそのほか諸検査成績の変動との間に関連性が認められ,骨髄内赤血球崩壊の程度の消長を示唆する成績がえられたことは興味ある点である.
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