日本内科学会雑誌
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64 巻, 4 号
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  • 螺良 英郎
    1975 年 64 巻 4 号 p. 299-316
    発行日: 1975/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    免疫抑制現象は内科領域の諸疾患で種々の関連や意義をもつていることが,免疫学研究の進歩に伴つて明らかになりつつある.例えば加齢,悪性腫瘍,感染症,アミロイドーシスの病因論の立場で免疫抑制の関与が考えられ,また病態の面から,疾病自体によつて生じる免疫抑制状態に加えて,抗腫瘍剤,副腎皮質ステロイド剤を含む広義の免疫抑制因子による医原的免疫抑制は,宿主を免疫不全状態に陥れることもある.しかるにかかる免疫不全の実態は正確に捉えられていない.われわれは医原的免疫抑制の解析に,主な免疫抑制因子のリンパ系細胞に与える影響をT細胞, B細胞の分布の上からと,抗体産生能の面から検討しつつある.また免疫不全に伴う感染誘発の要因として免疫抑制因子が,リンパ球以外の細胞系,とくに好中球に及ぼす影響を検討している。これらの解析は免疫不全の病態の把握と共に,免疫不全の防止,さらには宿主免疫能,抵抗力の増強に役立つ治療法の開発に資するところがあろう.免疫不全の診断には各種の方法が試みられているが,われわれはPHA皮内反応が宿主免疫能低下の診断に簡易であるところから,その意義について検討した.一方自己免疫病の難治性から,免疫抑制療法が提唱されたが,現在までの成績からその効果の限界,副作用を反省して本治療法の適応を考察してみた.自己免疫病の治療には,特異的,選択的な免疫学的寛容を目指した新らたな治療法の基礎的研究が必要であろう.
  • 小関 亮一
    1975 年 64 巻 4 号 p. 317-327
    発行日: 1975/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肝障害時の糖代謝異常について,主としてインスリン分泌面より検討した.方法としては糖負荷およびトルブタマイド試験における血中インスリン(以下IRIと略す)の動態と, CCl4肝障害犬にブドウ糖負荷した際の膵静脈,門脈および未梢血中のIRIと血糖の変動を観察した.肝疾患におけるブドウ糖負荷によるIRI反応は過剰反応を示すが著者の実験でも同様の結果であつた.肝障害犬も対照犬に比して負荷後のIRIは総べて高値を示した.しかしブドウ糖負荷前の膵静脈血では肝障害犬と対照犬との間に差異がなく,門脈血および未梢血では肝障害犬に高値を示した.これらの事は肝障害犬では負荷後の過剰反応は膵よりのインスリン過剰分泌が主因であり,肝でのインスリンの破壊に障害がある事を示唆している.トルブタマイド投与時のIRI反応ではブドウ糖負荷と異なり過剰反応は少ない.また正常反応を示す症例の中でも血糖下降率の悪いものが多い.過剰反応を示したものの中でも血糖下降率は必ずしも良くなく,このトルブタマイド試験による血糖とIRIの変化は,肝障害によるトルブタマイドの感性の低下よりもインスリン作用の低下を考えた.
  • 山本 誠, 遠山 龍彦, 三林 裕, 脇本 賢次, 黒田 満彦, 竹田 亮祐, 北川 正信
    1975 年 64 巻 4 号 p. 328-333
    発行日: 1975/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    定型的temporal arteritisの症例を経験し,ステロイド治療前後2回にわたり側頭動脈より生検を施行したので報告する. 1)症例は67才,男. 10年来の肩こりをみとめている.入院約1ヵ月前より頭痛が出現し,視力低下,体重減少を伴つた.側頭動脈は硬く怒張し,拍動は触れなかつた.第1回の右浅側頭動脈の生検では巨細胞を伴う肉芽腫性動脈炎を証明した.ステロイド薬1ヵ月投与後,臨床症状が改善し,側頭動脈の局所所見が全く正常化した時点で左浅側頭動脈より第2回生検を行なつた.その結果,高度の内膜肥厚,中外膜の線維化と新生血管の介在に加え,軽度の小円形細胞浸潤が残つており,ステロイド薬により臨床症状が改善しても組織像の反応は迅速でないと考えられた. 2)頭痛の激しい時期に視力低下をみとめたが,眼底はScheie H1S1-2と著変がなかつた. 3) polymyalgia rheumaticaかどうかは不明だが, 10年来の肩こりは下熱鎮痛剤に無反応でステロイド薬が著効を示し,頭痛と随伴して症状が出現するなどtemporal arteritisとの関連を強く示唆していた. 4)大動脈造影では大動脈弓およびその主幹動脈に著変はみとめず,腎生検像でも細小血管に異常はみとめられなかつた.
  • 芹澤 剛, 河津 捷二, 藤田 拓男, 吉川 政己
    1975 年 64 巻 4 号 p. 334-341
    発行日: 1975/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例1. 39才,女. 5年前に発症したテタニーと,皮膚知覚異常を主訴として来院. Drakeの診断基準を満し, Ellsworth-Howard試験は, 5.4倍の反応を示した.心電図,筋電図,脳波にも異常所見が認められていたが, vitamin D2の使用により,臨床症状,検査所見とも,著明に改善した.症例2. 11才,女.既往歴に甲状腺機能亢進症(10才)があり,右腎の形成不全を認める.家族歴に甲状腺機能亢進症がある.てんかん様発作を主訴として来院.臨床所見,検査所見,いずれにも症例1より強い変化を認めたが, vitamin D2を中心とする治療によつて回復した.症例2のEllsworth-Howard試験では, 7.0倍の反応が見られ,同時に測定した尿中cyclic AMP排泄量は, PTH静注前, 0.26~1.5nmo1/分に対して,静注後は最高101nmol/分に達し, Chaseらの報告と良く一致した.本疾患は,比較的希とされているが,自験例を含め,本邦での報告数は72例であつた.内容は,男24例,女42例,不明6例であつたが,特定の年代に集中して発症する傾向は見られなかつた.
  • 庭山 昌俊, 山本 みち子, 松井 一光, 和田 十次, 黒川 和泉, 武田 元, 山作 房之輔, 木下 康民
    1975 年 64 巻 4 号 p. 342-348
    発行日: 1975/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    わたくしどもは乳児期より発症し,再燃を繰り返しているchronic mucocutaneous candidiasisの1例を経験し,その発症原因について検索をおこなつた.細胞性免疫検査ではcandida抗原に対する遅延型皮膚反応,ツベルクリン反応, dinitrochlorobenzene感作試験はともに陰性で,患者に皮膚anergy状態が認められた.更にin vitroでは, candida抗原に対するmigration inhibition testは60.8%, phytohemagg1utininに対する1ymphocyte blastoid transfomation testは57.5%を示し,患春リンパ球はcandida抗原に充分反応し, migration inhibitory factorを産生することが実証された.本例では細胞性免疫機構のefferent limbめ欠陥が推察され,発症原因に関係あるものと思われる.好中球機能検査ではCandida albicansに対する殺菌能の低下が認められた.しかし, myeloperoxydase, nicotinamide adenine dinucleotide oxidaseはともに異常を認めず,主要な発症原因とは考え得ないが,病変部のCandida a1bicansに対する感染防禦力の低下に関係するものとして注目される.今回入院後,糖尿病の発症をみた以外特別の基礎疾患は認められない.体液性免疫能,発育阻止因子(fungistase)はともに異常なく,特別の遺伝的素因はない.治療はtransfer factor療法を試み,遅延型皮膚反応の陽性化を認めたが,病変の改善は現在のところ認められない.
  • 水野 信彦, 関 道雄, 中村 功, 小島 幹代, 石川 和美, 楢林 尚, 中治 隆宏, 老籾 宗忠, 大江 勝, 馬場 茂明, 岡田 聡 ...
    1975 年 64 巻 4 号 p. 349-356
    発行日: 1975/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    4人家族(父,母,兄,発端者)のうち, HB抗原陽性,慢性肝炎の発端者,および無症候性HB抗原キャリヤーの兄,および慢性肝障害を持つ母の3人にインドサイアニングリーン(以下ICGと略す)試験高度停滞を示す家族内集積を経験した.このうち,ブロ一ムスルホンフタレーン(以下BSPと略す)試験をなしえた兄と母にBSP (R45)軽度停滞が認められたが, ICGとの間に著明な解離がみられた.また, ICG血漿消失曲線を検討すると, 15分までは直線状に下降し, 20分において変曲点を持ち,一時平坦となり, 25分以後再び直線的に下降する特有な曲線をこれら3症例のいずれにも認められた.また, ICGと血清蛋白との結合様式をSephadex G-200によるゲル濾過法を用いて検討すると,本症例は,基本的に正常対照例と同じ結合パターンおよび結合比を示し,有意の差を認められなかつた.発端者の病態時の組織学的検索で,光顕では慢性肝炎活動型の像を呈し,電顕では慢性肝炎時に見られる変化以外に本症例に特異的所見は得られなかつた. ICG試験高度停滞の病態生理学的意義は現在の所不明であるが,われわれの以上の検討から, ICG試験高度停滞はICGと血清蛋白の結合異常によつて招来されるのではなく,肝細胞膜か,あるいは肝細胞内蛋白,もしくは何らかの転送機転における異常によるものと推定され,この質的異常は,肝障害による変化とは別に遺伝的背景を持つた異常であると考察される.
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