特発性Addison病は,欧米では結核性Addison病と肩を並べる程に増加しているが,本邦では今尚報告例は少ない.今回われわれはAddison病に慢性甲状腺炎と原発性性腺機能不全が先行したと思われる症例を経験したので報告した.患者は44才の女性, Addison病の発症は39才であつたが,それに先だつて18才の頃より甲状腺腫を, 30才の頃より稀発月経を来たしていた.甲状腺腫はaspiration biopsyて多数のリンパ球浸潤をみ,また血中抗甲状腺抗体も陽性であり慢性甲状腺炎と診断された. Schmidt症候群の疑いのもとにhydrocortisone 20mg/日補充を続けながら経過を観察していたが,今回精神的ストレスを機に,軽い副腎クリーゼをおこして入院した.血中cortisolは殆ど零, ACTH-Zテスト無反応,血中ACTH高値と強い副腎皮質機能不全を示した.末梢甲状腺ホルモンは正常だが,
131I-up take高値, TRHテストは過剰遅延反応をみ,慢性甲状腺炎を裏づけた. LH-RHテストでは,血中LH, FSH共に前値ならびに反応高く,若い頃からの稀発月経は原発性であると考えられた.血沈正常, ANF(-), RA(-), CH
50正常,抗甲状腺抗体(+).血中に抗副腎抗体が検出され,本症の副腎皮質機能不全に免疫的機序の関与が想定された.抗卵巣抗体は検出されなかつた.
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