日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
65 巻 , 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 伊藤 正一
    1976 年 65 巻 6 号 p. 543-559
    発行日: 1976/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    血友病研究の発展は医学の歴史の反映といつてよい.血友病は決して少ないとはいえない遺伝性出血性疾患で,診断法の進歩によつてとくに軽症型が発見されるようになつてきた.頭蓋内出血,関節機能障害などによる予後の悪さは第VIII因子,第IX因子を高濃度に含む血液製剤の開発により著しく改善された反面,これら補充療法の普及は時に肝炎,抗凝固因子などの副作用をもたらすようになつた.一方,近年の生化学的免疫学的研究手技の発展により,第VIII・IX因子の精製とそれを抗原とする特異抗血清の作製が行なわれるようになり,第VIII・IX因子が免疫学的にも測定されるようになつた結果,血友病は凝固因子の先天的欠乏というよりも,機能的に不活性な凝固西子の生成による一種の分子異常症であることがわかつた.この凝固活性と抗原性との解離は血友病という疾患の解釈に著しい変革をもたらしたのみならず,これを利用して血友病変異種の発見, von Willebrand病との鑑別,保因者の検出が可能となつた.第VIII因子にかんするさらに詳細な検索により,繁VIII因子は抗原性を示す高蛋白分子部分と凝固活性を示す低蛋白分子部分とから成り,後者の異常が血友病A,前者の異常がvon Willebrand病で,これらのsubunitと第VIII因子のもつ種々の機能との関係も次第に明らかとなつてきた.さらに第VIII因子様抗原が血管内皮,血小板と深い関連を有することがわかつてきた.
  • 小松 文夫
    1976 年 65 巻 6 号 p. 560-568
    発行日: 1976/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Microbial antigenを用いた遅延型過敏反応を観察することによつて細胞性免疫を推測する試みは,近年しだいに注目されてきたが,ヒトに感染する機会のきわめて多い溶血性連鎖球菌の菌体外毒素ストレプトリジンO (SLO)に遅延型過敏反応がみられるか否かをみ,細胞性免疫の示標となりうるかを検討した.まず, Hartley系モルモットをSLOとFreund's complete adjuvantで感作し, 2週間後の皮内反応で, 48時間をピークとする発赤と,著明なリンパ球の浸潤をきたすことが認められ,遅延型過敏反応であることが確認された.そこで癌患者およびその他の疾患々者に皮内反応を試みた.栄研製SLOl号20%溶液0.1mlを前碗皮内に接種し, 48時間後の発赤の程度を測定し,同時にPPD・DNCB各反応,リンパ球幼若化率と比較した.その結果, SLO皮内反応はつぎのような特微を示した.すなわち,正常者での陽性率が高く,加令による反応の低下は少なく,感染症では一般に強陽性を示した.癌患者および細胞性免疫の障害が推測される症例では著明に低下していた. SLO皮内反応はPPD・DNCB各反応との相関性を有し,また皮内反応の低下にしたがつてリンパ球の幼若化率も低下した.以上の結果より, SLO皮内反応は細胞性免疫の状態を反映すると考えられ,細胞性免疫の一示標として,臨床応用が可能と思われた.
  • 田中 敏行, 関 顕, 藤井 潤, 葛谷 信貞
    1976 年 65 巻 6 号 p. 569-574
    発行日: 1976/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    軽度糖代謝異常およびインスリン分泌が大動脈粥状硬化におよぼす影響をみる目的で, 40才以上の男子488例,女子210例について, X線写真上の大動脈石灰化像と, 100gブドウ糖負荷試験における血糖曲線の型および糖負荷後30分の血漿インスリン値の上昇と血糖値の上昇の比,ΔIRI/ΔBSの関係を検討した.対象の殆ど全例で,空腹時血糖値は, 120mg/dl以下であつた.大動脈石灰化像の頻度は, 40才台で4.9%, 50才台で18.4%, 60才台で47.5%, 70才以上で72.5%と加令とともに著明に増加した.腹部大動脈の石灰化像が50才台男子(20.1%)において女子(4.7%)より有意に高率に認められたが(P<0.01),これ以外は弓部,腹部ともに大動脈石灰化像の出現率には性差がなかつた. 50才台男子で石灰化像が認められたものは,血糖曲線が正常型の26例中2例(7.7%),境界型の86例中14例(16.3%),糖尿病型の47例中19例(40.4%)であり, 3群間に有意の頻度差があつた(P<0.01),同様の傾向は同年代女子においても認められた.また50才台男子のうち血糖曲線が糖尿病型のものおよび160/90mmHg以上の高血圧のものを除いた85例についてみると,ΔIRI/ΔBSが1.0未満の61例中10例にのみ大動脈石灰化像が認められ,これが1.0以上の24例には石灰化像がなかつた(P<0.05).これらの成績は糖負荷試験で正常型または境界型であつても,ΔIRI/ΔBSが比較的低いもの,すなわちインスリン分泌反応が低下しているものに,大動脈石灰化が出現し易いことを示している.
  • 木村 清延, 常田 育宏, 桐沢 俊夫, 本間 行彦, 大崎 饒, 村尾 誠
    1976 年 65 巻 6 号 p. 575-580
    発行日: 1976/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    麻痺性ポリオ症候群paralytic poliomyelitis syndromeは,その原因としてポリオウイルスが広く知られているが,他の腸管系ウイルスや,ムンプスウイルス,ヘルペスウイルスなどのウイルスによつても発症する.コクサッキーA群ウイルスによつて麻痺を呈する例は,比較的少なく,とくにA2型によると確定診断されたものは,本邦では報告がない.われわれは, 27才男性で,感冒様症状をもつて発症し,四肢の弛緩性麻痺および顔面神経,舌咽神経,迷走神経麻痺を呈し, 2カ月後には,ほぼ正常にまで回復した症例を経験した.原因にかんしては,血清学的にコクサッキーウイルスA2型に対する中和抗体価の有意の上昇を認め,さらに便,髄液中から同型ウイルスを同定し,コクサッキーウイルスA型によつて発症したものと診断した.
  • 藤井 浩, 加納 正, 岡田 弘
    1976 年 65 巻 6 号 p. 581-588
    発行日: 1976/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    頭蓋骨生検を行ないはじめて診断をなしえたnon-secretory myeloma(lgG-κ)の1症例を報告する.症例: 48才,男性.背部痛にて入院.尿蛋白, BJ蛋白尿ともに陰性で貧血や血沈亢進はみられない.アセテート膜電気泳動や免疫電気泳動により血清と濃縮尿をくり返し検索したが, M成分(BJ蛋白)は認められなかつた.血清蛋白分画では低γ-グロブリン血症を,骨X線検査にて頭蓋骨に多数の打ち抜き像を認めた.胸骨や仙骨の骨髄検査では形質細胞は2.2~4.4%で異型性はみられなかつたので頭蓋骨生検を施行.生検スタンプ標本にて骨髄腫細胞が多数集簇してみられ,これらの骨髄腫細胞には蛍光抗体法によりγ, κ, Fc, Fabの保有が証明された.染色体分析ではaneuploidyがみられた.直腸生検像ではamyloidosisを思わす所見はみられない.以上よりnon-secretory myeloma (IgG-κ)と診断しcyc1ophosphamideの投与により軽快し, 17ヵ月経過した現在,元気に通院中である.文献上,現在までに診断の確実と思われるM成分を伴わない骨髄腫は55例報告されているが,このうち17例に蛍光抗体法が施行され, 10例がnon-secretory type, 7例がnon-producing typeである.臨床像では,蛋白尿や血沈亢進を示す症例が少ないこと,白血性変化や著明な骨変化を示す症例の多いことが注目される.非分泌型の発生機序にかんしては産生されたM成分のcarbohydrateの結合障害を含めた分子構造上の異常がM成分の細胞内輸送や細胞外への分泌の障害に関与していると推論されている.
  • 臼井 康臣, 岡本 進, 升田 隆雄, 恒川 洋, 向山 昌邦
    1976 年 65 巻 6 号 p. 589-595
    発行日: 1976/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Mycoplasma pneumoniae (M. pn.)に伴う神経系の障害のうちpolyneuritis例については欧米で若干例の報告があるのみで,本邦では未だ報告されていない.著者らは知覚障害優位のmyelo-radicu-lo-neuritisの1症例において,その病因としてM. pn.の感染が想定された希有なる症例をここに報告した.症例は23才の男性.発熱,気道感染症状に続いて四肢の運動,知覚障害が出現.入院時(第9病日)扁桃,表在リンパ節の腫脹を認めた.神経系では,意識清明,項部強直なく,脳神経系ではVII脳神経障害,四肢,躯幹の異常覚,腱反射の高度低下,四肢末梢優位の軽~中度の表在覚,上肢に高度,下肢に軽度の深部覚障害が認められ,また筋力も軽~中度の低下を示した.臨床検査上,血沈の促進,寒冷凝集素価の上昇を認め,血清M. pn.に対するCF抗体価は初回64倍,以後低下を示した.一方fermentation inhibition抗体価は初回16倍,以後最高128倍に達した.髄液では,細胞数は初回114/3と増加を示したが以後は正常化し,細胞蛋白解離現象が認められた.腓腹神経生検像では中~高度の軸索,髄鞘の変性,脱落像が認められ,かつ太い線維により著明であつた. steroidの投与により4ヵ月後に四肢の知覚障害を残して退院した. M. pn.感染に伴うpolyneuritisの既報告例を検討し,知覚障害優位を示した本症例の特異性を指摘した.またM. pn.による神経系障害の機序として,直接侵襲およびアレルギー性機序などについて考察を加えた.
  • 三好 勝彦, 広瀬 憲文, 山本 智英
    1976 年 65 巻 6 号 p. 596-600
    発行日: 1976/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    粘液水腫の精神神経症状の発現機序は,甲状腺ホルモン欠乏による脳代謝障害が主因と考えられているが,充分に解明されていない.症例は, 67才の女性で粘液水腫の典型的症状に加え,日中の著しい傾眠,夢と現実の混同,妄想などの精神神経症状と,著明な低O2血症,高CO2血症を伴う周期性呼吸を示していた.肥満,傾眠,周期性呼吸などPickwick症候群を呈しており,これらの精神神経症状の発現と呼吸・換気障害との間に何らかの関連があるものと考えられた.そこで,脳波と腹壁の運動および肋間筋,前頚部筋の活動,頤部の運動などをポリグラフに記録して,覚醒・睡眠と周期性呼吸との関連性について検索した.脳波では覚醒と入眠の像が交互に周期的にみられ,これに一致して周期性呼吸が認められ,覚醒像の出現に先き立ち頤の激しい動きを伴つた大きな喘ぎ(loud stridulous gasp)が観察された.また,無呼吸期にも肋間筋の筋活動が認められており,上気道の閉塞の存在が充分に示唆された.治療に伴い諸症状は改善消失しており,周期性呼吸,低O2血症,高CO2血症なども消失した.本症例の精神神経症状の発現は,甲状腺ホルモン欠乏による脳組織の直接的障害のみならず,上気道の周期的閉塞によつておこつた肺胞換気量の低下に帰因する低O2血症,高CO2血症が関与しているものと考えられる.
feedback
Top