日本内科学会雑誌
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67 巻, 7 号
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  • 小椋 陽介
    1978 年 67 巻 7 号 p. 683-693
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    腎がカルシウム調節ホルモンの一つである活性型ビタミンDとくに1, 25-(OH)3-D3を産生することが明らかにされてから,慢性腎不全に合併するカルシウム代謝異常とくに骨病変の解明は大きく進展した.すなわち慢性腎不全では,腎での1, 25-(OH)2-D3が産生が低下し,これが腎性骨病変の重要な因子と考えられ,その治療には, 1.25-(OH)2-D3そのものを補充するか,または腎での反応を必要とせずに活性型ビタミンDとなるアナログが開発され,臨床応用が検討されるようになつた,しかし,これで解決したように思われた腎不全におけるカルシウム代謝異常の治療も, 1, 25-(OH)2-D3に対する無反応を示す例もみい出されるようになり, 1, 25-(OH)-D3以外のビタミンD代謝物の役割についても関心がもたれつつある.
  • 酸性アミノ酸およびアミノ酸酸アミド特にグルタミン負荷の影響
    宮城 研, 中田 福市
    1978 年 67 巻 7 号 p. 694-702
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    シスチン尿症および正常者にグルタミン酸(Glu),アスパラギン酸(Asp),グルタミン(Glu-NH2),アスパラギン(Asp-NH2)の1g/100ml溶液を毎分10ml 10分間負荷し,負荷前, 1時間, 2時間後のアミノ酸(AA)再吸収率に及ぼす影響を検討した. Glu-NH2は連続負荷も行なつた.正常者においては,上記いずれのAA負荷でもAA再吸収率に変化はなかつた.これは負荷量が少ないためと考えられた.しかし同様に少ない負荷量でシスチン尿症においては,酸性AAの再吸収率はAspとGluの負荷により阻害された. Glu-NH2とAsp-NH2の負荷では影響がなかつた.塩基性AAの再吸収率は, GluとAsp-NH2の負荷により強く阻害され, Asp負荷はCysのみわずかに阻害した.特にGlu負荷はAspの, GluとAsp-NH2は塩基性AAの再吸収率を負にした.他方Glu-NH2,負荷はLys, Argの再吸収率をわずかに改善し, Cysの再吸収率を著しく改善した.これらの結果より,シスチン尿症においては塩基性AAと同様酸性AAの再吸収機構も正常老に比しその許容量が小さい可能性,負荷AAによつては一部AAの分泌も起こる可能性,酸性AAの再吸収機構にはγ-COOHが必須である可能性等が推定された.またGlu-NH2がCysの再吸収率を改善する機序について, AAの極性と尿細管上皮細胞膜蛋白質の極性基との相互作用の面からアンニアの関与にこつき考察し, Glu-NH2のシスチン尿症治療への応用の可能性について考察した.
  • 血液酸素運搬機能の変化とその起点
    守屋 亘
    1978 年 67 巻 7 号 p. 703-716
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    各種肝疾患における血液酸素解離曲線(ODC), 2, 3-diphosphoglycerate (2, 3-DPG),動脈血酸素分圧(PaO2),肺胞気・動脈血間酸素分圧差(AaDO2)などの変動を肝病態との関連において検討した. 2, 3-DPG値は,健常者4.73±0.33 (mmol/L・RBC),急性肝炎5.11±0.42,慢性肝炎5.07±0.42,肝硬変5.64±0.77で,肝硬変ではそのほとんどが増加を示し,ことに非代償性肝硬変でその傾向が強かつた. ODCについてもP50値は,健常者27.2±0.5 (mmHg),急性肝炎27.6±0.5,慢性肝炎27.3±0.5,肝硬変28.4±0.7とやはりほとんどの肝硬変症例でP50高値を示した.肝疾患に随伴する貧血と2, 3-DPG, P50との関係については有意の逆相関を示したが,肝疾患のみられない貧血症での2, 3-DPG値, P50値はそれぞれ5.45±0.23, 28.2±0.5であり,肝硬変症例の方がより高値を示した.また, PaO2, AaDO2はそれぞれ健常者で92.9±2.2, 14.3±4.8 (mmHg),肝硬変患者で81.9±7.7, 29.4±7.2 (mmHg)であり,肝硬変症例でのPaO2の低下, AaDO2の増大がみられた.以上より,慢性肝疾患におけるODC右偏, 2, 3-DPG増加の原因は単一なものではなく,貧血,低酸素血症などが相互に重なり合つて2, 3-DPGの増加を引き起こし,その結果血液の酸素に対する親和性を低下させ,末梢組織における血液からの酸素放出能を高めるという生体の低酸素血状態に対する生理的適応現象と考えられる.
  • 佐川 幸司
    1978 年 67 巻 7 号 p. 717-722
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    非梅毒性角膜実質炎に,耳鳴,眩暈,嘔気などの前庭神経症状と進行性の感音性難聴をきたす疾患をCogan症候群と呼んでいるが,いまだまれな疾患である.諸外国において1976年までに53例の報告1)があるが,本邦では鈴木2),高橋3)らの報告をみるのみである.本症例は47才,男性で, 18才の時難聴発作を伴う前庭神経症状で発症し,右耳難聴は徐々に進行した. 33才時に眼症状が初めて出現し,その後,視力障害は進行していつた. 38才時に再度の眩暈,嘔気,両側難聴の発作がみられた.また本症例では眼,耳症状以外の多彩な全身症状(関節痛,頚,背部の硬直感,腰痛,皮膚粘膜症状,嗄声,また高血圧)も経過中訴え,入院時検査所見で血沈の高度促進, CRP陽性,高ガンマグロブリン血症など何らかの免疫異常も考えられ,最近の文献でのpolyarteritis nodosa (PN:多発性結節性動脈炎)を始めとする血管炎の証明された症例も多くあり, Cogan症候群でみられる眼,耳症状は全身疾患(systemic vasculitis)の一連のものではないかとする概念に一致し興味があり,報告した.
  • 西田 雅喜, 蓑田 正豪, 橋村 俊一, 長谷川 廣文, 椿 和央, 橋本 清保, 御木 達也, 今田 聰雄, 岩永 隆行, 入交 清博, ...
    1978 年 67 巻 7 号 p. 723-728
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    昏睡となつた激症肝炎患者に,本邦では初めて持続血球分離装置(celltrifuge)による血漿交換を行ない,同時にヘパリン大量投与を併用して救命することができた1例を経験した.症例. 29才,男性,医師.入院約1カ月前に数日間テール便がみられ,某医で800mlの新鮮血輸血を受けた.入院約1週間前より全身倦怠感を訴え,昭和51年6月17日当科に入院した.入院時球結膜に軽度黄疸を認め,肝2横指触知, GOT 11524, GPT 7836,総ビリルビン値は8.3mgに上昇し,入院4日目に肝性昏睡に陥つた.直ちにcelltrifugeによる血漿交換を施行し,同時にヘパリン2000~2500U/時を持続点滴し,さらに無菌装置を設置して管理した. 43回目の血漿交換終了後より意識は回復し始め,その後は順調に経過し,入院63日で退院した.血漿交換量は4回で合計約18l,ヘパリン総投与量は197800Uであつた.退院前に施行した腹腔鏡および肝生検では肉眼的,組織学的に変化は軽度であつた.
  • 6例の検討
    尾崎 承一, 熊谷 俊一, 小谷 宏行, 恒松 徳五郎, 井村 裕夫, 田村 忠雄, 原 晃, 小西 憲子, 沢西 謙次
    1978 年 67 巻 7 号 p. 729-738
    発行日: 1978/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Lupus腎炎由来の腎不全患者の血液透析に関しては,その開始基準や透析中の治療,および離脱の方法は一定していない.今回我々は6例の透析施行SLE患者を経験し死亡2例,透析継続中2例,透析離脱2例との成績を得て検討を加えた.全例ともARAのSLE診断予備基準を満たし活動性で,腎不全症状を呈し,腎生検ではびまん性増殖性糸球体腎炎の像を呈していた.透析開始時のs-creatinineは死亡群では7.6~9.8mg/dl,離脱群では1.5~1.7mg/dlであつた. 6例の透析導入理由は要約すると, (1)腎生検所見より早急に大量のsteroid投与が要求され,その効果発現までの期間,急速進行性の腎不全症状を透析で緩和するため, (2)副作用のためsteroidの大量投与が不可能な場合に,透析併用により腎不全症状を緩和しながら可及的大量のsteroid使用を計るため, (3)高血圧脳症や心不全などを併発して早急に透析が要求されたため,などである. creatinine clearanceは離脱群でのみ透析開始後改善が認められた.透析施行中のsteroid使用量は離脱群ではprednisolone 40~60mg/日以上であつたが,死亡群では少量であつた.以上の如く, SLEの腎不全ではs-creatinineが比較的低値でも,臨床症状や腎生検所見などから透析の適応となる場合があり,かかる例では透析を補助手段として用いながらsteroidの大量投与を行ない, SLEの病勢の寛解および腎機能の回復をまち積極的に離脱を試みることが必要であると思われる.
  • 1978 年 67 巻 7 号 p. 782
    発行日: 1978年
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
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