マラソン中に発症した21才の健康なるスポーツマンの日射病の1症例である.発症は昭和52年9月18日,午後1時20分,晴天.気温25°C,湿度59~63%.約12km走つた地点で意識消失した.発汗多量,腋窩体温39.4°C,血圧90/52mmHg.半昏睡1時間,せん妄,間代性痙〓,嘔吐が約数時間続いた.発症直後,洞頻脈. 2日目の検査成績:赤血球660×10
4,白血球13500,尿糖(〓),尿蛋白(〓),尿沈渣顆粒円柱(+).血清GOT, GPT, LDH, CPKの上昇あり.心電図V
2~6にST上昇出現.経過:心電図所見および血清酵素,ビリルビン値は, 4日目をピークに約2週間にてほぼ正常化した.酵素最高値LDH 4960U, GOT 1870U, GPT 1500U以上, CPK l038U. LDHアイソザイム分画では, V型, I型, II型の順に増加していた.腎濃縮力の低下は,約1カ月続いた.発症後6週間目より運動負荷を開始したが変化を認めなかつた.日射病は,全身臓器障害である.高温下のマラソンは,熱蓄積と放散障害により,容易に過剰体温となり極めて危険である.
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