日本内科学会雑誌
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69 巻, 1 号
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  • 木村 武
    1980 年 69 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 1980/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    脳血管障害死亡率の高率なる東北地方農民の高血圧成因究明と予防対策として,血圧研究を開始して30年になつた.その主なる結果を示す. (1)当初は主食生産を基盤とする農山漁村の地域差によつて高血圧検出率,脳卒中死亡率に差異を認めた. (2)白米食の農村では雑穀食の山村に比較してVB2,パントテン酸,コリンなどの不足を認めた. (3)経済復興,白米配給とともに漸次地域差は縮小した. (4)室根村住民の血圧別長期観察により,高血圧群に脳,心ともに死亡率が高率なることを認めた. (5)浄法寺町40才以上の住民の高血圧を主とした健康管理の長期追跡により,死亡率と発症率に明らかなる変化を認め延命効果が得られた. (6)高血圧,糖尿病,高脂血症の危険因子を追求して,これら因子の複合している場合のリスクが高率となることを明らかにした. (7)岩手県全域と全国統計とについて最近30年間の比較により脳卒中死亡率が上位に,心死および悪性新生物はそれぞれ中位,下位にあることを確かめた. (8)栄養調査を行なつた30年前と現在との比較によつて三地域とも食塩量は減少傾向にあるが,脂肪,蛋白量はともに増加を認めた. (9)県民を背景とする当科の入院患者の統計分析により脳出血減少,脳硬塞増加,心筋硬塞増加の傾向が明らかに認められた.これは全県下最近10年間の統計と全く一致した結果であつた. (10)脳卒中,心筋硬塞患者の死亡の危験因子として高血圧を入院愚者について分析してその合併率を再確認した.
  • 伴野 祥一, 関 顕, 今鷹 耕二, 藤井 潤, 村田 和彦
    1980 年 69 巻 1 号 p. 12-18
    発行日: 1980/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    心筋硬塞を除いた30~84才の100例(男64例,女36例)につき,仰臥位,右側臥位,左側臥位,坐位における呼気時の標準12誘導心電図の記録を行ない,仰臥位との比較検討を行なつた. 20例につき胸部誘導のR波の高さを測定し,仰臥位の高さを100%とすると,左側臥位におけるRv6の変化が最大であり,平均204%となつた.そこでRv6の体位による変化を, 100例について同様の方法にて検討したところ,右側臥位で100.6±20.0% (標準偏差),左側臥位で180.1±56.3%,坐位で94.8±19.4%の変化を示し,左側臥位では150%以上となつたものが74例あり,最も大きな変化を示した. Tv6についても同様にして検討すると,右側臥位で94.3±40.1%,左側臥位で160.2±61.3%,坐位で93.6±33.5%の変化を示した.左側臥位でのRv6の変化とTv6の変化との間には有意の相関がみられたが,相関係数は+0.31と小さかつた.心電図記録と同条件下で撮影した胸部X線写真で体位による心臓の偏位の程度,並びに左横隔膜の高さの変化の程度とRv6の変化の程度とを比較したが,有意の相関はみられなかつた.体位変換によりT波の逆転したもの8例, STの著明に変化したもの2例があつた.移行帯は体位交換では変化しないものが多かつた.平均電気軸は,右側臥位,左側臥位では右方に,坐位では左方に動くものが多かつた.
  • 佐久間 久一, 三浦 幸雄, 安達 真樹, 富岡 洋, 小林 清, 吉永 馨
    1980 年 69 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 1980/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    1)血漿カテコールアミン(CA)濃度は多くの因子によつて影響を受けるが,一定の条件設定によつて再現性のある安定した値が得られた.正常対照者における血漿ノルエピネフリン(NE)濃度は加令とともに漸増傾向を示したが, 20才台から40才台の各年代間では推計学的に有意な差は認められなかつた. 2) 20才から49才までの各種高血圧患者において,安静時の血漿NE濃度は,褐色細胞腫例で著増し,悪性高血圧例の全例,慢性腎不全例の36%,良性本態性高血圧例の35%,腎血管性高血圧例の20%の症例で正常上限以上の高値を示した.一方,原発性および特発性アルドステロン症(PA+IHA)例の血漿NE濃度は正常範囲内の値を示した. 3)正常対照,良性本態性高血圧,腎血管性高血圧群における立位時の血漿NE濃度は,安静時の血漿NE濃度と比較し, 130~150%程度の増加率を示し,各群間では差を認めなかつた.一方, PA+IHAでは,その増加率は224%と他の群に比べ過大な反応が認められた.以上のように,血漿CA濃度を指標として各種高血圧疾患の交感神経機能をみた場合,疾患別特異性が認められ,いずれの高血圧群においても抑制傾向はなく,むしろ上昇傾向にあることが示唆された.しかし,同一疾患の患者群でも血漿CA濃度の分布は輻広く,交感神経系の病態生理学的意義は,各疾患における病型や重症度および合併症の有無などによつて一様ではないと考えられた.
  • 星山 眞理, 中島 寛, 荒井 奥弘, 湯浅 龍彦, 白川 健一
    1980 年 69 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 1980/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    内分泌機能異常に神経・筋症状が合併することはしばし認められるが,原因は未解明である.著者らは, myotonic dystrophy (MD)と共通点を多く認める家族性慢性甲状腺炎の4同胞例を経験したので報告する.症例1 (38才,女)および症例2 (46才,女):慢性甲状腺炎による甲状腺機能低下症と上腕二頭筋にmounding現象を認めた.乾燥甲状腺末投与後,粘液水腫と筋症状の改善を認めた.症例3 (33才,男):慢性甲状腺炎による甲状腺機能低下なし.下肢遠位筋に筋萎縮,インポテンツと睾丸萎縮を認めた.症例4 (40才,女):甲状腺機能正常,筋症状なし.以上の所見に加えてほぼ全例に,低身長,知能低下,若年性白内障,交代性眼振,前頭部脱毛とHLA検索でBW-35を認めた.慢性甲状腺炎のみでは,これら多彩な神経内分泌症状が説明しきれないことより,若年発症型甲状腺機能低下症の潜行状態または臨床的に筋萎縮,筋緊張,知能低下,前頭部脱毛,白内障,多腺性内分泌障害,家族内発生をすることが知られているMDとの鑑別が重要と考えられる.若年型発症甲状腺機能低下症のeuthyroidの段階でこのような多彩な症状の報告はない.筋電図,筋生検所見からMDと鑑別されたが,他の多彩な症状は, Trediaらも強調したようにMDとの共通性に注目すべきと思われる.
  • 臨床,組織学的,蛍光抗体法による検索
    鍋島 健治, 大鶴 昇, 宝来 善次, 鷺野 英麿
    1980 年 69 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 1980/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    側頭動脈炎は本邦では比較的希な疾患で,その成因については免疫学的機序が関与しているといわれているが,症例報告も少なく充分判明していない.今回,筆者らは臨床像と側頭動脈生検像より本症と診断しえた症例について検索し,特に蛍光抗体法により,病変血管壁にimmunoglobulinsやcomplement factorsの存在を証明し得たので報告する.症例は67才,男性で,発熱両側頭部痛,左鼻側半盲で来院し,検査にて血沈値の著明な亢進, CRP強陽性,血清α2, γ-globulin値やfibrinogen値の増加等を示し,側頭動脈生検像で,典型的なgiant-cell arteritisの像を呈した.この病変動脈壁の蛍光抗体法による検索で,抗IgGが“cytoplasmic pattern”として,また他のimmunoglobulinsやcomplement factorsに対する抗体は“linear pattern”として観察された.治療は高度の病変動脈摘出後に副腎皮質ホルモン薬(プレドニゾロン40mg/日)の投与で,臨床症状や検査値は著明に改善し,視野欠損も著しく縮小した.これらの事実から,側頭動脈炎の病因として,何らかの免疫異常が関連していると推定される.
  • 山本 英樹, 三輪 梅夫, 坂戸 俊一, 森 清男, 長谷田 祐一, 吉野 公明, 佐藤 隆, 小野江 為久, 河村 洋一, 大家 他喜雄, ...
    1980 年 69 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 1980/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺・胸郭系に異常がなく,呼吸中枢の感受性が低下したために低換気をきたす原発性肺胞低換気症候群は, 1955年Rattoらにより記載され, 1974年Sollidayらにより中枢神経疾患あるいはその既往歴があるものをcentral alveolar hypoventilationとし,原因不明のものを原発姓肺胞低換気症候群に分類されており,チアノーゼ,意識障害,多血症,頭痛,呼吸困難,肺高血圧症,うつ血性心不全などを主要症状とし,血液ガス分析上高炭酸ガス血症,低酸素血症を示す.本症の報告例は少なく,本邦では西島らの1例,横山らの1例の計2例にすぎない.我々は脳炎,中枢神経疾患の既往を認めない55才の女性で,糖尿病,慢性肝炎の精査のため入院し,血液ガス所見から本症を疑い呼吸機能検査,炭酸ガス負荷試験により診断を確定した本症の1例を経験した.入院時自覚症状は口渇,全身倦怠感,頭重感のみでチアノーゼ,浮腫,意識障害,呼吸困難などの症状を示さず,血液ガス分析でpH 7.32, PaO2 70.3mmHg, PaCO2 66.6mmHgと著明な高炭酸ガス血症を示していた.呼吸機能検査成績は努力肺活量, 1秒率,最大換気量,拡散能のいずれも正常範囲内であつた. 3分間の過換気によりPaCO2は51.7mmHgから28.3mmHgへと著明に低下し, PaO2は74.3mmHgから108.4mmHgへと上昇し,血液ガス異常が換気機能障害に起因しないことが証明され, 5%炭酸ガス吸入に対する換気応答を欠くことから原発性肺胞低換気症候群と診断された.
  • 皮膚,末梢神経のcongo-red陽性物質について
    岩本 奈津, 塚田 直敬, 井上 憲昭, 小口 喜三夫, 柳沢 信夫, 塚越 広
    1980 年 69 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 1980/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    37才の女性で色素沈着,剛毛,浮腫,多発神経炎を伴つたIgA (λ型)骨髄腫の1例を経験した.本例はprednisoloneとcyclophosphamideの治療により-時症状の軽快をみたが,再燃をくり返し,約2年の経過で死亡した.生検および剖検材料の皮膚と末梢神経組織でIgA, β1Cの共存したcon-go-red陽性の沈着物質を認め,さらに剖検で骨髄腫を確認した.本例のように多彩な症状をもつた症候群では,形質細胞腫の治療により,皮膚,神経症状を始めとするさまざまな症状の軽快が認められることから,免疫グロブリン異常と本症候群の関連が注目されてきた.今回認められた沈着物質は免疫グロブリンと補体をもつことから, immune complexの可能性も考えられたが,沈着部位の炎症所見に乏しく, immune complexというには問題が多い.免疫グロブリンと補体が共存し, congo-red陽性であるという組織化学的性状からはamyloidに近い物質と考えたが,電子顕微鏡的にarnyloid fibrilは確認できず,この沈着物質についての明確な結論は得られなかつた.本症候群においてcongo-red陽性の沈着物質は認められておらず,我々が認めた沈着物質は本例の成因を考える上で興味ある所見である.また骨髄(Th11)は組織学的に典型的な骨髄細胞のcell clusterを作つているが,むしろその浸潤は孤立性に近い点が特徴的であつた.
  • 梅村 敏, 塩之入 洋, 小林 公也, 瀬底 正司, 栃久保 修, 日隈 菊比児, 博 定, 金子 好宏
    1980 年 69 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 1980/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    血圧,心電図所見,血中catecholamine (CA)が周期的変動を示した発作型褐色細胞腫の1例を報告する.症例は発作型高血圧を主訴とした48才,男.発作の血圧上昇時(BP 250/150)には頭痛・悪心・胸痛を伴い,血中norepinephrine (NE) 5770pg/ml (非発作時475), epinephrine (E) 16170pg/ml (非発作時310)に上昇,血圧下降時(BP l00/50)には症状改善し,血中NE 1900pg/ml, E 5460pg/mlに低下し,血圧値と血中CAは約15分周期で平行する変動を認めた.血圧上昇時には血漿renin活性6.75ng/ml/h,血漿aldosterone 20ng/dl,血漿cortisol 19.5μg/dlで,いずれも高値であつた.血圧変動にほぼ一致して心電図上ST-T,脈拍の周期的変動を認めた.なお尿中CAも高値で,後腹膜気体造影断層法で右副腎部に直径3.0cmの腫瘤陰影を認め,右副腎静脈造影でもほぼ同大の静脈圧排像を認めた.さらに右副腎静脈血中CAも高値を示し,右褐色細胞腫と診断.手術により12gの比較的小さい腫瘍を含む右副腎を摘出した.電顕組織学的にA cell優位の褐色細胞腫であり,腫瘍内CAもNE 0.37mg/g wet tissue, E 1.35mg/g wet tissueとE濃度がより高値であつた.以上,本症例では,発作時,腫瘍からのCA分泌が周期的に変化し,血圧,心電図所見もこれに平行して周期的に変動したが,その詳細な機序は明らかでない.現在までに報告された周期的血圧変動を示したCA分泌腫瘍9例についても,文献的に考察を加えて報告した.
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