日本内科学会雑誌
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69 巻, 11 号
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  • 松前 重義
    1980 年 69 巻 11 号 p. 1403-1409
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 三上 理一郎
    1980 年 69 巻 11 号 p. 1410-1423
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺の聴診は,多くの呼吸器疾患のプライマリケアに際して,最も早くかつ簡単に情報を与えてくれる.しかし聴診用語の混乱と耳で聞く音の不確実性などの理由から,肺聴診の有用性は従来軽視されてきた.ところが最近,間質性肺炎・肺線維症や石綿肺に関する認識を研究の発端として,心音図にならつて“肺音図”への試みが漸く登場してきた.一つは米国MurphyによるTime-Expanded Wave-Form Analysisであり,わが国では工藤・渋谷・三上らによるサウンドスペクトログラフを用いた新しい肺音図法の開発である.肺音計測技術の開発は,肺音の自動識別へと発展しつつある.臨床応用の範囲として, X線診断が有効でない呼吸器疾患の診断,局所換気機能測定および呼吸モニターなどが考えられている.肺音の発生機序はLaennecの時代からの難問である.しかし肺音に関する世界の研究は急ピッチに進められており,近い将来,臨床的応用の可能な肺音計の実現とともに,肺音の発生機序の解明も進展するであろう,いずれにしても,肺音に関する研究は呼吸器臨床医と物理工学系の専門家との共同研究によつて発展されるものである.世界における肺音学が,毎年開かれる国際肺音学会によつて進歩しつつある時,わが国において古くから用いられてきた肺聴診の用語,とくに湿性・乾性ラ音はまず検討されるべきであろう.
  • 小林 公也
    1980 年 69 巻 11 号 p. 1424-1431
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肝はcatechol-O-methyltransferase, monoamine oxidaseを多量に含み,循環血中のcatecholamine (CA)の不活化に一定の役割を演じていると考えられる.今回ヒトの肝での血中CAの代謝率を調べる目的で,肝静脈血と動脈血を同時採血し,おのおのの血中CA値を測定した.対象は高血圧症を含む種々の心疾患患者38例で,血中CA値はRenzini-三浦変法によりTHI法で測定した.肝のCA代謝率は, (動脈血CA値-肝静脈血CA値)⁄動脈血CA値×100(%)で求め,さらに心内圧,熱希釈法で心拍出量, ICG法で肝血流量を同時に測定した.症例を肝正常群28例,うつ血性肝腫大群8例,褐色細胞腫2例に分け検討した.肝のCA代謝率は肝正常群ではnorepinephrine (NE) 71.3±2.3 (SE)%, epinephrine (E) 80.8±2.1%であり,肝腫大群ではNE33.2±4.4%, E30.9±7.8%と著明に低下していた.肝のNEおよびE代謝率は肺動脈楔入平均圧,肺動脈拡張末期圧とおのおの負の相関を示し,肝のCA代謝率は心不全の悪化にほぼ比例して低下すると考えられた.褐色細胞腫患者では高い血中CA値を示す一方,肝のCA代謝率は正常で多量のCAが不活化されており,正常の肝でのCA代謝の容量は非常に大きいと考えられた.循環血中のCA濃度は体内でのCAの分泌量と消失量との総和であり,うつ血性心不全患者における血中CA値にも,肝のCA代謝率の低下が一部関与している可能性が考えられる.
  • 本間 康彦, 関塚 紳江, 宮崎 利久, 矢野 芳和, 入江 昇, 原 勉, 竹内 一郎, 中谷 矩章, 渡部 昭, 五島 雄一郎
    1980 年 69 巻 11 号 p. 1432-1438
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    経口コレステロール負荷に対する個人の反応性を検討する目的で,健常者23名にコレステロール750mg/日, 2週間投与し,血清リポ蛋白の変動を観察した. VLDLは超遠心法, HDLはヘパリン-MnCl2による沈降法で採取し, VLDL-, HDL-コレステロール値をオートアナライザーで測定した. LDL-コレステロール値は,血清総コレステロール値よりVLDL-, HDL-コレステロール値を引いて求めた. HDLを比重1.125でHDL2とHDL3に分画し,それらの変化も合わせ検討した.コレステロール負荷により,血清総コレステロール値は負荷前176±31mg/dlから負荷後2週間目に185±33mg/dlに, LDL-コレステロール値は105±25mg/dlから111±28mg/dlに, HDL-コレステロール値は57±14mg/dlから64±17mg/dlにと軽度上昇したが,全て統計学的に有意ではなかつた. HDL2-コレステロール値は24±10mg/dlから35±13mg/dlと有意に上昇(P<0.01)したが, HDL3-コレステール値はほとんど変化を認めなかつた.動脈硬化指数(LDL-コレステロール/HDL-コレステロール)の変化により, 3群に分類すると,動脈硬化指数上昇群35%(男40%,女25%),不変群22%(男20%,女25%),低下群43%(男40%,女50%)となり,経口コレステロール負荷に対する血清リポ蛋白の変動は個人差が大きく,コレステロール負荷に対する個人の反応性を知ることは,臨床的に重要であると考えられた.
  • 瀬戸 信二, 賀来 俊, 品川 達夫, 松本 頼明, 土井 豊, 田崎 慎介, 村山 雅恵, 青井 渉, 倉持 衛夫, 橋場 邦武
    1980 年 69 巻 11 号 p. 1439-1446
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Captopril (C)は経口投与が可能なアンジオテンシンI変換酵素抑制薬であり,降圧薬としても広く臨床に用いられつつある.我々は,塩分摂取制限のない状態で本態性高血圧症(EH) 22例と健常人10例にC 25mgの1回投与を行ない,血圧,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系などの変動を観察して, Cの急性効果を検討し次の結果を得た. (1)血圧は健常人ではC投与後も不変であつたが, EHでは低血漿レニン活性(PRA)例も含めて22例中17例で有意の低下を示し,降圧の程度と投与前PRAとの間には弱い有意の相関(r=-0.42, P<0.05)を認めた.しかし,低PRA例の一部にも著明な血圧低下をみる例があつた. (2)脈拍数は両群ともに変動を認めなかつた. (3) PRAは両群ともに低PRA例を除きC投与後に上昇を示し,投与前後のPRA間に高い相関を示した(EH群r=0.73 P<0.001,健常群r=0.81 P<0.01). (4)血漿アルドステロン濃度はEH群では有意の低下を示したが,健常群では低下傾向をみるも有意の低下は示さなかつた. (5)入院のみで正常血圧となつたEH 11例でもC投与後に10例で有意の血圧低下を示し,血圧正常の健常人との間に明らかな反応の相違が認められた.以上より, Cの降圧作用はRAA系の抑制のみでは説明し難く, Cが有すると考えられるブラディキニン不活化の抑制作用も関与している可能性が考えられた.また, EHと健常人の間には,初期の段階よりRAA系を含む血圧維持機構上に相違のあることが示唆された.
  • 佐藤 徳太郎, 斉藤 和子, 井上 美知子, 伊藤 正秋, 国分 勝, 斉藤 毅, 吉永 馨
    1980 年 69 巻 11 号 p. 1447-1451
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    年令と性をマツチさせた糖尿病および非糖尿病各19例の剖検例を選び,その胸部大動脈のコレステロールとヒドロキシプロリン含量を,腎糸球体についてはヒドロキシプロリンおよびヒドロキシリジン組成を灘定した.動脈硬化および糖尿病性腎症において変動するこれらの成分の分析値を比較検討することによつて,糖尿病における動脈硬化と糖尿病性腎症との間に関連のあることを示唆する次のような結果が得られた. (1) 60才未満の糖尿病の剖検例では, 60才以上の群に比べて高度の糖尿病性腎症が高頻度にみられた.動脈硬化も非糖尿病群とは反対に, 60才未満の剖検例において強い変化が認められた. (2) 60才未満の糖尿病剖検例では,糖尿病性腎症で増加する腎糸球体のヒドロキシプロリンやヒドロキシリジン含量が多く,動脈硬化で上昇する動脈壁のコレステロールやヒドロキシリジンの含量も非糖尿病剖検例とは反対に, 60才未満群で高値であつた. (3) plaque形成の著明な糖尿病例において,糖尿病性腎症のある場合には腎症を認めない場合と比較して,大動脈壁のコレステロールやヒドロキシプロリン含量が多かつた, (4)非糖尿病群では,動脈壁ヒドロキシプロリン含量と腎糸球体ヒドロキシプロリン,またはヒドロキシリジン組成とが負の相関を示すのに対して,糖尿病群では正の相関が認められた.
  • 阿部 隆三, 丸浜 喜亮, 奥口 文宣, 及川 真一, 柿崎 正栄, 鈴木 勃志, 後藤 由夫
    1980 年 69 巻 11 号 p. 1452-1457
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    30才,男性で5~6才頃から黄色腫を有し,著明な高コレステロール血症を呈した症例の家族検診,および培養線維芽細胞の検討成績から家族性高コレステロール血症ホモ接合体と診断した症例を報告する.家族検診の脂質検査では, 11例中9例に高コレステロール血症がみられ,そのうち, 8例にIIa型高脂血症がみられた.また,本症例の弟に著明な黄色腫が認められた.一方,心電図所見では, 1例に虚血性変化がみられた.培養線維芽細胞の検討では,本症のアセテートからステロールへの合成能が,正常人培養線維芽細胞に比べ約18倍高い.また,本症例細胞のHMG-CoA reductase活性は,正常人細胞と比べ約15倍高い.さらに,正常人細胞では,培養液をリポ蛋白deficient mediumにすると,細胞内HMG CoA-reductaseの酵素誘導がおこり増加するが,本症例では全く誘導がみられない.以上の結果から, LDLレセプターを直接測定していないが, Goldsteinらの提唱しているLDLレセプターの完全欠損症,すなわち,家族性高コレステロール血症ホモ接合体の症例であることを証明しえた.本症例の治療成績では,クロフィブレートやコレスチポールに全く抵抗を示し,他の強力な治療法を行なう必要があると考えられる.
  • 古賀 暉人, 江畑 浩之, 谷川 久一, 山方 勇次
    1980 年 69 巻 11 号 p. 1458-1462
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Sjögren症候群の発症の機序を明らかにする上で遺伝的背景を知る事は重要であり,一卵性双生児例は貴重である.我々は多彩な臨床症状の酷似するSjögren症候群の一卵性双生児姉妹例を経験したので報告する.第1例は29才, 3児の母. 8才頃より,耳下腺腫が出現. 20才頃より,口渇,多尿,口内乾燥,口角炎,眼症状,虫歯,皮膚乾燥,下肢紫斑,多発性関節炎,レイノー現象,尿細管性アシドーシス, RA反応陽性,抗核抗体陽性,高γグロブリン血症と多彩な所見がみられた.耳下腺造影は, “apple tree pattern”を呈した.腎機能検査では,尿濃縮力の低下と酸性化障害があり,アルブミン尿は認めなかつたが尿中β2ミクログロブリンは著明な高値を呈した.腎生検では,糸球体の変化は乏しく,尿細管の破壊と間質には円形細胞の浸潤がみられた.下肢紫斑部の生検所見は血管周囲炎であつた.第2例は,二卵性双生児の母,下肢紫斑,レイノー現象が無い点が第1例と異なるが発症時期,臨床症状,経過とも酷似している. HLAは両者とも, AW 24, A 26, BW 35 BW 61であつた.なお,家族の他の者は, Slögren症候群を思わせる所見は認めなかつた.
  • 畠山 牧男, 山本 邦宏, 折笠 哲男, 高井 孝二, 斉藤 公司, 斉藤 寿一, 葛谷 健, 吉田 尚, 内藤 誠
    1980 年 69 巻 11 号 p. 1463-1468
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    長期にわたる甲状腺機能低下症に続発した下垂体腫大によるchiasmal syndromeとして,視野異常をきたした2例を報告する. 2例ともT4補充療法により視野の改善を認めた.うち1例は補充療法をはじめてから視野異常が出現し,経過中さらに一時的に増悪を認めたが, T4補充量を増すことにより軽快した.今日まで,長期の甲状腺機能低下症に続発した下垂体腫によるchiasmal syndromeとして視野異常をきたした例は,文献的に9例報告されている.甲状腺ホルモン補充療法をうけた6例中, 4例は改善を示し, 2例は経過中一過性の視野の増悪をきたし手術を受けている.その原因として,少量の甲状腺ホルモンは, TSHの分泌は抑制するが合成は抑制せず,下垂体TSH含量が増し,従つて下垂体の体積の増大をきたす可能性が考えられる.甲状腺機能低下症に続発する視野異常に対する治療として甲状腺ホルモン補充療法が第1に勧められる.視力・視野の変化に注意しながら,患者の状態の許す限りすみやかに,血清TSH値を完全に抑制する様,甲状腺ホルモンを充分量投与すべきであると思われる.
  • 玉田 和彦, 深瀬 正晃, 筒泉 正春, 門脇 誠三, 千葉 勉, 岸原 道三, 岩崎 美子, 藤田 拓男, 岡田 聡
    1980 年 69 巻 11 号 p. 1474-1484
    発行日: 1980/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    甲状腺機能低下症を伴つた副甲状腺癌による副甲状腺機能亢進症の1例を経験し,本症の診断および随伴する内分泌機能異常について報告する.本症例の副甲状腺腫瘍の部位発見には頚部CTscanを行ない,本法が有効であつた.さらに副甲状腺機能亢進症の局在部位診断のために選択的甲状腺静脈採血法を行ない,各部位での血中PTHを生物学的活性部位を反映すると考えられるヒトの(1~34) PTH (Niall Pottsら)を用いたN-PTHのradioimmunoassayにて測定したが、従来のC-PTH測定法に比し有効であつた.一般に高Caの状態では,副甲状腺ホルモン以外の各種ホルモン分泌が亢進するといわれている.しかし,高Ca血症を伴う原発性副甲状腺機能亢進症において各種内分泌機能を検索した報告は少ない.今回は本症に術前後の膵内分泌機能,下垂体機能を検索し興味ある結果を得た.すなわち,術前の糖負荷試験により血中insulinは二相性過剰反応を示し,血中glucagonは奇異反応が認められた.術後一過性の低Ca血症を示し一方では血中PTHは依然と高値であつたが,糖負荷試験でのinsulinの初期反応が改善した.この結果から術前のinsulinの高反応は高Ca血症に起因するものと解釈された. TRH負荷に対するprolactinは術前,術後共過剰反応を示した.これは甲状腺機能低下症によるものと考えられ,血清Caの高値とは無関係であると思われた.
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