日本内科学会雑誌
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69 巻, 3 号
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  • 海老原 昭夫
    1980 年 69 巻 3 号 p. 297-312
    発行日: 1980/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本格的な降圧薬療法が開始されて約30年になるが,今や高血圧の治療においてはβ遮断薬が第1選択あるいは第2選択の薬として一般に広く用いられるようになつた.現在,科学的薬物療法の基礎を与えるものとして最も重要視されているのは,臨床薬理学的研究であるが, β遮断薬は共通に有するβ遮断作用の他に,しばしば膜安定化作用,内因性交感神経刺激作用,中枢抑制作用などの附随的薬理作用を有し,これらがさまざまに臨床効果に影響してくることが認められている. β遮断薬は一般に腸管からの吸収は良好で,血中濃度は1~3時間でピークに達する. β遮断薬の中には肝初回通過効果が大きく,生体利用率が比較的小で,しかも個人差の大なるものがある.生体内での分布は速やかで分布容量は大であり,中には中枢に移行し中枢抑制作用を示すものがある.一般に生体からの消失は速やかで,消失半減期は2~4時間であり,尿中排泄はさまざまである.血中濃度とβ遮断効果は大体平行するが,その他の薬理作用とは必ずしも平行しない. β遮断薬の降圧効果については,単独投与では比較的有効率が小であるが,別尿薬や血管拡張薬との併用で大となる.その降圧機序は必ずしも明らかではないが,性機能障害や起立性障害がほとんどみられないこと,とくにこれによつて心筋硬塞の発生頻度を低下させ得る可能性があることなどがすぐれた特徴とされている.今後,臓器選択性を有するもの,あるいはα遮断作用を併せもつものなどの登場が予定されており,基礎的ならびに臨床的研究の一層の発展が期待される.
  • 田中 延善
    1980 年 69 巻 3 号 p. 313-320
    発行日: 1980/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ヒト下垂体前葉および異所性ACTH産生腫瘍における免疫学的β-MSHの検討を,ゲル〓過法に加えて等電点電気泳動法を用いて行なつた.ヒト下垂体前葉3例と異所性ACTH産生腫瘍5例の組織を対象とし,抽出は沸騰水法にて行なつた.測定にはβ-MSHとACTHのradioimmunoassayを用いた.ゲル〓過は, Sephadex G-50 (fine)カラムを用いて行ない,得られたγ-LPHおよびβ-MSHの分画について等電点電気泳動を行なつた.ヒト下垂体前葉のゲル〓過では, 3例ともにβ-LPHとγ-LPHに相当する分画がみられたのに対し,腫瘍5例中4例ではβ-LPH分画はほとんどみられず, γ-LPH分画の大きなピークを認めたことより,腫瘍でのγ-LPH優位を占めすと考えられた.これらγ-LPH分画は,等電点電気泳動を行なうと,下垂体および腫瘍ともにほとんど単一のピークであり,その等電点はいずれも同じpH4.5であつた.一方,腫瘍のゲル〓過でのみ認められたβ-MSH分画は,腫瘍によりその大きさが異なつており, 1-22βh-MSHと1-18βp-MSHに相当する2種類が認められた. 1-22βh-MSHに相当するものの等電点は, pH7.0で, 1-18βp-MSHに相当するものの等電点は, PH5.5であつた.以上のように,ヒト下垂体前葉および腫瘍における免疫学的β-MSH活性のほとんどが, LPHの状態で存在し, γ-LPHに関しては,その大さと等電点から,下垂体と腫瘍との間に差がないことを明らかにした.
  • その組織分類と機能との関連
    水上 勇治, 松原 藤継
    1980 年 69 巻 3 号 p. 321-329
    発行日: 1980/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    慢性甲状腺炎の組織学的分類としてWoolnerによる分類が繁用されているが,これら各組織型とTRHテストを含む詳細な甲状腺機能との相関については,十分な検討が行なわれていない.そこで組織学的に慢性甲状腺炎, Graves病と診断された393例の生検材料より,新たな組織分類を作製し, TRHテストを含む甲状腺機能と各組織型間の関連について検討した.なおこれらの中には慢性甲状腺炎の初期像と見られる小児例も多数含まれ,興味ある結果が得られた. A型は若年者から高令者にわたつて見られ,その大部分は機能低下傾向を示す.特に境界域から顕性の機能低下例が多く,加令と共に間質のfibrosisが進行する. B型は,その多彩な組織所見に対応して,機能亢進,正常,低下例が混在する.これらB型例における機能状態は,ほぼ構成上皮-特にhyperplastic follicleとoxyphilic-microfollicleの割合により大きく影響をうける. hyperplastic follicleは機能低下傾向と共に著減し,又加令と共に漸減する.一方oxyphilic-microfollicleは機能低下傾向と共に漸増する. C型は従来より機能は正常に保たれるとされてきたが,今回の検討では,全体の約10%にTRHに過剰に反応する潜在性機低下例が見られ,これらはCI→CIIIと細胞浸潤域の増大に伴つて増加する. D型は一様に増殖性変化を示すGraves病様病変であり,全例機能亢進を示す.しかし長期間の抗甲状腺剤投与により,しばしば組織像の変化を招き,組織学的にB型機能亢進例との鑑別が困難である.
  • 森 清男, 小野江 為久, 吉野 公明, 大家 他喜雄, 山本 英樹
    1980 年 69 巻 3 号 p. 341-346
    発行日: 1980/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    59才にて生存せるECD (心内膜床欠損症)の1例を報告する. 50才以上のECDの長期生存者の報告が少ないこと,その特異な奇形のため診断上にも種々の問題点があり,これらについて考案する. 8年来の動悸,労作時の呼吸困難にて来院した.胸骨左縁第3肋間に最強点を有するLevine 4/6度の収縮期雑音と, II音肺動脈成分の亢進が認められた.胸部X線像では心拡大(CTR 66%)と肺動脈の拡張蛇行がみられ,入院時の心電図は心房細動,右室負荷の所見であつた.心房細動は,強心薬,利尿薬などの治療後I度房室ブロックを伴う洞調律となつた. MモードUCGでは,心室中隔の奇異性運動,僧帽弁が心室中隔へ入り込む像がとらえられ,心断層図では,心房一次中隔欠損,僧帽弁の変形,亀裂がとらえられ,診断上有用であつた.観血的心カテーテル検査の所見と合わせ,心室中隔欠損,三尖弁亀裂のない不完全型ECDであつた. ECDは幼少時にてほとんどの例が死亡するが,それは,僧帽弁逆流が大量であること,短絡量が多く呼吸器感染に罹患し易いなどの因子が挙げられる.一方,高令者においては,不整脈死が多いとされる.本例では,僧帽弁逆流が少量であること, I度房室ブロックはあるが洞調律を保ち得ていることなどが,長期生存ならしめているものと考えられる.今後,不整脈,心不全,感染症などの合併症に注意し,観察してゆく予定である.
  • 村瀬 弘, 小寺 実, 内村 功, 島本 達夫, 綿引 定清, 前沢 秀憲
    1980 年 69 巻 3 号 p. 347-353
    発行日: 1980/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    髓膜炎および多発神経根炎症状を呈したサルコイドージス(サ症)の1例を報告するとともに,本邦神経サ症例を文献で検討し,本例が極めて希な症例であることを示した.症例は36才,女性.約5カ月間微熱が持続していたが,昭和53年4月16日から頭痛,悪心,傾眠傾向, 20日から全身の不定の疼痛,下肢にはじまる上行性の運動麻痺が出現, 27日には起立不能となり, 5月11日に当科に入院した.入院時,発熱(37.2°C)の他は理学的所見,一般検査に特別な異常なく,神経学的には,髄膜刺激症状,右第VII, IX, X脳神経障害,両側第VIII脳神経障害,四肢でび漫性の筋萎縮を伴う対称性の筋力低下,腱反射低下を認めた.髄液は初圧70mmH2O,細胞数9/mm3,蛋白187ng/dl,グロブリン反応陽性,糖39mg/ml,筋電図では神経原性変化,腓骨神経伝導速度低下の所見を得た.画側肺門リンパ節腫脹,耳下腺および斜角筋リンパ節生検でサ肉芽腫を証明,細胞免疫低下等の所見から,神経サ症と診断した. prednisoloneme経口投与により,著明改善し10月25日杖歩行で退院.文献的には, 1978年までに本邦で86例の神経サ症の報告があり,うち中枢神経障害は25例(29.1%),脳神経障害は61例(70.9%),脊髄神経障害は10例(11.6%)に認められた.しかし,臨床的に明確な髄膜炎症状または多発神経根炎症状を呈した症例の報告は極めて少なく,本症例の臨床像は希なものと考え報告した.
  • 内田 立身, 竹沢 将俊, 阿部 裕光, 木村 秀夫, 田中 鉄五郎, 松田 信, 秋月 健, 吉田 博, 刈米 重夫
    1980 年 69 巻 3 号 p. 354-360
    発行日: 1980/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Pyroglobulin血症を有し,多彩な臨床症状で経過して死亡したIgG(κ)型多発性骨髄腫を報告する.症例は, 54才主婦.全身倦怠感,動悸などを主訴に入院, IgG(κ)型多発性骨髄腫と,血清補体結合反応のさいの56°C30分の血清非働化で白濁凝固するpyroglobulinの存在が見出された.入院7ヵ月でmelphalan, prednisolone治療により自覚症状は軽減して,外来にて経過を観察したが, 14カ月目に貧血,鼻出血,耳鳴をきたして再入院,そのさい肝脾腫が認められた. melphalan, prednisolone治療の後より,頭痛,項部硬直,髄液の細胞増多など髄膜炎症状をきたし, 15ヵ月目に後遺症なく回復した. 18ヵ月目に患者は腰痛と下肢の脱力感をきたし, paraplegia,尿失禁,など脊髄横断症状を呈し,化学療法,放射線照射にも反応しなかつた. 17ヵ月目に肝脾腫が著明となり, 18ヵ月には,末梢血形質細胞は10000以上に増加,気管支肺炎のため死亡した.骨髄は全経過を通じてdry tapであった.剖検で,肋骨,脊椎の腫瘤形成と骨髄腫細胞の浸潤が著明で,これは肝,脾,腎などにもみられた,骨はosteolyticな変化よりosteoclasticな変化が目立つた. pyroglobulin血症は,それ自体,特有の臨床症状を発現することは少ないとされるが,本症例は,髄膜炎症状を経過し,腫瘤形成とそれによる脊髄横断症状を呈し,末期に白血化をきたして死亡した. pyroglobulin血症を有する症例で,これらの多彩な症状で経過したものは文献上見当らず,希なものと思われる.
  • 1980 年 69 巻 3 号 p. 427
    発行日: 1980年
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
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