髓膜炎および多発神経根炎症状を呈したサルコイドージス(サ症)の1例を報告するとともに,本邦神経サ症例を文献で検討し,本例が極めて希な症例であることを示した.症例は36才,女性.約5カ月間微熱が持続していたが,昭和53年4月16日から頭痛,悪心,傾眠傾向, 20日から全身の不定の疼痛,下肢にはじまる上行性の運動麻痺が出現, 27日には起立不能となり, 5月11日に当科に入院した.入院時,発熱(37.2°C)の他は理学的所見,一般検査に特別な異常なく,神経学的には,髄膜刺激症状,右第VII, IX, X脳神経障害,両側第VIII脳神経障害,四肢でび漫性の筋萎縮を伴う対称性の筋力低下,腱反射低下を認めた.髄液は初圧70mmH
2O,細胞数9/mm
3,蛋白187ng/dl,グロブリン反応陽性,糖39mg/ml,筋電図では神経原性変化,腓骨神経伝導速度低下の所見を得た.画側肺門リンパ節腫脹,耳下腺および斜角筋リンパ節生検でサ肉芽腫を証明,細胞免疫低下等の所見から,神経サ症と診断した. prednisoloneme経口投与により,著明改善し10月25日杖歩行で退院.文献的には, 1978年までに本邦で86例の神経サ症の報告があり,うち中枢神経障害は25例(29.1%),脳神経障害は61例(70.9%),脊髄神経障害は10例(11.6%)に認められた.しかし,臨床的に明確な髄膜炎症状または多発神経根炎症状を呈した症例の報告は極めて少なく,本症例の臨床像は希なものと考え報告した.
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