日本内科学会雑誌
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69 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 免疫から化学
    柴田 整一
    1980 年 69 巻 4 号 p. 429-446
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    腎炎の発現機序に関しては, VolhardとFahrによる病理解剖学と馬杉その他による免疫学との両者の密接な協同作業によつて既に確立されたものとして,永く信じられてきた,ところが,純臨床的な立場から観るとき,腎生検法による地味な知見(病理解剖と臨床との対比)の積み重ねを経て,まず病理解剖学的知見の修正がなされるようになり,さらに免疫学によつてすべての症例が説明できるという考え方も,これだけでは到底説明できない症例の存在が次第に明らかになつていった.それに伴つて,これに代るものとして化学的或は免疫化学的な角度からの見直しが次第になされるようになつてきている.このような考え方の転換に拍車をかけたものとしては, Fabry病などの遺伝的な疾患が純化学的に解明されるようになつたという事実と共に,私共の開発したglycopeptide腎炎(すなわち腎から抽出・精製した糖ペプチドという化学的に構造の明らかにされた物質の注射により腎炎という疾患がひきおこされるモデル)が,成人腎炎の全経過(慢性腎炎・萎縮腎に至る)を代表するものであることが次第に明らかにされてきたという事実をあげることができよう.
  • 高山 哲夫, 早川 哲夫, 野田 愛司, 青木 勲, 堀口 祐爾, 山崎 嘉弘, 伊藤 和人, 成瀬 達, 近藤 孝晴, 飯沼 幸雄
    1980 年 69 巻 4 号 p. 447-453
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    合成ペプタイドN-benzoyl-L-tyrosyl-P-aminobenzoic acid (BTPA)は腸内で膵キモトリプシンにより特異的に分解され尿中にP-aminobenzoic acid (PABA)となつて排泄される. pancreatic function diagnostic (PFD)試験はBTPA一定量投与後の尿中PABAを測定することにより,膵外分泌機能を間接的に評価する膵外分泌機能試験である.今回筆者らはPFD試験についてPABA測定および検査施行に関する基礎的検討を行ない,さらに膵疾患に対する診断能についても検討を加えた.検体保存は4°Cで2週間まで可能であつた.測定時の加水分解時間は15分まで短縮可能であつた.検査試薬投与2時間後の食事摂取は検査結果に影響を与えなかつた.同一被験者におけるPFD試験の再現性は良好であつた. 78例の臨床例(慢性膵炎41例,膵癌5例,その他32例)を対象としたPFD試験の診断能はpancreozymin secretin試験による高度外分泌機能障害例では82%の異常率であつたが,中等度および軽度障害例ではおのおの50%, 39%であつた.膵癌例では膵頭部癌の1例のみが正常値以下であつた.内視鏡的逆行性膵管造影(ERCP)との比較では, ERCPとpancreozymin-secretin試験との一致率が高いのに比し, ERCPとPFD試験の一致率はやや劣つた. PFD試験は実施が簡便で良好な再現性を有し,膵外分泌機能の軽度障害例の検出能は低いものの高度障害例に対しては比較的高い検出率を示した.
  • 平松 和子, 野崎 宏幸, 有森 茂
    1980 年 69 巻 4 号 p. 454-459
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    簡易で感度のよいTLC-FID (thin-layer chromatography-flame ionization detection)を用いて,ヒト血小板の脂質の定性,ならびに内部標準を用いて定量化することに成功した.本法で得られた健康成人21名の血小板の各脂質の重量百分率(Mean±SD)は, free cholesterol 14.7±3.6%, phosphatidylethanolamine 24.9±4.5%, phosphatidylinositol plus phosphatidylserine 6.8±3.4%, phosphatidylcholine 35.2±3.1%, sphingomyelin 18.6±2.6%であつた. free cholesterol, phosphatidylcholineを用いて作製した検量線より求めた絶対量(Mean±SD)は108個の血小板当りfree cholesterol 7.32±1.10μg, phospholipid 46.06±8.36μgであつた.本法で得られた値は,従来のガスクロマトグラフィー, TLCにて分析された値と一致するとともに,一度の実験操作で同時に各脂質の分析定量が可能であり, 5mlの静脈血より十分分析可能であることから,日常臨床検査として有用であることが判明した.
  • 鈴木 健介, 星山 真理, 室橋 健, 荒井 奥弘
    1980 年 69 巻 4 号 p. 460-465
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は38才.男性.主訴は意識障害,全身倦怠感,食欲不振. 18才の時に急性腎炎に罹患.昭和51年秋,昏睡状態で発見され透析療法のために当院に転送された,透析療法開始後も50mg/dlの低血糖発作が頻発した.理学的には,著明なやせ,体毛減少,低血圧を認めた.一般検査では,貧血,腎機能低下,低コレステロール血症を認めたが,肝機能は正常であつた.内分泌学的には, 50gOGTT,インスリン静注,グルカゴン筋注, L-DOPA投与, TRH静注,クロールプロマジン試験におけるGHの低値と反応不良,血漿コルチゾールの低値と日内リズムの消失およびインスリン静注時の反応不良, TRH静注時のTSH,プロラクチンの高値と過大反応, LH-RH静注時のLH, FSHの過剰,遅延反応を認めた.低血糖の原因として,インスリノーマ,インスリン自己免疫症候群は考えられず,重篤な肝障害もなかつた事から, GHおよびACTHの分泌機能不全が最も考えられた.治療としてhydrocortisone 20mgを投与し,低血糖発作の発現をみず,経過良好である.慢性腎不全患者における間脳-下垂体系異常は知られているが, GHおよびACTHの分泌不全による低血糖発作が頻発した報告はなく,本症例は極めてまれな例と考えられる.
  • 藤井 信一郎, 佐々木 康之, 斉藤 博, 本間 達二, 古田 精市, 緒方 洪之
    1980 年 69 巻 4 号 p. 471-476
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    α-Methyldopa(以下α-MD)服用中にCoombs試験陽性溶血性貧血を発症した1例について報告した.患者は55才,女性で本態性高血圧症治療のためにα-MD (500mg/日)投与を22カ月受けた後に倦怠感が出現, 24カ月後精査目的で入院.入院時,腹部で肝を触知し,脾は濁音界の拡大をみとめた.血色素量9.4g/dl,赤血球数265×104,網状赤血球19%,赤血球大小不同あり,骨髄像は赤芽球過形成,血清ビリルビン増加,赤血球浸透圧抵抗の減弱, 51Cr標識自家赤血球寿命は短縮していた. Coombs試験は直接・間接共陽性であるが, Donath-Landsteiner試験,寒冷凝集反応は陰性で,その他自己抗体も全て陰性であつた.赤血球自己抗体は, IgG(κ+λ)型で,補体結合性・Rh式特異性はもつていなかつた.なお直接Coombs試験に市販の抗IgM血清を使用したところ,それによつても凝集をおこしたため患者血清をSephadex G-200でゲル炉過し, IgG・IgM分画を採取し間接Coombs試験を行なつた.その結果,抗体はIgG分画のみに存在することを確認した.入院直後より投薬を中止し観察すると, 2カ月後には貧血・ツ反応の改善傾向, 5カ月後には間接Coombs試験の陰性化, 10カ月後には直接Coombs試験も陰性化した.
  • 中島 弘幸, 吉田 洋, 河村 保男, 武藤 泰敏, 高橋 善彌太
    1980 年 69 巻 4 号 p. 477-482
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    アルミノパラアミノサリチル酸カルシウム(PAS-Al)長期服用により生じた低リン(P)血症による骨軟化症の1例を報告する.症例は, 49才主婦,生来,牛乳不耐症である以外は,健康であつた. 1975年10月,肺結核症の診断をうけ, PAS-Al 10g/日, INH 0.4g/日, SM 1.0g 2回/週,の3者併用療法を開始した. 1977年2月より脱力,膝関節痛出現,しだいに全身の骨痛を訴えるようになり, PAS-Alによる骨軟化症を疑い1978年9月, PAS-Al服用を中止した.血液生化学検査にて, Pは1.7mg/dl, Ca 9.4mg/dl, alk-P-ase 128IU/lであり,脛骨に偽骨折を認めた.服薬中丘後上記症状は改善し, 3カ月後,偽骨折は消失した.骨軟化症発症の原因について精査を行なつた. 1) Pの腸管よりの吸収および腎尿細管の再吸収(%TRP 90.7)は正常, 2) PAS-A1 (6.7g)とP (1.5g)の二重負荷試験により, Pの腸管よりの吸収は抑制される傾向にあつた. 3) PAS-Al (10g/日) 7日間連日投与により,血清Pは4.2mg/dl→2.8mg/dlと低下, alk-P-aseは, 90IU/l→119IU/lと上昇した. 4) PTH 0.3ng/ml以下, calcitonin 12.5pg/ml, 25 (OH) cholecalciferol llng/mlであつた.以上より,本症例は, PAS-A1が含む,水酸化アルミニウム分子により, Pの腸管からの吸収が抑制された結果生じた持続的な低P血症により,骨軟化症を発症したと考える.また従来の制酸剤による骨軟化症の報告例とも比較検討した.
  • 原田 孝司, 新里 健, 田浦 幸一, 小田 敏郎, 緒方 弘文, 藤松 真一郎, 正 直温, 原 耕平, 田口 尚, 竹林 茂夫
    1980 年 69 巻 4 号 p. 483-487
    発行日: 1980/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Rifampicin (RFP)再投与によると思われた急性腎不全の1例を報告する.症例は65才,男性.昭和42年8月より肺結核の診断で治療を受けていた.昭和49年9月よりRFP, 450mg連日投与をうけたが,昭和51年6月に食欲不振のために中止した:昭和53年6月より再排菌のためにRFP, 450mg週2回再投与した.再投与4回目の昭和53年7月4日服用3時間後に39°Cの発熱,悪寒,悪心,嘔吐,倦怠感が出現し,翌日には黄疸を認めるようになり無尿となつた.急性腎不全の診断にて人工透析療法を行なつた.発症より2週目頃より利尿期にはいり,その後漸次腎機能は改善した.発症1ヵ月半後の腎生検像は,糸球体は変化なく,尿細管の一部は上皮の扁平化,萎縮,管腔の拡張,円柱形成を認めた.蛍光抗体法は陰性であつた.患者血清のRFP抗体をIHA (間接赤血球凝集反応)法にて測定し,対象群に比し高値を認めた. RFP再投与時には重篤な急性腎不全を発症する可能性があり,特に以前に副作用のために中止した例では,出来れば再投与を避けるべきであろうと考えられた. RFPよにる急性腎不全症例についての文献的考察も行なつた.
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