高速液体クロマトグラフィーによる分離と酵素法によるコレステロール測定を併用し,健常24例および肝硬変15例,慢性肝炎14例の血清HDL
2およびHDL
3・コレステロール(C)を定量した.健常例では, HDL
2・Cは女性で高値(P<0.05)であつた.総HDL・CはHDL
2・Cと正相関(r=0.9084, P<0.001)を示したが, HDL
3・Cとは有意の相関を認めなかつた.そのほか総HDL・CはHDL
2・C/HDL
3・C比と正相関(P<0.001), HDL
2・CはHDL
2・C/HDL
3・C比と正相関(P<0.001),トリグリセJド(TG)と負相関(P<0.005)を示した,肝硬変例では健常例に比して総HDL・Cは低値(P<0.05), HDL
2・Cは高値(P<0.05)であつた.肝硬変および慢性肝炎の両者で健常例よりHDL
3・Cは低値(P<0.001)であり,しかも肝硬変例では漫性肝炎より低値(P<0.001)であつた.両肝疾患を一括し,総HDL・CとHDL
2・Cとは正相関(r=0.8756, P<0.007)を示した.なおHDL
2・CとTGとの間に負相関(P<0.005), HDL
3・CとTG(P<0.05),総コレステロール(P<0.001),およびアルブミン(P<0.005)との間にそれぞれ正相関を認めた.以上の結果より総HDL・Cの上昇にHDL
2・C上昇が関係し,そのためにTG-richリポ蛋白のlipolysisならびにHDL
3からHDL
2への変換過程の促進が重要と考えた.さらにHDL
3・Cの生成に肝代謝機能が密接に関連することが明らかにされた.
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