日本内科学会雑誌
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70 巻 , 4 号
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  • 猿田 享男
    1981 年 70 巻 4 号 p. 497-510
    発行日: 1981/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年放射免疫測定法の普及に伴い,内分泌疾患の診断は著しい進歩をみせた.この選択的低アルドステロン症(SHA)も,レニンおよびアルドステロンの放射免疫測定法が一般化するにつれ,急にその発見頻度が増し,注目されてきた疾患である.しかし,これまでSHAに関しての確立した定義がないためか,報告された各症例の病態は少しずつ異なり,またその病名も, “選択的低アルドステロン症”, “アルドステロン単独欠損症”,あるいは“低レニン性低アルドステロン症”など種々な名称が使われてきた.このような症例の報告が増加するとともに,その病態も少しずつ異なることが明らかとなり, SHAといつても副腎内に原因があるタイプと,副腎外のアルドステロン調節因子に障害があつて生じるタイプとは明らかに異なる病態であることが判明し,その治療に関しても両群に対して異なる療法がとられている.それゆえ, Cosgriffらが提唱するように, SHAのうち副腎内に原因があつてアルドステロンの選択的低下を生じ,高K+血症を来すものをI型,副腎外の原因により選択的なアルドステロンの低下と高K+血症を呈するものをII型(主として低レニン性低アルドステロン症)として分類することは,混乱しているこれらの病態を整理する意味で重要と思われる.さらに最近,このSHAには高K+血症とともに高C1-性代謝性アチドーシスを合併する頻度が高いことが注目され,それがこれまでに報告されている尿細管性アチドーシスとは異なるタイプのものであることが判明し,これを尿細管性アチドーシス4型として分類しようとする試みもなされており,アルドステロンの低下とこのタイプの尿細管性アチドーシスとの関係が注目されている.
  • 市丸 道人
    1981 年 70 巻 4 号 p. 511-524
    発行日: 1981/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年,悪性リンパ腫の腫瘍細胞をその表面形質から分けてみる観察が行なわれ,当九州地方は我国の他地方に比べても,西欧諸国に比べてもT cell型が多いという事実が判明してきている.われわれの経験例106例中T型は79例(74.5%),うち49例(62%)が白血化例である.このT cell型白血性悪性リンパ腫例を中心に,臨床像の特徴的な事項についてのべた. T cell型白血性悪性リンパ腫の多くは成熟型リンパ球の性格を有する異常細胞を主体とし,若干の幼若細胞を交えて白血化する.これらの白血化細胞は核形態に特徴的変化を示し,組織構成細胞とその分化レベルは必ずしも一致しない.臨床像としては臓器浸潤性が強く,皮膚病変,肝障害,高Ca血症などを来しやすいが,リンパ節腫脹はむしろ軽度である.主としてT細胞機能不全による免疫不全を伴い,感染症を合併しやすく,特殊な感染症が多くみられる. T cell悪性リンパ腫に関連する地理病理学的意義,家族発生例,周辺疾患との関係,腫瘍細胞自体のもつ問題点など若干の問題についてのべた.
  • 松田 成器, 板津 武晴
    1981 年 70 巻 4 号 p. 525-533
    発行日: 1981/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年レニン分泌の異常が報告されて来ている糖尿病患者(男40人,女41人)を対象に, R-A-A系の検討を行なつた.血漿レニン活性(PRA)および血漿アルドステロン濃度(PAC)は,早朝安静臥床時およびfurosemide 40mg静注し, 2時間立位歩行後の2回採血し, RIA法で測定した.尿中アルドステロン値(UA)は24時間蓄尿したサンプルを塩酸で水解後5%BSAで希釈し, PACと同様に測定した.女性および高令者ではPRAは低値を示したが, PACには差が認められなかつた.血清K値が高い例ではPRA, PAC共低値であり,血清K値の維持にR-A-A系が重要な役割を持つていると思われた.立位負荷時収縮期血圧が10%以上低下するにも拘わらず脈拍の増加しない例では低PRA,低PACであり,交感神経の“β-作用”と相関している事が示された.糖尿病羅病期間の長い例,又合併症を持つ例,および血管合併症,高血圧を有する例ではPRA, PAC, UAのいずれも低値であり,その程度が強い者では高K血症が認められた.糖尿病患者におけるR-A-A系の低下は生理的な機序による分泌抑制によるものではなく,機能的又は器質的な原因によるrenin, aldosteroneの産生,分泌障害によると考えられ,合併症の進展を反映して産生,分泌障害も進行すると思われる. UAはPACの負荷値とより強く相関した. PRAとPACの反応性については有意の相関が認められたが,一部の例では解離が認められ,その機序につき若干の考察を加えた.
  • 松本 慶蔵, 宇塚 良夫, 永武 毅, 野口 行雄, 鈴木 寛, 力富 直人
    1981 年 70 巻 4 号 p. 534-545
    発行日: 1981/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    慢性呼吸器感染症の増加と菌交代による難治化は,現今の化学療法上の重要な問題である.私共は9年間に亘る菌交代の解析から,それに対処する化学療法デザインを考案しその成果を確認した.前期(1971~1974年) 30菌交代エピソードで,インフルエンザ菌から緑膿菌への交代が14と最も多く,しかも,緑膿菌出現後にそれに対する化学療法を行なつた11例中7例が緑膿菌感染症に進展し,内4例が死亡した.一方,菌交代後に抗生物質を中止した3例はすべて緑膿菌が白然消失し,内2例はその後インフルエンザ菌感染症を惹起した.そこで,後期(1975~1979年) 59菌交代エピソードにおいては,緑膿菌17を始め14種の交代菌出現に対し, 59例中56例で抗生物質投与を中止した.投与中止例中2例は交代菌がインフルエンザ菌で,中止後にインフルエンザ菌感染症へと進展したが,他の54例中52例は交代菌が白然消失し,内44例はその後にインフルエンザ菌感染症を惹起した.後期においては,菌交代症による増悪および死亡例は皆無であつた.また,別の51例の患者における血中抗体保有率の検討から,緑膿菌感染症患者は,インフルエンザ菌の感染が先行したことが示され,慢性呼吸器感染症の基本的な起炎菌はインフルエンザ菌であることを明確にした.緑膿菌による菌交代症に進展するのを防止し,インフルエンザ菌に止めるか,インフルエンザ菌に逆戻り菌交代をさせることは,患者の長期予後に有益である.
  • 的場 恒孝, 板家 守夫, 戸嶋 裕徳
    1981 年 70 巻 4 号 p. 546-552
    発行日: 1981/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本研究は長期の治療にかかわらず,遷廷化した経過をとつている振動病男性患者54名の臨床像を明らかにすることを目的とした.対象患者の平均年令は55才で,振動工具(chain saw)の使用平均年数は10.2年であつた.手指のRaynaud現象,しびれ,痛み,頭痛,睡眠障害,耳鳴,手掌発汗増多,易疲労感などの22項目の自覚症の発現頻度は, 40~90%で,うち10項目は統計的有意に高かつた.理学的所見は,整形外科的障害として骨関節系の変形,腱筋肉系炎症などがみられた.中枢神経系障害としては,脳波異常,平衡機能障害,聴力低下が認められた.聴力低下は半数に認められた.心血管系異常としては,特に高血圧症の頻度が有意に増加し, 25.9%に認められた.その他の所見として,胃十二指腸潰瘍などの病変,耐糖能異常が高率にみられた.免疫グロブリンのIgAが異常高値を示した.かかる所見は,遷延化する治療経過をとつている振動病患者では,全身にわたつて不可逆性要素をもつ障害が存在し,かつ遷延化する愁訴に対する心理的不安などと共に,耐糖能異常,高血圧,胃十二指腸疾患などにみるように,加令に伴ういわゆる成人病としての要素が加わつて,振動病としての病像が修節されてきているのが認められた.
  • 池田 柊一
    1981 年 70 巻 4 号 p. 553-564
    発行日: 1981/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    非リンパ性白血病43例(急性骨髄性白血病AML 20例,急性前骨髄性白血病APL 2例,慢性骨髄性白血病急性転化CMLクリーゼ3例,急性単球性白血病AMoL 2例,急牲および亜急性骨髄単球性白血病acute~subacute MMoL 12例,慢性骨髄単球性白血病CMMoL 4例)において,白血病細胞の表面マーカーと細胞化学的検索を行なつた.表面マーカーはFcγ, Fcμ, C3b, C3dの各レセプターをマイクロテストプレートを用いたロゼット形成法で調べ,補体源としてヒトAB型血清およびAKRマウス血清を用いた.さらに白血病細胞の免疫貪食能を観察した. AMLとAPLにおいては,胞体内顆粒やペルオキシダーゼ(PO)陽性の症例では大多数がFcγあるいはC3レセプターを有しており,これらレセプターと顆粒, POはほぼ同時に発現するものと考えられた. CMLクリーゼでは酵素の発現は弱いがレセプターは有していた. AMoL, MMoLでは全例数種のレセプターを有しており,さらに免疫貪食能も全例で認められた.細胞化学的にはAMoL, MMoLの単球様白血病細胞にα-naphthyl butyrate esteraseが18例中5例で完全に欠損し, 7例では部分欠損が認められた.また本酵素の欠損した例でも,免疫貪食能は観察され,白血病細胞に単球系の構成成分が存在する証拠として免疫貪食能は重要な所見であると考えられた.
  • 上田 章, 草場 公宏, 緒方 道治, 松尾 征治, 伊東 盛夫, 阿部 雅光
    1981 年 70 巻 4 号 p. 565-572
    発行日: 1981/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は30才の女性で, Raynaud現象,発熱,顔面浮腫状紅斑,皮膚硬化および筋痛,脱力のため,昭和51年10月入院. GOT, CPK, LDHの上昇,抗核抗体陽性,筋電図上myogenic pattern,食道造影で拡張像,心エコー図で心外膜液貯留を認め,進行性全身性硬化症と多発性筋炎のoverlap症候群と診断した.副腎皮質ステロイド薬投与により,上記諸症状は軽快したが,昭和53年4月,嚥下障害,脱力,全身衰弱が急速に進行し, GOT, CPK, LDHの著明な上昇をみた。心電図上,右脚および左脚前枝の2枝ブロック,心室性期外収縮,接合部性頻拍がみられ,広範な心筋炎による心不全のため死亡した.剖検では,皮膚,肺,消化管に著明な線維化,諸々の骨格筋に萎縮,変性,壊死および炎症性細胞浸潤などを認め,病理組織学的にも進行性全身性硬化症と多発性筋炎の重複例であることが確認された.心臓には組織学的に特に心内膜側心筋層に広範な線維化と血管新生,正常心筋との移行部に炎症性細胞浸潤を認め,進行性全身性硬化症と多発性筋炎の両者の病理学的所見が混在した病像を呈した.膠原病の重複例は単独症例に比して重症化するものが多いが,重複例の剖検報告は少ない.心病変についても,重複例では単独症例に比して高率に発現し,かつ,重症化の傾向がみられる.
  • 東原 正明, 田部 章, 苅家 利承, 大橋 辰哉, 織田 敏次
    1981 年 70 巻 4 号 p. 573-579
    発行日: 1981/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    骨膜下に,髄外造血巣を含む腫瘤を多発性に認めた原発性骨髄線維症の1症例を経験したので,報告する.症例は65才,主婦.昭和52年初めより労作時息切れ,易疲労感出現. 5月,貧血を指摘される. 11月,摘脾術を受ける.昭和54年1月,左下腿部腫瘤出現.某病院で同腫瘤生検施行後,精査のため6月当科入院.骨髄穿刺でdry tap,骨髄生検で線維化著明, Ph1染色体陰性,末血像でteardrop cell, leukoerythroblastosis,以前摘出した脾臓に髄外造血巣があり,又,二次性に骨髄線維症を来す疾患を除外できたことより,原発性骨髄線維症と診断.腫瘤は,その後右下腿,肋骨,左側頭部と多発性にみられた.左右下腿部腫瘤生検では,骨膜と骨皮質の間に線維増生と髄外造血巣を認めた.この種の髄外造血の報告は,我々が調査した限りでは初例である.この症例では,骨X線像で,両下肢に骨膜反応(periosteal reaction)すなわち骨皮質の肥厚がみられ,臨床的には,両下肢の有熱時自発痛および圧痛をみたが,この種の報告も希である.腫瘤の成因については,骨髄組織が骨皮質を通つて骨膜下へ侵入したためではないかと考えた.治療は,経過中,急性白血病化の病態像を呈して来たこともあり, 6MP, Ara-C,プレドニソロンを使用した.
  • 今鷹 耕二, 関 顕, 高橋 伸夫, 藤井 潤, 大内 尉義, 桑子 賢司, 梅田 徹, 町井 潔, 長谷川 敏子, 尾添 章子
    1981 年 70 巻 4 号 p. 580-585
    発行日: 1981/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    我々は最近,高血圧治療としてβ遮断薬の一種pindololを投与中の患者で,血清creatine phosphokinase (CPK)が異常高値を示すもののあることに気付いた.本稿では典型例の呈示とともに, pindololの血清CPK上昇に及ぼす効果を確認する目的でpindolol投与中の患者の血清CPK値を調査したので報告する.症例は61才,男性. pindolol投与前の血清CPK 86IU/lに対し, 30mg/日6カ月投与後に390IU/lを示した(正常<118IU/1).その後5カ月間高値を持続したが, pindolo1をpropranololに切換えたところ2週間で正常に復した. pindolol 15mg/日再投与では血清CPKは271IU/lに再上昇した.この間狭心痛や筋肉痛はなく, GOT, GPTにも大きな変動は認めなかつた.次に, pindolol投与中の患者の調査では,血清CPKが投与前値より40IU/l以上上昇するものは,朝日生命成人病研究所では34例中13例(38%),三井記念病院では47例中16例(34%)であつた.これに対し, propranolol投与例では14例中1例もなかつた.また, pindolol投与中の血清CPKが120IU/l以上であつたものは朝日生命成人病研究所では56例中19例(34%),三井記念病院では115例中15例(13%)であり, propranolol投与中の64例中2例(3%)に比べて明らかに多数であつた.これらの結果より, pindololには血清CPKを上昇させる作用のあることが強く疑われた.その機序は不明であるが, pindololの内因性交感神経刺激作用が血清CPKの上昇に関連している可能性も考えられる.
  • 小林 弘祐, 有川 一美, 継 健, 市川 陽一, 本間 光夫
    1981 年 70 巻 4 号 p. 586-590
    発行日: 1981/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    膠原病重複症候群で,レイノー現象頻発を契機に,高レニン血症を伴う,著明な高血圧と特発性乳酸アシドーシスを呈した症例を経験した.症例は26才,女性.主訴は関節痛と疼痛を伴う殿部の紅斑. 15才時にレイノー現象出現,その後関節痛,脱毛,手指硬化,指端潰瘍,筋力低下,深在性ループス皮疹,蛋白尿,無菌性骨壊死などが認められた.昭和54年3月入院後,主訴は改善傾向にあつたが,血圧は入院時120/80mmHgより徐々に上昇し, 7月始めには140/100mmHgとなつた.この頃よりレイノー現象が頻発し始め, 7月12日に突然,顔面蒼白,過呼吸,無尿,昏迷状態となつた.血圧170/140mmHg, PaO2 105 Torr, PaCO2 16 Torr, pH 7.06, anion gap 29.9mEq/l,動脈血乳酸濃度15.2mmol/l,ピルビン酸濃度0.18mmol/lであつた.この時血漿レニン活性6.2ng/ml/h,アルドステロン濃度1250pg/mlと著増していた. diazoxideおよびhydralazineにて血圧126/100mmHg, pH 7.36に改善したが, 10時間後に同様の発作を呈し死亡した.本例はレイノー現象による腎血管のれん縮と腎の血管病変のために,レニン,アンギオテンシンの産生が増加し,全身の血管がれん縮することによつて乳酸産生の増加と利用の低下をきたしたものと推察された.乳酸アシドーシスが膠原病に合併したという点において,また高レニン血症,高血圧に伴つて発症したという点において,本症例は国内外に例がない.
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