同胞9名中3名が白血病に罹患し,他の1名が汎血球減少症,さらに白血病例の子供2名に特発性血小板減少性紫斑病に罹患した1家系を経験した.長男(第1子)は,昭和24年4月, 16才の時本院内科に入院し,急性白血病の診断を受けた,治療は輸血のみで同年9月死亡した.次男(第2子)は, 3才の時数日間の下痢で死亡した.長女(第3子),三男(第4子)は,それぞれ3才, 7才の時高熱を呈して死亡したが,死因その他の詳細は不明である.次女(第5子)は, 2年間汎血球減少症の状態が続いているが,白血病の所見はなく経過観察中である.四男(第6子),五男(第7子)は,血液像に異常なく健康である.六男(第8子)は赤白血病のため,昭和53年8月,当科に入院し,アドリアマイシンなどにより,部分寛解を達成したが再発し,昭和54年5月,脳出血にて死亡した.七男(第9子)は,昭和37年3月, 12才の時,本院小児科に入院した,急性骨髄性白血病と診断され,プレドニソロン, 6-MP等で治療されたが,同年7月死亡した.六男の子供2名は,昭和55年1月ほぼ同時期に出血傾向で発症し,特発性血小板減少性紫斑病と診断された.現在経過観察中である.上記症例中,次女,六男,六男の子供1名につき染色体分析を行なつたが,異常は認められなかつた.本家系における血液疾患の家族性発生の背景を解明するには,環境要因や細胞遺伝学的見地からの詳細な検討と,長期間の追跡調査が必要と思われる.
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