日本内科学会雑誌
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70 巻 , 7 号
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  • 高久 史麿
    1981 年 70 巻 7 号 p. 959-974
    発行日: 1981/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    血液細胞の分化特に造血幹細胞に関する研究は近年著しい進歩をとげ,その知識は各種血液疾患の病態の理解の上で次第に不可欠なものになつてきている.本文においては造血幹細胞の分化の基礎的な問題について簡単に紹介すると同時に,この細胞の有している病態生理学的並びに臨床的意義に関して概説を加えた.なお本文の記載にさいしては幹細胞に関する臨床的な研究をひろくとりあげ,現在迄に発表されたこの問題に関する多くの研究者の成果を紹介すると共に,その中に著者らのグループが従来から行なつてきた幹細胞についての臨床的な研究の結果を随時とりいれた.赤血球系細胞の異常では,再生不良性貧血を中心とする骨髄の低形成による貧血症,或いは真性多血症の様な赤血球産生の増加の機序に造血幹細胞の異常が密接に関与している事が明らかになつている.一方,顆粒球系細胞においても白血病が造血幹細胞のレベルの異常である事が様々な研究の結果明らかになつた.さらに従来前白血病状態とよんでいる各種血液疾患においても,幹細胞に質的或いは量的な異常が存在し,その異常が以後の白血病の進展に密接に関連する事が明らかになつている.造血幹細胞は,各種血液疾患の病態生理に深い関連を有しており,その意味では幹細胞異常と呼ぼれるべき一群の疾患群があると考えられる.幹細胞は又再生不良性貧血に対するアンドロゲン療法,或いは再生不良性貧血や白血病に対する骨髄移植に理論的な根拠を与えるものである.
  • 関 顕, 今鷹 耕二, 伴野 祥一, 高橋 伸夫, 藤井 潤
    1981 年 70 巻 7 号 p. 975-983
    発行日: 1981/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    5年間連続してサイアザイド薬(サ薬)を投与した高血圧114例(サ群)と,サ薬非投与で5年間観察した131例(対照群)を対象として,糖負荷試験,血清インスリン値,尿酸値, K値,総コレステロール値を,治療前と5年後,および両群間で比較した.また治療中に何等かの理由でサ薬投与を中止した別の102例についてその理由を調査した.糖負荷試験時の血糖値は,サ群では投与前と5年後で有意差は無かつたが,対照群では,僅かではあるが有意の低下が見られた.耐糖能の型別の推移を見ると,サ群に比し対照群で改善例が多く見られた.すなわち,サ群では対照群に見られる耐糖能の改善は認められないが,サ薬が耐糖能に対し明瞭な悪影響を有するとは云い難かつた.インスリン分泌能は両群とも有意の変化は認められなかつた.血清K値には,両群とも有意の変化は認められなかつた.血清尿酸値はサ群では投与後有意に上昇し, 5年後の上昇幅の平均は1.0mg/d1であつた.対照群では不変であつた.高尿酸血症の頻度もサ群で著増し,血清尿酸値8.5mg/dl以上の者が0から11.4%となつた.対照群では不変であつた.血清コレステロール値は,サ群では不変であつたが,対照群では僅かではあるが有意に低下した.サ薬中止の理由のうち,サ薬の代謝面への影響と考えられるものとして,痛風又は高尿酸血症(19例),耐糖能悪化(1例),低K血症(3例)があつた.
  • 今西 康二
    1981 年 70 巻 7 号 p. 984-991
    発行日: 1981/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    中枢神経感染症の髄液細胞の形態と機能について検索し,疾病の病態および鑑別診断に役立つか否かについて検討した.独自に考案した浮遊細胞収集法は細胞の回収率,形態保存ともに良好であつた.細胞組成では小リンパ球はウイルス性髄膜炎で,マクロファージは非感染性神経疾患で,多核球は化膿性髄膜炎で,髄膜剥離細胞は結核性髄膜炎でそれぞれ優位であつた. lysosomal enzyme (acid-phosphatase, β-galactosidase)はマクロファージ系細胞で活性がみられ,種々の疾患で陽性であつたが,特に化膿性および結核性髄膜炎で高活性を示し臨床経過とよく相関していて補助診断価値があつた.また非感染性神経疾患にも活性がみられ, lysosomal enzymeは感染症に特異的なものではなかつた. nitroblue tetrazolium還元はマクロファージ系細胞および多核球でみられた.髄液細胞ではむしろマクロファージ系細胞により還元能の亢進を認め,その還元能の程度は中枢神経感染症の病勢とよく相関していた.また髄液細胞のNBT還元能は定量的にも測定可能であつた.多核球よりマクロファージ系細胞にこより還元能があることから,多核球が多く出現する病態の少ない中枢神経疾患においてマクロファージ系細胞でのNBT還元能の解析は,疾病の病態を知る上で重要と思われた.
  • 磯久 一郎
    1981 年 70 巻 7 号 p. 992-1000
    発行日: 1981/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    高安病の成因に関し,その体質的素因を検討するため本疾患患者のHLAについて検索をおこなつた. population study:家族内発症例の発端者6名を含む75名の高安病患者につぎHLA-A, B, D typingを検索し健康日本人128名のA, B typingおよび214名のD typingと比較した.その結果高安病患者群ではHLA-Bw52 (cP (corected P)<2.8×10-4, RR (relative risk)=5.5)およびHLA-Dw12 (cP<0.039, RR=2.5)が有意に増加しておりHLA haplotypeとしてはHLA A9-BW52-Dw12が高安病と相関していた.またHLA-Bw52のホモ接合体の数は高安病患者75名中6名であり,これは高安病患者75名のHLA phenotypeより求めたHLA-Bw52の遺伝子頻度を用い計算した値(5名)と比し有意差はなかつた.さらに患者におけるHLA-Bw52とHLA-Dwl2との相関度を比較してみるとHLA-Bw52の方が高安病とより強い相関を示した. family study:高安病家族内発症6家系の家族全員のHLA haplotypeを検索した.この検索からHLA A9-Bw52-Dw12が,その家系に現われていれば患者は必ず共通してそのhaplotypeを有することが確認された.また家族内発症10家系のうち4家系で患者両親はいとこ結婚であり,これは日本人平均のいとこ婚率(6.9%)に比し有意に(P<10-4)高い結果を示した.以上の結果から, I)高安病に罹患しやすい体質的素因が存在し, II) haplotype HLA Bw52-Dwl2と有意の相関を示すが, III) HLA-Dw12よりHLA-Bw52と強い相関があり, IV)優性遺伝していることが示唆された. V)さらに高安病易発症体質を持つ人の血族結婚は,遺伝学的に好ましくないと考えられる.
  • 橋本 裕二, 柳瀬 治, 小山 忠喜, 桜田 春水, 岸 幸夫, 内村 功, 沼野 藤江, 沼野 藤夫, 前沢 秀憲
    1981 年 70 巻 7 号 p. 1001-1006
    発行日: 1981/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    両趾に広範な壊疽を伴つた原発性血小板血症の1症例を報告する.症例は52才,男性.昭和47年右第III趾に壊疽出現し,某医にて切断.同52年右足背,外踝上に潰瘍出現したが数カ月で自然治癒.同53年右第I趾および左第I~IV趾に潰瘍が出現,壊疽となつたため,同55年2月当科入院.栄養良,貧血(-),黄疸(-),血圧126/84mmHg.両側足背動脈,脛骨動脈拍動は良く触知した.肝1横指触知.脾は触知しなかつた.検査所見: Hb 16.0g/dl, RBC 599×104/mm3, WBC 21900/mm3.血小板数は171×104/mm3と著増し,末血標本にて大小不同の血小板集塊を認めた. LAP score 485と上昇.骨髄では有核細胞数13×104/mm3,過形成で巨核球数が600/mm3と増加していたが白血病細胞, Ph1染色体は認められなかつた.循環赤血球量正常.血液生化学にてLDH, alk-P-ase, acid-P-aseの上昇, pseudohyperkalemiaを認めた.血小板のADP, adrenaline. collagenに対する凝集能は低下していた.左下肢血管造影にて膝窩動脈の一部に狭窄,足背,足底動脈遠位部の閉塞がみられた.以上より本症例は原発性血小板血症に壊疽を併発したものと診断された. busulfan 1日2mg, Aspirin 1日330mgの投与を行ない,血小板数の漸次減少,趾壊疽の改善傾向を認めた.原発性血小板血症の末梢血管閉塞症状として壊疽を合併した症例は少なく,我々の調べた限りでは本症例は本邦第5例目にあたる.又,希ではあるが,本疾患は末梢血管閉塞性疾患の一つとして鑑別されるべきものと思われた.
  • 山田 研太郎, 村尾 茂雄, 吉田 秀雄, 中島 敏夫, 吉井 町子, 木村 正治, 吉岡 寛康
    1981 年 70 巻 7 号 p. 1007-1011
    発行日: 1981/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    非寄生虫性脾嚢腫は希な疾患であるが,今回我々は副脾から発生したepidermoid cystの1例を経験した.症例は51才,男性.下腹部痛のため来院し腹部単純撮影で左下腹部に環状の石灰化像を認めた.疼痛は速やかに軽快したが精査のため入院.下腹部に軽度の圧痛を認めるも腫瘤は触知せず.臨床一般検査ではγ-GTPの軽度上昇以外著変なし.経静脈性腎盂造影法(IVP)で腎孟腎杯の変形なし.上部消化管透視では腫瘤は胃体部の後方に位置した. CT-scan,超音波断層で膵尾部に嚢腫を認め,血管造影で伸展した大膵動脈分枝が見られた.膵嚢腫の診断で開腹.膵尾部から突出した直径約6cmの嚢腫を認め,膵尾部・脾臓とともに切除.内容は乳白色の液体で,寄生虫,毛髪,細菌を認めず.アミラーゼ・リパーゼは低値であつた.病理所見では嚢腫壁内に脾組織の薄い層が存在し内腔を重層扁平上皮様細胞がおおつており副脾のepidermoid cystと診断した.脾epidermoid cystの成因は明らかでないが,本例では重大な外傷の既往はなく迷入組織から発生したと考えられる.脾epidermoid cystは若年者に多く石灰化は希とされている.本例の石灰化は比較的高年令であることによるものであろう.副脾は10%以上の人に存在するが検索しえた範囲では嚢腫発生の記載はなく,本例が第1例と考える.
  • 猪狩 友行, 多川 斉, 田中 茂
    1981 年 70 巻 7 号 p. 1012-1016
    発行日: 1981/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    臨床的に汎下垂体前葉機能低下症をきたし,気脳写でempty sellaを証明した1例を経験した.症例: 75才,男子.以前より貧血あり.大腿骨骨折に対し手術的整復を受けたが,術後血清Naが低下したので入院した.現症:やせた老人で傾眠状態,体毛に乏しい.血清Na 121.7mEq/l,甲状腺機能,副腎皮質機能低下あり.頭部X線像上トルコ鞍拡大を認めた.髄液正常,視野狭窄なし.下垂体前葉機能検査でACTH, TSH, prolactin, GH, FSH, LHのいずれも基礎値は正常であつたが,負荷試験に対して反応不良であつた. ADHは正常. CTスキャンと血管造影でトルコ鞍腫瘍は否定された.気脳写を施行したところトルコ鞍内への空気の侵入を証明した.ホルモン補充療法によつて軽快退院し,その後3年間経過観察中であるが,腫瘍の兆候はない. empty se1la症候群は,拡大したトルコ鞍内が中空で,下垂体は鞍底に圧排された病態で,臨床的には気脳写によつて確認される.その内分泌学的異常の合併が報告され,とくにGH分泌予備能の低下は比較的多いが,臨床的な不全兆候を示すことは希である.本例では,骨折とこれに続く侵襲に際して臨床的な下垂体および副腎皮質機能不全を呈したものと考えられる.なお,トルコ鞍拡大を伴う下垂体前葉機能低下例では,本症候群と下垂体腺腫の鑑別に注意すべきである.
  • 安部 陽一, 宮地 清光, 夏目 いつ子, 浜本 龍生, 鈴木 定, 杉浦 元孝, 鳥飼 勝隆, 梅田 博道
    1981 年 70 巻 7 号 p. 1017-1022
    発行日: 1981/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Sharpらは全身性エリテマトーデス,進行性全身性硬化症,多発性筋炎の臨床症状を兼ね備え,血清学的にnuclear ribonucleoprotein抗体陽性の症例をmixed connective tissue diseaseと呼び,独立した結合織疾患として提唱した.本症例は9才時にRaynaud症状で発症し,その後関節痛,頚部痛,小円形紅斑等の症状を示し,最初若年性関節リウマチを疑われた.しかしその後,心外膜炎,手指の先細り現症,手指硬化等を示し,血清学的検査において, n-RNP抗体512倍単独高値を示し, 15才の現時点でmixed connective tissue diseaseと診断された.又耳下腺造影においてRubin & HoltのStage IIIを示し,耳下腺生検にて著明なリンパ球浸潤,筋上皮島がみられ, subclinical Sjögren症候群の合併と考えられた.小児発症のmixed connective tissue diseaseはいまだ本邦では報告が少なく,初期に若年性関節リウマチ様症状を示した事など,今後の結合織疾患の鑑別において示唆に富む症例である.
  • 真鍋 重夫, 宮尾 誠一, 小峰 光博, 成清 卓二, 土屋 純, 前川 正
    1981 年 70 巻 7 号 p. 1023-1027
    発行日: 1981/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    同胞9名中3名が白血病に罹患し,他の1名が汎血球減少症,さらに白血病例の子供2名に特発性血小板減少性紫斑病に罹患した1家系を経験した.長男(第1子)は,昭和24年4月, 16才の時本院内科に入院し,急性白血病の診断を受けた,治療は輸血のみで同年9月死亡した.次男(第2子)は, 3才の時数日間の下痢で死亡した.長女(第3子),三男(第4子)は,それぞれ3才, 7才の時高熱を呈して死亡したが,死因その他の詳細は不明である.次女(第5子)は, 2年間汎血球減少症の状態が続いているが,白血病の所見はなく経過観察中である.四男(第6子),五男(第7子)は,血液像に異常なく健康である.六男(第8子)は赤白血病のため,昭和53年8月,当科に入院し,アドリアマイシンなどにより,部分寛解を達成したが再発し,昭和54年5月,脳出血にて死亡した.七男(第9子)は,昭和37年3月, 12才の時,本院小児科に入院した,急性骨髄性白血病と診断され,プレドニソロン, 6-MP等で治療されたが,同年7月死亡した.六男の子供2名は,昭和55年1月ほぼ同時期に出血傾向で発症し,特発性血小板減少性紫斑病と診断された.現在経過観察中である.上記症例中,次女,六男,六男の子供1名につき染色体分析を行なつたが,異常は認められなかつた.本家系における血液疾患の家族性発生の背景を解明するには,環境要因や細胞遺伝学的見地からの詳細な検討と,長期間の追跡調査が必要と思われる.
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