日本内科学会雑誌
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71 巻 , 3 号
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  • 松尾 裕
    1982 年 71 巻 3 号 p. 275-285
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    1902年Bayliss and Starlingによるsecretinの発見に始まり, 1905年Edkinsのgastrinの発見をまつて“ホルモン”という化学物質による生体の調節機構が神経調節機構と共に存在することが提唱された.その後約60年後1964年Gregory and Tracyによりgastrinの化学構造が決定されて以来, secretinやCCKを始めとして,続々と新しい生物活性をもつたペプタイドの存在が明らかにされると共に,従来のホルモンの概念とは異なつて血液によつて輸送されず,隣接する標的細胞に働くというparacrineという概念が明らかにされると同時に,神経細胞との異同が論じられた. 1975年視床下部ホルモンであるsomatostatinが膵ラ島や胃・十二指腸に存在することが明らかにされるや, substance Pを始めとして視床下部,下垂体係の多くのペプタイドが消化管にも存在し,一方消化管ホルモンの殆どのものが視床下部は勿論,視床下部以外の大脳辺縁系,大脳皮質および壁在神経叢にも存在することが明らかにされ, brain-gut peptideと呼ばれるようになつた.これにより,神経系においてペプタイド作動性神経の存在が確立されると共に,従来研究の困難であつた動物の行動,学習をして心という問題の解明をペプタイドという物質をもつことによつて研究する糸口が開かれた.
  • 伊藤 一輔
    1982 年 71 巻 3 号 p. 286-294
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    労作性狭心症9名を対象に,臥位エルゴメーターにより狭心症を誘発した際の血行動態変化を観察し,ニトログリセリン(NTG)と急速ジゴキシン(DOX)投薬時の影響を同等負荷量で各投薬後に行ない,その血行動態を比較した. NTGは0.3mgを舌下し, DOXは0.375/0.5mgを静注した.狭心症の発現が,投薬前では全例に, NTG投薬時には3名に軽く, DOX投薬時は全例に認められた.ダブルプロダクトと心係数は,投薬前と各投薬後で差を認めなかつた.左室仕事係数の運動による変化値(△SWI)は,投薬前には-5±20g-m/M2と減少したが, NTG投薬時は+30±17g-m/M2と投薬前より有意に増加した(P<0.01). DOX投薬時は+6±14g-m/M2と投薬前と差を認めなかつた.左室拡張充満期圧の変化値(△LVFP)は投薬前には+21±9mmHgと著しく上昇したが, NTG擦時は+5±5mmHgと投薬前より著しい低値に留まつた(P<0.001). DOX投薬時は+21±8mmHgと投薬前と差を認めなかつた.また肺動脈圧(mPAP)はLVFPと同様の成績であつた.△SWI/△LVFPは投薬前-0.1±0.9, NTG投薬時14±11, DOX投薬時0.4±1.0であり, NTG投薬時は投薬前より高値を示した(P<0.01),以上より,労作性狭心症において運動による誘発狭心症の一過性の心機能不全に対して, NTGは狭心痛の予防軽減に加えて,血行動態上では, LVFPとmPAPの低値が特徴的であり, SWIも改善した.一方DOXは,狭心痛の軽減に無効であり,血行動態上の改善も認められなかつた.
  • 波多 丈, 荻原 俊男, 圓山 アンナ, 三上 洋, 中丸 光昭, 中 透, 後藤 精司, 舛尾 和子, 熊原 雄一, Charles A. ...
    1982 年 71 巻 3 号 p. 295-301
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本態性高血圧症の成因を解明する目的で,本症患者の血圧,各種内分泌性血圧調節因子の季節的変動について検討した.境界域型,固定型高血圧症患者の安静臥床時,立位時収縮期および拡張期血圧は1979年8月(夏期,月間平均気温29.1°C)に比し1980年2月(冬期,同4.8°C)において有意な高値を示し,安静,立位時血漿ノルエピネフリン濃度, 24時間尿ノルエピネフリン(UNE),ナトリウム排泄量(UNa)も冬期で有意に増加していた.一方健常者ではUNE, UNaともに夏期に比し冬期に有意な高値を示したが,血圧には両季節間で有意な変動を認めなかつた.安静,立位時血漿レニン活性,アルドステロン濃度, 24時間尿アルドステロン,カリクレイン排泄量は,健常者,高血圧症患者において有意な季節的変動を示さなかつた.高血圧症患者の個々の血圧の季節間変動値と, PNE, UNE, UNaおのおのの両季節間差との間には有意な相関を認めなかつた.本症患者でみられた冬期の血圧上昇の機序には,冬期の交感神経系機能の亢進,おそらく食塩摂取量の増加およびこれら昇圧系因子に対する血圧の反応性の増大などの諸要因が考えられる.また以上の結果は本症の病因,病態に交感神経,食塩摂取の因子が関与していることを示唆する.
  • 木村 健二郎
    1982 年 71 巻 3 号 p. 302-311
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    高血圧性腎血管障害および実質障害の臨床的要因,特に血漿レニン活性の役割を検討する目的で,本態性高血圧症患者42例の生検腎標本の組織障害度と臨床的諸事項の推計学的解析を行なつた.細動脈硬化度と硝子化糸球体の割合については0~3の4段階,間質の変化については0, 1の2段階の評価点をつけ組織障害度とした.男女における各評価点の出現頻度に差はなかつたが,評価点の高い(障害の重い)群では,評価点の低い(障害の軽い)群より血圧は高く,腎血流量および糸球体〓過量の低下を認めた.障害度と臨床的事項を総合的に検討するために,三つの障害度の主成分分析を行ない,新たに合成変量を作り(第一主成分),これを総合組織障害度とした.この総合組織障害度は各腎機能検査値と相関係数0.5前後の有意な関係をもち,生検腎という限られた標本を評価する上で有用であると考えられた.変数増減法と多重回帰分析より総合組織障害度と最小血圧値の結びつきが最も強く,血漿レニン活性,年令,高血圧推定経過年および東大3内科高血圧重症度との結びつきは弱いことが示された.さらに血漿レニン活性値に関して両極端にある原発性アルドステロン症7例と腎血管性高血圧症5例を比較検討した.両者間で血圧,および総合組織障害度に有意差は認められず,血漿レニン活性値の組織障害への関与の低さがさらに裏付けられた.
  • 伊藤 徹, 阿部 圭司, 後藤 敏和, 吉永 馨
    1982 年 71 巻 3 号 p. 312-318
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本態性高血圧症(EH)・腎血管性高血圧症(RVH)・原発性アルドステロン症(PA)に対してフロセミド静注(lmg/kg)並びに立位歩行による負荷試験を行ない,本法のスクリーニングテストとしての有用性について検討した.負荷後の血漿レニン活性(PRA)はPA並びにEHの一部において低値を示し,レニンの反応性のみではPAのスクリーニングは不可能であつた.負荷後の尿中Na・K比(UNa/k)は負荷前後のPRAとは相関を認めなかつたが,負荷前の血漿アルドステロン濃度(PAC)とは負荷30分後でr=-0.712 (P<0.01)・負荷2時間後でr=-0.502 (P<0.01)と有意の負の相関を示した.これらから負荷前PAとが高値を示したPAや他の高血圧性疾患の一部では低値,負荷後PRAが低値を示した低レニン性EHでは高値の傾向を示した.さらに, UNa/kはPAでは負荷30分後で8.5以下を,負荷2時間後で5.8以下を示した.他の高血圧性疾患では2, 3例を除いて,特に低レニン性EHでは全例共にUNa/KがPAより高値を示した.以上から本法において負荷後のPRA値とUNa/K値とを合わせ比較検討することにより, PAと低レニン性EH並びに2次性アルドステロン症を呈する高血圧性疾患との区別が明白であり,臨床的に有用なスクリーニングテストと思われる.
  • 横山 正一, 鏑木 恒男
    1982 年 71 巻 3 号 p. 319-324
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    韓国型出血熱(Korean Hemorrhagic Fever, KHF)は腎障害と発熱および出血症状を主徴とするvirus感染症であり,広くユーラシア大陸全域に存在する疾患である.我々は静岡県の山村の農夫に本症の発症を認め,さらに患者の自宅付近の野鼠にKHF抗原保有の事実を認めた.患者は43才,男.残尿感,尿量減少と発熱で発症. penicillinおよびcephalosporinに不応の発熱と急性腎不全,肝障害,出血傾向(鼻出血,下血),全身のリンパ節腫脹,発疹,漿液性髄膜炎,筋肉痛,関節痛等多彩な臨床症状を呈した.急性腎不全は1週間で利尿期となり, 6週間後にはほぼ軽快した.敗血症,薬物の副作用, leptospirosis, scrub typhus等は否定され調べた6種のvirusのうちには有意の抗体価を見出しえなかつた. Apodemus agrarius coreaeの肺組織を用いた間接蛍光抗体法にて,発症より3週目の患者血清で, KHF抗体が128倍で陽性であつたために韓国型出血熱を強く疑つた.同居家族のうち2人に不顕性感染がみられ,さらに付近で捕獲した野鼠(Apodemus speciosus, Microtus montebelli)の13匹中3匹において,その肺組織よりKHF抗原が検出された.本例は我が国で最初の野外型の韓国型出血熱の報告であり,本症が我が国に土着した疾患であることを示している.また, KHF抗原がこの地域にかなり濃厚に存在することより,今後韓国あるいは中国大陸東北部の如く,本疾患が流行する可能性もあり,早急な対策が望まれる.
  • 多田 正大, 西脇 和善, 西村 伸治, 沖 啓一, 川井 啓市
    1982 年 71 巻 3 号 p. 325-330
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    腸型Behçet病の報告が増加するにつれて,その病態も次第に明らかにされているが,腸病変の詳細な経時的観察に関する報告で希である.最近,我々は不全型Behçet病患者に対して, 6年10カ月間にわたつて回腸終末部の病変をX線学的に経過観察する機会を得たので,炎症の進展過程を報告する.比較的早期と考えられる時期には病変部位に浮腫と攣縮の所見がみられたが,やがて多発性の不整形潰瘍を形成するに至つた. Behçet病の診断基準として,腸病変は血管系,神経系病変と共に副症状として位置づけられている.しかしこれらの副症状はしばしば致命的になりうる症状であり,臨床上,なおざりにはできない.しかも腸型Behçet病は不全型に属することが多いことより,その早期診断は容易ではない.したがつて本症における腸病変のあらわれ方について, X線像,内視鏡所見を集積して,他の炎症性疾患との鑑別上の診断基準について検討することが今後の重要な課題であると考えられる.その意味で自験例において観察された病変の進展の過程は,貴重な所見であることが強調される.
  • 斉藤 公明, 玉田 和彦, 西村 芳高, 山辺 裕, 郡 義隆, 稲留 哲也, 藤原 卓夫, 片山 和明, 森川 肇
    1982 年 71 巻 3 号 p. 331-339
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    12才で初潮があつたが,以後無月経となり,多毛,低声,筋骨のたくましさ,陰核肥大などの男性化徴候が進行した16才の女子についてテストステロン産生腫瘍を疑い,これが卵巣の男化腫瘍の1例であつたので報告する.本症の報告は本邦ではこれまでに20例に満たず,その内分泌学的病像については不明な点が多いが,本例では術前に各種負荷試験を行ない.テストステロン生合成系,副腎皮質ホルモン分泌,下垂体ホルモン分泌予備能について検討し若干の知見をえた.術前の基礎値では,血中テストステロンの異常高値(7.00ng/ml)と日内リズムの消失, 17-KSの軽度上昇と分画中のアンドロステロン,エチオコラノロン, DHEAの高値,およびプレグナントリオールの高値などテストステロン生合成系の亢進を認めた.デキサメサゾン, HMG負荷ではテストステロン上昇に自律性がみられたが,その生合成系亢進はデキサメサゾンによる抑制がみられ完全な自律性を欠くことが示唆された. ACTH,メトピロン負荷では副腎皮質ホルモン分泌は良好で,テストステロン上昇による影響はみられなかつた.下垂体ホルモン分泌予備能はほぼ正常に保たれていたが, LH, FSHはStein-Leventhal症候群に特徴的な反応を示し注目された.術後,ホルモン基礎値は急速に正常化し, retrospectiveにも本腫瘍がテストステロンを産生していたことが臨床的に証明された.
  • 奥村 信義, 早川 哲夫, 野田 愛司, 近藤 孝晴, 榊原 啓, 片田 直幸, 佐竹 辰夫, 鈴木 敏行, 加藤 活大
    1982 年 71 巻 3 号 p. 340-349
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    経過観察中に膵石形成が認められたアルコール性慢性膵炎の3例について膵内外分泌機能の推移を中心に検討を加えた.膵炎発症時の年令はそれぞれ38, 36, 47才であり,膵石発現時の年令はそれぞれ44, 40, 49才であつた. 3例とも膵石発現前よりすでに著明な膵外分泌機能低下があつた.慢性膵炎特に膵石症では糖尿病の合併頻度が高く, insulin, glucagonなどの膵ホルモンの分泌が低下するといわれている.しかし,膵石形成に至るまでの膵内分泌機能を経時的に検索した報告はほとんどない.今回の3症例のうち2例は膵石発現前後の膵内分泌機能の検索が可能であつた.ブドウ糖負荷(GTT)およびアルギニン負荷(ATT)に対する血中insulin, C-peptide反応は2例とも膵石発現前から低く,発現後はさらに低下した.血中glucagonはGTT時の血糖上昇に伴う抑制反応が消失し,さらにATT時の反応も膵石発現前よりすでに低下し,経過とともにさらに進行した.残りの1例は膵石発現時には他の2例と同様膵β細胞機能は低下していたが,膵α細胞機能の障害は明らかでなかつた.しかし,経過とともに膵α細胞機能も異常を示した.耐糖能は3例とも経過とともに低下し,ついにはinsulin依存性糖尿病に至つた,アルコール性慢性膵炎における飲酒の継続,膵内外分泌機能の著明な低下などが膵石灰化出現を示唆する要因と考えられる.
  • 重政 千秋, 岡村 縁, 吉田 明雄, 真柴 裕人, 安部 喬樹
    1982 年 71 巻 3 号 p. 350-356
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Basedow病による甲状腺機能亢進症患者75例について,全身性疾患合併の有無を検索し,合わせて未治療時血中甲状腺ホルモン濃度を測定し,年令別に比較した.対象75例中,うつ血性心不全5例, SLE2例そして慢性関節リウマチ,糖尿病,肝硬変症および重症筋無力症各1例の合併例をみた.非合併例64例のT3は平均510±185.9ng/dl, T4は19.9±4.09μg/dl, FT4I 11.4±2.79そしてT3/T4比は26.6±7.88であつた.全身性疾患合併例11例のT3は264±156.2ng/dl, T4は17.0±1.76μg/dl, FT4Iは9.0±3.14そしてT3/T4比は15.5±8.57を示し, T3, T3/T4比はP<0.001, T4, FT4IはP<0.05で非合併例に比べて有意に低値であつた.中でもうつ血性心不全合併例ではT3は120~240ng/dl, rT3は62~210ng/dlに分布し, 5例中3例はいわゆるT4toxicosisを示した.このT4toxicosisはSLEおよび肝硬変症合併例各1例でも認められ,その発症機序は合併した全身性疾患の存在により末梢組織でのT4からT3への転換が抑制され, rT3への転換量が増加するためと考えられる.とくにうつ血性心不全合併例では心不全存在時期に一致して一過性T4toxicosisを示す可能性が示唆された.なお非合併例64例中にはT4toxicosisは認められなかつた.高令者Basedow病のT3は若年者に比べて低値を示す傾向にはあつたが, T4, FT4Iも低い傾向にあり, T3/T4比には差を認めなかつた.
  • 海津 嘉蔵, 丸岡 啓一, 織田 悦子, 織田 進, 小野 明, 岡崎 勲, 千葉 省三, 江藤 澄哉, 鈴木 秀郎
    1982 年 71 巻 3 号 p. 364-372
    発行日: 1982/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチに対し用いられている金製剤による腎障害は, gold nephropathyとしてよく知られているが,その詳細な機序は殆ど不明である.特に腎組織内に沈着した金の証明は困難で,確実に証明された症例はきわめて少ない.今回, X-ray energy dispersive analysis (XEDA)により,生検で得られた腎組織内に金の沈着を証明しえたので報告する.対象は, 63才,女性, 56才時慢性関節リウマチと診断され,金製剤(gold sodium thiomalate)を32ヵ月計2.200mg投与された.投与開始31ヵ月後に尿蛋白は陽性となり, 1g/日前後の蛋白尿が持続した.腎生検を行ない.光顕,蛍光,電顕により組織学的に検索した.金元素の局在はKevex7000を用いXEDAにより観察した.光顕的には殆どの糸球体に増殖性変化がみられ,係蹄内にamyloidの沈着を認めた.金はelectron denseで糸くず構造の集族として認められ,近位尿細管上皮細胞内に多かつたが, brush border,間質および糸球体のメサンジウム内にも広く分布しているのが観察された.これらの糸くず構造はXEDAにより金のL-α1, L-β1およびL-β2と一致するピークを示し,金元素である事が確認された.現在までに内外でXEDAによつて金の沈着を証明しえたのは,本症例を含め6編しかない.しかも,このように広範囲に分布したのはこの報告のみである.投与された金は投与中止後も血中の陽性が持続し,金が腎に沈着するのみでなく体内を長く循環している事が示唆された.
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