日本内科学会雑誌
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71 巻 , 4 号
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  • 鈴木 与志和, 石坂 恭一, 小林 明, 神川 正, 林 秀晴, 桝村 義典, 山崎 昇
    1982 年 71 巻 4 号 p. 421-430
    発行日: 1982/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    24時間心電図記録による抗不整脈薬の評価に一定の基準を作成することを目的として, 2回の24時間心電図記録にて, 1日1000個以上の心室性期外収縮を有し,抗不整脈薬の投与をうけていない患者45名を対象に24時間心電図を連続2日間記録し,期外収縮出現頻度の日差変動を回帰分析法を用いて解析するとともに,同一記録の任意の時間帯における1分間, 3分間, 1時間,および8時間に出現する期外収縮数の日差変動とも比較検討した.結果: 1) 2回の記録における期外収縮数の再現性では, 24時間心電図(r=0.953)が最も優れており, 8時間(r=0.870), 1時間(r=0.578)と記録時間が短くなるにしたがつて再現性は低下し, 3分間(r=0.022), 1分間(r=0.126)などの短時間心電図記録では, 2回の記録における期外収縮数に有意の相関が認められなかつた. 2)心室性期外収縮の日差変動の95%および99%信頼限界は, 24時間心電図で47%および56%, 8時間心電図で64%および73%, 1時間心電図で90%および95%であり, 3分間および1分間心電図による薬物の評価は不適当と考えられた.以上の成績より, 2回の24時間心電図記録にて, 1日1000個以上の心室性期外収縮を有する患者を対象とした場合,薬物投与前後各1回ずつの24時間心電図記録で50% (95%信頼限界)または60% (99%信頼限界)以上の期外収縮数の減少を薬剤有効性の基準として提案する.
  • 岸田 浩, 大津 文雄, 草間 芳樹, 畑 典武, 高山 守正, 佐々木 煕之, 宗像 一雄, 早川 弘一, 木村 栄一
    1982 年 71 巻 4 号 p. 431-437
    発行日: 1982/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    カルシウム拮抗薬,特にnifedipineの効果を,異型狭心症(VA) 64例, ST降下を示す安静狭心症(RA) 33例,不安定狭心症(UA) 113例を対象として調べた.薬物療法を行なつたVA47例中25例にnifedipineを使用,有効率88.0%,カルシウム拮抗薬全体の有効率は87.1%であつた.カルシウム拮抗薬以外の薬の有効率は56.3%で,両者間に有意の差があつた. RA19例に薬物療法を施行,カルシウム拮抗薬は80.0%に有効,他の薬は44.4%であつた.冠造影所見と対比すると, nifedipineは冠動脈に著明な狭窄なきVA5例すべてに有効, 75%以上の狭窄例では18例中15例(83.7%)に有効であつた. RAは全例多枝病変を有し, nifedipineは80.0%に有効であつた. VAのうち運動負荷試験にてST上昇をきたした例では, nifedipineは83.3%に有効,一方,安静時のみにST上昇を呈した例では全例に有効であつた. UAではnifedipine導入前における薬物の有効率62.5%に対し,導入後では79.4%に上昇,心筋硬塞への進展率は導入前25.0%に対し,導入後17.6%に低下した. UAのうち, VA型ではnifedipineは92.9%に有効であつたが,冠動脈狭窄枝数の増加に従い,有効率は低下した. RA型の有効率は70.0%であつた.以上よりカルシウム拮抗薬はVAのみならず, RAおよびUAに対しても有効であると判定された.なおRAおよびUAにおける冠スパスムの役割について,上記成績にもとづき考案を加えた.
  • 平田 恭信
    1982 年 71 巻 4 号 p. 438-447
    発行日: 1982/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本態性高血圧症における交感神経機能およびその治療による影響を検討するために,非治療の固定性本態性高血圧症(EH) 62例,境界型高血圧症(BHT) 46例,正常血圧対照者(NT) 67例および治療下の本症患者139例の坐位安静30分後の血漿ノルエピネフリン(NE)およびエピネフリン(E)濃度を測定した. EH群, BHT群およびNT群のいずれの群においても,血漿NE濃度は加令と共に増加することが認められた.年令を10才毎に区切り血漿NE濃度を比較した場合においても,各年代において3群間に差は認められず, 30~59才の患者の平均値はEH332±18 (SE), BHT326±14およびNT303±19pg/m1であつた.これに対し, ERおよびBHT群の血漿E濃度はNT群より有意に高く(EH44±5, BHT40±6およびNT25±3pg/ml),前2群では血漿E濃度と心拍数との間に有意な正の相関関係が認められた.治療群ではrauwolfia薬の単独服用患者および利尿薬,血管拡張薬との併用服用患者の血漿NE濃度は,非治療EH群に比し等しく低値を示し,血圧に有意に正相関した.利尿薬,利尿薬・β遮断薬および利尿薬・β遮断薬・血管拡張薬服用患者の血漿NE濃度は有意に高値を示した.降圧薬治療の血漿NE濃度に及ぼす影響は降圧薬の種類により異なること,およびrauwolfia薬の血漿NE濃度に及ぼす影響は降圧効果に反映されることが注目される.
  • 古明地 智, 北村 磨知子, 柏崎 禎夫
    1982 年 71 巻 4 号 p. 448-457
    発行日: 1982/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデス(SLE)の自然歴の解明と治療指針確立を目的として, SLEの再燃を臨床症状,検査所見,ステロイド(ス薬)治療の面から解析した.来院時未治療SLE63例を対象とした.再燃例は48%あり,再燃例で平均2.6年毎に,全症例では3.7年毎に1回の再燃をみた.死亡11例の大部分は腎不全を呈し,経過観察1年未満の非再燃例に属し,ス薬大量療法を受けていた.再燃例は非再燃生存例に比し関節炎が高率であつた以外,病像,検査所見,ス薬投与量で差がなかつた.再燃時症状は未治療時症状と同一の傾向があつた.再燃時に腎障害が新たに出現してくる頻度は少なく,かつその程度は軽度であつた.検査所見では,初回治療時には抗DNA抗体,補体価,白血球数の異常は70~90%と高率であつたが,再燃時にはその出現はやや低率であつた. warm reactive IgG抗リンパ球抗体価はSLEの活動性とよく並行した(<0.001).抗DNA抗体価,あるいは補体価が単独で異常のまま遷延したり,異常化しても再燃とは直結しなかつたが,両者の異常が遷延,ないし出現した時は再燃に連ながる可能性が高かつた.寛解期間は急性期ス薬投与量との間には相関がみられなかつたが,最大投与量からプレドニソロン(PSL) 20mg/日ないし10mg/日になるまでの漸減期間と相関した.抗DNA抗体価または補体価の異常値遷延化は,急性期ス薬投与量と相関した.再燃はPSL1日平均10.8±8.4mgの服用時に観察された.その鎮静化には,再燃時服用量の2倍以上を要し,その必要量は再燃回数がふえるにつれ減少した.少量PSL(10mg/日以下)で長期(3年以上)寛解のみられたSLE13例は中枢神経および腎の障害が少なく,抗RNP抗体の陽性率が高かつた.
  • 隠岐 尚吾, 中尾 一和, 中井 義勝, 井村 裕夫
    1982 年 71 巻 4 号 p. 458-466
    発行日: 1982/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Nelson症候群の1例について,その臨床経過と共に,高β-endorphin血症を中心とするACTH関連ペプチドの臨床的意義を検討したので報告する.症例は42才の女性. 10年前Cushing病と診断され,両側副腎全摘術を受けた. 5年前から全身の色素沈着が著明となり,下垂体部に放射線照射を受けたが改善せず, 1年前初めてX線像上トルコ鞍の腫大を指摘された.早朝安静時の血中ACTH値は3ng/ml.脳脊髄液中のβ-endorphin値は正常範囲であつたが,血中のそれは750pg/m1で正常人の100倍以上であつた.血中β-endorphinはLVP, TRH, somatostatin, cortisolなど各種の負荷試験でACTHと並行して変動した.疼痛閾値,下垂体ホルモン分泌への影響,精神々経作用の有無,呼吸機能,およびnaloxoneの影響などについて検討したが, β-endorphinの明らかな生物作用は観察されなかつた.又, ACTH-β-endorphin共通前駆体のN端フラグメント, γ-MSHも高濃度血中に検出され, ACTH, β-endorphinと共に並行して変動した. cyproheptadineを投与したが臨床症状に改善みられず, Hardy法による下垂体腺腫摘出術を施行し,嫌色素性腺腫を摘出,血中ACTH値は正常化した.腺腫の培養液からACTH, β-endomhin, γ-MSHを検出した,術後,脳硬塞をおこし, 10カ月後に死亡した.剖検で脳底動脈を中心とする強い動脈硬化がみられ,治療上留意すべぎ問題と思われた.
  • 亀谷 富夫, 追分 久憲, 井村 優, 竹内 伸夫, 篠崎 公秀, 竹越 忠美, 西野 知一
    1982 年 71 巻 4 号 p. 467-472
    発行日: 1982/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Fabry病は伴性劣性遺伝性疾患で, heterozygote女性患者の発症は希であり,本邦では女性患者の剖検報告はない.我々は脳硬塞大動脈弁狭窄閉鎖不全症など,多彩な症状を呈した女性のFabry病患者剖検例を経験したので報告する.症例は66才の主婦で,長男は肺動脈弁閉鎖不全症を合併したFabry病と診断されている,意識消失を主訴に入院.脳硬塞による意識消失と考え治療,翌日には意識は回復した.患者は著しい心拡大(CTR 74.4%)と大動脈弁狭窄閉鎖不全症を合併しており,尿蛋白も陽性であつた.患者の白血球中のα-galactosidaseは,正常値とhemizygoteである長男についての測定値との中間値であり, Fabry病と診断された.心不全に対する治療を行なつたが入院61日目に突然頻脈となり呼吸停止,心停止とにて死亡した.剖検所見は,脳を含む全身の血管の中膜平滑筋細胞,心筋,腎の糸球体,ボーマン嚢,尿細管にfoam cellが認められ同部位に糖脂質が確認された.脳には小さな軟化巣が散在して認められた.大動脈弁には線維化を認めたが,糖脂質の沈着は認められなかつた.肝,心,腎,大動脈,脾では正常に比べCTHの増加が認められた.特に腎では同時にCDHの増加も認められた.又,各臓器中のα-galactosidase活性は工常の1/2~1/5に低下していた.以上の所見から本症例はheterozygoteにもかかわらず全身にCTH, CDHの著明な沈着を認めた興味あるFabry病と思われた.
  • 陶山 芳一, 清水 忠雄, 田中 義憲, 多田 正大, 藤井 浩, 三好 正人, 西村 伸治, 西谷 定一, 鹿嶽 研
    1982 年 71 巻 4 号 p. 473-478
    発行日: 1982/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    良性単クローン性免疫グロブリン血症(IgA-κ型)を合併した剥離性間質性肺炎の症例を経験したので報告した.症例は70才,男性で,労作時呼吸困難を主訴とし,ばち指や両側肺のvelcroラ音を認めた.血沈の亢進,白血球数, LDH,アルカリフォスファターゼの上昇がみられ,呼吸機能は1秒率78%, %VC 49%と拘束型障害,血液ガス分析はPo257mmHg, Pco234mmHgと拡散障害が推測された.胸部X線検査では両側中下肺野にびまん性スリガラス陰影,網状陰影がみられた.開胸肺生検で得られた組織像では,好酸性, PAS陽性で鉄染色陰性の顆粒をもつ類上皮細胞が肺胞腔に充満し,単核細胞の浸潤や線維化による肺胞隔壁の肥厚,散在性の小リンパ〓胞様構造もみられた.免疫電気泳動で血清中にIgA-κ型M成分がみられ, IgG, IgAは増加し,尿中B-J蛋白は陰性で,骨髄像,全身骨X線像に異常を認めなかつた.以上より良性単クロ-ン性免疫グロブリン血症を伴つた剥離性間質性肺炎と診断し,副腎皮質ホルモン薬を投与したところ,呼吸困難,血沈値,低酸素血症,胸部X線像上の改善がみられ,現在経過観察中である.文献上じん肺症にM蛋白血症(IgA型が多い),又は剥離性間質性肺炎が発生した症例はみられるが,両者を同時に合併した報告例はない.遷延感作および免疫異常状態が, M蛋白血症および剥離性間質性肺炎の発生に関与している事が推察される.
  • 渡辺 直也, 山内 康平, 松本 純治, 坂口 和成, 深瀬 正晃, 筒泉 正春, 深見 降則, 今井 康雄, 藤田 拓男
    1982 年 71 巻 4 号 p. 479-484
    発行日: 1982/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    家族性低カルシウム尿症性高カルシウム血症の報告例は,日本ではまだ非常に少ない.今回我々は,重症の新生児期原発性副甲状腺機能亢進症を伴つているという点で,本邦における最初の家系を報告する.患者は31才男性で,家族歴では本人を含め4人の高カルシウム血症を認めた.特に次女は,生後2日で高度の哺乳障害,呼吸困難を認め,新生児期原発性副甲状腺機能亢進症と診断された.患者自身はほとんど無症状であつたが,次女の原発性副甲状腺機能亢進症のため,家族スクリーニングにより高カルシウム血症を指摘された.入院精査の結果,原発性副甲状腺機能亢進症と診断され,副甲状腺亜全摘術を施行されたが,高カルシウム血症は改善しなかつた. s-Ca 11.7mg/dl, s-P 2.3mg/dlと高カルシウム低リン血症を示したが,血中PTHは0.58ng/mlと軽度上昇を認めるのみで, s-Mg, ALPはいずれも正常範囲であつた.尿中Ca排泄は, 107mg/dと高値を示さず, TmPo4/GFRは2.5mg/dl, %TRPは84%と,いずれも正常~やや低値を示し,カルシウム・クレアチニンのクリアランス比(Cca/Ccr)は, 0.006と低値を示した.その他,骨格系の検査や内分泌学的検査では,多発性内分泌腺腫症を示唆するような著明な異常を認めなかつた.家族性低カルシウム尿症性高カルシウム血症は,まだ未解決のところが多いが,本症の診断は,単なる診断と治療の医学から,予防・公衆衛生のレベルまで進んだ重要な意義を有すると考えられる.
  • 黒田 満彦, 亀谷 富夫, 森瀬 敏夫, 喜多 徹, 坂戸 俊一, 宮崎 良一, 東福 要平, 竹田 亮祐
    1982 年 71 巻 4 号 p. 485-496
    発行日: 1982/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    進行性腎炎に血小板異常,難聴および白内障を合併した発端症例を中心に,これらの異常の全部または一部が, 2世代7名以上の男女血縁者に出現した1家系を報告する.血小板異常は,巨大血小板性血小板減少症を呈し,血小板自身のvon Wi11ebrand因子に対する感受性低下を示す所見であつた.腎病変は,間質性病変を伴う増殖性糸球体腎炎の像で,光顕上は特異な所見に乏しかつたが,電顕では,糸球体基底膜の裂断などの所見がみられた.強度の感音性難聴は,低音域にも及んでいた.両側性の白内障は強度の近視を合併していた,遺伝形式は常染色体性不完全優性と推定された.臨床症状の強い症例は,異常因子のホモ接合体,潜在性異常者はヘテロ接合体保持者とみると矛盾が少なかつた.自験例でみられた以上のような特徴は, Epsteinらが1972年に報告した症候群に,多くの共通点がみられるが,白内障については,従来の報告例には全く記載をみない.腎,眼,聴覚器などの合併症は, Alport症候群に類似していたが,罹患者の性比には,共通性が乏しく,また血小板異常,遺伝形式は, Bernard-Soulier症候群に類似性があつた.結局,発端症例にみられた異常の特徴を全部満たす症例の報告は見当らなかつたが, Epsteinらの症候群とAlport症候群, Bernard-Soulier症候群でみられる異常とが,重なり合つて出現しうることを示す症例と理解した.本症例に関連して, Epstein症候群の報告例の問題点,今後の検討事項などを指摘した.
  • 岡田 道雄, 島井 新一郎, 古守 泰典, 菊池 春人, 久保 明, 高木 誠, 高橋 幸則, 西村 文朗, 荒川 正一, 渥美 義人
    1982 年 71 巻 4 号 p. 497-501
    発行日: 1982/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Accidental hypothermiaの報告は我国では調べる限り見当たらないので,我々が過去3年間に経験した高度(直腸温で25°C~26°C)な低体温を示した症例7例を報告する.多くは浮浪生活者で,全身衰弱あるいは急性アルコール中毒のため路上などで動けなくなり,寒冷にさらされて低体温になつたものであつた.入院時所見としては,意識障害,徐脈,脈拍微弱,血圧低下および対光反射の鈍麻などが特徴的であつた. 1例を除きアルコール中毒以外の合併症を持つていた.治療は25°Cまでは電気毛布で, 25°C以後は普通の毛布で保温し,合併症の治療を行なつた.体温は1例を除き7~16時間後に正常に復した.死亡例は2例で,他の報告に比べ良い成績であつた.検査成績では心電図で, J波の出現,筋電図混入,心房細動の出現,徐脈傾向が,血液検査成績で, GOT, LDH, CPKの上昇,血清アミラーゼの上昇,好中球の左方偏位等が特徴的であつた. accidental hypothermiaは,けつして希な疾患ではなく,体温が35°Cより上昇しない場合,電子体温計などで体温を確認し,その発見につとめるべきと思われる.
  • 広畑 俊成, 石光 敏行, 片本 哲郎, 本木 達也, 小出 直, 武田 忠直, 村尾 覚, 東原 英二
    1982 年 71 巻 4 号 p. 502-506
    発行日: 1982/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は49才の男性. 38才時心房中隔欠損と胃の逆位を指摘されたが放置した.昭和55年7月血尿と右上腹部腫瘤を主訴として当科に入院した.入院時貧血・浮種・チアノーゼなく,胸部で収縮・拡張両期の雑音とII音の固定性分裂を聴取し,右上腹部で手拳大の腫瘤を触知した.一般検査に加えて心臓血管撮影,心臓カテーテル検査,心エコー図,腹部血管撮影,消化管撮影,胆道撮影,肝シンチグラム,腹部CTスキャン,腹部エコーなどの諸検査を施行した結果, (1)多脾, (2)心房中隔欠損(左胸心), (3)奇静脈結合を伴う下大静脈遮断, (4)腹部内臓逆位, (5)腸回転異常, (6)肝異常分葉, (7)低位気管分岐, (8)右腎の二重腎盂などの先天性奇形,並びに右腎に発生したGrawitz腫瘍と診断した.昭和55年9月泌尿器科で右腎摘除術施行. 7×7×7.5cm大のGrawitz腫瘍を確認した.内臓の奇形や位置異常を伴う多脾症候群の症例報告は本邦で今までに36例あるが,その殆どは小児例であり成人例は3例にすぎない.しかも血行力学的に有意な心奇形を有する例はこのうち21才の1例にすぎない.本例はかくの如き心奇形を有する例としては希な長期生存例である.また多脾症候群に腫瘍が合併した症例の報告は内外になく,本症候群と腫瘍発生との関連については今後の検討を要する問題であろう.
  • 林 多喜王, 久津見 恭典, 中井 継彦, 上原 元, 喜多 徹, 黒田 満彦, 竹田 亮祐
    1982 年 71 巻 4 号 p. 507-512
    発行日: 1982/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    電撃傷に合併する急性腎不全は,ミオグロビン等の組織崩壊物の腎毒性が原因と考えられており,電撃傷における遷延死の合併症として最も重篤なものである.我々は, 77000ボルトの電撃を受け急性腎不全を合併したが,血漿交換およびすみやかな受傷部の切除等により救命し得た症例を経験したので報告する.症例は49才,男性で,両手掌および左肩より左足に通電した電撃により,左足は壊死に陥り,体表の約30%がIII度以上の熱傷を受けた.受傷第1日より乏尿となり,第3日における血清CPK値は209470IU/l,ミオグロビンは12500ng/ml以上と異常高値を示し, anion gap 23mEq/1, pH 7.28の代謝性アシドーシスなど,高度の組織崩壊が血液生化学検査からもうかがわれた.血液透析をくり返すとともに,受傷後第4日に回復不能と判断された左足を切断し,第6日と第10日に血漿交換を行なつた.この血漿交換にてミオグロビンは95%以上除去された,一時消化管出血も合併したが,受傷後第3週より利尿がみられ, GFR 40m1/minまで回復した,本例は本邦における電撃傷に伴う急性腎不全のうち救命し得た第3例であり,血漿交換を施行した初めての症例である.血漿交換はミオグロビンや他の大分子組織崩壊物の除去に有効で,電撃傷,熱傷,挫滅症候群等の腎不全例に対しよい適応があると考えられる.
  • 新見 道夫, 倉田 典之, 大藤 眞, 白神 史雄, 上野 脩幸, 長谷川 栄一, 松尾 信彦, 斉藤 龍介
    1982 年 71 巻 4 号 p. 513-518
    発行日: 1982/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Cogan症候群は若年者に好発し,非梅毒性角膜炎と眩暈,耳鳴,難聴をきたす疾患である.本邦ではいまだまれな疾患で,その成因については充分判明していない.本症候群は,一般的にはlocal vasculitisとみなされているが,角膜あるいは蝸牛の血管炎の病像は証明されていない.一方, systemic vasculitisと関連した症例も数多く報告されてきている.今回,筆者らは臨床像より本症と診断した症例について報告する.症例は45才,女性で,眼の充血,眼痛で発症し,発熱を呈するようになり,眩暈,耳鳴,難聴の発現をみている.検査成績では抗核抗体は陰性で,補体は上昇,血沈値の著明な亢進, CRP強度陽性, α2, γ-グロブリンの増加,貧血,白血球数増加,血小板数増加,髄液圧上昇を認めた.眼科所見では,角膜の実質に微細顆粒状の混濁を認め,又,乳頭浮腫がみられた.耳鼻咽喉科所見では,聴,平衡覚機能検査成績から両側難聴は内耳難聴が示唆され,平衡障害も末梢前庭性と考えられた.血管炎の証明のため筋および腎生検,脳動脈,腹腔動脈造影を施行したが,これを証明することはできなかつた.しかし,高熱の持続期間が3ヵ月に達したこと,生検その他で血管炎の証明が不可能であったことから,治療診断の意味も兼ねてステロイド薬を投与した.その結果,臨床症状と検査成績の劇的な改善を得た.以上から,本例をCogan症候群と診断した.
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