症例は32才の日本人男性で, 17才頃より貧血を指摘されていたが,全身倦怠感を主訴に近医を受診し,貧血と脾腫を指摘され精査目的で当科へ入院した.入院時,尿検査においてウロビリノーゲンの陽性所見を認めるもヘモジデリン等の異常は認めず,末梢血でRBC 463万/mm
3, Hb 9.lg/dl, Ht 28%, MCV 60μ
3, MCH 20rr,血液像では赤血球大小不同,奇型,標的細胞が認められた.血液生化学検査において,軽度の間接型ビリルビンの上昇を認める以外には異常を認めず,また血清鉄88μg/dl,総鉄結合能225μg/dlであつた.以上より溶血性貧血を疑いさらに検査をすすめた. Heinz小体生成試験が陽性を示した以外,熱変性試験, sugar-water試験,直接,間接クームス試験はいずれも陰性であつた. hemoglobin電気泳動の結果〔A
2 6.2%, F21.5%, abnormal hemoglobin (-)〕よりβ-thalassemiaを疑い,
14C-leucineによるβ鎖/α鎖の合成比を求めたところ, 0.42とβ鎖合成の抑制が認められた.以上,家族歴,臨床症状,これら検査成績よりβ-thalassemia intermediaと診断した.本邦におけるthalassemiaは現在までに47家系の報告がみられるが, β-thalassemia intermediaとして報告されたのは本症例を含め5例のみであり,非常にまれな症例と考えられる.
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