日本内科学会雑誌
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72 巻, 3 号
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  • 白戸 千昭
    1983 年 72 巻 3 号 p. 277-287
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Poor R wave progression (PRWP)は陳旧性前壁中隔心筋梗塞,左室肥大,ある種の右室肥大および心疾患のない正常人において認められる心電図所見である.本研究は前胸壁マッピング心電図を用いて, PRWPの原因疾患を鑑別することを目的とした,標準12誘導心電図でPRWPの基準(V1V2V3誘導のr波が0.3mV以下)を満足する160例を対象とした.対象症例を4群(前壁中隔心筋梗塞61例,左室肥大41例,肺疾患18例,正常40例)に分類した.全例に36誘導の前胸壁マッピング心電図を記録し,枝分かれ方式でそれぞれの群を比較検討した.各群をV1V2V3誘導のQRS波形によつて6型に分類し,各型毎に心筋梗塞と他の3群とを比較した. I型(QS・QS・QS), II型(QS・QS・rS), III型(rS・QS・QS), IV型(QS・rS・rS), V型(rS・rS・QS), VI型(rS・rS・rS).一方で,初期r波の波高値によつて, r=0mV (4点)から0.lmV毎にr>0.3mV (0点)までの5段階の得点を付け,得点法とした.この得点法およびQSパターンの総数が,前壁中隔心筋梗塞を鑑別する有用な要素であつた.他にQRS波の波高値, R/S比,陰性T波の位置が有用な鑑別要素となつた.これらの要素を組み合わせることにより,各群が下記の診断率(sensitivity, specificity)で鑑別された.前壁中隔心筋梗塞I~V型(100%, 100%), VI型(87.5%, 92.6%),左室肥大(94.8%, 92.7%),肺疾患(77.8%, 95.1%).
  • 福井 須賀男, 藤井 謙司, 上木 昇, 濱野 裕, 佐藤 邦友, 井上 宏子, 間瀬 恒, 大西 修作, 南野 隆三, 星田 四朗, 佐藤 ...
    1983 年 72 巻 3 号 p. 288-293
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    再梗塞に合併する心不全の特徴を検討するために,発症後24時間以内に入院した急性心筋梗塞216例(初回梗塞149例,再梗塞67例,平均年令61.5才)を対象に初回梗塞,再梗塞別に心不全の合併頻度,治療に対する反応,急性期予後を解析した.その結果, (1)初回梗塞149例中Killip I群は109例(73.1%), II群24例(16.1%), III群11例(7.4%), IV群5例(3.4%)であり,心不全合併例(II, III, IV群)は26.9%であつた.一方,再梗塞67例中Killip I群32例(47.7%), II群14例(20.9%), III群17例(25.4%), IV群4例(6.0%)で心不全合併例は52.3%であつた. (2)心不全を規定する因子としては初回梗塞では梗塞量,再梗塞では梗塞部位が重要であることが示唆された. (3)初回梗塞に合併する心不全は再梗塞のそれに比し,薬物療法に対する反応も悪く,大動脈内バルーンパソピング法(IABP)を必要とする率も高く難治性であつた. (4)初回梗塞に合併する心不全例の急性期死亡率は45.0%であり,再梗塞より高率で(20.0%)予後不良であつた.
  • 副島 昭典
    1983 年 72 巻 3 号 p. 294-301
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    急性尿細管壊死(ATN)20例,一次性あるいは二次性急速進行性糸球体腎炎(RPGN)8例,腎後性急性腎不全4例の計32例について,種々の臨床的パラメーターと共に発症早期より経時的に血中・尿中β2-snicroglobulin (BMG)の測定を行なつた.その結果発症初期の著明な血中BMGの上昇は急性糸球体障害を,著明な尿中BMGの高値は急性尿細管障害を示唆する所見と考えられ,発症早期の血中・尿中BGMの測定は急性腎不全の主たる腎病変部位の推測に有用と考えられた.またATNにおいて,血中BMGの経時的測定はその急速な下降によつて利尿期への移行の時期を知らしめる有用な指標となり,逆に回復期にはcreatinine値が正常化しても血中BMGは軽度上昇を持続し,より感度の高い腎機能回復の指標となると考えられた.また急性腎不全症例と比較検討する目的で,慢性腎不全の心不全による急性増悪症例で急性腎不全とまぎらわしい臨床経過を示した6例についても同様の検討を行ない,その結果血中BMGの経時的測定は両者の鑑別にも有用であると考えられた.さらに血液透析による血中BMG測定値への影響についても,合わせて検討を行なつた.
  • 田村 信司, 椿尾 忠博, 玉置 俊治, 田川 進一, 片桐 修一, 西川 正博, 倉田 義之, 関 孝一, 米沢 毅, 垂井 清一郎
    1983 年 72 巻 3 号 p. 308-314
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    前頚部巨大腫瘤を主症状とし,胸部X線像で一過性の多発性結節陰影を呈するという特異な病像を示したサルコイドーシス(サ症)の1症例を報告する.症例は38才,女.昭和51年3月頃から左顎下腺が腫脹し某病院で摘出術を受け,慢性唾液腺炎と診断され放置していた.昭和53年4月頃から左側頚部腫瘤出現し漸次腫大し前頚部全体を占めるにいたり昭和56年1月当科入院した.前頚部全体を占める腫瘤,表在リンパ節腫脹を認め,肝2横指,脾4横指触知し左末梢性顔面神経麻痺を認めた.検血で貧血なく,リンパ球数の軽度減少を認めた.血沈促進しγ-グロブリン特にIgGの増加を認め,血清アンジオテンシン変換酵素(ACE)活性,血清リゾチーム値はともに上昇していた.胸部X線像にてBHLは認めず一過性の多発性結節陰影を認めた.ツ反応陰性.リンパ節,頚部腫瘤,肝の生検組織像にて非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めKveimテスト陽性より本症例をサ症と診断した.副腎皮質ホルモン療法にて頚部腫瘤,肝,脾は急速に縮小し血清ACE活性, IgGも正常に復した.なお本症例の末梢リンパ球機能検査にてConA induced suppressor能低下を認めた.本症例のごとき巨大腫瘤を呈したサ症の報告は検索しえた限り1例もなく,非常に希な病像を呈したサ症の1症例と考え報告する.
  • 佐藤 能啓, 庄司 紘史, 品川 一博, 加地 正郎, 安楽 茂巳, 貴田 秀樹, 中原 俊尚
    1983 年 72 巻 3 号 p. 315-319
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    初老期痴呆を合併した運動ニューロン疾患の1例を報告した.症例は57才,男性で,入院10カ月前より精神症状,両上肢脱力および嚥下困難が相次いで出現し,精査のため当科入院.全経過を通じて,記銘障害,失見当識などの痴呆の基本症状以外に,精神症状として多幸,病識の欠如,滞続言語,徘徊,礼節の保持などを認め従来の初老期痴呆群の中ではAlzheimer病よりもPick病に近い像がみられた.一方神経症状としては球症状に加えて,筋萎縮および線維束性〓縮を頚部,肩甲帯,前胸部および上肢に著明に,下肢に軽度認めた.錐体路徴候なし.脳波および髄液検査は正常. CT上前頭葉萎縮と側脳室前角の拡大を認めた.全経過約1年で呼吸不全にて死亡.神経病理学的には肉眼的に前頭葉中心のびまん性脳萎縮を認め,一方組織学的に大脳皮質の変化としては前頭葉での神経細胞の萎縮および前頭葉第2, 3層の海綿状態を認め,これにご加えて前頭葉および側頭葉皮質深層から白質にかけてastrocytosisが認められた.大脳基底核,視床,小脳は正常.原線維変化,老人斑, Pick細胞などはない.脊髄では頚髄,胸髄を中心として前角細胞の脱落,萎縮を認めた.本症例の臨床病理像は既知の疾患概念では説明し難いものであるが,一方本例と臨床病理学的に極めて類似した症例は本邦に希ならず報告されており,こうした症例群は新しい疾患である可能性が示唆される.
  • 飯田 博行, 水村 泰治, 浦岡 忠夫, 高田 正信, 杉本 恒明, 三輪 淳夫, 山岸 高由
    1983 年 72 巻 3 号 p. 320-326
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    腸球菌による感染性心内膜炎に伴つた膜性糸球体腎炎の1剖検例を経験し,腎組織のelutionにて抗腸球菌抗体を証明しえたので報告する.症例は78才,男性.呼吸困難と全身浮腫を主訴として,昭和55年3月15日入院.入院時両肺野に湿性ラ音,心尖部に全収縮期および拡張期灌水様雑音を聴取,うつ血性心不全状態であつた.検査成績では貧血,白血球増加,血沈の高度亢進があり,尿蛋白2.2g/日,血尿および細胞性円柱を認めた. BUN 46mg/dl, Cr 3.5mg/dl,血清アルブミン2.4g/dl, γ-グロブリン3.2g/dl, CRP (5+), RA(+),低補体面症,血中免疫複合体,尿中FDPの上昇を認めた.心エコー図で心内膜炎の所見が得られ,動脈血から腸球菌が分離された.以上の所見より,腸球菌による感染性心内膜炎とこれに糸球体腎炎を伴つたものと考え, ampicillinを投与した.その後検査成績は漸次改善したが,心不全が悪化し,第58病日に死亡した.剖検では感染性心内膜炎,うつ血性心不全の所見に加え,腎組織で糸球体係蹄壁のび漫性肥厚,軽度のメサンギウム増生,係蹄壁に沿つた免疫グロブリン, C1〓, C3の細顆粒状沈着を認め,電顕で糸球体基底膜内,上皮下および一部内皮下やメサンギウムに高電子密度の沈着物を認めた.糸球体に腸球菌抗原の局在は証朗されなかつたが,腎eluateは腸球菌と特異的に反応した.本例では感染性心内膜炎の原因菌である腸球菌が免疫複合体を介して,膜性糸球体腎炎の発生に関与したものと考えられた.
  • 油谷 浩幸, 高橋 利之, 児玉 龍彦, 関原 久彦, 村上 徹, 橋本 康男, 工藤 翔二, 小坂 樹徳, 森 茂郎
    1983 年 72 巻 3 号 p. 327-332
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    29才,女.昭和51年(24才)肺野異常陰影を指摘され, 52年発熱,喀痰を伴う咳,発疹が出現.頚部帯状疱疹に罹患. 53年肝脾腫が出現.他院にての化学療法にても著明な改善が見られず, 54年10月精査のため当科入院.微熱,軽度貧血,肝脾腫あり.神経学的異常は認めず.検査所見にて汎血球減少症,免疫グロブリン値低下,ツ反・DNCB皮膚反応陰性を認め,肺門リンパ節生検標本よりHodgkin病(Mixed cellularity type)と診断. MOPP療法により改善を見た.経過中左下腿の帯状疱疹,単純ヘルペス脳脊髄膜炎に罹患.その後胃潰瘍による吐血後ステロイド漸減中,脳卒中発作をおこし右運動不全麻痺,運動失語を呈した.頭部CT像でfrontotemporal領域に梗塞巣があり,頭部血管造影により頭蓋内血管全般に血管壁の不整,狭小化,動脈瘤様変化があり,血管炎合併が疑われた.本例は原病および治療に伴う免疫不全状態下にヘルペスウイルス感染後,化学療法漸減に伴う免疫能回復中(γグロブリン,ウイルス抗体価の上昇等)に中枢神経系の血管炎によると思われる脳梗塞を発症した. Grecoらの報告を始めHodgkin病と中枢神経系の血管炎の合併は世界で4例が知られるが,本邦には例を見ず,血管炎発症におけるウイルス感染,個体の免疫能を考える上で興味ある症例と考えられた.
  • 大野 勲, 羽根田 隆, 滝島 任
    1983 年 72 巻 3 号 p. 333-338
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    乾燥症候群に,胸膜炎,クリオグロブリン血症および糸球体腎炎を合併した1症例を報告する.乾燥症候群は,膠原病を伴わないSjögren症候群であるが,様々な臓器にリンパ球の浸潤と線維化を主とする病変がみられる.過去の報告では,肺病変としては間質性肺炎が多く,本症例の如き胸膜へのリンパ球浸潤の例は,きわめて少ない.一方,腎病変としては,間質性腎炎による尿細管性アシドーシスをきたすことが多く,糸球体腎炎の報告は少ない.糸球体腎炎を合併した数少ない症例をみると,大部分が膠原病を合併し,種々の自己抗体が存在する例である.本例では,膠原病の合併は認められなかつたが,リウマチ因子とクリオグロブリンが陽性であつた.このクリオグロブリンは, IgG, IgM, IgAを12:2.5:1の割合に含む免疫複合体であり,さらに腎生検材料による蛍光抗体法から糸球体基底膜への免疫グロブリン沈着が証明され,また血清補体価の低下から,本症は免疫複合体の関与する糸球体腎炎であると考えられた.本症例の如く,乾燥症候群とクリオグロブリンによる糸球体腎炎との合併例は,国外で過去5例報告されているだけであり,きわめて希な症例である.
  • 本橋 豊, 本間 健, 平賀 正純, 坂本 尚登, 稲月 文明, 船津 徹太郎
    1983 年 72 巻 3 号 p. 339-344
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    後腹膜に発生する腫瘍の中で軟骨肉腫の報告はきわめて少ないが,われわれは報告例中最大と思われる後腹膜軟骨肉腫の1例を経験したので報告する.症例は66才の男性で,上腹部腫瘤を主訴として入院.肝シンチにて肝右葉の大半を占める欠損像,超音波検査にて数個の〓胞形成を伴う上腹部の腫瘍像,腹部CTにて脊椎前面より上腹部の約4分の3を占める腫瘍像,腹部血管造影にて右肝動脈の伸展像と無血管野を認めた.上記の所見より嚢胞を有する腫瘍性病変が疑われたが,この腫瘍が肝内のものか肝外のものかの診断は難しかつた.開腹手術による生検の結果,後腹膜に発生した巨大な軟骨肉腫と判明した.腫瘍は肝臓,胃,右腎,下大静脈を圧迫しており,摘除の結果33×22×10cm,重量2600gと判明した.これは報告例中最大のものと思われる.一般に後腹膜腫瘍は巨大な腫瘤となることが多いにもかかわらず診断の確定が難しい。近年進歩の著しい諸種の画像診断にて,部位診断は比較的容易になつたにもかかわらず,必ずしも確定診断には至らないことが多い.腹部腫瘤の鑑別診断上,本症例のような後腹膜腫瘍をつねに念頭に置くことが重要である.
  • 木嶋 祥麿, 小沢 潔, 桜井 俊一朗, 仲山 勲, 東海林 隆男, 笹岡 拓雄
    1983 年 72 巻 3 号 p. 345-351
    発行日: 1983/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    腎障害が進行すると血液凝固の異常が生じ,四肢に出血斑をみることがある.しかし,通常,致命的な出血素因になることはない.一方,尿毒症になると消化器症状のため食事摂取量が著しく減少するが,それだけでビタミンK欠乏性出血を併発する例はあまり知られていない.われわれは,慢性腎不全患者の加療中にビタミンK欠乏に伴う凝固異常を経験した.患者は71才で, 10年来高血圧とたんぱく尿のため近医にて治療を受けていた.最近腎機能が悪化してきており,頑固な悪心・嘔吐,食欲不振がつづいていた.入院時,顔面浮腫,アンモニア臭,口唇の亀裂からの出血がみられ,検査の結果尿毒症と診断した.腹膜透析により著しく改善したが,内シャント手術後抗生物質を投与し6日後に黒色便,その翌日は術部からの再出血をみた.プロトロンビン時間・部分トロボプラスチン時間は延長しており,検査上DICや高度の肝障害は否定され, phytonadione投与にて改善したことから,ビタミンK欠乏性出血症と診断した.高令で腎障害のある患者では食事不足に陥りやすく,また抗生物質の投与も加わると比較的容易にビタミンK欠乏状態に陥つてしまうと考えられる.このような例の報告はいまだ少なく,腎不全患者を診るうえで充分留意されるべき合併症の一つであるといえる.
  • 1983 年 72 巻 3 号 p. 400a
    発行日: 1983年
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 1983 年 72 巻 3 号 p. 400b
    発行日: 1983年
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
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