日本内科学会雑誌
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72 巻, 4 号
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  • 岡田 道雄, 渥美 義仁, 西村 文朗, 荒川 正一, 高橋 幸則, 高木 誠, 久保 明, 島井 新一郎, 古守 泰典, 菊池 春人
    1983 年 72 巻 4 号 p. 401-409
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    過去4年間に経験したaccidental hypothermia74例の臨床像を検討し, passive rewarmingの成績をprospectiveに調査した.結果:男71例,女3例.平均年令52才(32~85).大半が浮浪生活者で,急性アルコール中毒あるいは合併症により動けなくなり,寒冷にさらされて低体温になつたが,条件によつては夏でも起こりうることを示した.入院時体温は20.4°Cから33.8°C,平均29.7°C.26°C未満13例, 26°~32°C41例, 32.1°C以上20例であつた.意識は障害されていた例が多いが,低体温以外の意識障害をきたす原因を持つ例も多かつた.他に瞳孔対光反射異常,血圧低下(測定不能例も多い),徐脈などを認めた.合併症を持つ例が多く,主なものは肺炎,低血糖,膵炎,消化管出血,肝硬変,腎不全,頭部外傷,胃潰瘍などであつた.血清アミラーゼは32例で250 Somogyi単位以上を示し,剖検でも11例中7例で膵炎を認めた.血糖は18例で低血糖を, 6例で300mg/dl以上の高血糖を示した. passive rewarmingにて体温は平均0.76°C/時間の速度で回復した. 20例が死亡(27%)したが, 11例は低体温とは関係ない合併症による死亡であつた. 26°C未満の例,血圧測定不能例,アシドーシス例などの予後が悪いように思われた.我国においても低体温症は希でなく, passive rewarmingはactive rewarmingと比較しても有用な保温法と思われる.
  • 沢山 俊民, 寒川 昌信, 長谷川 浩一, 川井 信義, 前田 如矢, 広木 忠行, 荒川 規矩男, 井上 清, 本間 請子, 酒井 章, ...
    1983 年 72 巻 4 号 p. 410-415
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    目的:心房細動を有する中・高年の女性が,過去に弁膜症・心雑音・心不全の既往がなく末梢動脈の塞栓症状で発病し,来院後はじめて僧帽弁狭窄と診断される症例を最近多くみかけるようになつた.私どもはこの点に興味をもち,本症における臨床像を明らかにする目的で,8施設において最近5年間に経験された500例の本症に関して臨床的解析を行なつた.方法:入院精査し,心エコー図および/または心カテーテル検査,外科手術で本症(合併弁膜症を含む)と診断された500例(男155,女345,年令24才~81才)を対象にした.本症を性別,年令別,調律別(洞調律と心房細動),塞栓の有無(既往または合併)別に分類して検討した.成績: (1) 過去に心雑音・弁膜症の既往がなかつた症例が38%, (2) 洞調律例が28%,心房細動例が72%, (3)塞栓の合併例は29%, (4) 洞調律例では塞栓の合併が6%, 一方心房細動佛では37%, (5) 30才台以上では,心房細動が平均76%で,うち塞栓の合併率は平均38%であつた.考案:以上の成績は,高令者の増加に伴つて軽症の僧帽弁狭窄の生存率が高くなつたが,心房細動を合併すると本症の診断が困難になるため,適切な処置がなされていない反面,末梢動脈塞栓で機能不全に陥いる例が増してきた結果と考えられる.従来の報告,最近の外科手術例に関する同類の研究について検討し,考察を加えた.
  • 奥野 忠雄, 王 〓玉, 上田 敬, 岩井 真樹, 中島 悦郎, 小笠原 孟史, 岡上 武, 瀧野 辰郎, 森 克己
    1983 年 72 巻 4 号 p. 416-422
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    過去10年間に組織学的に診断された307例の慢性肝炎活動性(CAH)でのbridging hepatic necrosis(BN)の予後に及ぼす意義をretrospectiveに検討した. CAH307例のうちBNを伴うものは70例(22.8%)であつた.血清トランスアミナーゼの推移や,肝機能検査成績からはBNを伴うものと伴わないCAHを区別することは不可能であつたが,総ビリルビン, ICG(R15), BSP(45分)はBNを伴つたCAHで有意に高かつた. HBs抗原の陽性率は両群で統計学的な有意差は認めなかつた. BNの有無でCAHの予後を比較すると, BNを伴う群では短期間にかつ高率(46.1%)に肝硬変に移行し, BNを伴わない群では1例(2.5%)のみが肝硬変に移行した. HBs抗原の有無でBNの意義を検討すると非B型はB型に比し,平均年令が高く,肝硬変への進展に要する期間も短い傾向がみられた.
  • 犬飼 敏彦, 萩原 修, 今 陽一, 藤原 隆, 吉江 康正, 冨澤 貴, 柁原 昭夫, 小林 節雄, 森松 光紀
    1983 年 72 巻 4 号 p. 423-429
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    我々は, Adie症候群,分節性無汗症,起立性低血圧を伴つた皮膚筋炎の1例を経験し,類推例を見ない極めて希な症例と思われたので報告する.症例. 30才,女性.主訴:発熱,咳嗽.現病歴: 1979年8月上旬より両側下肢に関節痛,筋肉痛および筋力低下を自覚, 9月15日より約38°Cの発熱,咳嗽をきたし, 17日当科受診.四肢近位筋の萎縮およびGOT, GPT, LDH, CPKなどの高値と間質性肺炎像が認められ26日入院.筋電図,皮膚および筋生検組織より皮膚筋炎と確診. steroidの投与により皮膚筋炎に基づく臨床症状および検査所見は改善した.一方,初診時より両側性瞳孔緊張,深部反射消失を認め,またmecholyl点眼により両側に著明な縮瞳を確認し,両側性Adie症候群の完全型であると診断.また自律神経機能検査より分節姓無汗症,起立性低血圧の存在も明らかとなつた. Adie症候群と自律神経異常との合併はよく知られており, acute pandysautonomiaの概念で把えられ病態生理学的な検討がなされている.特に無汗症との因果関係については,報告者により見解の不一致を見るが,本例においてはその臨床所見より交感神経節性障害,あるいは広範な節後障害が推測される.一方,他の疾患に伴う“症候性Adie症候群”の報告は蓄積されているが,本例の如く皮膚筋炎との合併例は,我々の検索した範囲では報告されておらず,貴重な症例と考えられ,その病態解明には今後の慎重な経過観察が必要であろう.
  • 須藤 淳一, 朝倉 康景, 石川 哲, 迫田 秀治, 有正 修道, 小林 敏成, 佐藤 博道, 伊藤 慈秀
    1983 年 72 巻 4 号 p. 430-437
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    子宮原発悪性リンパ腫に伴つた寒冷凝集素症の1例を報告した.症例は78才の女性で,第12胸椎圧迫骨折のために入院した際に,貧血および下腹部腫瘤を指摘された.検査所見では,正色素性貧血,網状赤血球数の増加,間接型ビリルビン血症,ハプトグロビンの低値および骨髄の赤芽球過形成など溶血性貧血の所見がみられた.寒冷凝集反応は高値(×102400)を示し,寒冷凝集素は抗I特異性をもち, IgM (κ)であつた.以上により寒冷凝集素症と診断し,溶血のためステロイド投与を行なつたが,入院第21病日に消化管出血および溶血クリーゼのため死亡した.剖検では下腹部腫瘤は子宮体部原発の悪性リンパ腫であり, LSG分類による組織型はびまん性リンパ腫混合型であつた.腫瘍細胞は光顕および電顕所見では,未分化なリンパ芽球様細胞が主体をなしていた.免疫組織学的な検索では, PAP法では腫瘍細胞細胞質内にlgMおよびκ鎖の陽性像を認め,電顕酵素抗体法でも腫瘍細胞の核膜周囲,ポリゾームおよび粗面小胞体にlgMの局在が認められた.以上により,本症例は形態的に未公化な腫瘍細胞が,自己の赤血球に対する抗体を産生していたと考えられ興味深い.
  • 吉田 忠義, 篠原 秀樹, 神田 洋, 安里 洋, 佐々木 豊志, 須賀 秀晃, 菅野 仁平, 鈴木 忠, 石橋 浩明, 村田 和彦
    1983 年 72 巻 4 号 p. 438-445
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    うっ血型心筋症を呈したoculo-craniosomatic neuromuscular disease with ragged red fibers (OCS-MN)1)の1例を報告する.本例は,従来報告されている刺激伝導系障害に加え,心機能的にはうつ血型心筋症の像を呈した希な症例であり,このような症例は私共の知る限り,これまで記載されていない.本例はまた,骨格筋生検で特徴ある結晶様封入体を証明し,さらに心筋生検で,筋鞘下にミトコンドリアの集簇,形態異常を認めた.しかし結晶様封入体は観察出来なかつた.本例は心筋でミトコンドリアの形態異常が証明された,第2例目の報告2)である.これに加えて,本例には次のような特徴があつた. (1)頭部CT検査で大脳と小脳に萎縮があり,大脳半球白質に小球状の低吸収域を認めた. (2)電気生理学的ならびに組織学的に末梢神経障害を認めたが,その程度は軽微であつた. (3)血清アミノ酸分析で,アラニンを始め,分枝鎖アミノ酸,芳香族アミノ酸,尿素回路に関係するアミノ酸などの上昇が見られた. (4)瞳孔異常,対光・調節・輻輳反射の異常など,眼症状に特有な所見があつた. (5)副腎皮質ホルモンの投薬は無効であつた. (6)内分泌機能を視床下部-下垂体系を中心として検査したが, TRH試験でTSHの低反応性と17KS, 17OHCSの1日排泄量の低下を認めたのみで,他の異常はなかつた.
  • 平田 和文, 津崎 隆司, 遠藤 浩, 三宅 康夫
    1983 年 72 巻 4 号 p. 446-451
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Uveo-parotid feverならびに胸水貯留を伴つたsarcoidosisの1例を報告する.症例は38才,男性.昭和55年12月より霧視,昭和56年1月より微熱を生じ当科に入院した.その後昭和56年2月中旬より両側耳下腺腫脹を来し,一過性胸水貯留も出現した.入院後の検索にてブドウ膜炎,胸部X線像でBHL,肝生検にてsarcoid結節が確認されsarcoidosisと診断した.本例ではsarcoidosisの肺外病変の検索手段として67Ga-citrateによる頭部シンチグラムを行ない,ステロイド治療前には眼部,耳下腺部に一致して67Ga-citrateの著明な集積を認め,加療後には集積が著減することを経験した.なお,本例には高アミラーゼ血症がみられ,アインザイム分析ではS型が主体であつた.以上,希な合併症を伴つたsarcoidosisの1例につき文献的考察を加えて報告するとともに,肺外病変の診断に67Ga-citrateシンチグラムが有用であることを強調した.
  • 桑原 隆, 金津 和郎, 土井 俊夫, 永井 博之, 大橋 博美, 吉田 治義
    1983 年 72 巻 4 号 p. 452-457
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ブロム酸カリ服用後,無尿・難聴をきたし腎機能の回復が得られず,慢性血液透析を続けている39才,女性の臨床経過と腎生検組織所見を報告する.発病後3カ月の腎生検で,糸球体は正常だが広範な尿細管上皮の変性・壊死を認めた.又多数の尿細管腔内にKossa染色で,黒褐色に染色されるCa沈着物が存在し同部の基底膜はPAM染色にて明らかな断裂像を示した.この様な所見は,他に報告がないが,尿細管がプロム酸塩による直接的障害から不可逆性壊死におちいつたものと考えられ,腎機能障害が持続する事を説明し得る.一般に急性尿細管壊死では上皮は再生され腎機能は回復するとされるが,重篤な例では不可逆性尿細管壊死がおこり腎機能も回復しないと考えられた.腎障害・難聴の外にブロム酸中毒の特徴に,発病後1カ月に発症し, 1~2カ月で自然軽快する両足趾の火傷様疼痛がある.又多くの例で精神異常を伴うとされ本例でも病初期に性格異常を呈した.長期透析により性格異常はなくなつたので,病初期の精神異常は反応性神経症と考えられた.
  • 森田 茂樹, 瀬戸 牧子, 原 恵子, 井手 芳彦, 石丸 忠彦, 和泉 元衛, 辻畑 光宏, 長瀧 重信
    1983 年 72 巻 4 号 p. 458-461
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    民間療法として大量の飲水と水浣腸を行ない,急性水中毒症の発症をみた健康成人例を経験した.症例は25才,男性.昭和54年より健康増進を信じて大量飲水と水浣腸を始あた.昭和55年5月27日大量発汗後約30分で2lの飲水と81の水浣腸を行ない,四肢のこわばり感等出現したのち呼名反応なくなつたため当科入院となつた.入院時血清Na l24mEq/lと低Na血症を呈していた.また入院前24時間以上水分摂取がなかつたにもかかわらず, Na濃度6mEq/lと低浸透圧尿の多量排泄(1日量5300m1)がみられた.この利尿に伴つて血清Na濃度は改善し意識が回復した.以上より急性水中毒症と診断した.急性水中毒症は何らかの基礎疾患を有する例にみられやすく,その成因は細胞外液の急激な低浸透圧化のために水分が細胞内に移動し,脳浮腫をきたすためとされている.本例では発症後水分制限がなされたこと,高張ブドウ糖・Na製剤輸液を使用したことに加えて,急激な利尿により細胞外液の浸透圧改善が得られ救命し得たと思われる.なお第3病日に行なつた腰椎穿刺では, Na濃度97mEq/l, Cl濃度82mEq/l,総蛋白量12mg/dlと低浸透圧であつた.血清Na濃度の改善よりも脳細胞内および脳脊髄液の浸透圧改善は遅れると考えられる.入院時検査成績で総ビリルビン4.0mg/dl, CPK 1815mU/ml, LDH 507mU/ml, GOT 67mU/ml等の異常値を示していたが,水中毒症との関係については現在の所明らかではない.
  • 河野 弘司, 森本 茂人, 大西 利夫, 田原 保宏, 熊原 雄一
    1983 年 72 巻 4 号 p. 462-467
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Krukenberg腫瘍の転移経路はリンパ行性である事が多いが,今回我々はその転移経路がリンパ行性ではなく,直接播種によると考えられた進行胃癌を原発巣とするKrukenberg腫瘍の1例を経験したので報告する.本症例は下腹部痛,腹部膨満感,微熱などの症状を呈して入院し,血清癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen; CEA)値は1.4ng/m1と正常範囲内にあつたが,腹部超音波検査にて卵巣腫瘍と腹水が発見され,腹水中CEA値は36.4ng/mlと上昇し,またPapanicolaou染色でclass IVの悪性細胞を認め,さらに上部消化管の検索にてBorrmann IV型の進行胃癌が発見されるに至り,胃原発性のKrukenberg腫瘍と診断された.腫瘍マーカーとしてのCEAの性質上,もし腫瘍が脈管系を巻き込んで浸潤して悪性細胞が血中ないしはリンパ中に多数存在し,腹腔内への浸潤が軽度であれば,血中CEA値が高値を示し腹水中CEA値は正常ないしは軽度上昇を示すにとどまるものと考えられる.しかし,本症例で得られた結果からは,腫瘍細胞は血中よりもむしろ腹水中により多く存在したものと考えられ,このKrukenberg腫瘍が直接播種によつて生じた可能性が大きいと推察された.これは抗癌薬の腹腔内投与によつて,腹水中の悪性細胞の消失と, CEA値の低下が同時に見られた事によつても支持されるものと思われる.
  • 桑原 由孝, 吉川 治哉, 岡 勇二, 吉川 敏, 伊藤 庄三, 楠神 和男, 宇野 裕
    1983 年 72 巻 4 号 p. 468-472
    発行日: 1983/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は85才の男性で,腹部膨満感を主訴として当科へ入院した.理学的所見では,左上腹部に手拳大の腫瘤,胸水および腹水を認め,胃透視および胃内視鏡にて,胃体部後壁にgiantfoldと不整形の潰瘍を認めた.同部位よりの生検にてmalignant lymphoma (diffuse and mixedtype)と診断した.腹水,胸水および骨髄にリンパ球様異型細胞を認め,腹水中異型細胞の表面マーカー検索にてB-cell由来が示された. COP (cyclophosphamide 500mg/w, vincristine lmg/w, prednisolone 15mg/d)療法7コースにて腹部腫瘤,腹水および骨髄中のリンパ球様異型細胞は消失し,胸水も減少した.退院後COP療法2コースが追加されたが, 3ヵ月後患者は食欲不振,右肋間痛を訴えて再入院した.理学的所見より両側頚部のリソパ節腫脹を認め,また,髄液細胞診にてリンパ球様異型細胞を認めた.同細胞は,表面マーカー検索の結果やはりB-cell typeであつた.そこで, VENP (vincristine lmg/w, cyclophosphamide 500mg/w, Natulan 100mg/d, prednisolone 30mg/d)療法を行なつた.合わせて, methotrexate 15mg, hydrocortisone 20mgを計4回髄注し,髄液中のリンパ球様異型細胞の数は減少したが,患者は肺炎を併発し,心不全にて死亡した.剖検にて,本例は胃原発であることが示された.
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