症例は23才の男性で,昭和53年8月口腔アフタを初発症状として,翌53年9月までに紅斑,陰部潰瘍,両眼虹彩毛様体炎などの4主症状が出現し, Behçet病と診断された.さらに,血栓性静脈炎,胸腹壁静脈怒張などの所見からvasculo-Behçet病と判明している. 54年から56年7月までの3年間にわたり, 3度の肺異常陰影の出現をみている. 56年8月,突然胸痛,血痰が出現し胸部X線像で左下肺野に淡い円形陰影を認めた.肺動脈造影,腕静脈造影,肺シンチグラムの所見から肺梗塞および上大静脈症候群と診断した.著者らは,本症例の病因として肺動静脈系の血管炎,および血栓形成傾向を想定しprednisolone, cyclophosphamideとwarfarinを使用した.その結果,諸症状と肺異常陰影は消失し,現在まで再発はみられていない.肺病変を呈したBehçet病について内外21症例を集計し,以下の特徴が認められた. (1)完全型Behçet病が多い(60%), (2)男性に多い(81%), (3)臨床症状として喀血,血痰が特徴的である(76%), (4)他の部位の血管炎を伴う(e. g . SVC syndrome) (36%), (5)肺病変には副腎皮質ホルモンが奏効的である,などである.また,既報告例における剖検所見などから, Behçet病に伴う肺病変は, Behçet病と独立した所見でなく, Behçet病における血管病変がその主要な原因として推定された.
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