日本内科学会雑誌
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72 巻 , 7 号
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  • 長崎 文彦, 山口 洋, 中西 成元, 西山 信一郎, 白鳥 健一
    1983 年 72 巻 7 号 p. 859-865
    発行日: 1983/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    我々は次に述べる(1), (2)を比較して「なぜnitroglycerinが狭心症発作に有効なのか」を臨床的立場から検討した. (1)過去8年間に左心カテーテル検査中,偶然経験した狭心症発作症例は8例(2000症例中).発作中の特徴的所見は,脈拍増加,大動脈圧上昇,左室拡張期圧の著しい上昇(+300%), TTI増加, DPTI低下, DPTI/TTIの著しい低下(45%)であつた. (2) (a) 46症例を, (1)正常群, (2)肥大型心筋症群, (3)狭心症群, (4)心機能良好な心筋梗塞群, (5)心機能の悪い心筋梗塞群の5群に分けてnitroglycerin 0.3mg舌下服用前後で左心カテーテル検査を行なつた. nitroglycerin舌下服用後,大動脈拡張期圧は不変であつたが,大動脈収縮期圧((1) -10%, (2) -13%, (3) -17%, (4) -13%, (5) -9%),左室拡張期圧((1) -33%, (2) -50%, (3) -47%, (4) -50%, (5) -42%), TTI ((1) -8%, (2) -14%, (3) -17%, (4) -15%, (5) -9%)は低下し, DPTI/TTI ((1) +16%, (2) +21%, (3) +24%, (4) +20%, (5) +22%)は増加した.又,脈拍数は増加したが1心拍に占める収縮時間は短縮した. (b) nitroglycerin舌下服用前後で冠動脈造影を行ない拡張度を測定した(17症例).右冠動脈で平均+20%であつた. (1), (2)の結果を比較してみると,大動脈圧,左室圧,収縮時間, DPTI/TTIなどのmechanical factorsは,狭心症発作時(1)と, nitroglyceria舌下服用後(2)とでは,全く逆方向に変動した.又虚血領域ではautoregulation systemはfullに働いている故,発作中の状態はmechanical factorsに依存している.以上の事からnitroglycerinは発作時に変動したmechanical factorsを,すべて元の方向にもどすpotentialityを持つていると言えた.
  • 吉田 尚義, 根本 洋子, 中村 興世, 田中 孝司, 木野内 喬, 寺尾 寿夫, 清水 直容
    1983 年 72 巻 7 号 p. 866-871
    発行日: 1983/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ペプチドホルモンはtarget cellにおいて,レセプターと結合した後, endocytosisによつてinternalizationをうけることが知られている,この過程によつてレセプターの親和性は変化せずに,その数が変化する(down regulationとよばれる).最近, LH-RHが下垂体レベルでレセプターをdown regulateすることが報告されている.この研究の目的は脊髄小脳変性症ならびに原発性甲状腺機能低下症において, TRHにもこのような現象をみとめるか否かを明らかにすることである. LH-RH (50μg/h)とTRH(50μg/h)を48時間にわたり, infusion pumpを用いて,皮下に持続的に投与した.脊髄小脳変性症では, LH-RHに反応して血漿LHは増加し, LH-RH持続投与にかかわらず24時間後には前値に復した. TRH持続投与によつて血漿TSHとPRPは4~6時間でピーク値をとり,徐々に前値に復した.この時に甲状腺ホルモン分泌増加を伴つた.一方,原発性甲状腺機能低下症では,甲状腺ホルモンには変化をみとめずに,脊髄小脳変化症で観察されたのとほぼ同様な反応を呈した.これらの成績から, TRHは下垂体でレセプターの数を調節している可能性が示唆された.
  • 横須賀 努
    1983 年 72 巻 7 号 p. 872-881
    発行日: 1983/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    選択的冠状動脈造影にて冠状動脈硬化病変の重症度を定量的に表わし得た男性100症例につき,血清リポ蛋白の種々のparameterとの関係について検討を加え,冠状動脈硬化における血清リポ蛋白の臨床的意義について考察した.冠状動脈硬化群は非硬化群に比し,総コレステロール,トリグリセリドおよびアポBの増加と,高比重リポ蛋白コレステロール,アポA-IおよびアポA-IIの減少を認めた.冠状動脈硬化度の指標として低比重リポ蛋白コレステロールと高比重リポ蛋白コレステロールの比が多用されているが,今回の検討により,アポ蛋白比,すなわちアポBとアポA-Iの比が冠状動脈硬化度とより良い相関を示した.各リポ蛋白に分画して比較すると,非硬化群に比し硬化群で超低比重リポ蛋白および低比重リポ蛋白の増加と高比重リポ蛋白の減少が認められ,また硬化群ではいずれのリポ蛋白分画においても,トリグリセリドの組成比が高く,冠状動脈硬化におけるトリグリセリドの関与が示唆された.高比重リポ蛋白をHDL2とHDL3に細分画し比較検討すると,硬化群においてHDL2が有意に低く, HDL3には差を認めなかつた.とくにHDL2中のアポA-Iの減少が著明であつた.種々のparameterにおける動静脈間較差を検討すると,超低比重リポ蛋白が静脈側で有意に低く,超低比重リポ蛋白-トリグリセリドの心筋での取り込みが示唆された.この際,これに見合う低比重リポ蛋白および高比重リポ蛋白の増加は捕えられなかつた.
  • 安東 克之, 藤田 敏郎, 山下 亀次郎
    1983 年 72 巻 7 号 p. 882-889
    発行日: 1983/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本態性高血圧症における食塩負荷時の血圧上昇に対するカリウム投与の影響を検討する目的で, 23名の本症患者に低塩食(NaCl25mEq/日)を3日間施行したのち, 6日間食塩(250mEq/日)のみを負荷した群(NaCl単独群)12名と,同量の食塩に加えてカリウム96mEq/日を投与した群(NaCl+KCl群)11名に分け,比較した.その結果, NaCl+KCl群ではNaCl単独群においてみられた食塩負荷時の血圧上昇は認められず,平均血圧の変化率はNaCl単独群に比し有意の低値を示した.尿中ナトリウム排泄はNaCl+KCl群で食塩負荷早期(第1および第2日目)に有意の増加を認め, NaCl+KCl群における食塩負荷6日間のナトリウム貯留はNaCl単独群に比べ有意に減少していた.さらに,カリウムを同時に投与することにより,食塩負荷時の体重増加,循環血漿量増加および心係数増加が有意に抑制された.食塩負荷時における平均血圧の変化率と循環血漿量および心係数の変化率との間には有意の正の相関が認められた.また, NaCl+KCl群では体液貯留の抑制に伴い,血漿レニン活性,尿中アルドステロン排泄がNaCl単独群に比し有意の高値を示していた.以上の結果から,カリウムは本態性高血圧症患者における食塩負荷時の血圧上昇を抑制する作用を有しており,その主要機序としてナトリウム利尿による循環血漿量および心拍出量増加の抑制が考えられた.
  • 桜井 文雄, 藤沼 秀雄, 安里 洋, 五十嵐 秀夫, 土屋 幸彦, 竹内 秀夫, 北村 諭
    1983 年 72 巻 7 号 p. 890-896
    発行日: 1983/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は65才,主婦. 54才時に慢性関節リウマチと診断され,消炎剤の投与を受けていた.昭和55年10月全身の関節痛増強を主訴に入院した.慢性関節リウマチの診断の下に金製剤(gold thiomalate)を4ヵ月間,計365mg投与した時点で頻脈につづいて発熱,呼吸困難が出現し,胸部X線像上両側中下肺野にびまん性斑状,網状陰影の出現,血液像で24%の好酸球増加をみた.喀痰中に一般細菌,真菌,結核菌は証明されず,臨床経過よりgold lungを考え金製剤の中止とステロイド薬の投与を行ない急速に臨床症状,胸部X線像,肺機能および血液ガスの改善をみた.症状出現1ヵ月後の経気管支肺生検で得られた組織片は光顕的には,間質性肺炎の像を呈していた.この組織片の分析電顕結果は,電子密度の高い0.1~0.3μの集合塊が視野の1ヵ所に局在し,その特性X線スペクトルより金の微粒子であることが確認された.経気管支肺生検により金微粒子を証明し得たgold lungの本邦第1例と考えられる.
  • 清水 昌人, 沖 一郎, 今野 孝彦, 芝木 秀俊
    1983 年 72 巻 7 号 p. 897-901
    発行日: 1983/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    特発性副甲状腺機能低下症と類似の臨床像を呈するにもかかわらず,血中副甲状腺ホルモンが正常か高値であり,かつEllsworth-Howard試験にて,尿中cyclic AMPおよび尿中Pの排泄増加をきたす疾患は,偽性特発性副甲状腺機能低下症と呼ばれ,極めて希な疾患である.本疾患の病因は,自己免疫が考えられているが未だ解明されていない.著者らは本邦3例目の本症を経験したので,その概要を報告する.症例は, 49才,男性. 15才頃から手足のしびれ感を訴えていた.昭和56年3月当科受診し,低カルシウム血症を指摘され,精査のため入院となつた.理学的所見にて低身長,肥満,円形顔貌を認めたが,手指に異常を認めなかつた.骨X線写真を含む種々の検査にて低カルシウム血症をきたす他の疾患は除外された.血中副甲状腺ホルモンは,正常又は高値であり, Ellsworth-Howard試験における尿中cyclic AMPおよび,尿中Pの排泄は正常であつた.以上の成績より偽性特発性副甲状腺機能低下症と診断し,活性型ビタミンD経口投与により血中カルシウムは正常化し,症状も消失し,第36病日目に退院した.本症例は血中の副甲状腺ホルモンを, N, C末端および中央部分(mid-piece)を全て測定し,いずれも正常又は高値であつた点より,血中に活性型副甲状腺ホルモンがペプタイドの量として低下又は欠如しているという考えは否定された.
  • 種市 幸二, 今野 孝彦, 芝木 秀俊
    1983 年 72 巻 7 号 p. 902-907
    発行日: 1983/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    母子例にみられた尿細管性アシドーシスを伴うSjögren症候群の一家系を経験したので報告する.発端者(2女)は発熱,嘔吐,脱力感,弛緩性麻痺,多尿および意識障害などの臨床症状,さらに高Cl性アシドーシス,高Na血症,低K血症,高ガンマグロブリン血症,低浸透圧尿,アルカリ尿,タンパク尿などの複雑な病態像を呈した.髄液ではリンパ球優位の細胞数増加を示し,脳病変なく,高Na血症は無菌性髄膜炎によるものと診断した.又,水制限・ピトレシン試験により部分的尿崩症, NH4Cl負荷試験で尿細管性アシドーシスが存在することが判明した.又,家族7人の検索では3例の尿細管性アシド.シスが認められ,高ガンマグロブリン血症を伴う母子例についての基礎疾患はsubclinical Sjögren症候群であつた.さらに,この2例については,抗甲状腺抗体陽性,肝機能障害を示し,母は抗核抗体陽性,甲状腺機能充進, 2女は腎生検で間質性腎炎の所見を呈した. 3男は肝機能障害を示した.又,尿細管性アシドーシスを示した3例はすべてA2, BW35という同一のHLA抗原を示し,検索し得た2例はSjögren症候群であつた.家族性尿細管性アシドーシスにみられる種々の免疫異常は,その基礎にSjögren症候群が密接に関与していることが想定され,両者の合併の家族例はきわめてまれで,家族内Sjögren症候群の発症形弐にも重要と思われる.
  • 工藤 寛之, 岩辻 賢一郎, 稲田 雅美, 亀山 正邦, 足達 敏博, 南風原 英之
    1983 年 72 巻 7 号 p. 908-913
    発行日: 1983/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    55才の女性.高熱,咳嗽を主訴として当科入院.入院時,赤血球数186万, Hb6.6g/dlと貧血を認め,血小板数9.3万と減少,網状赤血球4.8%と増加していた.骨髄ではM/E0.89と赤芽球系の過形成を認めた.理学所見では,肝を2横指触知するのみであつた.入院後次第に黄疸が出現し,間接ビリルビンの上昇が認められた. 51Cr法による赤血球半寿命は5日と短縮していた.クームステストは陰性であつたが,パパイン処理赤血球による間接クームステストは陽性を示したため,自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の診断のもとに,ステロイド療法を施行したが,無効であつた.輸血により経過を観察中,左片麻痺をきたし, CTにて脳梗塞と診断した.その数日後,吐血,出血傾向を示し,汎発性血管内凝固(DIC)の診断でヘパリン療法を行なつたが,効なく死亡した.剖検では,卵巣腫瘍・胃粘膜下腫瘍であり,組織学的に, non-Hodgkin lymphomaであつた.また,全身臓器の出血・出血性梗塞があり,さらに,僧帽弁に血栓を認め,無菌性血栓性心内膜炎(NBTE)と診断した.悪性リンパ腫とAIHAの合併はまれではないが,卵巣悪性リンパ腫とクームス陰性AIHAの合併例の報告はない.また,末期にDICを呈し, NBTEを伴つて脳梗塞を発症した点も,注目に値する症例である.
  • 長谷川 泰弘, 松尾 俊和, 石橋 大海, 井上 龍誠, 岩下 明徳, 磯部 敬
    1983 年 72 巻 7 号 p. 914-920
    発行日: 1983/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    原発性アミロイドーシスで,そのアミロイド構成蛋白が続発性アミロイドーシスで認められるAA蛋白であつた,きわめて希な1例を経験したので報告する.患者は46才,女.主訴は易疲労感,微熱,咳嗽.既往歴,家族歴に特記すべきことはない. 30才の項はじめて心雑音を指摘され, 42才の時心血管造影で大動脈弁閉鎖不全症と診断された,強心薬等により治療されていたが,次第に易疲労感が増強したため当院に入院した.患者は入院精査治療中突然下痢をきたし,それは次第に増悪し, 1日4lに及んだ.患者の全身状態は極度に悪化し,下痢発症後約1カ月目に大量胃出血により死亡した.剖検により,アミロイド沈着が消化管,舌,心等に比較的著明に認められ,原発性アミロイドーシスと診断された.アミロイドの酵素抗体法分析により,構成蛋白はAA蛋白であつた.原発性アミロイドーシスのアミロイド構成蛋白は, AL蛋白が大多数を占め, AA蛋白は非常に希である.本例はその第3例目の報告である.
  • 藤原 和美, 原 泉, 長花 晴樹, 大西 泰憲, 木津 裕州, 玉尾 博康
    1983 年 72 巻 7 号 p. 921-924
    発行日: 1983/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    胃X線検査時にアナフィラキシーショックを来し,その原因がバリウム製剤の添加物によるものと判断された1症例を報告した.症例は50才,男子で,昭和55年10月胃集団検診でX線検査を受けた.その際,約1時間後,全身に膨疹が出現,引き続きショック状態となつて緊急入院し,数日後には軽快退院した.その後胃の精密検査を指示されたため,当科で再検査を実施したところ,約10分後に前回と同様の膨疹が現われ再びショック状態となつた.このような2回のエピソードは,いずれも胃X線検査に引き続き発現しているため,バリウム製剤または発泡剤によるアナフィラキシーショックを疑い,バリウム製剤に含まれる8成分,および発泡剤に含まれる3成分のパッチテストを施行した.その結果,バリウム製剤に含まれるトラガント,アルギン酸ナトリウムおよびデヒドロ酢酸のみが強陽性を示した.したがつて,このようなパッチテストの成績および2回にわたるショック症状の発現,臨床経過から,本例はバリウム製剤の添加物が原因となつたアナフィラキシーショックと判断された.著者らの調べたところでは,現在一般に使用されているバリウム製剤でのこのような事故の報告はみあたらず,極めて希な例と考えられる.
  • 池田 健次, 二瓶 宏, 青山 温子, 南方 保, 原 茂子, 鈴木 好夫, 三村 信英, 田辺 等, 小林 フミ子, 澤野 眞二
    1983 年 72 巻 7 号 p. 925-931
    発行日: 1983/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本邦では,サルコイドーシスに高カルシウム血症を伴うことが少ないといわれているが,我々は,本症に季節的変動を示す高カルシウム血症を伴つた1例を経験したので報告する.症例は64才,男性.昭和44年,高血圧,腎障害(S-Cr 4.5mg/dl),原因不明の発熱,血沈亢進があつた.血清Ca 11.0mg/dl,アルブミン4.0g/dlで,胸部X線像上,明らかな異常はなく,確定診断には至らなかつた.翌45年,完全房室ブロックに対し,体内ペースメーカーで治療を行なつた.昭和53年より,夏期(6月~9月)にCaの高値(11.2~15.2mg/dl)があり,秋より春には正常値に復していた.又,夏期の高Ca血症に一致して, S-Cr値が毎年階段状に上昇し,腎機能低下が高Ca血症に由来することが示唆された.昭和55年7月,精査のため入院.小唾液腺・前斜角筋リンパ節,肝の生検では陰性だつたが,筋生検で乾酪化を伴わない類上皮肉芽腫を認め,眼底の陳旧性炎症病変および他所見と合わせ,サルコイドーシスと診断した.なお,アンジオテンシン変換酵素は43, Kveim test陰性,副甲状腺ホルモンは低値であつた.又, 1, 25 (OH)2VD3は95ng/mlと高値で,欧米での報告と同様,これが血清Ca増加の原因と考えられた.ゲルクロマトグラフィー(Sephacryl 300)による,血清Caの分析では,透析性Caの増加が主体であつた.
  • 丸尾 國造
    1983 年 72 巻 7 号 p. 932-940
    発行日: 1983/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    原発性副腎皮質癌は希な疾患であるが,ホルモン産生を有する内分泌活性癌の診断は比較的容易であるとされている.今回,両側性内分泌非活性副腎皮質癌2症例を報告する.症例1.71才,男.上腹部痛を主訴とし,吐血にて入院. CTにて両腎の上極に大きな同大の腫瘍を認めた.尿中17-KS, 17-OHCSは低値で, cortisol日内変動は認めなかつた.全身衰弱が急激に進行し,死亡した.剖検では両側性副腎皮質癌が証明され,大きさは右13×7×4.5cm,左10×7×5cm,重さ右380g,左360gであつた.右側腫瘍は十二指腸への浸潤があり,出血源であつた.組織学的には癌細胞はcompact typeで卵型の核を有し, sheet状やtrabecularな配列を示した.症例2.72才,男.食欲不振,背部痛を主訴に入院.胸部X線像検査で右S3a領域に腫瘍陰影を,腹部超音波検査で肝右葉後部にsolid echoがみられ,原発性肺癌と肝転移と診断した.悪液質にてまもなく死亡し,剖検では症例1と同様両側性副腎皮質癌が証明され,大きさは右10×6×7cm,左10×5×4cm,重さ右280g,左150gであつた.肺癌と思われた腫瘤は胸膜,胸壁への転移であつた.組織学的には症例1とほぼ同じであつた.内分泌非活性副腎皮質癌は典型的症状に欠けるため診断がおくれる場合が多い.本症の早期発見には,本疾患の存在を認識すること,腹部超音波検査, CT検査をスクリーニングとして行なうことと考えられる.
  • 吉田 忠義, 長谷川 誠, 八木 温子, 古谷 雅子, 安里 洋, 石橋 浩明
    1983 年 72 巻 7 号 p. 941-946
    発行日: 1983/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    重症筋無力症(MG),全身性紅斑性狼瘡(SLE),潜在性副甲状腺機能低下症(HP)の合併した1例を報告した.症例は35才,女性で, 14年前に複視,眼瞼下垂,四肢筋の易疲労性で発症し,テンシロン試験陽性,誘発筋電図でwaningを示した全身型MGで,抗コリンエステラーゼ剤で治療していた. 5年前に関節痛が出現したが,自然に消失した.昭和55年10月胸痛出現,胸部X線像で滲出性肋膜炎と診断され入院した.理学的には,複視,眼瞼下垂,近位筋の筋力低下があつた.検査所見で,血沈の亢進,白血球数の減少, LE細胞陽性,抗核抗体・抗ds DNA抗体陽性,血清補体の低下, T細胞の相対的・絶対的減少, PHAによるリンパ球幼若化率の低下が見られた.血清Ca (8.5~9.0mg/dl)は低く,血清P (4.5~4.6mg/dl)は一過性に上昇した.藤田らの方法に従つたEDTAによる副甲状腺ホルモン分泌試験では,血清Caの低下が著しく,回復遅延を示し,さらにcPTH (ヒト)の変動がほとんどなく,副甲状腺ホルモン分泌係数(PI),副甲状腺分泌刺激係数(PSI)はおのおの0.031, 1.17と著しく低下していた.ビタミンD3, 25OHD3は正常であつた.胸腺腫はなかつた. MGとSLEの合併は比較的少なく,本邦では今迄4例が報告されている. MGとHPの合併は極めてまれで,現在まで2例しか報告されていない. 3者の合併した報告例は,私共が調べた限り今迄になく,本例が初めてであり,興味あるものとして報告した.
  • 新名主 宏一, 一瀬 白帝, 岡田 明彦, 丸山 征郎, 井形 昭弘
    1983 年 72 巻 7 号 p. 947-954
    発行日: 1983/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデス(SLE)は代表的な血栓性疾患の一つとされているが,その自己免疫反応と血液凝固・線溶反応との相互連関については不明の点が多い.今回著者らは両者の相互連関を知る上で極めて貴重な症例を経験した.症例は49才,女性.発熱,脱毛,多発性漿膜炎,多発性単神経炎,低補体価,抗DNA抗体陽性, LEテスト陽性などを認めSLEと診断した.入院時凝血学的には,血漿アンチトロンビンIIIとプラスミノーゲンの著明な減少を認め,極めて強い凝固能亢進状態にあると考えられた,入院第8病日に突然の血沈の遅延,フィブリノーゲンと血小板の著減,およびFDPの著増を認め, DICの合併と考えられたが,早期のヘパリン療法と免疫抑制療法によりDICは寛解した.本症例のSLE発症より現在に到るまでの経時的な血液凝固・線溶反応および自己免疫反応を観察し,以下の結果を得た. 1)血清補体価とアンチトロンビンIIIは極めてパラレルな動きを示し,一方前2者とvon Willebrand因子は逆の動態を示した. 2)慢性非活動期にもなおvon Willebrand因子は軽度高値を持続した.以上より, SLEの疾患活動性と血管炎,および血液凝固態の3者の相互連関が強く示唆され,活動性の亢進に伴つて易血栓形成性が促進されると考えられた.また,慢性非活動期においてもなお,おそらく長期の副腎皮質ステロイド薬の服用に原因すると考えられるなんらかの血管壁傷害が存在することが示唆された.
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