日本内科学会雑誌
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73 巻, 1 号
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  • 山辺 裕, 小林 克也, 藤谷 和大, 福崎 恒
    1984 年 73 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1984/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    陳旧性心筋梗塞(OMI)の運動負荷心電図に出現するST偏位の臨床的,病態生理学的意義を明らかにすることを目的とし,男性OMI患者62例に対しtreadmillによる自覚的最大負荷時の心電図を解析した. ST変化を生じないI群(11例)は左室駆出率が良好で,運動耐容能が高く梗塞後狭心症(PIAP)をもたない,軽症な病像を示した.梗塞部誘導のST上昇のみが生じるII群(18例)およびST上昇とST低下が合併するIII群(16例)は左室駆出率が低く, noneまたはdyskinetic左室壁運動異常を量する頻度が有意に高かつた.一方, II群中27%がPIAPであり,梗塞部のST上昇自体が運動負荷時の心筋虚血の誘発を示す場合があり注目された. ST低下のみを示すIV群(17例)には多枝冠動脈病変が高頻度にみられたが, III群IV群を含めたST低下所見は多枝冠病変のみを示す指標としてより,多枝冠病変あるいは1枝冠病変のPIAPを示す指標としてのsensitivity, specitycityが高く(64%と74%),非梗塞部の内膜下虚血と共に梗塞周辺領域の虚血をも反映するものと考えられた.運動負荷で誘発される心室性不整脈の頻度は, ST低下を示す例に有意に高く,とくに重篤な不整脈の83%はIII群とIVに生じた.以上, OMIの運動負荷心電図ST偏位の解析は, OMIの病態を評価し,適切な処置を施行する上で重要な所見となると結論した.
  • 棚橋 忍, 岩井 章子, 辻 孝, 川出 靖彦, 若原 達男, 山田 重樹, 梶沼 宏
    1984 年 73 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 1984/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Hepatotrophic factorであるインスリンの急性肝障害時の動態を明らかにするために,急性肝炎患者に経ロブドウ糖負荷試験を行ない,血中インスリン, C-ペプチドを同時測定した.さらに尿中C-ペプチド排泄量を測定した.急性肝炎急性期において,経ロブドウ糖負荷試験時のC-ペプチド反応は健常対照および急性肝炎回復期のそれより有意に亢進し,そのl日尿中C-ペプチド排灘量も増加していた.このことは急性肝炎急性期には膵B細胞機能が亢進していることを示す.ブドウ糖負荷前および負荷後のC-ペプチド/インスリン(モル比)は,急性肝炎急性期では健常対照および急性肝炎回復期より有意に高値であつた.このことは急性肝炎急性期には,肝臓でのインスリンの取り込みが亢進していることを示している.以上の事実はインスリンがhepatotrophic factorであることを考えると興味深い.
  • 竹内 素志, 藤谷 和大, 銕 啓司, 白 鴻泰, 戸田 忠一, 福崎 恒
    1984 年 73 巻 1 号 p. 14-20
    発行日: 1984/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    冠動脈疾患患者47例を対象に,ニトログリセリン(NTG)の左室収縮期並びに拡張期動態に及ぼす急性効果について検討した.拡張期指標として,漸近線を考慮した指数関数近似より得られる左室等容拡張期圧降下の時定数Tcを用いた.臥位エルゴメターにより狭心痛発作の誘発された8例の労作狭心症患者において,肺動脈契入圧は著しく上昇(9±3→29±7mmHg, mean±SD)したが,左室仕事係数の増加は認められなかつた.また,心房ペーシング負荷により狭心痛発作の誘発された7例の労作狭心症患者では,左室拡張末期圧(LVEDP)の上昇15±2→25±2mmHg),左室収縮未期容積の増大,左室駆出率(EF)の低下,左室造影上新たなる局所壁運動異常の出現,さらにTcの著明な延長(58±13→82±27msec)が認められた. NTG0.3mg舌下投与後,臥位エルゴメタ-及び心房ペーシングの同一負荷を施行したところ,狭心痛,心電図変化の改善のみならず,収縮拡張両期にわたる血行動態指標の改善が認められた.また,陳旧性心筋梗塞32例中,安静時のEFが40%以下を示す10例の患者では, NTG投与によりLVEDPの有意の低下.左室容量の減少のみならず, Tcの低下(100±30→79±15msec)が認められた.以上より,労作狭心症においてNTGは狭心痛発作の出現を抑制し,左室の収縮期のみならず拡張期特性の改善効果を有し,また陳旧性心筋梗塞に起因する重症心機能障害例においても, NTGは収縮期および拡張期特性の両面からみた安静時血行動態を改善しうると結論した.
  • 下木 直子, 吉村 俊朗, 佐藤 聡, 迫 竜二, 辻畑 光宏, 長瀧 重信, 森 民春, 高守 正治
    1984 年 73 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 1984/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は19才,男性. 1979年9月より,肺結核,結核性胸膜炎のため,抗結核薬を投与されていた. 1980年3月,髄膜刺激症状,脳圧亢進症状,右上下肢の不全麻痺を認めた.同年4月,頭部CTで,左大脳半球深部に広範な浮腫を伴iso-densityのmassを認め,造影後CTでは, massは均一に造影された.脳血管造影では,腫瘍陰影は認められなかつた.脳腫瘍(glioblastoma multiforme)との鑑別が困難であり,また腫瘍摘出術ができないため,抗結核薬を強化して,経時的に頭部CTで観察した.腫瘍陰影は縮小し,石灰化を伴うようになつたので,最終的に頭蓋内結核腫と診断した.大脳半球深部に位置する頭蓋内結核腫は,まれであり,頭部CTで頭蓋内結核腫と診断してある例はわずかである.抗結核薬のみで,経時的に観察してある例の頭部CT所見をまとめ, CT像について文献的考察を行なつた.
  • 清水 伸一, 塩沢 俊一, 塩沢 和子, 有田 親史, 磯部 敬, 藤田 拓男, 浦野 順文
    1984 年 73 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 1984/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    手根管症候群の原因としてアミロイドーシス,特に多発性骨髄腫に合併するアミロイドーシスはまれではないが,治療に対して抵抗性であり原病ともども患者を苦しめる.今回腰痛を訴えて来院し,諸検査にてBence Jones κ型骨髄腫と診断され,化学療法の経過中に手根管症候群の併発をきたした症例を経験した.我々はこれを骨髄腫に合併したアミロイドーシスによる手根管症候群と考え開放手術を施行した.手術時に得た沈着物は,電顕および酵素抗体法にて血中ベンスジョンス蛋白由来のアミロイドであることが推定された.開放手術にもかかわらず,手根管症候群は改善しなかつたのでdimethylsulfoxideの局所療法を施行したところ著明な改善を認めた. dimethylsulfoxideはアミロイド蛋白の凝集を阻止する作用が示されており,重篤な副作用もなく非観血的な治療が可能であり,アミロイドーシスに対する有効な治療法がきわめて少ない現状では, (特に今回みられた手根管症候群のような局所症状に対して)試みるべき価値のある治療法と思われる.また,この症例では手根管症候群がアミロイドーシス発見のきつかけであり,その他にはアミロイドーシスを疑わせる症状や所見はなかつた.このように,手根管症候群をみた場合,アミロイドーシスを疑うことも大事かと思われた.
  • 河野 英雄, 細谷 龍男, 児玉 和也, 松本 章, 尾田 芳隆, 小椋 陽介, 酒井 聡一, 宮原 正
    1984 年 73 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1984/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    慢性腎不全の加療を目的に入院した症例に先天性単腎症と著明な低尿酸血症が認められた.低尿酸血症の家族内発症の有無を調査した結果,この症例の末弟にも同様の低尿酸血症が認められた.兄のCcrは1.3ml/min,一方,弟のそれは116.7ml/minと正常であつた.兄の血清尿酸値は0.1mg%,尿酸クリアランスは0.06ml/min, 1日尿中尿酸排泄量は6.0mg/24h,一方,弟はそれぞれ0.2mg%, 0.59ml/min,および1.7mg/24hといずれも著明な低値を示していた.なお,弟にpyrazinamide suppression testを行なつたが,尿酸再吸収率,尿酸分泌率は正常であつた.尿酸の前駆物質であるhypoxanthine, xanthineを測定した結果,血漿hypoxanthlne濃度は兄で0.22μg/ml,弟で0.28μg/ml,血漿xanthine濃度は兄で5.85μg/ml,弟で0.75μg/ml, 1日尿中xanthine排泄量は兄で35.68mg/24h,弟で110.5mg/24hであり,尿中総purine体排泄量に対するxanthineの尿中排泄率は兄で67.1%,弟で59.6%と尿中xanthineの排泄率が非常に高く,腎機能正常の弟では尿中hypoxanthine排泄量も著増していた.さらにこの兄第の十二指腸粘膜を生検し,その組織中のxanthine oxidase活性を測定した結果,活性は全く認められなかつた.以上よりこの兄弟をxanthine oxidase欠損によるxanthine尿症と診断した.
  • 佐藤 聡, 高島 秀敏, 吉村 俊朗, 迫 龍二, 森 正孝, 辻畑 光宏, 長瀧 重信
    1984 年 73 巻 1 号 p. 39-42
    発行日: 1984/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    1年間にわたる抗生物質の長期投与で治癒した脳膿瘍の1例を経験したので報告する.症例は55才,女性.昭和55年10月13日,右上下肢の脱力が出現, 15日からは発語障害も加わり, 19日には右完全片麻痺となり当科に入院した.入院時,右片麻痺,運動性失語を認めた. CT scanにて左頭頂葉に大きな等吸收を示すmassがあり,周囲に著明な脳浮腫を伴つていた. enhance CT scanでring enhancementを示した.脳膿瘍の診断のもとに,抗生物質,ステロイドホルモン,グリセオール,で治療を開始し, CT scanにて治療経過を経時的に観察した.経過中,臨床症状の増悪をきたし, CT scan上も病巣がさらに拡大しているのが認められたが,抗生物質の変更で,軽快し, 1年後,症状はほとんど消失,固定した. CT scan上もring enhancementが消失し小点状のenhancementのみとなつた時点で治療を中止したが現在まで再燃していない.従来,脳膿瘍の治療としては,外科治療の比重が大きかつたが, CT scanにて,病巣の状態を直接,経時的に観察できるようになつたため,治療の変更などがすみやかに行なえるようになり,内科的治療のみで治癒したとの報告がふえている.抗生物質の投与期間については,少なくとも症状がほとんど固定化し, CT scan上病巣がすみやかに縮小しており,脳浮腫が著明に減少または消失していることが条件と考えられた.ステロイドホルモンの投与は,脳浮腫の改善に有効であり,文献上も有効例が多く使用してさしつかえないと考えられた.
  • 明石 泰蔵, 石原 謙, 阿部 諭吉, 田中 道夫, 棚橋 秀生, 西野 義昭, 小島 義平, 志水 洋二, 河田 肇
    1984 年 73 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 1984/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Benign symmetric lipomatosisは頚部,体幹などに対称性,びまん性に脂肪沈着をおこし,独得な外観を呈する疾患であるが,その報告は本邦では非常に少ない.我々はbenign symmetric lipomatosisと考えられる1症例を経験したので報告する.症例は52才,男性. 47才頃より後頚部,左右下腹部の腫脹に気付くも放置. 49才の時,後頚部の腫脹切除. 51才より左右前胸部も腫脹するため本院受診した.入院時身長160cm,体重62kgと躯幹はやや肥満を示した.また前胸部に手拳大,下腹部に小児頭大の腫瘤状隆起が左右対称性にみられた.その性状は柔らかく境界不明瞭で,自発痛はなかつたが,圧迫すると軽い鈍痛を訴えた.検査成績ではγ-GTP, LAPの上昇,尿酸値の増加がみられたが,内分泌疾患による随伴性肥満を示唆する所見は認められなかつた.また血中脂質は正常値を示した.生検所見では被膜を持たない正常の脂肪組織像であつた.本症の成因に関しては,アルコール多飲,高脂血症,高尿酸血症, OGTT異常,内分泌疾患などさまざまな報告がみられ確定的なものはなかつたが, 1977年Enziらの報告以後,細胞内の脂肪代謝異常が注目されるようになつている.治療としてはlipomatose massの切除以外有効な手段はないが,再発例も報告されている.本症例においても後頚部の手術瘢痕部に一致して柔かい小さな腫瘤が認められ,再発と考えられた.
  • 寺崎 太郎, 山口 巌, 東郷 利人, 松田 光生, 杉下 靖郎, 伊藤 巌, 金澤 一郎, 佐久間 秀夫
    1984 年 73 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 1984/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    多発性筋炎および皮膚筋炎は主として骨格筋を侵す炎症性疾患であるが,心臓にも障害が及ぶことが知られている.しかしながら,本症において致死的な心病変を呈する例は比較的まれであり,心臓の病理所見の詳細な報告は少ない.我々は,長期間にわたつて多彩な不整脈を呈し,発症後15年で死亡した多発性筋炎の1例を剖検する機会を得,心電図異常および心臓の病理組織像について文献的考察を加えて検討したので報告する.症例は45才の男性で,昭和41年より筋力低下が出現し,昭和49年に筋電図,筋生検により多発性筋炎と診断された.昭和52年4月,四肢の脱力感を主訴に当院に入院したが,入院時CPK, GOT, LDHの上昇があり,胸部X線写真で著明な心陰影の拡大を認めた.心電図に心房粗動,非発作性房室接合部頻拍,房室解離がみられ, His束心電図によりH-V時間の廷長(60msec)が観察された.その後本症例は昭和56年3月,心不全にて死亡した.剖検所見では心筋に巣状の線維化が多数認められ,刺激伝導系では洞房結節から房室結節, His束,右脚,左脚にわたる広い範囲に変性または線維化が認められた.多発性筋炎または皮膚筋炎における心病変は本症例の如く重篤な場合があり,心筋の障害の程度や刺激伝導系の障害部位によりさまざまな心電図異常が生ずる可能性があることから,本症の診療に当たつては心臓の状態に関しても充分に注意を払う必要があると考えられる.
  • 佐藤 満生, 坂井 武昭, 石田 秀一, 鈴木 隆城, 井上 実, 櫻井 忠実, 寺島 徹, 太田 耕造
    1984 年 73 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 1984/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    DIDMOAD症候群(本文参照)の1例を経験した.症例は18才の女で, 2才の頃から糖尿病と診断されて,インスリン注射をうけてきた,今回糖尿病のコントロールが不良のため,当料に入院した.理学的には視力低下.対光反射遅延,腱反射の消失がみられ,入院後1日19lにも及ぶ多尿を認めた,糖負荷試験は重症の糖尿病曲線とともに, C-peptide分泌の低反応を示した.脱水ピトレッシンテストおよび頭部CTから,特発性尿崩症と診断した.著明な尿路の拡張があつたため, DDAVPによる治療は不完全だつたので, hydrochlorothiazideとclofibrateを追加すると, 1日2.5l程度に尿量をコントロールできた.眼科的検索で原発性の視神経萎縮を認めたが,そのために進行性の視力低下を来していた.難聴は未だみられなかったが,本症は進行性の変性疾患とされており,今後出現することが予想される.本症候群の初発症状の大部分は糖尿病であり,若年性糖尿病患者の中に本症が混在している可能性があると思われる.
  • 杉本 孝一, 塩之入 洋, 井上 幸愛, 金子 好宏
    1984 年 73 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 1984/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    少量の甘草摂取により,低カリウム血性筋症をきたした偽アルドステロン症と思われる1例を経験した.本症例は,著明な筋力低下と知覚障害を呈し,血清カリウム低値および筋逸脱酵素活性の著しい上昇から,低カリウム血性筋症が疑われ,カリウム補充療法を受けた後,入院した.低カリウム血症の原因として,既往歴から,消化管からのカリウム喪失は否定的であつた.内分泌学的検査では,甲状腺機能正常,尿中17-KS, 17-OHCS値正常であつた.一方,血奨レニン活性は低下していたが,血中アルドステロン値は比較的低値ながら正常範囲であり,原発性アルドステロン症も否定された.薬剤服用歴において,甘草製剤の服用は否定されたが,「仁丹」の長期摂取歴があり,以上の検査所見,および「仁丹」摂取の既往から,本剤に少量ながら含まれる甘草による偽アルドステロン症が,本症例の低カリウム血症の原因であると考えられる,本症例の「仁丹」摂取量から換算すると1日あたりのグリチルリチン摂取量は20mg程度であると思われる.かかる少量の甘草摂取により偽アルドステロン症を生じ,これにより,低カリウム血性筋症をきたした症例はまれと考えられ,また,同時にグリチルリチン負荷試験を行ない得たので,この結果をあわせて報告する.
  • 一般生化学的,内分泌学的,免疫学的および末梢神経の組織学的検討
    吉田 忠義, 荒井 哲也, 熊倉 久夫, 安里 洋, 菅野 仁平
    1984 年 73 巻 1 号 p. 71-78
    発行日: 1984/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本症2例に共通して血清総蛋白量(TP), GOT, GPT, LDH, CPK,血清choline esterase,総cholesterolなどの低下が見られ,これらの低下が本症診断に補助的に役立つ可能性を指摘した.なお本症においてTP, GOT, GPT, LDH, CPKなどの低下を強調した報告は今迄に私共の知る限りない内分泌学的にはrT3の増加が2例に認められた.この意義は不明であるが,本症が重症消耗性疾患であることを示唆した.この異常は今迄に記載がなく,さらに症例の積み重ねが必要である.尿中17KSの低下,血漿ACTHの高値,その他のSteroid hormoneの低下が症例1にあり,潜在性副腎皮質不全の存在が示唆された.やはり今迄にはつきりと副腎不全を報告した例は私共の知る限りない.また症例1にはT3, T4の低下とTRHに対するTSHの過反応がみられ,原発性甲状腺機能低下症の存在が示唆された.従来いわれている女性ホルモンの尿中排泄増加がみられた(両例). LHRHにLH, FSHとも過反応がみられた. PRLもTRHに過反応を示した(両例).耐糖能障害(ΔIRI/ΔBS (30分)の低下, IRIのピーク値の遅延)が認められた.インスリン分泌は正常範囲に在つた.抗核抗体が疑陽性(2例)で,補体の低下,抗reticulin抗体,抗骨格筋抗体の陽性(1例)があつた.腓腹神経生検では,主として節性脱髄(症例1)と軸索変性(症例2)がみられた.この相異は病因の差ではなく,節性脱髄が主因(軸索変性はWaller変性)であろうと推定した.
  • 松林 公蔵, 川村 純一郎, 川村 修, 井上 潔, 森 昭夫, 安野 雅夫, 森下 玲児
    1984 年 73 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 1984/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    成人型悪性貧血の家族内発生に関する報告は本邦ではきわめてまれである.私達は,母親(67才)およびその娘である姉妹(47才, 42才)に,ほぼ期を一にして発症した悪性貧血の一家系を経験したので報告する.三者に共通して,著明な貧血と胃粘膜の萎縮,ガストリン不応性無酸症,内因子抗体,壁細胞抗体陽性所見を認めた.姉妹はともにマイクロゾーム抗体が高値を示したが,他の自己抗体は検出されなかつた.ビタミンB12治療によく反応したが,神経症状がやや難治性であつた.血縁関係者を可能な限り検索したが,現在までのところ陽性所見は認められていない成人型悪性貧血の遺伝的背景ならびに自己抗体との関連意義は未だにつまびらかでないが,このような観点からも本症の家族内発生例は興味深く,本家系は貴重な症例と考える.
  • 佐川 智子, 石井 仁美, 水入 苑生, 小原 武博, 平田 清文, 金子 浩, 川村 貞夫
    1984 年 73 巻 1 号 p. 84-88
    発行日: 1984/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は38才,女性. 9年前より糖尿病を指摘されたが,放置していた.浮腫を主訴として入院.入院時,理学的に,顔面と下肢の浮腫,腹水を認め,両側下肢振動覚低下,アキレス腱反射は減弱していた.検査所見では,空腹時血糖271mg/dl,糖尿病性網膜症,末梢神経障害とともに,ネフローゼ症候群を呈していた.腎生検(光顕,電顕,蛍光抗体法)により糖尿病に合餅した微小変化群と診断した.入院後,第66日目よりステロイド治療開始, 10日後に尿蛋白および浮腫消失し,低蛋白血症や高脂血症も改善がみられた.その後,ステロイド薬を漸減,中止したが,蛋白尿出現せず,完全寛解が得られた.糖尿病にネフローゼ症候群が合併することはしばしばあるが,その原因が糖尿病性腎症でなく,原発性腎疾患のリポイドネフローシスであることは極めてまれである,しかも,ステロイド療法により,短期間に完全寛解しえた.糖尿病患者において,糖尿病性腎症以外の原発生腎疾患を腎生検で確定診断することは腎病変の予後と治療において極めて重要と考えられた.
  • 大地 信彰, 力武 修, 前田 利朗, 山口 雅也
    1984 年 73 巻 1 号 p. 89-93
    発行日: 1984/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肥満,網膜色素変性症,知能障害,多指趾症,性器発育不全,遺伝性といつた6主徴のすべてが備つた典型的なLaurence-Moon-Biedl症候群の1例を経験した.さらに本例では腎病変と両側副腎部脂肪腫を合併していた.本例の内分泌機能検査では,甲状線,副腎機能に異常は認めなかつたが,中等度の耐糖能低下とインスリン分泌過剰反応があり,さらに成長ホルモン分泌不全もみられた.高度の肥満にもかかわらず空腹時遊離脂肪酸は常に正常値を示し,絶食試験による増加反応はほとんどみられなかつた.理学所見では,腹部皮下に脂肪腫と思われる小豆大腫瘤を多数触知した.本症における両側副腎腫瘍の合併については過去にその報告はなく,本例が最初と考えられ,その成因について若干の考察を加えた.
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