日本内科学会雑誌
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73 巻 , 3 号
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  • 樅田 三郎
    1984 年 73 巻 3 号 p. 309-315
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    九州地方に多発しているadult T cell leukemia (ATL)の発症に, C型retrovirusであるATL virus (ATLV)が関与していることが示唆されており,そのvirusの関連抗原(ATLA)に対する抗体(抗ATLA抗体)の検索が広く行なわれるようになつた. ATLV-endemic areaにあたる長崎地方において,血液疾患患者を中心に745名の抗ATLA抗体のスクリーニングを行なつたので,その結果に若干の考察を加えて報告する. T増胞増殖性疾患群では, 39例のATL全例, T-ML32例中20例(62.5%)をはじめとして高いATLA抗体陽性率であつた.一方, B細胞, non T non B細胞由来の悪性リンパ腫および骨髄腫は全例陰性という好対照をみせた. abnormal T lymphocytosisを認める健康人あるいは非血液疾患患者16名のうち15名(93.8%)に抗ATLA抗体を検出し, “pre-ATL”という病態の存在が考えられた. ATLV感染経路の究明が急がれているが,今回の調査では輸血によるATLV感染を強く疑わせる結果を得た.急性白血病および透析患者において,輸血既往の有無により2群に分けると,非輸血群に比較して輸血群の抗ATLA抗体陽性率は有意に高かつた.また,輸血前後に陰性から陽性に転じた7例の急性白血病あるいは再生不良性貧血の症例を確認した.
  • 吉田 義弘, 浜田 陸三, 上土橋 浩, 山本 啓子, 出雲 周二, 樋口 逸郎, 井形 昭弘, 金子 定邦, 佐藤 能啓
    1984 年 73 巻 3 号 p. 316-322
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    最近,筋萎縮性側索硬化症(ALS)のシアン代謝異常が指摘されているが,われわれは, 1日尿中チオシアン排泄量を,陰イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィーでチオシアンのみを分離して測定した.発色はピリジン-バルビツレイト法で行なつた.この方法でALSは,チオシアン排泄量の多い群と少ない群の二群に分けられた.そして排泄の多い群は筋萎縮の進行している時期に認められ, ALSの早期と末期の患者は排泄が少なかつた.このことは,筋萎縮自体がチオシアン排泄の増加を起こすのではないかと疑わせる結果であるが,さらに検討を要する必要があると思われる.
  • 田辺 晃久, 本間 康彦, 兼本 成斌, 日野原 茂雄, 五島 雄一郎
    1984 年 73 巻 3 号 p. 323-331
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    試作体位センサーによる体位情報とホルター心電図との同時記録から,虚血ST-T変化と体位ST-T変化との鑑別を試みた.対象は陳旧性心筋梗塞(OMI) 16名,狭心症(AP) 16名,健常例11名の計43名であつた.虚血ST変化はOMIで3/21件(14%), APで29/35 (83%)とAPに多く,体位ST変化はOMIで13/21 (62%), APで5/35 (14%)とOMIに多かつた.最大ST変化に至る時間は体位ST変化では10秒以内が18/25 (72%)と大多数を占めたのに対し,虚血ST変化では1分以上が28/32 (88%)と大多数を占めた.体位T変化についても10秒以内が15/18 (83%)と大多数を占めたのに対し,虚血T変化では10秒以内はわずか2/13 (15%)ときわめて少なかつた. CM5誘導における体位ST変化の20/22 (91%), T変化の19/21 (90%)は体位変換前後で標準12誘導心電図のV4, V5, V6のいずれかに対応して変化した.すなわち,これらの変化の原因は心軸回転で説明可能であつた.しかし,体位ST-T変化のうちST変化で2/22 (9%), T変化で2/21 (10%)は心軸回転で説明不能であつた. ST-T変化前に対する変化後の心拍数増加率(HR比)は虚血ST-T変化では高値例が多く,体位ST-T変化では少なかつた.とくにT変化でHR比1.3以上は虚血T変化の12/16 (75%)に対し,体位T変化では3/21 (14%)ときわめて少なかつた.以上より,ホルター心電図法の体位ST-T変化の虚血ST-T変化に対する鑑別点として, (1)ST-T丁変化の最大に至る時間, (2)標準12誘導心電図との比較, (3)心拍数増加の有無などの検討が重要と考えられた.
  • 高野 照夫, 斉藤 寛和, 田中 啓治, 遠藤 孝雄, 原田 厚, 山内 茂生, 小坂 真一, 井野 威, 山手 昇, 早川 弘一, 奥村 ...
    1984 年 73 巻 3 号 p. 332-340
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞に合併した心原性ショック.心室中隔穿孔,僧帽弁逆流に対するIABPの効果と限界につき検討した.心原姓ショックでは,血行動態各値の改善はIABP開始後3時間からはじまり, 48時間で最大の効果がえられた. IABP開始24時間後の1回心拍出量係数と1回心仕事係数は生存群と死亡群との間で有意差が認められ,これらの値は予後を知る指標と考えられた.またIABP使用群は非使用群に比べ有意に高い生存率を示し, IABPは心原性ショックに対する有力な治療手段であることが示された. IABPを必要とした心室中隔穿孔は外科的療法を施行せずにはIABPからの離脱が不可能で, IABP作動下に時期を失わず根治手術をする必要があつた.僧帽弁逆流の急性期の手術成績は極めて悪く, IABP施行の有無にかかわらず全例が死亡した.手術時期に関しては今後十分な検討が必要であると考えられた.
  • 大内 尉義, 多川 斉, 桜井 賢二, 山門 実, 田中 茂
    1984 年 73 巻 3 号 p. 341-350
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    線維筋性過形成(FMD)による腎血管性高血圧症に脳動脈瘤を合併し,しかも同様な病態が同胞内に出現した2症例を報告する.症例1(姉). 34才. 11才より高血圧を指摘され,入院時血圧254/120mmHg.腹部に広範な血管雑音を聴取し腹部大動脈造影を施行,両側腎動脈の数珠状の狭窄および腹部諸動脈の狭窄ないし閉塞を認めた.退院後くも膜下出血を起こし再入院.脳血管撮影で左前中大脳動脈,脳底動脈に計7個の嚢状動脈瘤,および右内頚動脈の完全閉塞を認めた.剖検で血管病変は脳動脈を含めFMDによるものと判明した.症例2(弟). 30才小学生時より高血圧を指摘され,入院時血圧200/120mmHg.左上腹部に血管雑音あり,腹部大動脈撮影で左腎動脈の狭窄とともに腹部諸動脈での狭窄ないし閉塞を認めた.姉の経過を考慮し脳血管撮影を施行,両側内頚動脈の閉塞とともに,脳底動脈に1個の嚢状動脈瘤を認めたため, clippingを施行した.本症例の病理組織学的裏付けは得られていないが,血管撮影よりFMDと考えられた.本報告は, FMDを腎動脈のみならず全身の動脈のangiopathyとしてとらえる必要性を示唆する.特に脳動脈瘤の合併は症例1のように予後を決定する因子となり得るため臨床的に重要で,少なくとも腹部諸動脈に多発する症例では脳動脈瘤の有無を検索すべきである.またFMDの病因は明らかにされていないが,その同胞内での出現は,遺伝因子の関与を示唆するものである.
  • 山下 静也, 高林 治一, 吉田 秀雄, 中島 敏夫, 倉田 義之, 高橋 光雄, 垂井 清一郎
    1984 年 73 巻 3 号 p. 351-357
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    特発性血小板減少性紫斑病と重症筋無力症はともに自己免疫疾患と考えられているが,両者の合併例の報告は極めて少ない.我々は最近このような症例を経験したので報告する.患者は33才の女性.昭和53年頃より出血傾向あり,血小板数4.2×104/mm3で特発性血小板減少性紫斑病の診断のもとに副腎皮質ホルモン療法中,昭和55年11月下旬頃より眼瞼下垂,手の脱力が出現.テンシロンテスト.反復刺激誘発筋電図所見より,重症筋無力症の合併と診断した.免疫血清学的には抗核抗体,抗ミトコンドリア抗体等の自己抗体が陽性で,抗血小板抗体も2種の方法で陽性を示した. platelet-associated IgG値は265ng/107 plateletsと著増しており,抗アセチルコリンレセプター抗体価は1.22pmoles/mlと軽度の上昇を示した.摘脾により血小板数は10×104/mm3以上の値を維持し,出血傾向も全く消失,それに伴つてplatelet-associated IgG値も著明に低下した.さらに胸腺摘出術を施行.摘出胸腺は54gと腫大し,組織学的には過形成であつた.術後,筋脱力の改善を認めた.両疾患発症の自己免疫的機序から考えて,特発性血小板減少性紫斑病に対する副腎皮質ホルモン療法中に重症筋無力症を発症したことは興味ある点と思われる.両者の合併例について,若干の文献的ならびに免疫学的考察を行なつた.
  • 小高 正裕, 久保 新一郎, 北浦 泰, 弘田 雄三, 木野 昌也, 西岡 昭規, 河村 慧四郎, 中田 勝次, 江尻 成昭, 中島 克彦
    1984 年 73 巻 3 号 p. 358-367
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    拘束型心筋症は特発性心筋症の一型とされるが,その剖検報告は極めて少なく,とくに尿崩症が合供した症例は現在までに報告をみない著者らは拘束型心筋症の経過中に尿崩症を合併し,重症心不全にて死亡,剖検しえた症例を経験したので報告する.症例は61才,女性.主訴は多尿,労作時易疲労感.左心室壁の肥厚および内腔拡大はなく,正常駆出率および心内圧曲線にてdip and plateauを認め,拘束型心筋症と診断.経過中57才時右片麻痺をきたし, 5ヵ月後多尿が出現.飲水制限試験にて尿量減少および尿浸透圧の上昇を認めず, vasopressinにて反応を示した.高張食塩水負荷試験にても尿量は減少せず, ADHは低値を示した.以上より尿崩症と診断.尿崩症の発症により心不全症状の改善をみ,電解質異常などをきたさず利尿薬とDDAVPによりコントロールされたが,抗療性心不全にて死亡.剖検にて,心内膜の肥厚,心筋線維の錯綜配列,核の大小不同,軽度の細胞浸潤およびowl eye様の封入体を認めた.視床下部の視束上核や旁室核の神経細胞に異常を認めず,下垂体後葉にびまん性のリンパ球浸潤があり,本症例の尿崩症の病因として,脳塞栓とともに下垂体後葉の慢性炎症との関連が示唆された.
  • 石橋 俊, 倉林 正彦, 児玉 龍彦, 村勢 敏郎, 島田 幸彦, 板倉 弘重, 高久 史麿
    1984 年 73 巻 3 号 p. 368-373
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    リポ蛋白リパーゼ(LPL)活性の低下により高脂血症をきたした多発性筋炎で, LPLの低下が筋病変に基づくと思われた症例を報告する.患者は50才の男性.健診にて,軽度の高トリグリセライド(TG)血症を指摘されていたが,昭和56年11月にTG 1162mg/dl, CPK 3905U/lと高値を呈し,昭和57年2月頃から下肢の脱力が始まり, 4月には上肢の脱力も加わつてきたために入院となった.身長160cm,体重54kg.四肢近位筋の筋力低下以外には神経所見に異常はなく,肝脾腫や皮疹も認められなかつた.入院後の検査では,血清TG値が472mg/dlと中等度に上昇していたが,コレステロール値は正常であつた. CPK, aldolase, myoglobin, LDH, GOT, GPTの上昇が認められたが,血清電解質は正常,甲状腺機能にも異常は認められなかつた.筋電図上,筋原性の変化が認められ,筋生検の結果,多発性筋炎と診断された.血清脂質分析では, TG-richリポ蛋白の増加を認め,ヘパリン静注後のLPLは2.3μmole FFA/ml-h (6.4±2.1)と著明に低下していた. LPLの低下は, activatorの不足やinhibitorの存在によるものではなく, LPLそのものの低下によると考えられたために,大腿直筋中のLPL活性を直接測定したところ,対照に比して著明に低下していた.これらの結果から,本患者では,筋由来のLPLの低下が,高脂血症の成因に関与していたものと考えられた.脂質代謝に果たす骨格筋組織の役割を示唆する貴重な症例である.
  • 塩崎 宏子, 星野 茂, 押味 和夫, 溝口 秀昭, 続木 千春, 肥田野 信, 森 茂郎
    1984 年 73 巻 3 号 p. 374-378
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Neoplastic angioendotheliosisは血管内控に異常細胞が栓塞し,主に皮膚および中枢神経系の症状をきたすまれな疾患である,現在,本邦の3例を含め, 20例足らずの報告があるにすぎず,生前の診断が困難で有効な治療法が確立されていない.われわれは,皮膚症状を呈した本疾患に,多薬併用療法を行ない,寛解を得た症例を経験したので報告する.症例は64才,女性.主訴は発熱,下肢の紅斑および浮腫.現病歴は入院6ヵ月前より,めまい,悪心,意識消失発作,下腿の紅斑.浮腫,汎血球減少症,レイノ-現象が徐々に進行し,全身状態の悪化を伴つた.入院時現症では,眼底の出血および白斑,甲状腺腫大, 1横指の脾腫,腋窩リンパ節腫大を認めた.入院時検査成績では,汎血球減少症,単球の増加および単球類似の異型リンパ球増加, LDHの増加, CRP陽性, T3の減少とrT3の増加, BMGの増加が認められた.皮膚病変部の生検からneoplastic angioendotheliosisと診断した.本疾患では,従来試みられてきたステロイドホルモンや抗生物質が無効であることが多く,生検にて認められた血管内異常細胞が,悪性リンパ腫の腫瘍細胞に類似したものであることより,悪性リンパ腫に用いられるサイクロホスファミド,アドリアマイシン,ビンクリスチン,プレドニゾロンの多薬併用療法すなわちCHOP療法を施行したところ,寛解を得た.本報告では特にneoplastc angioendotheliosisの治療に関して文献的考察を加えた.
  • 樋口 利行, 国分 令子, 木村 秀夫, 田中 鉄五郎, 松田 信, 内田 立身, 刈米 重夫
    1984 年 73 巻 3 号 p. 379-385
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    慢性リンパ性白血病(以下CLL)においてはB cell由来が大多数であるとされ,悪性腫瘍が合併しやすいことが知られている.我々はT cell CLLと診断され経過中に食道癌を合併したまれな症例を経験したので報告した.山形県出身の61才,男性.入院時検査成績では白血球数は98000/cmmと増加し,末梢血液像では成熟したリンパ球が93%を占め,骨髄有核細胞数は118000/cmmでリンパ球は93.8%を占めた.リンパ球subpopulationにてはE rosette 64.8%, EA rosette 1.0%, surface immunoglobulinlま0%であつた.食道のレントゲン線,内視鏡検査にては,食道下部に潰瘍を認め,生検にては扁平上皮癌であつた.当科入院後約4ヵ月の経過で死亡した. CLLは欧米では発生頻度が高く,全白血病中約34%とされているが,本邦での頻度は約2%と低率で欧米に比べて特に少ない.白血病と他の悪性腫瘍,癌との合併は数多く報告されているが,特にCLLと癌との合併頻度は他の白血病に比して高率であり約10%とされ,癌の合併部位は皮膚,口唇に多く約35%を占め次いで消化器17%,呼吸器11%,その他である.本邦でのCLLと癌との合併例は1965年に報告され, 1982年まで本例を含めて19例の報告が集計できたにすぎない.又日本病理剖検輯報によるCLLと癌合併の頻度は5.26%であつた.集計できた19例での癌発生部位は欧米に比して消化器系が多く,胃癌8例,肺癌4例,膵癌2例,直腸癌,皮膚癌各1例で食道癌は本例のみであつた.
  • 井上 哲文, 岩本 幸子, 広瀬 俊一, 宮本 昭正, 木佐木 友成, 猪熊 茂子
    1984 年 73 巻 3 号 p. 386-393
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本邦においてはまれな疾患であるFelty症候群の自験3例を報告するとともに,過去10年間に本邦で報告された24例を総括し,この中で本疾患の病態および治療に関する検討をおこなつた.自験第1例においては脾摘除ののち血液像の正常化をみたが,その後2度の血液像悪化を生じている.しかし基本的には少量のprednisoloneの継続的投与でコントロールが可能であつた.脾摘除後の血液像の悪化はいずれも選択的な顆粒球減少症であり,この時期に一致して血清中にヒト顆粒球核と臓器特異的,種属特異的に反応するgranulocyte-specific antinuclear factor (GS-ANF)の出現と抗体価の上昇を認め,さらに血清免疫グロブリン(Ig)値の高度な上昇を認めた.自験第2例においては白血球減少症に対してprednisoloneは無効で, gold sodium thiomalateが有効であつた.寛解状態にある患者由来の血清中にGS-ANFを証明したがその抗体価は低く, Ig値の上昇も軽度であつた.自験第3例においては白血球減少症に対してprednisoloneが有効であつたが,その効果は一時的であつた.血清GS-ANFの抗体価は高く, Ig値の上昇も高度であつた.さらに他の報告例をも解析する中から,病態の上では非特異的な抗体産生能の亢進状態が存在する可能性とGS-ANFの意義を,また治療の上では脾摘除とprednisolone投与の併用療法の有効性を報告した.
  • 佐々 寛己, 柴田 哲男, 大場 みどり, 大久保 満, 丹羽 豊郎, 松井 永二
    1984 年 73 巻 3 号 p. 401-407
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    血管内凝固症候群により死亡し,死後の血清反応により恙虫病と判明した1剖検例を経験したので,当地区においてその後発生した5例とあわせて報告する.症例は22才,女性で,揖斐川流域である岐阜県安八郡神戸町に注み,自室で植木裁培をしていた生活歴がある.高熱と左浅頚部リンパ節腫脹,左頚部の皮膚潰瘍,全身の発疹を主徴とし,白血球および血小板の減少が認められた.セファロスポリン系抗生物質にも反応しないため,第10病日より当科へ入院した.入院時の検査成績より血管内凝固症候群と薬物性肝炎を併発したウイルス感染症を推定し,諸治療を施したが効なくDICの悪化により第16病日に死亡した.病原診断検査によりGilliam型リケッチアによる恙虫病と確認された.剖検では,肺,心筋,肝および脾を中心にリンパ球を主体とする炎症性細胞浸潤が認められた.その後当地区で5例が本症と診断されたが,内訳はGilliam型2例, Karp型3例で,いずれもテトラサイクリンの投与により治癒した.本症は東北や新潟地方に多発する風土病の如く考えられて,他の地区では軽視されていた.しかし昭和50年代以降,その発生数が増加し,かつ全国各地で認められる様になり,もはや風土病でないことが強調されている.発熱と特有の刺し口,所属リンパ節腫脹,発疹等で本症を疑い,間接蛍光抗体法又は免疫ペルオキシダーゼ法による確定診断を行なつて,早期にテトラサイクリン系抗生物質を投与することが肝要である.
  • 東 伸郎, 土手 健司, 栗本 透, 唐川 正洋, 馬殿 正人, 西原 祥浩, 森 晃基, 酒井 章, 稲田 満夫, 延吉 正清
    1984 年 73 巻 3 号 p. 408-413
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例. TO, 25才,男性.主訴は労作時の息切れと動悸.前胸部に全収縮期雑音を聴取し,胸部X線像では軽度心拡大,肺うつ血所見を認め,心電図では右室肥大所見を示した.心エコーMモードスキャンで,左房内を大動脈後壁から僧帽弁弁輪部の左房後壁にかけて,左房内をななめに横切る索状エコーを認め,断層法において左房内に異常隔壁とその中央部に交通孔の存在が確認された,心臓力テーテル検査でシャント疾患は否定,肺動脈からの左心造影により左房内の異常隔壁を明瞭に描出できた.患者は手術待機中であつたが,肺水腫にて急死した.剖検で左房内に異常隔壁があり直径8mmと3mmの2カ所の交通孔を確認しえた.又右室壁厚は7mmと著明に肥厚していた.組織学的には結合織に富む心筋線維からなり,一部に石灰化が見られた.本症例はLucasとSchmidtの分類によるタイプIAに属していた.三心房心は現在では,手術的に充分根治し得る先天性心奇形である.その手術成功のためには正確な術前診断が大切である.心エコー図法,とりわけ断層法による所見は,剖検所見ともよく一致し,診断法として極めて有用であつた.心エコー図法により診断されたまれな先天性心奇形である三心房心の1例を報告した.
  • 丸尾 國造, 水嶋 宜章, 竹平 安則
    1984 年 73 巻 3 号 p. 414-419
    発行日: 1984/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    尿閉と便秘を主訴とした72才の男性患者.前立腺の奥に弾性やや硬の非拍動性腫瘤を直腸診で触知した.腹部単純X線検査で骨盤内に4個の結石像を,注腸X線検査で直腸, S字状結腸の左側からの腫瘤による圧排像を,経静脈腎盂造影法で左水腎症と右尿管の軽度の拡張所見を認めた.腹部CT検査では,腹部大動脈,両側総腸骨動脈に動脈瘤を認め,さらに骨盤内には比較的薄壁で,内部はlow densityの巨大腫瘤がみられた.しかしRI血管造影法では,腹部大動脈,両側総腸骨動脈に不規則な軽度の拡張所見を認めるのみであつた.腹部大動脈瘤,両側総腸骨動脈瘤,前立腺肥大症,膀胱結石,左水腎症,膀胱後部腫瘍の術前診断で開腹したところ,腫瘍は左内腸骨動脈およびその分枝血管から構成され血栓で充填された巨大動脈瘤と同定された.本例は狭義の孤立性内腸骨動脈瘤ではないが,病変の首座は左内腸骨動脈瘤であつた.従来腸骨部動脈瘤の診断には血管造影法がすぐれているとされて来たが,本例のように内腔に血栓が充填し,血流が乏しい症例では血管造影法のみでは動脈瘤の正確の大きさ,広がりを認識できないこともあると考えられた.
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