日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
Print ISSN : 0021-5384
ISSN-L : 0021-5384
73 巻 , 5 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 辻 正人
    1984 年 73 巻 5 号 p. 589-597
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    各種ヒト腎糸球体疾患における糸球体ポリアーオンの減少の程度および糸球体内のβ-グルクロニダーゼの出現とその局在部位を組織化学的に検索した. β-グルクロニダーゼは,糸球体ポリアニオンの構成因子と考えられる酸性ムコ多糖を分解するライソゾーム酵素である.正常コントロール10例,一次性糸球体腎炎67例,ループス腎炎16例,糖尿病性腎症7例を対象とした.その結果,腎糸球体病変が認められない正常コントロール群では,糸球体ポリアニオンは正常に存在したが,糸球体内のβ-グルクロニダーゼは全例で同定されなかつた.一次性糸球体腎炎,ループス腎炎,糖尿病性腎症では,糸球体ポリアニオンの減少が種々の程度で認められたとともに糸球体内皮あるいは上皮細胞側にβ-グルクローダーゼ活性の出現が証明された.臨床的に難治性ネフローゼ症候群を呈した例では,糸球体ポリアニオンの減少がより著明で, β-グルクロニダーゼ活性は主に糸球体上皮細胞側に認められた.以上の成績より,糸球体疾患では,病型のいかんを問わず,蛋白尿の著明な時期には糸球体ポリアニオンが減少していることと,その原因にβ-グルクロニダーゼが関与していることを明らかになしえた.今後,糸球体障害の組織障害性因子としての, β-グルクローダーゼの追求が重要と考えられた.
  • 藤山 増昭, 池田 秀夫, 古田 陽一郎, 松村 順, 田辺 章弘, 大林 純, 寺沢 正壽, 足逹 教, 斉藤 靖之, 戸嶋 裕徳
    1984 年 73 巻 5 号 p. 598-605
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    成人型家族性徐脈性不整脈(FBA)の4家系について,その心電図所見,臨床症状,血行動態,心筋組織所見,および臨床経過について検討し以下の結果を得た. 1)家系内心電図検査19施行した55例中徐脈性不整脈は19例(34.9%)で,これらは脚ブロック. QRS低電位, poor R-wave progression, T波異常, VPCやVTを高頻度に合併した. 2) 19例中心不全の合併が10例にみられた. 3) FBAの病像完成は30~40才台と推定された. 4)心拡大,左室拡張が著明で,その心機能は明らかに低下し,拡張型心筋症類似例が混在した. 5) 8例の心筋組織所見として,肥大,変性,錯綜配列,線維化がみられた. 6)未治療例は大部分が突然死し,予後不良であつたが, pacemaker治療例の経過は比較的良好で,有効な治療といえる. FBAの少なくとも一部の例は伝導系障害に加え,固有心筋障害を合併し,特発性心筋症ないしはその類縁疾患と推定される. FBAの臨床像を特に心筋症との関連の上で検討した.
  • 橋本 博史, 津田 裕士, 高崎 芳成, 塩川 優一
    1984 年 73 巻 5 号 p. 606-613
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデス(SLE)の腎病変の中で,最も予後不良の臨床病態はネフローゼ症候群(ネ群)である.全身性疾患としてのSLEからみて,この臨床病態の特徴を知るとともに,免疫抑制剤,特にアザチオプリン(AZ)の長期予後に及ぼす治療効果について検討した. SLE379例を検討の対象とし,ネ群を伴うSLE(105例),ネ群を伴わないループス腎炎(222例),非腎症SLE(52例)の3群に区分し,臨床像,検査所見,死因,予後を比較検討した.また, AZ72カ月投与例7例について,長期投与による治療効果を検討した.ネ群を伴うSLEは,他群に比べ有意に予後不良で,その臨床的特微は,より若年者に多く,精神症状,髄液異常を示す症例が多く,反面,レイノー現象は有意に少ない また,尿異常所見,腎機能障害の他, LDH高値,血清低補体価を認める症例が有意に多く,腎生検では,び漫性増殖性糸球体腎炎,膜性増殖性糸球体腎炎を示す症例が多い,他方,高γ-グロブリン血症は有意に少ない.合併症では,感染症と脳血管障害が有意に多いが,死因では腎不全が最も多い.免疫抑制剤使用例は,ステロイド単独初回多量投与した症例よりも有意に予後良好であつた. AZとステロイドの長期併用治療効果をみると,ル一プス腎炎の再燃はみられず,蛋白尿,血清低補体価に対して有意の改善が認められた.
  • 保坂 俊明
    1984 年 73 巻 5 号 p. 614-621
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    トレッドミル運動負荷試験による冠動脈病変の診断法を明らかにする目的で,正常安静時心電図を示す男性胸痛患者53名を対象とし,トレッドミル運動負荷試験と冠動脈造影を施行した.冠動脈の75%以上狭窄を有意病変とし,正常冠動脈群(18例),一枝病変群(17例),多枝病変群(18例)に分類した.運動負荷より得られた指標のうち, aVFのST低下のみは3群間で差が認められなかつたが,他の指標はいずれかの群間で有意差が認められた.判別分析を用いた解析の結果では,心電図変化のうちV5およびaVFのST傾斜の判別効率が大であつた. R波高変化は特性追加による判別効率増加の有意性が認められなかつた.心電図変化以外の指標では,運動持続時間,到達心拍数の判別効率が大であり,収縮期血圧は特性追加による判別効率増加の有意性が認められなかつた.判別分析による冠動脈病変の存在および重症度診断における誤分類の確率は,心電図変化のみ用いた場合21.8%, 28.1%に比し,心電図変化以外の指標を含めた場合,それぞれ6.7%, 15.2%ときわめて良い結果であつた.以上より,心電図変化ではST傾斜の診断意義が大であり, ST低下のみによる診断基準は不適当と思われた.しかし心電図変化のみによる診断では誤分類が多く,他の指標,特に運動持続時間と到達心拍数を診断基準に含める必要が認められた.これらの結果をふまえた実用的診断準としてpoint score法を試み,判別分析の結果と同等の診断能が示された.
  • 吉岡 二郎, 本間 達二, 古田 精市, 本郷 実, 大久保 信一, 草間 昌三, 池田 修一, 柳沢 信夫, 吉沢 晋一
    1984 年 73 巻 5 号 p. 622-631
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    心室壁の肥厚が著明なrestrictive cardiomyopathyを主徴とし,数年後にポリニューロパチーが認められた家族性アミロイドーシスの1家系を報告する.アミロイド蛋白はプレアルブミン関連蛋白であつた. 2世代3例の発症者が確認されており,今回は2例の心病変を中心に報告する. 2例とも心不全症状で入院した.症例1 (53才,女性)はCTR69%で,洞機能不全を認め,症例2 (60才,男性)はCTR57%で, I度房室ブロックがあつた.心エコー図で両例ともに心室壁の著明な肥厚(心室中隔・左室後壁の拡張末期厚は,症例1では18.0mm, 20.3mm,症例2では22.0mm, 16.0mm)を認め,左室腔は狭小化していた. 2例ともに拡張障害が認められ,収縮能は,症例2が初診時から低下しており,症例1は初診時には保たれていたが, 4年後には著明に低下していた.心カテーテル検査で2例ともdip and plateauは認めなかつた.症例1は4年後に心不全で死亡し,症例2は1年後に突然死した.家族性アミロイドーシスの多くは末梢神経障害を主徴とする家族性アミロイドポリニューロパチーで,その心病変は,心筋の肥厚が軽度で,うつ血性心不全をきたすことはほとんどないとされている.したがつて,本家系は,臨床像のうえから従来報告のない家族性アミロイドーシスと考えられた.
  • 谷口 修, 菅谷 直樹, 若林 芳久, 橋本 博史, 塩川 優一
    1984 年 73 巻 5 号 p. 632-639
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    アレルギー性肉芽腫性血管炎と側頭動脈炎が合併したと思われる1例を報告し,両者の異同,他の血管炎との関連性につき考察を加えた.症例は55才,男性,化学薬品工場勤務.主訴は咳嗽,呼吸困難,視力障害,四肢遠位部の筋力低下,知覚異常である.現病歴は昭和54年2月下旬, 39°C台の発熱とともに咳嗽,呼吸困難が出現,近医で気管支喘息の診断を受け,入退院をくり返していた.同年8月下旬に左眼, 9月上旬に右眼と,あいついで視力低下をきたし,網膜中心動脈閉塞の診断で当院眼科へ入院したが, 9月下旬より四肢のしびれ感が出現,歩行困難となり,胸部X線写真上の異常陰影,高度の好酸球増加(11,000/mm3)を指摘され,当科転科となつた.入院後,臨床症状,検査所見,および生検などから,アレルギー性肉芽腫性血管炎と診断した.ステロイドを中心とする治療を開始したところ,検査所見,呼吸器症状の改善は認められたが,神経学的所見の改善は認められなかつた.以後経過を観察していたが, 55年9月18日,脳硬塞にて死亡した,剖検では,心,肝,腎などの臓器の小~中血管に肉芽腫性の変化を強く認めた.本症例は,アレルギー性肉芽腫性血管炎,多発性動脈炎,側頭動脈炎などの疾患独立性に関して,あるいは血管炎の病態を考える上で,示唆に富むものと考えられた.
  • 高瀬 茂, 斉藤 研一, 柴田 孝則, 河住 久, 内田 潤, 北沢 孝三, 米倉 正博, 伊藤 正吾, 志和池 成世, 杉崎 徹三
    1984 年 73 巻 5 号 p. 640-647
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    最近我々は,膜性腎症,膜性増殖性糸球体腎炎,ループス腎炎の免疫複合体がlgG-lgGリウマトイド因子より成る事を提唱している.今回,癌(肺,腎)に合併した膜性腎症の沈着免疫複合体も同様の構成成分よりなる知見を得たので報告する.剖検腎で光学顕微鏡的並びに螢光抗体法にて, IgGの糸球体係蹄への顆粒状沈着を認め,膜性腎症の合併が確認された肺癌(oatcell carcinoma)並びに腎癌(clear cell carcinoma)の2症例の腎凍結切片にヒトγ-globulin,熱変性ヒトγ-globulin,ヒト-IgG, -F(ab′)2, -Fc分屑,ヒト腎刷子縁,家兎-,ラノト-γ-globuhn, DNA,対照としてリン酸緩衝液を添加, 1時間反応, 30分洗浄の操作を6回繰り返し, IgGの局在について検討した.又腎組織紬出液についてRAテスト.並びに螢光色素を標識し,直接螢光抗体法を行なつた.その結果ヒトγ-globulin,ヒト熱変性γ-globulln,ヒト-IgG,ヒト-Fc分屑により沈着IgGの溶出を認めたが,ヒト-F(ab′)2,ヒト-刷子縁,家兎-,ラット-′-globulin,リン酸緩衝液では沈着IgGは溶出しなかつた.一方,抽出液によるRAテスト.直接螢光抗体法は陰性であつた.以上の結果は免疫複合体上に過剩の抗原を反応させる事により免疫複合体の溶解をきたした事が考えられたが,その因子としてIgG特にFc分屑が最も重要であつた.従来,癌に合併した免疫複合体型腎炎の成因として癌抗原,組織抗原が提唱されているが,我々は,その構成成分の大部分がIgG-IgGリウマトイド因子よりなる事を示唆する所見を得た.
  • 石川 隆, 金森 博, 児玉 龍彦, 岩崎 泰彦, 山田 明, 近藤 行男, 宮川 侑三, 板倉 弘重, 高久 史麿, 小坂 樹徳, 福里 ...
    1984 年 73 巻 5 号 p. 648-652
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    赤血球C3b受容体欠損者において,慢性肝障害に不明熱を合併し,皮疹,関節痛,顔面神経麻痺などの臨床症状と,低補体血症をはじめ種々の免疫異常を呈した1例を報告する.症例は46才,女性. 5年前より肝機能異常を指摘されていた. 1年前より38°C台の弛張熱,皮疹,関節痛の出没をみていたが,発熱を主訴に当科入院,入院時の検査所見にて血沈亢進,血中免疫複合体出現,低補体血症,高ガンマグロブリン血症を認め,赤血球C3b受容体は欠損していた.リウマチ因子は陽性であつたが,抗核抗体をはじめ各種自己抗体は陰性であつた.腎生検では,螢光抗体法にて血管壁にC3の顆粒状沈着が認められた.肝生検では小円形細胞の浸潤と線維化の進展があり,特に肝内の動脈壁は好酸性の沈着物を伴つた浮腫性肥厚を示した.皮膚生検にても血管壁にIgG, IgM, C3の沈着が認められた.入院後,不明熱が続き,皮疹,関節痛も出没,入院第19日目に右側の末梢性顔面神経麻痺が出現した.プレドニゾロン投与にて発熱等の臨床症状の軽快と,血中免疫複合体の消失に伴う免疫異常の改善がみられた.しかし赤血球C3b受容体欠損は治療後も続いており,患者兄も同受容体の欠損を示し,先天的欠損が示唆された.本例は赤血球C3b受容体欠損者がB型肝炎ウイルス関連抗原陰性の慢性肝炎経過中に種々の免疫異常を示し,諸臓器の血管病変を発現した1例である.
  • 厨 直美, 福田 孝昭, 江口 勝美, 三宅 清兵衛, 長瀧 重信
    1984 年 73 巻 5 号 p. 653-658
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ステロイド投与により顕性化したと考えられる多発性骨結核に,表皮ブドウ球菌性骨髄炎および菌血症を伴つたきわめてまれな症例を経験したので報告する.症例は56才,男性.主訴:発熱.現病歴:昭和55年4月より間歇熱が出現,抗生物質の投与をうけたが効果はなく,結節性動脈周囲炎を疑われステロイドを投与された.しかしその効果もなく,さらに激烈な胸痛が加わつたため11月当科に入院した.入院時現症:体温38.1°C,間歇熱.左背部に圧痛があるが他に異常はない.ただ仙腸関節を保護するための,骨盤を固定したような歩行を認めた.検査成績は血沈1時間値30mm, CRP(+),ツ反応(-).胸写では左第8肋骨に骨融解像,胸部断層写真で左上肺野に陳旧性肺結核像,骨X線写真では左坐骨に骨破壊・硬化像を認めた.血液培養から表皮ブドウ球菌,左坐骨の生検培養から同菌のほか結核菌も検出した.また99mTc骨シンチグラムからは眼窩,肋骨,腰椎,仙腸関節,坐骨,大腿骨にRI集積を認めブドウ球菌性骨髄炎および菌血症を伴つた多発性骨結核と診断した.抗生物質,抗結核薬投与後下熱とともに胸痛も消失した.抗結核薬治療8ヵ月後には胸写でみられた肋骨病変は消失し,骨シンチグラムに認められたRI集積像も著明に減少していた.ツ反応はステロイド中止後陽転した.したがつて本例は潜在性骨結核があり,ステロイド服用により播種したと考えられた.ステロイド投与中に原因不明の発熱がある場合には肺結核だけでなく骨結核も疑う必要があり, 99mTc骨シンチグラムは本症の早期診断,病巣の分布,治癒判定に有用であることを報告した.
  • 久保 正, 若栗 宣人, 宮本 汎, 吉崎 亨, 北川 正信
    1984 年 73 巻 5 号 p. 659-665
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年注目されている,甲状腺放射性ヨード摂取率(RAIU)が低値(24時間値, 5%以下)で,かつ甲状腺疼痛,発熱などを欠く,症例(以下,本症)の頻度,臨床像および組織像を検討した. 1976~1982年に当科を受診し, RAIUを施行した甲状腺中毒症例中,本症の基準に合致したものは22例(男1例,女21例-1例では3回, 2例ではそれぞれ2回ずつ, 1~4年の間隔で反復のため計26 episodes)であり,一方, RAIU高値の甲状腺機能亢進症は236例(男84例,女152例)であつた.年令は16~64才と広く分布し, 20~30才台に多く見られた.また,本症例のうち4例(5ep)は出産後発症であつた.本症は全甲状腺中毒症例中の8.5%に当り,特に女性間での頻度は高く12.1%(出産後例を除く,自然発症例のみについての頻度は10.0%)に達した. T4, T3は全例で上昇,血中抗甲状腺抗体は陰性~軽度上昇,血沈値は多くは正常範囲である. 8例に施行した甲状腺生検ではいずれも慢性甲状腺炎に合致する像を示し,本症が慢性甲状腺炎の1病態との見解が支持された.甲状線中毒症は5~11週後に自然に寛解したが,その後一過性ないし永続性甲状腺機能低下症を呈した例も見られた.本症は,女性間では,出産後例に限らず自然発症例の頻度もかなり高く,寛解後も本症の反復や甲状腺機能低下症への進展などを考慮して長期の臨床観察が必要である.また,本症の診断に際し, RAIUの重要性が再認識された.
  • 岡崎 昭太郎, 松井 信夫, 新実 光朗
    1984 年 73 巻 5 号 p. 666-670
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    甘草の根の抽出物の鉱質コルチコイド様作用はグリチルリチンの水解産物であるグリチルレチン酸に基づくと考えられており,この作用による偽アルドステロン症の報告は多い.一方,グルチルリチンおよびグリチルレチン酸製剤が広く臨床的に用いられているが,その糖質コルチコイド作用に関する報告は少ない.今回,我々はグリチルリチン投与により出現した偽アルドステロン症例で,下垂体-副腎皮質系の抑制傾向を認めたため,一旦諸症状,検査成績が正常化後,グリチルリチン大量負荷テストを施行し,本薬物の作用機序に考察を加えた.本症例で観察されたレニン-アルドステロン系の顕著な抑制は,フロセミド立位負荷試験,アンジオテンシンII試験の結果と合わせ,グリチルレチン酸が鉱質コルチコイド活性を有するとする,従来の報告と一致した.又,グリチルチリン大量負荷に伴い,血中コーチゾル濃度の低下.尿中17-OHCS排泄量の減少と共に血中ACTH濃度も低値を示し,この下垂体-副腎皮質系が抑制された時期に行なつたラピッドACTH試験で,副腎が正常な反応を示したことは,グリチルレチン酸が視床下部-下垂体レベルで副腎皮質機能を抑制していることを示唆する.以上,本症例の観察より,グリチルレチン酸が鉱質コルチコイド活性に加え,弱いながらも糖質コルチコイド活性も有し,レニン-アルドステロン系のみならず下垂体-副腎皮質系も抑制することが示唆された.
  • 大原 紀彦, 大久保 英雄, 井上 孝利, 工藤 二郎, 高田 昇, 井上 省三
    1984 年 73 巻 5 号 p. 671-675
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺炎と診断されて入院した25才の女性に低γ-globu1in血症を認め, IgG 256, IgA 5, IgM 40, lgD 0mg/dl, IqE 25μ/mlと全クラスのIgの減少がみられた.末梢血リンパ球数は正常値,リンパ球のT:B=84:7とB細胞減少,モノクローナル抗体を用いて検索したT細胞の表面抗原は, OKT4 20.5, 0KT8 57% (OKT4/OKT8=0.36)であり, suppressor・cytotoxic T細胞が優位であつた. in vitroにおける末梢血単核細胞のIg生合成を, solidphaseでradioimmunoassayした結果, suppressor活性の亢進によりIg生合成の減少が証明された.本症例ではモノクローナル抗体によるT細胞表面抗原の検索による形態学的な成績と, Ig生合成からみた機能的な成績が一致しており, suppressor活性亢進の病態の一面を示したものと思われる.なお,本症例は, HBV-carrierなので, B型肝炎発症に際しての免疫反応の関与という面から興味ある問題を含んでいる.現在,肝炎発症の有無について経過を追跡中である.
  • 大西 真, 児玉 龍彦, 金森 博, 森山 貴志, 岩崎 泰彦, 板倉 弘重, 大久保 昭行, 高久 史麿, 福里 利夫, 油谷 浩幸
    1984 年 73 巻 5 号 p. 676-679
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肝に脂肪沈着を示した家族性低βリポ蛋白血症の1例を報告する.症例は28才,男性.生来健康で自覚症状無く,昭和56年11月,健診で肝障害と低コレステロール血症を指摘され入院.身長161cm,体重64kgで理学的に特記すべき所見無く,血中総コレステロール89mg/dl, GOT45U/l, GPT105U/lであつた.腹腔鏡では,表面平滑な黄赤色肝で,組織像では主に小葉中間帯に著明な脂肪沈着を認めた,超遠心法による血中リポ蛋白分析では, LDL (low density lipoprotein)コレステロール38.7mg/dl, HDL (high density lipoprotein)コレステロール43.1mg/dlとLDL分画の減少を認め, LDLアポB16mg/dlと正常の約1/3に低下していた.父親の総コレステロールは130.2mg/dl, LDLコレステロールは67.9mg/dlと低下していた.本例には,肝硬変等の肝実質障害や栄養不良は無く,家族性低βリポ蛋白血症と考えられた.脂肪負荷後の血中トリグリセリドと小腸由来のアポB48は,正常者と同様に増加しており,小腸からの脂肪吸収には障害は無く,肝からのリポ蛋白分泌障害が,肝に脂肪沈着をきたしたと考えられる.
  • 前田 剛, 安藤 利昭, 中村 保博, 石田 宏之, 菊池 健次郎, 飯村 攻, 鹿野 泰邦
    1984 年 73 巻 5 号 p. 680-685
    発行日: 1984/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは, SLEに合併した後天性von Willebrand症候群の1例を経験し,凝固学的異常の機序を凝固因子に対するinhibitorの面から詳細に検討する機会を得たので報告する.症例は25才の女性.主訴は月経過多,関節痛と原因不明の発熱.現症では軽度の貧血と肝腫を認めた.検査成績にて,鉄欠乏性貧血,白血球減少,血清梅毒反応偽陽性.抗核抗体(+),抗DNA抗体(+), C3, C4, CH50低値, Coombs test (+),抗白血球抗体および抗血小板抗体(〓)をみた.凝固学的には,第VIII因子凝固活性(19%),第VIII因子関連抗原(30%), von Willebrand因子(36%),第IX, XI, XII因子, prothrombin活性(PT),活性化部分thromboplastin活性(APTT),血小板粘着能およびristocetin凝集能の低下を認めた. ristocetin凝集能が抗lgGkappaと抗IgA抗体により改善したことから,本例の血漿中にIgG kappaおよびIgA分画にristocetin凝集抑制因子が存在することが示唆された.また,抗IgG抗体および抗IgM抗体による中和試験でAPTTが改善したことから,これらの分画に含まれる循環抗凝血素の存在が推測された.そして,この凝固障害はsteroid療法により著明な改善をみた.以上より,本例は後天性von Willebrand症候群を呈し,さらに循環抗凝血素による凝固障害を合併したprobable SLEと診断.この凝固障害発症機序には,少なくとも一部,免疫学的機序が関与しているものと推測された.
feedback
Top