真性多血症に心筋梗塞を併発し,初診時より約3年後に急性骨髄性白血病に移行し,肝炎を伴つてガス壊疽で死亡した1例を報告する.患者は52才の女性.昭和49年9月胸痛を訴えて来院.心電図と生化学検査で前壁中隔の心筋梗塞と診断.その時末梢血液像では赤血球736万/mm
3, Hb20.0g/dl以上,血沈1時間1mm, NAP score 338,尿酸10.4mg/dl, K6.0mEq/
l,循環血液量,血球量の増加より真性多血症と診断.ブスルファンと潟血計2430mlで赤血球401万/mm
3となる.以後経過は良好で,昭和52年7月Hb8.9g/dl,肝2.5,脾2横指触知し,末血にAuer小体出現,骨髄芽球25%がみられ,急性白血病へ移行したと判断し, VEMP療法を行なう.一時寛解し,同年10月プレドニゾロン減量中,ステロイド糖尿病を併発し,インスリン注射にて良好なコントロールを得る. 53年2月黄疸出現.肝4横指触知, HBs-抗原陽性肝炎であつた. 1ヵ月で治癒.同じ頃,骨髄芽球が61%と増加し, NCS, VEMP, DCMP療法を行ない,骨髄芽球は消失するも, 6月21日ガス壊疽(右下肢)を併発し, PC,抗毒素血清,高圧酸素療法を施行するも奏効なく死亡した.真性多血症の診断よりガス壊疽で死亡する約4年の経過中,興味ある臨床症状および所見を呈し,入院を4回くり返した.本症に心筋梗塞を併発したこと,急性白血病への移行と治療との関係およびガス壊疽の併発を中心に考察を行なつた.
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