日本内科学会雑誌
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73 巻, 7 号
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  • 小澤 明美, 八田 善夫, 松村 剛
    1984 年 73 巻 7 号 p. 925-934
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肝硬変30例,胆道閉塞20例を対象として,原子吸光分析法により肝組織銅含量を測定し,これらの値を対照と比較した.さらに各症例を各種検査所見により細分類し,これらと肝組織銅含量との関連性を調べることにより肝組織銅含量増加の因子を検討した,その結果,肝組織銅含量は対照26.55±9.87μg/g乾燥重量,肝硬変55.28±70.67μg/g乾繰重量,胆道閉塞42.83±25.38μg/g乾燥重量であり,対照に比し肝硬変・胆道閉塞に銅含量高値例が多かつた.その度数分布から,胆道閉塞と肝硬変における肝組織銅含量増加の機序は異なるものと推察されたが,肝硬変においては肝組織銅含量と各種検査所見との間に関連性が認められず,肝組織銅の蓄積機序を一元論的に解釈することはできなかつた.胆道閉塞においては,胆汁流出の有無が肝組織銅含量に影響を及ぼすことが証明され,胆道閉塞の程度と期間はおのおの別個の条件としても銅含量の増加に影響し得ることが示唆された.また,各疾患における血清銅・セルロプラスミンに関しても検討した結果,胆汁うつ滞の肝組織銅排泄の代償経路としてのセルロプラスミン合成促進が確認され,特に胆汁性肝硬変においてはセルロブラスミン結合銅のほかに非セルロプラスミン結合銅も増加することが示された.肝硬変においては,胆汁流出障害がなく,肝組織銅増加の傾向にもかかわらず血清銅・セルロプラスミンが正常であつたことから,肝組織銅蓄積の主原因は肝細胞内機構にあると考えた.
  • 大久保 喜雄, 和田 茂比古, 北沢 邦彦, 草間 昌三
    1984 年 73 巻 7 号 p. 935-943
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Purifiedproteinderivative(PPD)特異的増殖細胞がツベルクリン反応陽性の健常者,および結核性胸膜炎患者の末梢血さらには胸水中にも存在する. PPD特異的増殖細胞の膜抗原の解析をpan T細胞に対する抗Leu 1, suppressor/cytotoxity T細胞に対する抗Leu 2aおよびhelper/inducer T細胞に対する抗Leu 3a各モノクP一ナル抗体(mAb)を用いて解析した. PPD特異的増殖反応はLeu 1+, Leu 2a-, Leu 3a+およびLeu 1+, Leu 2a-, Leu 3a-の2種類の細胞によつて惹起される. PPD特異的T細胞増殖反応におけるT細胞膜抗原の免疫生物学的機能を検討した.結核性胸膜炎および健常者末梢血単核球のPPD特異的T細胞増殖反応は,抗Leu 1および抗Leu 3a mAbによつて抑制された.しかしながら,結核性胸水単核球のPPD特異的T細胞増殖反応は抗Leu 3a mAbのみにより抑制され,抗Leu 1 mAbによつては抑制されなかつた.これらの結果より, PPD特異的T細胞活性化のひとつのモデルを考案した.すなわち, T細胞膜抗原であるLeu 1がfirst triggering分子とLて,ついでLeu 3aがsecond triggering分子とLてPPD特異的T細胞活性化に働いていることを示した.
  • 飯国 弥生, 柏崎 禎夫
    1984 年 73 巻 7 号 p. 944-952
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年,診断技術の進歩および疾患概念の変化により,不明熱の原因疾患は変貌していると推測される.そこで不明熱の原因疾患の変遷を明らかにし,診断上の問題点を検討した. 1971-1982の11年間に北里大学田崎内科に入院した患者6695例よりPetersdorfらの定義を満足する症例79例を抽出して解析した.不明熱の原因疾患は感染症35%(28例),結合組織病22%(17例),悪性腫瘍14%(11例),その他8%(6例)および診断不能22%(17例)であつた.感染症が最も多かつたが,年次別にみると感染症の比率は低下する傾向にあり,かわつて結合組織病と悪性腫瘍が増加する傾向にあつた.各群を構成する主な疾患は,感染症では結核46%(13例),胆道感染症18%(5例),結合組織病では血管炎症候群35%(6例),成人発症スチル病29%(5例)および悪性腫瘍では悪性リンパ腫36%(4例)であった.診断不能では29%(5例)はウイルス感染症が疑われた. 3ヵ月以上の発熱が持続する疾患は主に結合組織病65%と悪性腫瘍45%でみられた.身体所見のうち,成人発症スチル病で間歇熱と咽頭痛・発赤が高率にみられたことは,特記すべき所見であつた.以上,本邦での不明熱の原因として,感染症では依然として結核が高率であつたが,結合組織病では大動脈炎症候群を含む血管炎症候群および成人発症スチル病が増加していたことが注目される.
  • 橘田 輝雄, 岡田 豊次, 岡部 治弥
    1984 年 73 巻 7 号 p. 953-960
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本邦における死因で第1位を占める悪性新生物中,最も頻度の高い胃癌に関して,その発生要因の一つとして,遺伝因子関与の有無を検討する目的で,我々はHLA抗原をとりあげ, HLA抗原タイプと胃癌感受性との関連性を調べた.対象はHLA-A, B抗原に関して171名,内74名にHLA-DR抗原も検索した,対照は第8回国際ワークショップに用いられた非血縁日本人パネルで, HLA-A抗原は949名, B抗原は950名, DR抗原は884名である. HLA-A抗原には有意の差を示す抗原タイプを認めなかつたが, HLA-B抗原に関してはB15, HLA-DR抗原に関してはDR5が胃癌患者に有意に増加していることがわかつた.またB15, DR5両抗原を同時に持つ群についても,胃癌患者群に有意の増加を認めた.中でも, B15とDR5が共に女性胃癌患者に顕著な増加を示し,年令別ではB15で若年程その傾向が強く, DR5は50才以上に有意の増加を認めた.またB15, DR5共に早期胃癌は対照群と比較して差がなかつたが,進行胃癌では有意の増加が認められた.特にB15に関しては,切除不能例が著明な増加を示した.進行胃癌のBorrmann分類では, B15に関してBorr. 3に有意の増加, Borr. 4に増加傾向, DR5に関してはBorr. 4に有意の増加を認めた.組織型分類では未分化型胃癌がB15とDR5に有意のかたよりを示した.
  • 村井 善郎, 池淵 研二, 深山 牧子, 三輪 哲義, 白木 正孝, 森 真由美, 白倉 卓夫
    1984 年 73 巻 7 号 p. 961-967
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Fanconi症候群にsideroblastic anemia様のrefractory anemiaを合併した症例を報告し,考察を加えた.症例は92才,女性. Cd汚染地区での居住歴なし. 1972年動悸,息切れ,貧血,腰痛があつた. 1976年11月貧血の精査のため当院入院.肝脾腫なし.入院時検査所見で代謝性アシドーシスを認めた. NH4Cl負荷試験で尿酸性化能の障害があり,遠位尿細管障害の存在が考えられた.腎性糖尿,低燐血症,高燐尿症に加え,汎アミノ酸尿および骨X線像での骨萎縮像などの成績より, Fanconi症候群と診断された.骨髄腫および後天的にFanconi症候群を来すとされる要因は認めなかつた.活性型ビタミンDに反応し,腰痛,腎性糖尿,低燐血症の改善を認めたが, 1981年4月うつ血性心不全に血管内凝固症候群を併発し死亡した.剖検では両側腎とも著明に萎縮し,組織学的には細動脈硬化像によるnephronの荒廃に加え,間質性腎炎像を強く認めた,骨は典型的ではないが, osteoporo-malaticな変化があつた.本症例は低色素性,小球性貧血を合併していた.骨髄では赤芽球過形成(環状担鉄芽球(〓))に加えて,無効造血の存在,骨髄赤芽球δALA合成酵素低値,ヘモグロビン異常を認めるなどの成績より, refractory anemiaと診断された. Fanconi症候群と, refractory anemiaが合併したことは,両疾患の悪性腫瘍との関係を考慮すると,両者の病態を検討する際,示唆にとむ点と思われた.
  • 榊原 啓, 肥田野 等, 土屋 整也, 福井 明, 高橋 洋平
    1984 年 73 巻 7 号 p. 968-973
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    播種性コクシジオイデス症の1例を経験した.症例は47才,男性で,昭和57年7月23日頃より38°C以上の発熱あり,近医にて加療するも不変のため, 7月30日本院受診し入院した.入院時胸部写真で,右上縦隔および右肺門リンパ節の腫大,右上葉のスリガラス様陰影を認めた.当初肺炎と診断し,各種抗生物質,抗結核薬を投与したにもかかわらず, 39°C以上の発熱が1カ月以上続いた. 8月中旬より右鎖骨上窩にリンパ節を触知し,母指頭大に腫大したため, 9月8日生検した.この結果コクシジオイデス症の疑いが濃厚となつた.なお,この生検部が一時外瘻化し膿汁が出現したため,これを培養した所, Coccidioides immitisと定し得た. 9月14日よりアンホテリシンBと5-FCの併用療法を行なつたが,無効のため, 10月1日よりMiconazoleとKetoconazoleに変更した.変更後2週間で下熱し,血沈も改善した.一時肺炎を合併したが経過は順調で12月16日MiconazoleとKetoconazoleを中止した.コクシジオイデス症は難治性疾患で,特に播種性コクシジオイデス症の半数は死亡するとされている.本症は北中南米にみられる疾患で,他地域には殆どみられない本邦では1927年に榊原らが朝鮮人労働者の1例を報告しているにすぎず,本症例は日本人として第1例目である.
  • 黒岩 宣親, 中村 一彦, 真田 純一, 大重 太真男, 橋本 修治
    1984 年 73 巻 7 号 p. 974-979
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    超音波パルスドプラ法を用いて,等容性拡張期に見られる左室内血流について,特徴的パターンおよび意義について健常例26名,陳旧性心筋梗塞例43名で検討した.健常例では,左室中央部で心尖部へ向かう層流性の血流信号が得られ,心音図上IIAより約20msec前に始まり,ほぼIIAに一致してピークを有し急速流入血流の直前で消失する.同血流の持続時間は39才以下の若年者群(n=14)で111±22msec, 40才以上の高年者群(n=12)で137±27msecで,高年者群で有意に延長した.一方,陳旧性心筋梗塞例では,心尖部方向を向く群(以下A群: n=20)心基部方向もしくは心尖部方向を向いたものが逆転して心基部方向を向く群(以下B群: n=12)明らかな血流の消失する群(以下C群: n=11)の3群に分けられた.左室造影で等容性拡張期に左室を心基部側と心尖部側とに2分して検討すると, A群では心尖部側が心基部側に比し,より拡張し血流は心尖部側へ向き, B群では逆に心基部側の拡張が強く心基部を向き, C群では左室変形が少なく明らかな血流が出現しない事が示された.左室駆出率との関係では,健常例(N群)との比較で, N>A>B>Cと有意差を生じた.等容性拡張期に見られる血流は,梗塞部位やその広がりを含めた左室弛緩様式を反映すると共に,弛緩速度評価に対する有用性を持ち,新しい左室弛緩能を表わす非観血的指標としての可能性が示唆された.
  • 大野 辰治, 瀬古 修司, 為我井 道子, 岡田 隆道, 森田 昂, 古川 裕夫, 堀井 章市, 加納 正
    1984 年 73 巻 7 号 p. 980-985
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Pyroglobulinemiaを伴うIgD-λ型骨髄腫の希有な1症例を報告する.患者は70才,男性.腰痛と大量の下血を主訴に入院となつた.検索の結果,直腸S状結腸の非特異的びまん性出血性炎症像に加え,汎血球減少,血沈高度亢進,骨のPmched out lesion, IgD-λ型M蛋白血症,骨髄の著明な骨髄腫細胞の増殖などが認められ,多発性骨髄腫と診断した.本例の大量の下血には,腰痛時に頻用していたindomethacin坐薬の直接作用に加え,血小板減少および, M蛋白による血小板機能低下,凝固因子活性低下.線溶亢進などの関与が示唆された.血清非働化時発見されたpyroglobulinはIgDによるものであることが判明した.その熱凝固性,酸ゲル化反応は非常に緩和ではあるが, glycine, urea, guanidineなどにて熱凝固性が消失または抑制されることより,従来から報告されている定型的なIgG型pyroglobulinと類似の熱凝固化機序が示唆された.
  • 木嶋 祥麿, 小沢 潔, 桜井 俊一朗, 仲山 勲, 東海林 隆男, 笹岡 拓雄
    1984 年 73 巻 7 号 p. 986-994
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ビタミンKが欠乏すると,肝での血液凝固因子の活性化が阻害されるため出血症状が出てくるが,臨床的には新生児にしばしばみられる.成人においてはまれであるが,最近とくに乳児期にみられるビタミンK欠乏症が注目されている.一方,腎不全患者ではしばしば皮下や消化管などに出血がみられ,血小板機能・凝固困子活性の異常などが指摘されている.しかしビタミンK欠乏症の併発はあまり知られていない.最近われわれが経験した出血ないし凝固異常を呈した患者14例を検討したところ,慢性腎不全8例,急性腎不全(手術後4例,激症型皮膚筋炎・脳出血後感染症合併それぞれ1例)6例であり,このうち4例は検査結果から消耗性血管内凝固症候群(DIC)であつた.ほかの10例では肝機能異常はなく, DICの所見とも異つており,プロトロンビン時間・部分トロンボプラスチン時間の延長,第II, VII, IX, X因子活性の低下,異常な第II因子分子の出現などの所見が認められ,ビタミンK投与で改善を認めたことからビタミンK欠乏症と診断した.本症10例の臨床所見は高令の女性患者が多く,食事摂取は著しく不良で,重症感染症および手術後のため抗生物質が投与されており, DICの背景因子と共通点が多い.このような悪条件をもつ腎不全患者ではビタミンKが枯渇しやすいと考えられるので,非経口的に予防投与しておく必要がある.
  • 前田 正人, 木嶋 祥麿, 坂本 龍, 金山 正明
    1984 年 73 巻 7 号 p. 995-1000
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は29才の女性で, 26才頃より耐寒性が低下し,皮膚が粗〓で便秘傾向であつた. 27才より無月経となり,甲状腺の精査を勧められ入院となつた.体温は35.2°C,甲状腺腫はなく,腋毛・恥毛は希薄であつた.心臓超音波断層検査で著明な心膜液の貯留を認め,甲状腺機能検査では, T3 3.5ng/dl, T4 0.3μg/dl, TSH 218μU/ml,基礎代謝率-56.5%であり,粘液水腫と診断された.一方,血清gastrinは6830pg/mlと正常の約70倍の高値を示し,末梢血で小球性低色素性貧血を認め,血清ビタミンB12は正常で,悪性貧血は伴つていなかつた.胃液検査では, basal acid output (BAO) 0.27mEq/h, maximum acid output (MAO) 0.28mEq/hと無酸症を呈し,胃底腺領域の生検所見は,萎縮性胃炎の像を呈していた.また,経口的胃内酸負荷では, gastrinは急速に低下したため,本例における高gastrin血症は,萎縮性胃炎に伴う負のフィードバックによると考えられた.本例では,抗甲状腺自己抗体が陰性であるが,一般に特発性甲状腺機能低下症は橋本病が成因と考えられ,一方type A萎縮性胃炎では,抗胃壁細胞抗体が陽性のことが多く,その進展に自己免疫現象の関与が唱えられている.悪性貧血も橋本病などの自己免疫疾患との合併が多く,その本体が萎縮性胃炎に伴うビタミソB12の吸収障害であることから,本例は,甲状腺疾患と胃病変の関連を考えるうえで示唆にとむ1例と考えられた.
  • 武藤 重明, 本間 寿美子, 高安 徹雄, 高沢 謙二, 石橋 明人, 土谷 正雄, 椎名 明, 浅野 泰, 細田 瑳一, 二ノ村 信正
    1984 年 73 巻 7 号 p. 1001-1008
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Sjögren症候群に肺塞栓, hyperviscosity syndrome,胸腺腫を合併した症例を経験したので報告する.症例は36才,女性.胸痛,呼吸困難を主訴に当科へ入院した. 2年前より,動作時息切れ,唾液の減少,口腔内乾燥感を自覚したが放置していた.入院時, IIpの亢進を認め, IgA-λ型単クローン性高γグロブリン血症, hyperviscosityがみられRA因子は陽性であつた.胸部X線像,心電図,心エコー図,心臓カテーテル検査および肺動脈造影より肺塞栓と診断し,抗凝固療法および血漿交換を実施し自覚症状,検査所見の改善を得た.また,臨床症状,眼科・耳鼻科的検索によりSjögren症候群に特有な所見を認めた.さらに,胸部CTスキャン, 67Gaシンチグラムにて胸腺腫が疑われ,悪性の可能性が強く示唆されたため,胸腺摘出術を行なつた.胸腺は,リンパ球,形質細胞の浸潤を伴うリンパ〓胞のめだつ組織像を呈していた,胸腺摘出後もhyperviscosityの状態が持続したため,血漿交換に加えステロイドホルモンを投与したところ,血漿蛋白,血清相対粘度の改善が認められた.本症例は, Talalらのいわゆるpseudolymphomaに一致する病像と考えられ,今後悪性リンパ腫へと移行する可能性もあり十分な経過観察が必要と思われる.本症例に合併した単クローン性高γグロブリン血症, hyperviscosity syndrome,胸腺腫,肺塞栓の組合せは,今までに報告例はなく,極めて珍しい症例と思われた.
  • 金子 周一, 越野 慶隆, 岩田 章, 長田 清明, 高田 宗之, 船木 悦郎, 小林 健一, 中西 功夫
    1984 年 73 巻 7 号 p. 1009-1015
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    MCTDの症例が,ウイルスと考えられる全身性の感染症をきたし, MCTDにまれな心筋炎を合併した剖検例を報告する.症例は31才,女性.主訴は発熱. 23才よりRaynaud現象が出現し, 26才に多関節痛があり, 27才には手指腫脹, 31才の時,筋肉痛を認めた.今回,乾性の咳嗽・発熱が出現し,当科入院となつた.入院時,体温37.4°C,脈拍は50/分で不整,血圧は98/50mmHgであつた.肺野にラ音なく,心音は純であつた.肝・脾で触知せず,リンパ節腫はなかつた.白血球数は1000/mm3と減少し, LDH 1105U, GOT 117U, CPK 670Uと増加していた.抗核抗体で1280倍(蛍光抗体法でspeckled型).抗ENA抗体は128000倍でRNase抵抗性ENA抗体は40倍以下であつた.心電図は完全房室ブロックを呈した.胸部X線写真では,心胸郭比55%であつた.心エコー図では左室腔,壁厚,動きに異常なく,心膜液の貯留はなかつた.入院後,抗生物質,プレドニソロンなど投与したが,第6病日,心室細動をきたして死亡した,剖検では,主病変は心筋炎と間質性肺炎であり,ウイルスによる全身感染症と考えられた.食道の線状潰瘍と線維化,脾のonion skinning,腎の微少糸球体炎,低形成性骨髄を認めた. MCTDに心筋炎をきたすことは,まれとされるが,本症例の心筋炎の発症にMCTDの関与が考えられた.
  • 西川 泰弘, 桜井 謙治, 秋山 英明, 中澤 博江, 半田 俊之介, 中村 芳郎, 高橋 哲夫
    1984 年 73 巻 7 号 p. 1016-1021
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    拘束型心筋症はアミロイドーシスなどに伴うものが多く,特発性のものはまれである.今回我々は特発性の2例を経験した.心臓カテーテル検査などでは収縮性心膜炎に類似した病態がみられたため心膜切除術を施行した.症例1.31才,女性. 17才より息切れが出現し, 21才時MSとして交連切開術を受けている.心エコー図上,心膜の肥厚を認めた.症例2. 46才,女性. 1年前より心膜液貯留と右心不全症状が出現した.心臓カテーテル検査では両例ともに右心室拡張末期圧の上昇を認め,左右の心室圧は拡張期はほぼ等しく,圧波形はdip and plateauを呈した.術中所見では2例とも心膜の肥厚,癒着は軽度であつた.術後も術前と同様の血行動態が持続し,自覚症状は改善しなかつた.心筋生検によりアミロイドーシスなど明らかな病因は否定された.拘束型心筋症,収縮性心膜炎の臨床的鑑別が困難な場合もあることを報告する.
  • 塩 宏, 植木 壽一, 松本 勲
    1984 年 73 巻 7 号 p. 1022-1027
    発行日: 1984/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    真性多血症に心筋梗塞を併発し,初診時より約3年後に急性骨髄性白血病に移行し,肝炎を伴つてガス壊疽で死亡した1例を報告する.患者は52才の女性.昭和49年9月胸痛を訴えて来院.心電図と生化学検査で前壁中隔の心筋梗塞と診断.その時末梢血液像では赤血球736万/mm3, Hb20.0g/dl以上,血沈1時間1mm, NAP score 338,尿酸10.4mg/dl, K6.0mEq/l,循環血液量,血球量の増加より真性多血症と診断.ブスルファンと潟血計2430mlで赤血球401万/mm3となる.以後経過は良好で,昭和52年7月Hb8.9g/dl,肝2.5,脾2横指触知し,末血にAuer小体出現,骨髄芽球25%がみられ,急性白血病へ移行したと判断し, VEMP療法を行なう.一時寛解し,同年10月プレドニゾロン減量中,ステロイド糖尿病を併発し,インスリン注射にて良好なコントロールを得る. 53年2月黄疸出現.肝4横指触知, HBs-抗原陽性肝炎であつた. 1ヵ月で治癒.同じ頃,骨髄芽球が61%と増加し, NCS, VEMP, DCMP療法を行ない,骨髄芽球は消失するも, 6月21日ガス壊疽(右下肢)を併発し, PC,抗毒素血清,高圧酸素療法を施行するも奏効なく死亡した.真性多血症の診断よりガス壊疽で死亡する約4年の経過中,興味ある臨床症状および所見を呈し,入院を4回くり返した.本症に心筋梗塞を併発したこと,急性白血病への移行と治療との関係およびガス壊疽の併発を中心に考察を行なつた.
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