日本内科学会雑誌
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74 巻, 3 号
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  • 鷲野 洋子, 高木 健三, 佐竹 辰夫, 鈴木 隆二郎, 原 通広
    1985 年 74 巻 3 号 p. 279-286
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    気管支喘息患者に対する種々のヒスタミン吸入試験のうち,三つの方法を,同一患者に対し約1ヵ月間にほぼ同様の条件で施行し,各閾値を比較した.すなわち,ボディプレチスモグラフでspecific airway conductance (SGaw)を測定し, SGawが基準値の35%減少したヒスタミン濃度をヒスタミン閾値(PC35-SGaw)とし(body box法),これを1秒量の20%低下したヒスタミン濃度(PC20-FEV1.0),およびアストグラフで測定した呼吸インピーダンスが上昇する時点のヒスタミン濃度(Cmin)と比較したわけである.なお,濃度は常用対数で示した.気管支喘息患者の20例で, PC35-SGaw=1.70±0.11, PC20-FEV1.0=2.03±0.09, Cmin=2.30±0.14であり, PC35-SGawが最も鋭敏な結果を示した.また, PC35-SGawとPC20-FEV1.0の相関はr=0.70の正相関を示した.よつてPC20-FEV1.0は, PC35-SGawと同様,気道過敏性の指標として有用なことが証明された.さらに,気管支喘息を合併していない慢性肺気腫患者の10例にも同様の3法を施行した.その結果, PC35-SGaw=1.81±0.21, PC20-FEV1.0=2.29±0.34, Cmin=2.77±0.21といずれも低い閾値を示した.次に,横軸にヒスタミン濃度(対数表示),縦軸に%SGaw(ヒスタミン吸入前SGawに対する割合の%表示)をとり,この直線の傾きの絶対値をreactivityとし,一方PC35-SGawをsensitivityとすると,気管支喘息患者23例ではsensitivityとreactivityはr=0.26で相関がなかつた.慢性肺気腫患者でも同様であつた.
  • トレッドミル法とペーシング法の比較
    里村 公生
    1985 年 74 巻 3 号 p. 287-296
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    労作性狭心症例を対象として, 25例にトレッドミルテスト(TM), 24例にペーシング負荷テスト(PAC)を施行して狭心症を誘発し,その際の血行動態,血小板機能,プロスタノイド代謝およびカテコールアミンの変動について検討した.観血的測定による動脈圧波形を用いてDPTI/TTIを算出し,採血は動脈血を用いた.両負荷法ともpressure rate product (PRP), DPTI/TTIは負荷を開始すると有意に変化し始め,最大負荷時にはおのおの最大値,最低値を示した.すなわちPRPはTM法では226.2±9.4 102mmHg/min, PAC法では202.8±10.4 102mmHg/minとなり, DPTI/TTIはTM法では0.59±0.05, PAC法では0.74±0.04となつた.変化率は共にTM法の方がPAC法より有意に大であつた. β-thromboglobulin (β-TG)は負荷による増加率でみると, TM法の方がPAC法に比べ有意に大であつた.プロスタノイド代謝については負荷によりTM法でthromboxane B2(TxB2)が有意に増加したが, 6ketoprostaglandin F(6keto-PGF)は変化しなかつた.一方PAC法ではTxB2, 6keto-PGFともに有意な変化は認めなかつた. TxB2/6keto-PGFでみるとTM法では有意に増大したのに対し, PAC法では増大傾向にとどまつた.血漿ノルエピネフリン(NE)は負荷によりTM法では全例が増加し,約77%と著しい増加を示したのに対し, PAC法では約12%の増加にとどまつた.またNEはTM法の場合はPRPと有意の相関が認められた.以上労作性狭心症発作誘発法としてはPAC法に比べ, TM法は血小板,プロスタノイド代謝により強く働き,交感神経の関与が大であつた.
  • 印東 利勝
    1985 年 74 巻 3 号 p. 297-306
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    L-dopa療法を施行中にdeclining efficacyを呈してきたパーキンソン病に対してはL-dopaの増量や,頻回分割投与ではもはや治療上対処し得ない.このような場合には線条体dopamine receptorを直接刺激する作用を有するdopamine receptor agonistが,治療上期待される薬物である.今回L-dopa療法を施行中にdeclining efficacyを呈してきた13例のパーキンソン病に対して, dopamine receptor agonistの一種であるbromocriptineを併用し,本剤の長期併用療法の意義について検討した.併用療法の結果パーキンソン病の三大徴候である筋固縮,静止振戦,無動に対しては併用6ヵ月までは前2者は併用開始時に比しいずれも有意に改善し,後者は改善傾向を示した。以後は有意な改善を示さなかつたが,併用54ヵ月までは併用開始時に比し明らかな悪化は示さなかつた.体位反応障害は併用3ヵ月までは軽減傾向, 6ヵ月以後は漸次悪化傾向を示したがいずれも有意なものではなかつた. Yahr's stageやParkinson scoreについても併用6ヵ月までは併用開始時に比し,有意に改善効果を示した.以後は有意な改善を示さなかつたが,併用54ヵ月までは併用開始時に比し明らかな悪化は示さなかつた.以上よりL-dopa療法中にdeclining efficacyを呈してきたパーキンソン病に対して, bromocriptineを併用した場合,副作用等で併用中止にいたらない限り, 54ヵ月の長期にわたり併用する意義があると考えられた.
  • 伊藤 光泰, 遠藤 茂樹, 福間 尚文, 船内 正憲, 木佐森 茂樹, 広岡 良文, 仁瓶 禮之, 山崎 昇
    1985 年 74 巻 3 号 p. 307-313
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    悪性関節リウマチに末梢神経障害はよくみられるが,難治性で適確な治療はいまだ確立されていない我々は悪性関節リウマチの経過中に末梢神経障害を併発し,血漿交換療法によつて軽快した1例を経験した.症例は51才の女性で, 13年前より慢性関節リウマチの診断を受けステロイド薬等で加療されていたが, 2年前に突然両足の運動・知覚障害を呈し来院した.両上下肢末端優位の筋力低下,両足外側部に強い知覚障害,筋萎縮,および下肢の紫斑,点状出血を示し, RAテスト(2+),血沈亢進,血清補体価の低下,抗RNP抗体,抗核抗体陽性,多クローン性免疫グロブリン,血中免疫複合体の上昇を認めた.皮膚・神経生検にて腓腹神経の脱髄像と皮下組織に多発性小動脈炎を認めた.血漿交換を3日間連続して行なつたところ,知覚障害,筋力の回復と共にサーモグラフィー,指尖脈波の改善を認めた.血清免疫学的にはγグロブリン,抗RNP抗体,血中免疫複合体の低下,血沈,リンパ球幼若化反応の改善をみた. 2週後には自覚症状,検査成績は血漿交換前の状態に戻つたためさらに2クールの血漿変換を施行した. 3クール目の血漿交換施行後には症状,検査成績は改善し,再発を認めなかつたため退院した.悪性関節リウマチに随伴した末梢神経障害に血漿交換が有効であつたことから,血中免疫複合体等の液性因子の関与が示唆された.
  • 秋川 和聖, 中川 光二, 久保 光正, 松原 三八夫, 野口 和哉, 鈴木 邦治, 中川 昌一
    1985 年 74 巻 3 号 p. 314-321
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    下垂体腺腫より過剰に分泌されるTSHにより, 2次的に甲状腺機能亢進症を呈したと考えられる1例を報告する.症例は48才,男性で,甲状腺腫を主訴として来院し, T34.2ng/ml, T423.3μg/dlと血中甲状腺ホルモン高値に加えTSHが7.9μU/mlと上昇していた.またTSH-αは8.9ng/mlと高値であり, TSH-βは0.2ng/ml以下であつた.頭部X線写真およびCTスキャンにて下垂体腫瘍を認めた. TSH, TSH-αおよび甲状腺131I摂取率は, T3の投与で抑制されず, TSH, TSH-αはTRHテストでは無反応であつたが,デキサメサゾンにより抑制され,インスリン負荷により奇異な上昇を示した. T3, T4はメチマゾール投与では低下しなかつたが,無機ヨードの投与により低下し, TSHは上昇した.経蝶形骨洞的下垂体腫瘍摘除術を施行し酵素抗体法を用いて腫瘍組織中に,抗TSH抗体,および抗TSH-α抗体に陽性を示す細胞が認められた.腫瘍中TSH, TSH-α含量はそれぞれ0.44mU/mg, 0.24μg/mg湿重量であつた.また,血清および腫瘍のホモジネートをゲル〓過し,各分画のTSH, TSH-αを測定し,標準物質および原発性甲状腺機能低下症患者の血中のそれと,ほぼ同一部位に熔出されることを確認した.
  • 副島 昭典, 井上 尚志, 長沢 俊彦, 川 明
    1985 年 74 巻 3 号 p. 322-326
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は38才,女性. insuhn注射の指示を自己判断で中断数日後より意識障害,発熱が出現.某病院にて高度の脱水, aceton臭,高血糖を認められ,糖尿病性昏睡の診断にて生理食塩水の補液, actrapid insulinの投与が開始された.血糖値は緩徐に下降し,充分な利尿も得られていたが,入院翌朝より特に誘因なく,乏尿,急速に進行する高窒素血症が出現し,急性腎不全の診断にて3日後,当科に救急転入院した.転院時BUN 82.2mg/dl, creatinine 6.6mg/dl,血液ガス分析ではpH7.01, base excess-24.4mmol/lと高度の代謝性acidosisが認められ,また意識障害の遷延も認められたため,ただちに血液透析への導入が行なわれた. 8回の血液透析後透析を離脱し,その後も腎機能は順調な回復を示した.本例は入院時CPKを始めとする筋逸脱酵素の著明な上昇が認められ,同isoenzymeはMM型がほぼ100%であつたこと,また血清および尿に著明なmyoglobinの高値が認められたことより,糖尿病性昏睡にrhabdomyolysisによる急性腎不全を合併したものと考えられた.我々の調べた限り,本症例は本邦8例目の報告例である.糖尿病性昏睡に急性腎不全の合併をみた場合,その原因として本例のごとくrhabdomyolysisを考える必要があると思われた.
  • 伊藤 正美, 鈴木 章彦, 辻 昌宏, 西村 正治, 小笠原 英紀, 武井 秀昭, 岸 不盡彌, 近藤 宇史, 長谷川 淳, 川上 義和
    1985 年 74 巻 3 号 p. 327-333
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    例は28才の男性で, I型糖尿病患者である.経過13年にわたり不定期であるがインスリン治療を続けていた.右下肢の血栓性静脈炎を発症し当科に入院した.入院時に糖尿病性眼症(Scott Vb),糖尿病性腎症,糖尿病性神経障害などの合併症を認めた.なかでも,起立性低血圧,神経因性膀胱,インポテンス,筋緊張性瞳孔などの自律神経障害が著明であつた.また,脳CTスキャンで脳皮質・脳幹部に萎縮所見を認めた.入院中に血栓性静脈炎が原因と考えられる肺塞栓症を突然発症した.また第37病日に低血糖症状にひきつづいて心停止がおこつた.高度の自律神経障害のある糖尿病患者に突然心停止のおこることは最近注目されており,原因は心臓を支配する自律神経の調節失調と推定されている.本症例でも心血管系に基礎疾患を認めないことより,この心停止は高度の自律神経障害のあるためにおきたと考えた.炭酸ガス濃度を一定にした条件下で吸気の酸素濃度を低下させると,この患者は正常成人とは反対に換気量が減少した.この現象をhypoxic depressionという.このためにこの現象をもつ人にとつて,心不全や呼吸不全などの低酸素血症に陥りやすい疾患は致命的である.また高度の自律神経障害をもつ糖尿病患者は, hypoxic depressionを合併している可能性があるので,重篤な糖尿病患者の治療の際には呼吸状態の観察も重要であると思われる.
  • 田島 平一郎, 中田 恵輔, 佐藤 彬, 古河 隆二, 川原 健治郎, 楠本 征夫, 棟久 龍夫, 長瀧 重信, 石井 伸子, 小路 敏彦
    1985 年 74 巻 3 号 p. 334-337
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    非A非B型輸血後肝炎から肝硬変まで組織学的に追跡した1例を経験した.症例は55才,女性.昭和43年5月14日,左房粘液腫の摘出術時輸血1200mlを受け, 1ヵ月後, GOT 178 sFU, GPT 143 sFUの肝機能異常が出現し,肝生検で輸血後肝炎と診断された. 6年後,肝・脾腫大および汎血球減少症を認め,輸血より14年後の腹腔鏡・肝生検では肝硬変へ進展していた.経過中, HBs抗原・抗体は陰性であり,本邦では血清学的に診断された非A非B型輸血後肝炎から肝硬変へ進展した症例の報告は少なく,文献的考察を加え報告した.
  • 西尾 健資, 松井 真, 須賀 博文, 秋口 一郎, 亀山 正邦, 錦織 優
    1985 年 74 巻 3 号 p. 338-345
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は48才の女性. 1982年2月に左乳房の無痛性腫瘤に気付き, 5月根治的左乳房切除術を受け,乳房原発のnon-Hodgkin lymphoma, diffuse, medium-sized cell type (LSG分類)で,臨床病期はIEと診断された.翌1983年3月,外来で経過観察中に右乳房の腫瘤を発見され, 4月生検により前回と同様の組織所見が得られたため, 5月に根治的右乳房切除術が行なわれた. 6月より全身の再発巣の検索を受けたが明らかな再発巣は発見されず, VEPA療法およびOK-432による免疫療法を受けた後, 9月より寛解状態となり外来通院していた. 11月,意識障害,右不全片麻痺,構語障害を主訴に当科に入院した.頭部CTで右側脳室傍前角領域および左基底核領域に,造影増強効果陽性の腫瘤を認めた.臨床経過と頭部CT所見よりnon-Hodgkin lymphomaの脳実質内転移を疑い, Linac 10 MeV X線による全脳照射(総線量4020rad)と副腎皮質ステロイド薬投与を行なつた.これらにより臨床症状は著明に改善した.また,治療効果判定のために実施した頭部CT検査でも著効を示し,造影増強効果のある腫瘤は消失した. 12月末に,右上下肢の軽度筋力低下を残すのみとなり,軽快退院した.
  • 老籾 宗忠, 多木 純子, 乾 明夫, 石原 一秀, 佐伯 進, 吉田 泰昭, 馬場 茂明
    1985 年 74 巻 3 号 p. 346-350
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    55才の男性,高校教師. 20数年以上の間, 2日間37.5°Cから38.5°Cの発熱, 3日間平熱という,ほぼ5日を周期とする周期熱をくり返した.本症例は日本在住で,海外旅行の経験はなかつた.有熱時,軽い咳嗽を認める以外,自覚症に特徴的なものはなかつた.検査所見上,血清抗体価を含めてマラリアは否定された.さらに有熱期,無熱期に分けて一般検査,ならびにetiocholanoloneを中心に17-KSの分画定量, catecholamineの定量などのホルモン測定を行なつたが,特異的所見はみられなかつた.治療として,各種抗生物質, colchicine, reserpine, prednisoloneなどの投与を行なつたが,効果はえられなかつた.本例を本邦で報告された周期熱と対比して検討した.以上より,本例は本態性周期熱といわれるものと考えられた.
  • 種市 幸二, 今野 孝彦, 芝木 秀俊
    1985 年 74 巻 3 号 p. 351-356
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    単クローン性Castlemanリンパ腫(plasma cel1 type)を合併した多発性神経炎,内分泌症状を伴うplasma cell dyscrasia (高月病)を経験したので形質細胞腫との異同について報告する.症例は63才,女性. 31才よりの無月経,多発性神経炎,皮膚色素沈着,浮腫,リンパ節腫脹,著明な肝脾腫,骨硬化像,耐糖能障害,髄液蛋白細胞解離,免疫電気泳動でIgA・λにMbowを示し,高月病と診断した.リンパ節の組織所見は, Kellerらの報告したCastlemanリンパ種plasma cell typeの像を示し,酵素抗体法(peroxidase antiperoxidase法)では〓胞間にIgA, λ陽性細胞の単クローンの増殖を示した.本症例は組織学的には典型的Castlemanリンパ腫plasma cell typeの像を示したが,免疫組織学的には腫瘍性の反応を呈しており, Castlemanリンパ腫plasma cell typeと形質細胞腫の関連について示唆に富む所見と思われる.
  • 1985 年 74 巻 3 号 p. 400
    発行日: 1985年
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
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