日本内科学会雑誌
Online ISSN : 1883-2083
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74 巻 , 4 号
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  • 尾前 照雄
    1985 年 74 巻 4 号 p. 401-415
    発行日: 1985/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 兼坂 茂
    1985 年 74 巻 4 号 p. 416-424
    発行日: 1985/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    体表面電位図より瞬時ごとの心双極子性を計算し,陳旧性前壁心筋梗塞患者と正常者のそれと比較検討した.また,心室内興奮伝播過程の二次元シュミレーションモデルを作成して,本法の妥当性を推定した.対象は正常者26例,前壁心筋梗塞患者25例である.梗塞の部位と大きさは201Tl心筋シンチグラムより分け,梗塞範囲が左室の40%未満を前壁群16例,それ以上を広範前壁群9例とした.双極子性の示標としては,体表面電位分布を単一双極子で近似しえない成分を残渣として経時的に求めた.その結果,前壁梗塞群では正常群に比し, QRSの23±5msecで残渣はきわめて有意な高値を示し(p<0.001),より多双極子性が示唆された.広範前壁梗塞群では正常群に比し, QRSの45±7msecで残渣は非常に有意な低値を示し(p<0.01)単一双極子性が示唆された.二次元シュミレーションでも,梗塞による双極子性の変化は残渣曲線上に臨床例と同様の傾向として表われ,本法の信頼性が確かめられた,心筋梗塞の大きさと瞬時残渣の間には38msecで最良の相関が認められ(r=-0.6381, p<0.01),梗塞が大きいほど単一双極子性が高いことが示唆され,本法により心筋梗塞の大きさが推定できる可能性が示された.
  • 銕 啓司, 藤谷 和大, 戸田 忠一, 白 鴻泰, 竹内 素志, 福崎 恒
    1985 年 74 巻 4 号 p. 425-429
    発行日: 1985/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    NYHAII~IV°の心不全患者37例(陳旧性心筋梗塞9例,拡張型心筋症10例,急性心筋梗塞5例,弁膜症13例)を対象に, digoxinの体内動態と血行動態および臨床病態との関連を対比検討した.薬動力学的諸指標は,各疾患群間に有意差を認めなかつた. NYHAIV群は,その他の群に比しe1imination ha1f life (T1/2β)が延長し, appavent vo1ume of distribution (Vd)が有意に大であつた.血行動態面からみると, T1/2βは,クレアチニンクリアランス(Ccr)とr=-0.39,右心房圧(RAP)とr=0.46, total clearance (Cltot)はCcrとr=0.58, RAPとr=-0.37,心係数(CI)とr=0.38の相関を示した. Vdは,浮腫を伴わない患者においてはCIとr=0.67の正の相関を,浮腫を伴う患者は1例を除き浮腫を伴わない患者老群の回帰直線の上方に位置した.以上より,心不全患者におけるdigoxinの薬物動態には, RAP, CI,浮腫が密接に影響を及ぼし,心不全重症度がますにつれ,血行動態諸量,浮腫の変化に伴い, digoxinの体内動態も変化することが示唆された.
  • 尾崎 治夫
    1985 年 74 巻 4 号 p. 430-439
    発行日: 1985/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    従来から,僧帽弁狭窄症(MS)の中に左室機能低下例が存在し,これがMS特有の血行動態から説明し難いことから,その原因としてmyocardial factorなる因子が想定され,種々の論議がなされてきた.古くはリウマチ性病変の左室心筋への波及が,近年では僧帽弁弁下病変による機械的因子が,その主たる要素として重要視されている.本論文では,このmyocardial factorの本態を究明すべく,第1編としてMSにおける左室壁運動異常を弁下病変を関連づけて, MS43症例につき臨床的検討を行ない,さらに第2編としてMSの剖検心12例につき,左室心筋病変の病理学的検討を行なつた.臨床的検討では,弁下病変の強い例に壁運動低下例が多く存在し,かつ弁下病変による機械的な制約が一因となつている可能性を59%に認めたが,びまん性低下例,心尖部限局例といつた弁下病変からは説明できない例がそれぞれ9%, 4%にみられた.またantero apical wallに壁運動低下を示すものが53%を占めた.病理組織学的検討では,リウマチ性心筋炎またはその後遺症とみられる心筋病変が83%にみられ,その病変の強い例では臨床的に左室壁運動のびまん性低下を認めた.また左室前壁の心筋には外層に特異的に萎縮がみられる例が71%にあり,この所見と左室antero apical wallの壁運動低下との関連が示唆された.以上MSにおけるmyocardial factorとしては弁下病変による機械的因子のみならず,心筋病変そのものも重要であると考えられた.
  • 根住 直史, 永田 格, 森中 節子, 加納 正
    1985 年 74 巻 4 号 p. 440-445
    発行日: 1985/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    扁桃腫瘤を臨床上の初発症状とし,その腫瘍細胞内に電顕所見上多彩な封入体を認めたIgD (λ)型骨髄腫の症例を経験した.症例は44才,男性.左扁桃腫瘤を主訴として当院耳鼻科受診時,貧血, M蛋白血症を指摘され内科に転入院した. M成分は血清免疫電気泳動にてIgD (λ)型と判明した.骨髄生検にて形質細胞腫と診断され,全身骨X線検査では頭部に少数の打ち抜き像を認めた.扁桃腫瘤も組織学的所見より形質細胞腫と診断された.本症例は扁桃に原発した髄外性形質細胞腫が骨髄に浸潤したものか,多発性骨髄腫の部分症として扁桃腫瘤を形成したものか不明であるが,扁桃形質細胞腫は,本邦において現在までに4例の報告があるにすぎず,同時に骨病変を確認されたものはない.扁桃腫瘍細胞内には,透過電顕所見上いずれも電子密度の大である封入体が多種認められた. (1)粗面小胞体内に存在するもの(無構造物質の中に交叉しない層状を呈する針状封入体,球状のラッセル小体), (2)滑面小胞体内に存在するもの(方形状の結晶封入体)などであり,この少なくとも一部はIgあるいはその一部から成るとみられるが,変性による抗原性の変化のためか,抗δ,抗λ抗体で蛍光染色されなかつた.ほかに, autophagosome,異常mitochondriaなどが認められ,細胞内代謝異常を反映した像と解され,従つて上述の各種封入体の形成に何らかの関与があると考えられた.
  • 北島 勲, 宇根 文穂, 栗山 勝, 中島 洋明, 井形 昭弘
    1985 年 74 巻 4 号 p. 446-451
    発行日: 1985/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    家族性ビタミンD抵抗性クル病の成人例を2例経験した.症例1. 52才,女性. 2才頃O脚出現. 6才頃低身長, 20才頃関節に化骨形成開始, 40才頃より四肢の運動障害と感覚低下が出現した. X線所見で脊柱靱帯骨化,特に高度連続型後縦靱帯骨化が認められた.症例2. 24才,男性.症例1の第1子2才頃O脚出現. 5才頃より低身長に気づかれるも現在,未だ脊柱靱帯骨化所見は認められない. 2症例とも,低P血症,血清Ca正常,燐尿細管再吸収率の低値,骨組織所見で厚い類骨を認めた.ビタミンD抵抗性クル病成人例に脊柱靱帯骨化を合併し,四肢麻痺を生じた例は,文献上9例の報告があるが,その病態生理は不明な点が多い.本症例における脊柱靱帯骨化の原因として,低燐血症の罹患期間やCa体内貯留率が高い事などが推定された.本症例は,未だ原因不明の脊柱靱帯骨化の成因に, Ca, P代謝異常の関与を推定させた貴重な症例である.
  • 森脇 優司, 松井 聖, 岩橋 徳明, 藤井 純司, 田村 伸介, 鍋島 健治, 波田 寿一, 東野 一彌
    1985 年 74 巻 4 号 p. 452-456
    発行日: 1985/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    55才,男性.肝硬変にて加療中, alpha-fetoproteinの上昇をみたため精査目的にて当科に入院となつた.入院後肝シンチグラム, body CTスキャン,腹腔動脈造影を施行したが,肝癌の存在は否定的であつた.一方この間, alpha・歪etoproteinは漸増傾向にあり,ガリウムシンチグラムを施行したところ,約2年来存在する右胸壁腫瘍の部位に一致してガリウムの著明な集積をみたので,同腫瘍を経皮的に生検した.その結果,悪性上皮性胸壁鍾瘍と判明し,他に原発巣と思われる部位や転移巣を認めなかつたので摘出術を施行した.術後alpha-fetopmteinは著明に低下し, 2カ月後にはほぼ正常に復した.腫瘍中alpha・fetoproteinは1.5μg/g湿重量であつた.腫瘍の病理組織学的確診は困難であつたが,肝癌の胸壁転移あるいは胸壁発生の奇型腫群腫瘍の1型の可能性が考えられた.本腫瘍はConcanavalinAの非吸着率を考慮に入れるとyolk sac由来の腫瘍の可能性が高いと考えられるが,原発巣が非常に微小で転移巣の方が先に顕在化した原発性肝癌の胸壁転移も全く否定はできず,今後肝癌の有無のfollow upが必要と思われるが,いずれにせよ興味深い症例と考えられた.
  • 前防 昭男, 松森 正温, 森脇 優司, 中野 孝司, 山出 渉, 安室 芳樹, 鍋島 健治, 波田 寿一, 東野 一彌
    1985 年 74 巻 4 号 p. 457-461
    発行日: 1985/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ビルハルツ住血吸虫症は,血尿を主訴とする寄生虫疾患で,アフリカや中近東などの熱帯地方がその流行地である.今回,我々は,世界旅行中,熱帯地方滞在の際に感染したと考えられるビルハルツ住血吸虫症を経験したので報告する.患者は33才の日本人男性. 1976年より世界旅行に出発,アフリカ,東南アジア,アメリカ大陸などを旅行していた. 1983年1月,メキシコ滞在中に血尿に気づくも放置していた.同年5月,日本へ帰国後も血尿持続し,精査のため入院.尿沈渣にて多数の赤血球および寄生虫卵を認め,その虫卵よりビルハルツ住血吸虫症と診断した.血液学的には好酸球増加および血清IgEの高値を認めた.また,膀胱粘膜の生検にて粘膜内にも虫卵を認めた.治療として酒石酸アンチモン剤を投与し尿中の虫卵が陰性化し退院した.本症は,流行地では2000万~3000万人もの患者が存在してるにもかかわらず,本邦ではほとんど認めることのできないまれな輸入寄生虫疾患であるが,海外渡航が頻繁に行なわれるようになつた現在,特に本疾患流行地に滞在していた場合には,血尿を認めた時には鑑別すべき疾患の一つになりえる.
  • 加納 正, 黒瀬 健, 大仲 正志, 内野 治人, 沖本 芳春, 木下 迪雄
    1985 年 74 巻 4 号 p. 462-466
    発行日: 1985/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    1975年本誌上に発表した“10年にわたり観察されたasymptomatic Bence Jones蛋白尿”と題するわれわれの報告は,今日いう特発性Bence Jones蛋白尿症の端緒となつた.その後10数例の報告があるが症例集積の段階にある.最近,新しい症例を経験した機会に,既報告例をまとめ本症の臨床像を検討し, Bence Jones蛋白尿(BJP)の臨床的意義について再び本誌上を借りて考察したい.症例. 1930年生,主婦. 1978年腎盂腎炎,その後も反復. 1979年ネフローゼ症候群,少量のステロイド(隔日1錠)服用. 1983年4月κ型BJP陽性,骨髄中形質細胞増加(11%)より骨髄腫と診断.同年5月~8月melphaian間歇投与,無顆粒球症をきたして中止.定型的骨髄腫と考え難いので京大第一内科紹介, 1984年2月同病院入院.尿BJP 3.2g/日,貧血軽度, γ-グロブリンと正常Ig減少.骨髄中形質細胞8.4%,異型性(+),標識率0%.電解質正常,クレアチニン軽度上昇, RI-レノグラム糸球体病変を示唆.骨X線像,心エコー, ECG, GIS,直腸生検像など異常なし.腎生検像では間質の炎症反応と線維化,小動脈壁の肥厚.糸球体と尿細管の基底膜にIgの沈着(-). BJP証明1年後,経過は安定,また尿蛋白の90%以上がBJPであり5年前からの蛋白尿もBJP尿と推定される.以上より特発性Bence Jones蛋白尿症と診断.本症は骨髄腫への進展を確認するまで化学療法を行なわないで腎不全に注意する. BJ型骨髄腫の診断には本症を除外する必要がある.
  • 大石 誠一, 島田 達也, 井上 準之助, 佐藤 辰男
    1985 年 74 巻 4 号 p. 467-472
    発行日: 1985/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    26才の主婦で,妊娠35週目より発作性頭痛,高血圧(210/120mmHg),浮腫および蛋白尿を来し,妊娠中毒症を疑われ産婦人科に入院した.第37週で2800gの男児を自然分娩し,その直後に痙〓発作と著明な血圧上昇(240/120)を来し,以後も血圧の動揺がはげしく,褐色細胞腫を疑われて当科へ転じた.血中・尿中カテコールアミン(CA)の著増と,下大静脈血CA, CTスキャン,超音波エコーなどより,右副腎褐色細胞腫と診断し,手術により腫瘍を摘出,術後,血中・尿中CAや血圧は正常化した.なお本例では,入院時に甲状腺腫,甲状腺ホルモン高値および血小板数増加を認めたが,甲状腺ホルモンはその後,正常化し,妊娠・分娩に伴う変化と考えた.一方,血小板数増加は術後正常化し,褐色細胞腫,特にCAの関与が推測された.文献上,本邦での妊娠に伴う褐色細胞腫は,本例を含めて計23例で,症状出現は妊娠後期に多く,妊娠中毒症とされた例が約半数に及んでいる.高血圧は78%が発作型で,母児の死亡は,記載のあるものでそれぞれ14%と30%であつた.以上,妊婦の褐色細胞腫はかなり特徴的であると考えた.
  • 清水 伸一, 深瀬 正晃, 藤田 拓男, 岡田 聡, 山内 康平
    1985 年 74 巻 4 号 p. 473-479
    発行日: 1985/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    サルコイドーシスは原因不明の系統的肉芽腫性疾患で種々の異常を伴うが,本邦では胸部および眼病変が比較的多いと報告されている.今回私共は高カルシウム血症(以下高Ca血症と略す)に腎不全を伴い,著明な筋原性筋萎縮を認めたサルコイドーシスの1例を経験した.本症例では筋生検にて乾酪壊死巣を伴わない類上皮細胞よりなる肉芽腫を認めた.なお,高Ca血症を示す原発性副甲状腺機能亢進症や悪性腫瘍などは全て鑑別除外しえた.本症例の治療前の血中1, 25(OH)2 vitamin D (以下1, 25(OH)2Dと略す)は高値であり,これが高Ca血症の原因と考えられたが,治療後これらは速やかに正常化した.ところで,著明な高Ca血症のために血中C-PTHが正常下限であり,さらに腎不全が存在する場合には腎臓における25(OH) vitamin Dから1, 25(OH)2Dへの変換不全が予想される.しかし本症例では治療前の1, 25(OH)2Dが,腎不全かつ正常下限のC-PTHにもかかわらず,高値であつたが,治療後に正常化した.この事実は腎臓以外の組織,すなわちsarcoid tissueでの1, 25(OH)2D産生の可能性を示唆している.本症例では筋以外の臓器の生検からはサルコイドーシスを支持する所見は得られなかつたが,生化学的諸検査および筋生検所見からサルコイドーシスと診断しステロイド療法を施行した.ステロイド療法後,血清Caの正常化,不整脈の消失,さらには腎機能の改善などを認め,治療中止後も無症状に経過している,以上の事は,高Ca血症にmyopathyを合併した症例では,筋生検がサルコイドーシスの早期診断に有用であるという事を示唆している.
  • 井口 敬一, 小阪 昌明, 岡川 和人, 井石 安比古, 白神 〓, 斎藤 史郎, 佐野 寿昭
    1985 年 74 巻 4 号 p. 480-486
    発行日: 1985/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Sjögren症候群に単クローン性IgA (κ)血症とlymphoid hypophysitisによると思われる下垂体前葉機能低下症を合併した1剖検例を報告した.症例は74才の女性で,既往の出産や授乳に異常はなかつた. 2年前より,関節痛,乾燥症候群,耳下腺腫大が始まり, Schirmer's test, Rose-Bengal test陽性で,耳下腺造影所見,生検組織所見からSjögren症候群と診断された.血清IgAは2085mg/dlと著増し,単クローン性κ型IgA (dimer)を認めた.生検耳下腺組織に浸潤していた単核細胞のcytoplasmic Igはκ型IgA,で,そのκ型IgAに対する抗idiotype抗体も陽性であり,耳下腺などの唾液腺病変部が単クローン性IgAの産生部位の一つと考えられた.経過中に,全身倦怠,低塩症候群が出現し, ACTH, GH, TSH, FSH, LHおよびT4, T3の分泌低下を認め, cortisolとthyroxineの補充療法を行なつたが,敗血症で死亡した.剖検時,下垂体前葉組織の消失と後葉の周辺の組織のリンパ球浸潤が認められ, lymphoid hypophysitis (Goudieら)の所見に類似していた.間脳や下垂体後葉に異常所見はみられなかつたが,甲状腺にfocal thyroiditis,膵に腺構造の萎縮,リンパ球浸潤が認められた.副腎皮質と卵巣も萎縮していた.本例に類似の症例報告は見当たらないが,病因として自己免疫異常を基盤とするものと考えられ, autoimmune polyendocrine diseaseの一つと推測される.
  • 川村 光信, 内藤 周幸, 久保 善明, 黄田 道明, 田中 美智子, 林 洋, 宮崎 滋, 安藤 矩子
    1985 年 74 巻 4 号 p. 487-491
    発行日: 1985/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Creatine phosphokinase (CPK)が異常高値を呈したにもかかわらず,極めて臨床症状に乏しかつた原発性甲状腺機能低下症の1例を報告する.患者は46才の男性.ソフトボール大会後,左季肋部と両大腿部に筋肉痛を生じたため当科外来を受診した.理学的に甲状腺機能低下症を疑わせる所見はみられず,アキレス腱反射も亢進ぎみであつた.筋肉痛は1週間程度で自然に消失したが,外来受診時の血液検査において, CPK 3295IU/l(正常値0~68IU/l;アイソザイムパターンBB<1%, MB 3%, MM 96%)と異常高値の他, GOT, GPT, LDHの中等度の上昇もみられたため,精査目的で入院となつた.入院後の検査では, T3レジンuptake 1.06, T4 1.5μg/dl, T3 0.3ng/ml, TSH605μU/mlの上に, TRH試験でTSHの過剰反応がみられた.また,甲状腺自己抗体100万倍,抗マイクロゾーム抗体25600倍であつたことから,原発性甲状腺機能低下症と診断した.診断確定後の甲状腺ホルモンの投与により,血清酵素の異常は速やかに改善したが,臨床症状に変化はみられなかつた.本例は,以下のような特異的所見を示した. 1)今日までに我国で報告されているCPKの上昇を伴つた原発性甲状腺機能低下症の症例中, CPKの値が最も高かつたにもかかわらず,臨床症状に極めて乏しかつた. 2)血清酵素の値や筋電図上からは,高度の筋障害が示唆されたにもかかわらず,筋生検像には明らかな異常所見はみられなかつた. 3)甲状腺生検像では,著明な線維化を呈し, burn outの状態にあつたが,甲状腺自己抗体は高値を示した.
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