日本内科学会雑誌
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75 巻, 4 号
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  • 妹尾 恭一, 大久保 卓次, 杉本 政直, 奈良 昌治
    1986 年 75 巻 4 号 p. 481-487
    発行日: 1986/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    脳疾患に伴う急性上部消化管病変: Acute upper gastrointestinal lesions (AUGL)について,脳疾患で死亡し全身解剖された126例の検討より,脳疾患全体では38%,脳出血では45%,脳梗塞では18%にAUGLの合併をみ,脳出血は脳梗塞に比し有意に合併が多くみられ(p<0.05),また脳出血では3×3cm以上の出血で,脳ヘルニア等のmass effectのみられるものにAUGLの合併がみられたが,以上の剖検例の検討より,脳出血におけるこれら危険群と脳疾患で脳外科的手術が行なわれた群に,抗濃瘍剤(A1(OH)3+Mg(OH)2:マーロックス120m1/日,シメチジン800mg/日)の予防的投与を行なったところ,脳疾患全体では17→3.4% (p<0.005),脳出血では45→6.3% (p<0.025),頭部外傷では29.7→3.8% (p<0.025),へと対象に比し有意に合併するAUGLの減少がみられた.
  • 関根 富佐夫, 福島 俊之, 田畑 穣, 佐藤 秀紀, 大野 功, 小林 和夫, 根岸 雅夫, 井出 宏嗣, 高橋 昭三
    1986 年 75 巻 4 号 p. 488-494
    発行日: 1986/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチ(RA)患者および変形性関節症(OA)患者の関節液コラゲナーゼ活性(「コ」活性)と,免疫複合体(IC), IgG-RFおよびプロスタグランディンE2(PGE2)との関係を検討した. 1) RA関節液「コ」活性はOAに比し,有意に高値を示した. 2) RA関節液「コ」活性と関節液ICとの間に有意の相関が認められた. RA関節液IC値が5μg/m1以上の高値群は,低値群に比し,「コ」活性が有意に高値を示した. 3) RA関節液lgG-RF陽性群では,陰性群に比して,「コ」活性が高い傾向にみられた. 4) RA関節液PGE2値と「コ」活性との間には相関はなかつた. RA関節液中のコラゲナーゼ産生には, ICなどの諸因子の関与が考えられる.
  • 小野 彰一
    1986 年 75 巻 4 号 p. 495-506
    発行日: 1986/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    運動負荷その他で陰性U波(NU)が出現する狭心症(AP)15例,陳旧性心筋梗塞(OMI)25例と, NU出現のない前壁OMI 27例を以下のように比較検討した. NU(+)例ではAP・OMIを問わずNU出現誘導に関連する領域の支配冠動脈に高度狭窄(90%以上)ないし閉塞が存在する一方で,当該領域での安静時心筋血流分布,壁運動は共に比較的良好に保たれていた.ただし負荷時には当該領域に一時的な心筋血流欠損(虚血)が生じ,これに伴つて壁運動の障害を認めた.他方NU(一)OMI例では,恒常的な局所心筋血流の欠損および壁運動欠如を認めた.以上から負荷時NU出現は心筋虚血の徴候であり,その存否は虚血・梗塞領域での心筋viabilityの有無を評価する上で有用な指標となる.
  • 河田 俊一郎, 森本 勲夫, 桐山 健, 加藤 有史, 二宮 日出世, 小松 賢市, 一瀬 允, 長瀧 重信
    1986 年 75 巻 4 号 p. 507-511
    発行日: 1986/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    妊娠中に発症し,出産後改善がみられた一過性尿崩症について報告する.症例は32才,女性.主訴は口渇,多飲,多尿,妊娠8週目より多飲を訴え,出産直前の尿量は5l/日であつた.帝王切開にて正常男児を出産.出産後DDAVP(デスモプレシン)で尿量が一時減少したが再び多尿となり当科へ入院する.入院時身体所見は血液生化学検査に異常なく,尿比重は1.002であつた.脳下垂体前葉機能は正常であつたが,水制限試験,ピトレッシン試験で下垂体性尿崩症と診断した. DDAVPの再投与で尿量は減少した.その後, DDAVPの投与量を漸減し出産後23日に中止したが尿量の増加もなく1日3l前後であつた.分娩後, 3カ月の尿量は1~2l/日で,水制限試験も正常反応となつた.分娩後9日, 13, 14, 34日目のADH分解酵素活性はコントロールと有意差はなく,明らかな原因は不明であつた.
  • 木下 芳一, 野中 洋, 山口 裕国, 市川 幹郎, 鈴木 俊, 渡辺 潤, 近藤 俊文, 千葉 勉, 千原 和夫, 深瀬 正晃, 藤田 拓 ...
    1986 年 75 巻 4 号 p. 512-521
    発行日: 1986/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Growth hormone(GH), prolactin産生下垂体腺腫,巨大副甲状腺嚢胞を伴つた原発性副甲状腺機能亢進症,無数のラ島microadenomaによるZollinger-Ellison症候群を合併した多発性内分泌腺腫症(MEN)I型の1例で,副甲状腺嚢胞内でのPTHの存在様式, MENに伴つたZollinger-Ellison症候群の治療法について検討した.症例. 45才,女性.上腹部痛のために来院. MEN I型と診断された.右上副甲状腺腫は巨大嚢胞を形成し,内容液は大量のPTHを含み,その一部はfull chainのPTH (1-84)であつた.膵には1個の肉眼的腫瘍の他に,無数のmicroadenomaを認め,本例のようにMEN I型に合併するZollinger-Ellison症候群では,膵腫瘍が多発することが多いため胃全摘を第一選択とすべきであると考えられた.
  • 山根 清美, 竹内 恵, 北村 英子, 小林 逸郎, 丸山 勝一, 金子 まこと, 関口 守衛, 平山 章
    1986 年 75 巻 4 号 p. 522-527
    発行日: 1986/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    サルコイド・ポリニューロパチーはサルコイドーシスの神経学的合併症の中でも比較的まれである.さらにサルコイド・ポリニューロパチーと考えられる症例の末梢神経組織内に肉芽腫性病変を証明したとの報告は極めてまれなので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は四肢末梢のしびれ感を呈した53才,女性で末梢神経組織内にサルコイド病変が認められた.その所見として腓腹神経横断面では肉芽腫性血管炎を示し縦断面ではepineurial spaceに肉芽組織がみられた.髄鞘・軸索の変化は軽度であつた.電顕では末梢神経組織内の血管基底膜の変化が観察された.なお本症例でプレドニゾロンによる治療を試みたが末梢神経症状の改善は明らかでなかつた.
  • 中田 邦也, 早川 みち子, 横野 浩一, 内海 正文, 吉田 泰昭, 老籾 宗忠, 馬場 茂明
    1986 年 75 巻 4 号 p. 528-532
    発行日: 1986/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は38才,主婦.身長156cm,体重65kg.満月様顔貌,中心性肥満,高血圧を示し, Cushing症候群が疑われ当科へ入院した.尿中170HCS高値,尿中17KS正常で,血漿cortisolは常時高値で日内リズムは消失し,血漿ACTHは常時測定感度以下であつた. dexamethasone 2mgおよび8mg負荷で共に血漿cortisol,尿中170HCSの抑制はみられず, metyrapone 3g負荷でも尿中170HCSは増加反応を示さなかつた.また, CTscan,副腎シンチ,血管造影等各種画像診断にて両側副腎腫瘍が疑われた.手術にて右副腎に25×21mm,左副腎に18×14mmの腫瘍を摘出し,組織学的に共に腺腫と診断された.
  • 内山 富士雄, 亀井 徹正, 福山 次郎, 明石 恒浩, 大田 人可
    1986 年 75 巻 4 号 p. 533-536
    発行日: 1986/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    1年間に経験した4例のmetoclopramide-induced parkinsonismを報告する.平均年令は73才,すべて女性.症状発現までの同薬内服量および期間はそれぞれ15~30mg, 2週間~12カ月であつた. parkinsonismの主要症状に加え, 3例に舌ジスキネジアを認めた.薬物中止により4例とも急速な改善をみたが, 2例では一部の症状が残存した.今回の症例で特記すべき点は, metoclopramide 15mg/日, 2週間の内服でparkinsonismが発現した点である.この症例が今回報告例中最高令であることを考え合わせると同薬は少量,短期間であつても高令者に対しては非常に慎重に投与されるべきであると思われる.また特発性Parkinson病患者への同薬使用についても注意を喚起したい.
  • 小阪 昌明, 井口 敬一, 増田 健二郎, 白神 〓, 斎藤 史郎, 川浦 昭彦, 佐野 寿昭
    1986 年 75 巻 4 号 p. 537-545
    発行日: 1986/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は54才,女性で,横断性脊髄障害と骨硬化性の縁どりをもつ多発性骨融解像があり,骨シンチでRI集積が観察された.血中にIgのM成分なく,尿中に微量のκ-BJPが同定された.骨病変部は形質細胞増殖をともなう塊状のAL型アミロイドに置換され,形質細胞内にIgA・κが検出された.経過は11年と長く,従来のAL型アミロイドーシスとは著しく異なる病像を呈した.類似の文献例は22例あり,骨髄腫に合併した例と,原発性アミロイドーシスの例がある.中高年令層の男性に多く,長期の経過をとっている. IgのM成分は5例で記載され,すべてκ型であつた.本例と文献22例は骨アミロイド腫amyloidomaと称すべきAL型アミロイドーシスの一亜型と考えられる.
  • 伊従 茂, 藤巻 正樹, 五島 雄一郎, 倉持 茂
    1986 年 75 巻 4 号 p. 546-551
    発行日: 1986/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    反復性の発熱と,肺炎,肝障害,貧血,血沈亢進などの症状を呈した74才の男性で,発熱にはprednisolone (PSL)が有効であつた. systemic Weber-Christian病に特有な皮下結節を認めなかつたため,生前の診断は困難であつた.患者は肺炎で死亡し,剖検にて,心膜.縦隔,横隔膜周囲に著しい肉芽腫性脂肪織炎を認め,その他,膵,副腎,腎,腹部大動脈,膀胱,前立腺の周囲,骨髄にも軽度の同様な病変を認めた.これらの病理学的所見と臨床的所見より,この症例は,皮下結節を認めなかつたが, systemic Weber-Christian病と診断し,若干の考察を加えて報告する.
  • 磯部 宏, 棟方 充, 山口 悦郎, 岡崎 望, 西村 正治, 常田 育宏, 阿部 庄作, 川上 義和
    1986 年 75 巻 4 号 p. 552-558
    発行日: 1986/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    サルコイド-シスの一卵性双生児発生例は欧米では報告があるが,我国では今だみられない.今回,一卵性双生児の双方に発症したサルコイドーシスを経験したので報告する.症例1は検診にてBHL,肺野小粒状影を認め, Kveim test陽性, ACE値上昇,経気管支肺生検にてサルコイドーシスと診断した.症例2は当初,胸部レントゲン線写真にて異常は認めなかつたが, Kveim test施行後, BHL出現, Kveim test陽性,さらに前斜角筋リンパ節生検にてサルコイドーシスの発症を確認した.本症例は,サルコイドーシス発症の病因として内因(遺伝因子)が重要なことを強く示唆するものと考える.
  • 石黒 望, 田内 美津子, 清水 一夫, 奥山 牧夫
    1986 年 75 巻 4 号 p. 559-562
    発行日: 1986/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    後腹膜腔のhemangiopericytomaにより,遷延性低血糖症状を呈した非常に希な症例を報告する. 61才,男性で早朝空腹時に精神症状を呈し,数日後昏睡状態にて緊急入院し,著明な低血糖を認め, 100g経ロブドウ糖負荷試験では境界型を示し,血中インスリンは基礎値は低く.糖負荷試験では遅延反応を示した.腹部X線写真とCTにて巨大な後腹膜腫瘍を認め,腫瘍部分摘出術後,糖負荷試験では血糖,インスリンともに反応の改善を認め低血糖は消失した.腫瘍の病理組織学的所見はhemangiopericytomaと診断され,また患者血中のインスリン様活性(ILA)は異常高値を示し,本症例では腫瘍由来ILAによる低血糖の発現が強く示唆された.
  • 篠田 恵一, 栗山 隆信, 木村 文治, 河村 宏, 高松 順太, 茂在 敏司
    1986 年 75 巻 4 号 p. 563-569
    発行日: 1986/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    下垂体への放射線照射13年後に両側内頚動脈・脳底動脈の閉塞・狭窄をきたしたCushing病の1例を報告した. 24才時下垂体部へ6000radの放射線照射をうけ, 37才脳梗塞を発症,脳血管撮影にて左内頚動脈の閉塞,右内頚動脈・脳底動脈の狭窄がみられ,その部位は以前の放射線照射部位にほぼ一致していた.内分泌学的所見では血漿コルチゾールの上昇,日内変動の消失,少量デキサメサゾンの抑制試験で抑制が不充分であることより下垂体腺腫によるCushing病が考えられ, 39才時下垂体好塩基性腺腫の摘出術を受けた.本症例の脳血管病変は,放射線による障害が主体となり,さらにCushing病に伴う高脂血症,高血圧により促進されたものと考えられた.
  • 腎における尿希釈・濃縮能に対する検討
    坂本 尚登, 三科 孝夫, 小林 豊, 丸茂 文昭, 木川田 隆一
    1986 年 75 巻 4 号 p. 570-575
    発行日: 1986/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は29才,女性. 14年間のfurosemide服用歴と浮腫増悪に対する習慣性の食塩制限を認めた.低K血症性アルカローシスの精査で入院.レニン・アルドステロン系の亢進,正常血圧, JG細胞過形成等からBartter症候群類似の病態を示したが,約420mEqのK欠乏にもかかわらず,ネフロン希釈部のCl再吸収は正常で, K欠乏補正後も不可逆性の濃縮障害を示した.腎組織はJG細胞過形成,間質の線維化,円形細胞浸潤,遠位尿細管基底膜肥厚を示した.本例は利尿薬長期服用,食塩制限, K欠乏により不可逆性濃縮障害を伴つたpseudo-Bartter症候群と考えられた.なお, Bartter症候群の鑑別に利尿薬中止後の希釈能検索の重要性が示唆された.
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