日本内科学会雑誌
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75 巻, 6 号
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  • 石橋 豊, 二瓶 東洋, 吉金 秀樹, 戸田 博敏, 中沢 芳夫, 松野 好男, 村上 林児, 島田 俊夫, 盛岡 茂文, 森山 勝利
    1986 年 75 巻 6 号 p. 721-727
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    徐脈性心疾患に対する恒久的ペースメーカ治療の適応について,臨床症状と電気生理学的検査所見に関する諸項目について検討し,これらから我々独自の適応基準を設けた. 24例の徐脈性心疾患のうち,この基準によつて適応ありとした15例にペースメーカ植え込み術を行ない,他の9例は内科的薬物治療または経過観察のみとし,以後12ないし56カ月(平均42.4カ月)にわたる追跡調査を行なつた.その結果,植え込み術を行なつた15例中14例(93%),薬物治療のみの9例中7例(78%)で症状の消失を認めた.全24例中植え込みを行なつた2例が,術後7カ月および12カ月で死亡した。この結果は我々の基準が妥当であつたことを示唆してお4,適応を決定する際には単に臨床症状のみならず我々の適応基準に見られる電気生理学的検査所見をも考慮する必要があると考えられた.
  • 佐藤 公, 阿部 圭志, 清野 正英, 保嶋 実, 今井 潤, 佐藤 牧人, 尾股 健, 丹野 雅哉, 吉永 馨
    1986 年 75 巻 6 号 p. 728-732
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本態性高血圧(EH)74例,腎血管性高血圧(RVH) 29例にて腎・下大静脈採血を行ないレニン活性(PRA)を測定し以下の結論を得た. 1) EHのレニン比平均は1.18±0.02でレニン比が1.5以上はEHの4.2%を占めた. 2)片側RVHでレニン比が1.5以上では7例中4例治癒し, 1.5末満では14人中6人治癒した. 3)片側RVHにおいて狭窄側のindex (renal PRA-systemic PRA/systemic PRA) 0.5以上の者は8例で5例治癒し,正常側のindexが0以下の症例は11例で7例治癒した.以上より片側RVHにおいてcurabilityの予想にはレニン比よりもindexの方がすぐれ,又狭窄側より有意のレニン遊出があり対側が抑制されている片側RVHは治癒成績が良好であつた.
  • 海老原 勇
    1986 年 75 巻 6 号 p. 733-745
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    じん肺罹患者の腎障害について,持続的蛋白尿の出現率および腎障害発症の経過を検討した.その結果,持続的蛋白尿は自験283例中13例4.6%であり,組織学的にはIC腎症が多い傾向がみられた.腎障害の発症様式として,発熱,胸膜炎などと共に1upus腎炎類似の腎炎が発症したもの,あるいは間質性腎炎が発症したものなど,非定型的な膠原病の活動期に腎障害の発症を認めた.また,液性免疫能の亢進が続くなかで,急速進行性腎炎が発症した例なども見られた.以上のことから,粉じん暴露者では,粉じんの免疫担当細胞への作用により,腎障害が発症する可能性が示唆された.
  • 荻原 俊男, 田淵 義勝, 福地 研一郎, 三上 洋, 真杉 文紀, 楽木 宏実, 福田 正博, 田中 彰, 熊原 雄一, 波多 丈
    1986 年 75 巻 6 号 p. 746-752
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    45才,男性の典型的なHutchinson-Gilford progeria症候群を経験した.患者は,短身長,騎乗様肢位,外反股,全禿頭,小下顎,頭一顔の不均衡など,本症候群の特徴的身体的所見を認めた.動脈硬化性心疾患,高血圧によって難治性心不全,および両下肢の閉塞性動脈硬化症を合併していた.免疫学的,内分泌学的には,正常老年者にも認められるOKT4細胞の上昇,デヒドロエピアンドロステロン低下などが認められた.内科的治療にもかかわらず,急性心筋梗塞にて死亡し,剖検的には,全身性動脈硬化症,心筋梗塞巣,心膜,心弁膜の高度な石灰化を認めた.本症例は, Hutchinson-Gilford progeria症候群としては, 40才台の高令まで存命し得た極めてまれな症例である。
  • 北島 勲, 宇根 文穂, 栗山 勝, 井形 昭弘
    1986 年 75 巻 6 号 p. 753-758
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    きわめてまれな特発性若年性骨粗鬆症の成人例を経験し,内分泌学的,硬組織学的に検討を加えた.症例は31才,男. 16才時,頚椎圧迫骨折,以後,脛骨骨幹端部骨折を7回,上腕骨骨折を3回,踵骨剥離骨折を1回経験した,身長168cm,体重62kg,身体所見上特に異常なし. X線像上全身の骨陰影が著明に減少し,硬組織学検査にて骨形成能が低下した粗鬆症と確認した.本例は遺伝性がなく,基礎疾患も否定でき,皮膚コラーゲンも正常である事から特発性若年性骨粗鬆症と診断された.本例は本邦では文献上報告がなく,成人期にも易骨折性を示し,内分泌学的に副甲状腺分泌不全を認めた.骨粗鬆症の病態を考える上で貴重な症例と考えられる.
  • 伊藤 孝一郎, 酒井 健二, 岡嶋 泰一郎, 大内 和弘, 船越 顕博, 西村 純二, 井林 博, 辻 守康
    1986 年 75 巻 6 号 p. 759-766
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    1952年Beaverらは本来ヒトを固有宿主としない幼線虫が感染し,成虫になれずに幼虫のまま生存し,諸臓器を移行し諸症状を発現する疾患を内臓幼虫移行症と呼ぶことを提唱した.感染は虫卵の経口摂取によるが,われわれは鶏肝や牛肝の生食によると考えられる3例を経験した.このような報告は世界で最初であり新しい感染経路による発症とみなされるので報告する.症例1) 57才男,鶏肝, 2) 46才男,鶏肝, 3) 39才男,牛肝と3例共肝の生食後発病した.いずれも好酸球とIgEの著増がみられ,血清のOuchterlony法とimmunoelectrophoresisにより, 1)と3)はイヌ回虫, 2)はネコ回虫によると考えられた.
  • 直海 晶二郎, 梅田 照久, 佐藤 辰男
    1986 年 75 巻 6 号 p. 767-771
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    孤立性腎嚢胞が腎実質を圧排して高血圧を来すことは,比較的まれとされている.今回われわれは,孤立性腎嚢胞により高レニン性高血圧を呈した, 43才の男性例を経験したので報告する.本例は,初診時190/110mmHgの高血圧があり,入院後の各種画像診断法により,右腎上極の孤立性腎嚢胞を認めた.また,末梢血の血漿レニン活性は3.9~4.4ng/ml/hと高く,左右の腎静脈血のレニン活性は,それぞれ3.4および8.7ng/ml/hで,患側と健側の比は2.6と有意差がみられたため,腎嚢胞の切除に踏み切つた.術後血圧は, 120~140/80~100mmHg前後に低下し,末梢血レニン活性も1.5~1.9ng/ml/hと正常化した.
  • 古田 嘉男, 金谷 経律, 有正 修道, 小林 敏成, 佐藤 博道
    1986 年 75 巻 6 号 p. 772-775
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    結節性多発動脈炎の治療に血漿交換療法を施行した報告はまれであるが,本法の併用が非常に有用と考えられた1例を報告する.症例は49才女性.不明熱を主訴とし,多発性単神経炎を伴い,血中免疫複合体陽性で,筋肉生検にて結節性多発動脈炎と診断された.プレドニソロンおよびサイクロフォスファマイドを投与するも効果不十分であつたため血漿交換を施行した.約3lの交換を6日繰り返した結果,臨床症状および検査所見の著明な改善が見られた.本例では血中免疫複合体の除去が有効に作用したものと考えられ,文献的考察を加えて報告する.
  • 田形 雅通, 佐藤 篤彦, 本田 和徳, 早川 啓史, 今井 弘行, 吉見 輝也, 田中 正士, 白沢 春之
    1986 年 75 巻 6 号 p. 781-787
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は61才,ハンバーグ製造業に従事する女性で,胸部X線像上の両側肺底部の粒状網状影にて発見された.特発性間質性肺炎として精査中,発熱,表在リンパ節腫脹,脾腫が出現し,高γ-グロブリン血症,各種ウイルス抗体,自己抗体の上昇,正色素性正球性貧血,低補体価を認めた.リンパ節生検にて, angioimmunoblastic lymphadenopathy with dysproteinemiaと診断した.診断時,既に病状の軽快傾向を認めたため経過を観察したところ, 1回の軽度の増悪を認めたのみで, 11カ月間自然寛解状態にある.増悪時,末梢血リンパ球亜群のOKT4+細胞比の低値, OKT8+細胞比, OKIal+細胞比の高値を認め,寛解時には正常化傾向を示した.リンパ球亜群の動向と病状との関連性が示唆された.
  • 涌井 秀樹, 山下 純一, 大渕 宏道, 吉田 廣作, 中本 安, 三浦 亮
    1986 年 75 巻 6 号 p. 788-791
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は16才の女子高校生で修学旅行中に一過性の黒色尿を生じたため入院した.尿潜血反応は強陽性であつたが赤血球沈渣はみられなかつた.血清ビリルビン, LDH, GOT値の上昇と血清ハプトグロビン値の減少を認めた. Coombs試験, Ham試験, sugar water試験は陰性で赤血球浸透圧脆弱試験は正常であつた.運動負荷試験を行なつた.黒色尿は生じなかつたが血管内溶血の所見を得た.修学旅行後は通常の学校生活に戻つたが黒色尿はみられていない.以上より修学旅行中の長距離歩行によるmarch hemoglobinuriaと診断された.本邦報告例では圧倒的に青年男子の運動選手,特に剣道選手にみられるので,本症例はきわめてまれな例である.
  • 加藤 信介, 佐藤 方則, 中村 克己
    1986 年 75 巻 6 号 p. 792-798
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は93才,女性.意識障害にて入院.入院時,肝脾腫,下腹部腫瘤を認めた. CTにて脳梗塞,卵巣〓腫と判明した. ESR 10/25, CRP(±),末血像はWBC 33100/μlで成熟好中球が91%を占め,骨髄像はNCC 195000/μlで成熟顆粒球系の増加がみられた. NAP-scoreは362であり, NBT還元能は20%,墨粒貪食能は0.91であつた. AFP, CEAは正常域であり, V. B12は3200pg/dlと高値を示した.染色体検査ではPh1染色体は陰性.胸,腹部単純X線像,消化管ファイバー等に異常所見なく, 67Gaおよび99mTcシンチでも異常はみられず,類白血病反応を起こす疾患はなかつた.以上より慢性好中球性白血病(CNL)と診断し,その表面マーカーを検索したところMY7+, MY9-, OKB2+, OKM1+であつた1例を報告し, CNLの研究の〓助とした.
  • 村上 一彦, 桑原 英真, 三浦 進, 望月 裕文, 長嶺 竹明, 富岡 真一, 山田 昇司, 小林 節雄, 小川 晃
    1986 年 75 巻 6 号 p. 799-806
    発行日: 1986/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    興味ある糸球体変化を伴つた特発性後腹膜線維症と思われる1例を経験した.患者は62才,女性.強度の腹水を主訴として入院,各種検査を行なつたが原因不明のまま治療に反応せず死亡,臨床的には末期を除いた全経過を通じて尿所見が正常であつたことや,治療に抗した強度の腹水,肝脾腫,眼底うつ血乳頭等多彩な所見を示し,一元的には説明困難と思われた.剖検所見にて,腎臓周囲被膜およびGerota筋膜の著明な炎症性線維性肥厚,糸球体腎炎,肝脾腫,トルコ鞍周辺の線維性ゆ着等が認められた.本症例は特発性後腹膜線維症と糸球体腎炎の因果関係,およびそれぞれの成因を考える上で極めて示唆に富む症例と考えられた.
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