日本内科学会雑誌
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77 巻, 1 号
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  • 岸本 卓巳, 小野 哲也, 岡田 啓成
    1988 年 77 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    胸膜プラークの発生要因の一つとして肺組織内に沈着している石綿小体数との関連にて検討を加えた.対象は当院にて剖検の機会を得た400例である. 400例中71例には剖検肺に有意な数の石綿小体を発見することができ,石綿曝露者と考えられた.これら71例における胸部X線像上の胸膜プラークを大八木らの分類に従い3グループに分類したところ,胸膜肥厚の度合が明瞭なほど剖検肺に石綿小体数を多く見出することができた.一方,胸部X線像上の所見は,剖検時の胸膜肥厚の程度とほぼ一致した結果を得ることができた. 71例中23例は第二次世界大戦前,戦中に旧日本海軍工廠において働いた既往を持ち他の14例も石綿曝露の既往を有していた.
  • 大島 哲也, 松浦 秀夫, 木戸 幸司, 松本 公治, 新宮 哲司, 渡辺 光政, 大月 知文, 井上 一郎, 土岡 由紀子, 梶山 梧朗
    1988 年 77 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本態性高血圧症患者50例を対象に赤血球およびリンパ球の細胞内Na濃度を,減塩食および増塩食摂取下に測定し,両者の変化の関係および血圧変化との関係を検討した.血圧と赤血球およびリンパ球内Na濃度は,増塩により有意に増加した.赤血球とリンパ球の細胞内Na濃度は減塩期,増塩期とも相関しなかったが,増塩による両者の変化率は有意の正相関を示した.平均血圧の変化率は赤血球およびリンパ球の細胞内Na濃度変化率とおのおの有意の正相関を示した.以上より,増塩による細胞内Na濃度変化は異なる細胞においても共通であること,および本態性高血圧症患者の食塩感受性には細胞内Na濃度変化が関与していることが示唆された.
  • 渡辺 郁能, 上松瀬 勝男, 長尾 建, 梶原 長雄
    1988 年 77 巻 1 号 p. 10-14
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞発症早期の冠動脈造影では責任冠動脈の血流が遅延なく流れ,狭窄のみを呈する例(狭窄群)を認める.この狭窄群と,責任冠動脈が完全に閉塞していた例もしくは血流の遅延を認めた例(閉塞群)をCK値(creatine kinase)と心電図のST変化を用い,冠動脈造影を施行しなくても推定可能か否かについて検討した.狭窄群は閉塞群に比しCK値は高値を示し, STの上昇は低値を示した.そこでX1=MaxST, X2=CK値と二つの変数を持つ重判別式T=0.5827+0.0055X1-0.0029X2(T<0なら狭窄群, T>0なら閉塞群)を求めた.そのsensitivityは75%, specificityは78%であり冠動脈造影を施行しなくても狭窄群,閉塞群の推定が可能である事が示唆された.
  • 安部 行弘, 武田 光, 藤井 章伸, 桑島 実, 斎藤 大治, 原岡 昭一
    1988 年 77 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞におけるラテックス凝集反応を用いた血清ミオグロビン測定の有用性を検討した.発症から12時間以内の急性心筋梗塞21例では,発症1, 2, 3時間の時点でミオグロビン凝集陽性を示したのは,それぞれ40, 70, 100%に対して,病的CK値の出現率は0, 11, 69%だった.またミオグロビン凝集は平均8時間で最大となり, 2日で正常に復した.発症から24時間以内に入院した胸痛患者52例において,急性心筋梗塞に対する本法の感度は0.97,特異性は0.91と良好だった.ミオグロビンの凝集時間はRIA法の値と指数関数的に有意な逆相関がみられ,本法は半定量的にも使用しうると考えられた.以上より,本法は急性心筋梗塞早期の診断に極めて有用であった.
  • 山分 規義, 古要 俊也, 角田 恒和, 栗栖 寛子, 飯田 吉隆, 関根 正明, 沼野 藤江, 前沢 秀憲
    1988 年 77 巻 1 号 p. 22-25
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は39才,男性.入院時口唇,口腔粘膜に痂皮を伴う高度のびらんが認められ,胸部X線橡, CT上,上縦隔に異常陰影が認められた.入院後間もなく躯幹,四肢にもびらんが出現し,皮膚生検などにより尋常性天疱瘡と診断された.ステロイド療法, plasmapheresisなどを試みたが皮疹は一時的に改善するのみで,肺炎,頻回の気胸による呼吸不全より全身状態は悪化し, DICを合併して死亡した.剖検より上縦隔の異常陰影は混合型良性胸腺腫であった.本症例には重症筋無力症の合併は認められなかった.尋常性天疱瘡と胸腺腫との合併はきわめてまれであり,自己免疫との関連が示唆される.
  • 辻 景俊, 姫野 誠一, 篠村 恭久, 黒島 俊夫, 奥野 優, 川本 博司, 東本 好文, 樫村 雅典, 山埼 雄一郎, 垂井 清一郎, ...
    1988 年 77 巻 1 号 p. 26-33
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Chronic idiopathic intestinal pseudoobstruction (CIIP)の2症例を報告した.症例1は32才女性.過去2度腸閉塞の疑いで開腹を受けるも器質的異常なく,術後多発腸穿孔にて広範腸切除を行った.以後も悪心,嘔吐は変わらず持続.症例2は35才女性.脂肪性下痢,腹部膨満を訴え腸閉塞の疑いで開腹を受けたが器質的異常はなかった.両症例とも腹部X線像では鏡面形成をみた.食道内圧検査では自発性収縮の出現, LESP低値,嚥下時収縮の低下を,さらにレノグラムにおいて腎排泄相の著しい遅延を認めた.なお, total parenteral nutrition (以下TPN)にて両者とも栄養状態は改善した.本邦でのCIIPの報告は11例で内7例が成人発症,腸管の他食道と尿路系に異常を認めたのは自験の2症例のみであった.
  • 栗田 昌裕, 塚原 浩章, 松浦 誠一, 森田 敏和, 藤城 芳枝, 平野 正憲, 岩瀬 透, 右田 徹, 杉本 恒明
    1988 年 77 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    側副血行による左心拡大を呈した高令女性の肝部下大静脈閉塞症の1例を報告した.特記すべき家族歴既往歴はなく, 67才検診でX線像上心陰影拡大と肝機能異常を指摘され,外来通院中,肝シンチで肝形態異常を認め精査のため入院.現症で浮腫・腹水・腹壁静脈怒張なく,内視鏡で食道静脈瘤も認めない.画像検査では尾状葉腫大を認め腹腔鏡・肝生検では肝硬変を確認,血管造影で著しい門脈下大静脈シャントと,下大静脈から脊椎を横切り心臓の左外側に上行する太い異常側副血行を見出し,静脈撮影で肝部下大静脈膜様閉塞症(Budd-Chiari症候群)と診断した.多彩で著明な側副血行と乏しい自他覚所見から早期からの側副血行形成が推測された.
  • 池田 昭夫, 黒田 康夫, 柿木 隆介, 小田 健一郎, 山本 匡介, 柴崎 浩
    1988 年 77 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    極めてまれな成人発症Reye症候群の1例を報告した.症例は24才,女性.発熱,咽頭痛,頚部リンパ節腫脹が急性に出現し,アスピリン計2.5g静注を受けた.その後急速に意識障害,持続性部分〓発作,全身〓発作が出現.髄液で細胞増加はなく,中等度の肝機能障害と,肝生検でミトコンドリアの形態学的異常を認め, Reye症候群と診断した.病初期より高張ブドウ糖液とマンニトールで治療した.〓はフェニトイン,ジアゼパム,抱水クローラル投与にも拘らず頻発したが,バルプロン酸が著効を示し全治した.本症例では急性期に髄液乳酸,ピルビン酸の-過性上昇を認め,本症候群の診断上重視すべき検査所見である可能性を指摘した.
  • 川知 雅典, 河野 典夫, 嶺尾 郁夫, 原 尚子, 山田 祐也, 清川 裕朗, 姫野 誠一, 垂井 清一郎, 宮崎 都志幸
    1988 年 77 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    消化性潰瘍を合併する遺伝性xanthine尿症の兄弟例を経験した.発端者およびその兄は血中尿酸がおのおの0.1mg/dl, 0.6mg/dl,尿中尿酸値が, 0.048mg/mg creatinine, 0.019mg/mg creatinineと著明に低下し,逆にoxypurine値は,血中,尿中ともに著増していた.生検した十二指腸粘膜のxanthine oxidase活性は両人とも欠損しており, xanthine oxidase欠損に基づく遺伝性xanthine尿症と診断した.両親には約半分の本酵素活性の欠損を認め,ヘテロ接合体であることを確認した.父親は,腎での尿酸クリアランスが低下しており,血中尿酸値が高く(9.1mg/dl)痛風を伴っていた.さらに,本家系では,消化性潰瘍が,発端者のみならず,兄および両親,視父,伯母にも認められた.
  • 松原 渉, 今村 陽一, 原田 篤実, 村上 一雄, 梶山 憲治, 松本 勲, 岩下 明徳
    1988 年 77 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    今回,私どもは発熱を主訴として入院し,血液学的検査,細菌学的検査,画像検査などにより確診にいたらず,精巣動脈組織像にてフィブリノイド壊死を伴う血管全層炎を認めたことから多発動脈炎と診断しえた70才,男性の症例を経験した.本例は入院時,蛋白尿と血尿を認めたため腎生検を施行し,半月体形成性腎炎の合併を認めたが,血管炎の所見はみあたらなかった.確診後,副腎皮質ステロイド薬の投与により臨床所見および腎生検組織像の改善が認められた.多発動脈炎は特異的な臨床所見に乏しく,病理所見からも診断が困難な場合が多いが,本例は精巣動脈病理所見より確定診断できた点で貴重な症例と考えられた.
  • 草深 裕光, 後藤 達彦, 中村 康一, 鮫島 庸一, 田邊 昇
    1988 年 77 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Immunocompromised hostに合併した非チフス性サルモネラ敗血症の2例を報告する.症例1.68才,男.悪性関節リウマチ,間質性肺炎の診断のもとに,ステロイド,免疫抑制薬投与中にSalmone1la enteritidis敗血症を併発した.その後も数回敗血症を反復した.原疾患に対しては,ステロイド投与を継続したが呼吸不全で死亡した.症例2.58才,女.成人T細胞性白血病で化学療法が行なわれたが, Salmonella typhimuriumとSalmonella lagosによる敗血症を合併し, 10日後に死亡した.両症例とも,基礎疾患とステロイド投与などの医原性要素が宿主感染防御能,特に細胞性免疫能の低下を招き,サルモネラ敗血症を合併したと思われる.
  • 金子 健蔵, 植村 淳子, 岡田 耕治, 熊倉 忍, 石川 三衛, 斉藤 寿一, 葛谷 健, 清水 英男, 坂本 美一
    1988 年 77 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例. 28才,男性. 15才より顔面の皮膚肥厚,ばち状指,膝関節痛が出現,骨膜性骨新生を伴いpachydermoperiostosisと診断した. 1年前に低K血症(2.8mEq/l)を指摘され, 2カ月前より筋力低下が出現したために入院.血圧130/60mmHg.血漿renin活性34.3ng/ml/h,血清aldosterone 11.3ng/dlと共に高値, angiotensin IIに対する昇圧反応は低下,遠位ネフロンCl再吸収能は0.63と低値を示した.腎生検組織像で傍糸球体装置の過形成を認めた. Bartter症候群と診断し, indomethacin75mg/日経口投与で低K血症は改善した. PachydermoperiostosisとBartter症候群の合併は国内外を通じ今日まで報告されていない.
  • 小橋 春彦, 藤井 利武, 楠原 俊一, 白井 忠雄, 美馬 恭一, 武田 和久
    1988 年 77 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例. 75才,男.誘因なく急に傾眠状態となり来院.低Na血症(107mEq/l)を有し, SIADHと考え,水分制限したが反応せず,食塩を1日30g3日間経口投与した.血清Naは3日で143mEq/lと改善されたが意識レベルは半昏睡に至り固定した. 27日後CTで橋底部に左右対称性の広範な低吸収域を認め, central pontine myelinolysis (CPM)と診断した.さらにその30日後には両側の内包前脚および被殻に線状の低吸収域がみられた.以上より,低Na血症の急速補正により誘発されたCPMと考えられた.低Na血症の急速補正の危険性に対し注意を喚起すると共に, CPMの診断におけるCTの有用性を示す症例と考えここに報告し,文献的考察を加えた.
  • 紀田 康雄, 澤田 徹, 成冨 博章, 原納 優, 柏木 厚典, 繁田 幸男
    1988 年 77 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    血清浸透圧の上昇に伴い意識障害,失語,焦点発作と片麻痺を認めた非ケトン性高浸透圧性糖尿病昏睡(NHC)の1例を報告する.患者は58才,男性で〓,意識障害を主訴に入院.著明な高血糖と高浸透圧血症を認めNHCと診断した.輸液とインスリン投与後〓は消失し,他の神経症状と数日で消失した.急性期の脳波では全般性高振幅徐波と左側頭部に鋭波を認め,臨床所見の改善にやや遅れて脳波も正常化した.高血糖で入退院を繰り返したが,神経症状は高血糖のみでは出現せず,同時に浸透圧が著明に上昇した時にのみ出現した.基礎に脳梗塞と左内頚動脈閉塞症があり,潜在性病変に加え浸透圧の著明な上昇が神経症状の発現に重要と考えられた.
  • 有村 義宏, 中林 公正, 後藤 健三, 神谷 康司, 井上 明夫, 北本 清, 長沢 俊彦
    1988 年 77 巻 1 号 p. 80-85
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    非ステロイド抗炎症薬(NSAID)により,急性腎不全とネフローゼ症候群を呈した2症例を経験した.症例1は18才の女性で, dicrofenac sodium(DS)25~75mg/日を28日間服用後に急性腎不全とネフローゼ症候群を生じた. DSの服用を中止し, PSL30mg/日投与および血液透析を施行したところ,症状は著明に改善した.症例2は72才の女性で, fenoprofen 400mg/日を約9カ月間服用後に急性腎不全とネフローゼ症候群を生じた.しかし, fenoprofenの中止により症状は改善した. NSAIDにより急性腎不全とネフローゼ症候群が同時に生ずるとの報告は少なく,我々の検索した範囲では本邦での報告はない. NSAID投与の際はこの型の腎障害に注意する必要がある.
  • 前田 征洋, 新津 洋司郎, 後藤 義朗, 古川 勝久, 渡辺 直樹, 高後 裕, 漆崎 一朗
    1988 年 77 巻 1 号 p. 86-90
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は, 49才,女性.昭和60年10月頃より水様性下痢が頻発するようになり,精査のため入院. CT,エコーにて膵頭部に腫瘍を認め,さらに血中VIP (vasoactive intestinal polypeptide)が613.1pg/mlと高値であったため, VIPomaによるWDHA症候群(watery diarrhea, hypokalemia, achlorhydria)と診断した.この症例に対し, VIP拮抗ホルモンであるソマトスタチンの誘導体(SMS 201-995)を試みたところ,血中VIPは,投与1, 3日後にそれぞれ357.3, 118.9pg/mlと明らかに低下し,また水様便,低K血症も改善を示した. VIPomaに対し,ソマトスタチン誘導体による治療を試みたのは,本邦では本症例が初めてである.
  • 三原 純司, 朝倉 斌, 森内 正人, 小島 弘之, 牧 正裕, 斉藤 頴, 白土 寿晨, 五十嵐 英夫
    1988 年 77 巻 1 号 p. 91-94
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    患者は55才の男性でショック状態で入院となった.入院時の体温は41°Cで脈拍は触知せず,眼瞼結膜の充血著明で躯幹の紅皮症,上腹部圧痛および筋痛がみられた.検査所見は急激な重症感染症,腎不全,筋障害,肝障害を示唆した.敗血症性ショックを疑い血液培養,尿培養,便培養,髄液培養,咽頭培養を頻回に行なったが全て陰性であった.抗生物質,コルチコステロイド,ドーパミン,ドブタミン,ノルアドレナリン等の薬物投与により,患者は回復し約1カ月の経過で後遺症を残さず退院した.症状および検査所見から本例はtoxic shock syndrome (TSS)の診断基準を十分に満足した.また血中よりTSST-1をRPLA法で証明した.診断基準を満足し,ブドウ球菌は培養にて陰性で,かつ血中より直接TSST-1の検出された例としては本邦初と考え報告する.
  • 三浦 志朗, 谷川 俊則, 鈴木 将夫, 根岸 清彦, 原 義人, 石井 淳, 大村 清
    1988 年 77 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は20才,男性で,低身長の精査目的で来院した. 6才頃より,四肢関節の軽度の運動障害を認め, 8才頃より身長発達の遅延を認めたが,日常生活に支障はなかった.今回入院時,身長140cm(-5.4SD),体重41kg.知能は正常で,角膜混濁,肝脾腫,軽度の心臓弁膜障害,四肢関節屈曲伸展障害をみとめた. X線像上,様々な骨変形を認め,ムコ多糖体異常症(MPS症)が疑われた.尿中酸性ムコ多糖体定性反応は陽性で,尿中ムコ多糖体分析ならびに2種のムコ多糖体分解酵素活性を測定し, MPSI-S型(Scheie症候群)と診断した. Scheie症候群は,頻度的にまれであるばかりでなく,他のMPS症と比較して,臨床症状が著明でなく,内科領域においても,低身長の重要鑑別疾患と考えられる.
  • 松本 純, 菅野 拡, 丹治 伸夫
    1988 年 77 巻 1 号 p. 102-105
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は19才,男性.鯉の胆(きも,以下胆嚢とす)を5個飲み,腹痛,嘔吐および激しい下痢が出現.黄疸および乏尿と浮腫を認め,第7病日にはBUN100.lmg/dl,血清クレアチニン8.4mg/dlとなり,血液透析を7回施行して軽快した.組織学的には急性尿細管壊死の再生期の所見と,メサンギウムに軽いIgAの沈着を認めた.鯉の胆嚢による急性腎不全は未だ成書に記載されていないが,東アジア各国からは数例の報告があり,本邦各地方の研究会などではすでに話題となっている.しかし鯉の胆嚢での腎毒性物質の存在はまだ確認されておらず,病原微生物の可能性も否定されていない.今後,臨床的検討と共に疫学的調査や基礎医学的解明が期待されている.
  • 木下 郁夫, 川上 純, 調 漸, 中村 龍文, 瀬戸 牧子, 森本 勲夫, 長瀧 重信, 辻畑 光宏, 石丸 忠之
    1988 年 77 巻 1 号 p. 106-110
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例. 27才,女性. 11才初潮, 16才より11年間無月経. 25才眼瞼下垂,複視出現.テンシロンテスト陽性,尺骨神経反復刺激でwaning現象,血中抗アセチルコリン受容体抗体価の上昇,筋生検所見より重症筋無力症と診断.一方, luteinizing hormone, follicular stimulating hormoneの著明な上昇, estradiolの低値, 1週間連続のhuman menopausal gonadotropin負荷に対する無反応よりhypergonadotropic hypogonadismと診断された.血清中の抗卵巣抗体,抗透明帯抗体は陰性.卵巣生検では,卵胞は全くなかった.両者の合併例の報告は過去11例とまれであり,両者が共通の機序により引き起こされているという確固たる証拠は現在のところ得られていない.
  • 池沢 道子, 亀井 英一, 柴垣 泰郎, 小林 逸郎, 竹宮 敏子, 丸山 勝一
    1988 年 77 巻 1 号 p. 111-112
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    MRIによって診断し得た成人Arnold-Chiari奇形(以下ACM)について報告する.従来, ACMの診断においてメトリザマイドCTや椎骨動脈撮影等比較的侵襲的な検査が行なわれてきたが,今回我々は,軽度の歩行障害を主訴とする39才,女性例を経験し, MRIによって成人ACMと診断し得た. MRIはその安全性と提供しうる情報量の多いことから, ACMの診断上有用な検査と考えられた.
  • 佐々木 悠, 三宅 恵一, 奥村 恂, 栄本 忠昭
    1988 年 77 巻 1 号 p. 113-114
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    原発性副甲状腺機能亢進症(PHP)に対し, histamine H2受容体拮抗薬, diphosphonate系薬物の有効性が報告されている. 65才,男性のPHP例にcimetidine, etidronate disodium漸増投与を試みた.しかしながら,いずれの薬物もイオン化Ca, PTH, ALP,その他に有意の抑制を認めず,外科的手術に変わる有効性を支持する成績は得られなかった.
  • 上田 祥博, 荒木 邦治, 松本 匡史, 岡上 武, 瀧野 辰郎
    1988 年 77 巻 1 号 p. 115-116
    発行日: 1988/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は39才,女性.四肢近位筋優位の脱力・筋萎縮が亜急性に出現,増悪した.筋生検で筋原姓異常と単核細胞浸潤を認め多発性筋炎と診断。一方,血中胆道系酵素の上昇と抗ミトコンドリア抗体陽性,肝生検で細胆管の増生と単核細胞浸潤を認め,原発性胆汁性肝硬変(Scheuer分類II期)の合併と診断.両者の合併は極めて少なく,現在までに7例の文献報告しかない.臨床像につき若干の文献的考察を加え報告した.
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