酸素をエネルギー源として利用している我々には,酸素の恩恵を感じこそすれ,酸素の毒性については未熟児網膜症を思い出す程度で,むしろ酸素崇拝の気持が強い.だが,生体内で酸素が代謝を受ける過程で生じる活性酸素や,それがもたらす各種のラジカルは,うまく処理できないと,産業廃棄物のように生体に害を及ぼすことがわかってきた.その処理機構であるスカベンジャーとのバランスがくずれると,老化,発癌,あるいは各臓器の疾病の原因ともなるから,臨床的にフリーラジカルという考え方を無視することはできない.同時に,良いスカベンジャーが開発されると,病気の予防や治療に明るい道が開けそうでもある.難しそうな学問に思えるが,我々の体内で常に生じている出来事が,このフリーラジカルなのである.
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