日本内科学会雑誌
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83 巻, 7 号
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  • 螺良 英郎
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1079-1080
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 那須 勝, 平井 一弘
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1081-1086
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    コンプロマイズドホストは,種々の要因で引き起こされ,あらゆる病原体の感染を受けやすい.宿主の感染防御機構は,非特異的なものとしてまず皮膚・粘膜のバリアーがあり,体液中の殺菌物質,好中球,マクロファージ,補体がある.その後は,病原体に特異的な液性免疫,細胞性免疫が働く.ここでサイトカインが重要である.病原体も感染防御機構から逃れるために,自らを変身させたりする.
  • 渡辺 一功
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1087-1091
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    最近の感染症の変貌の中で大きな問題のひとつは易感染性宿主が増加し,これに感染症が合併しやすく,かつ一旦発症した場合は今日の進歩した化学療法でも容易に反応しない難治性かつ重篤な症例の増加である.この感染防御能を破綻させる病態には多くの要因があげられているが,今回は,白血球減少,リンパ球減少,脾摘,低γグロブリン血症,糖尿病,腎不全,低栄養をとりあげ,最近の考え方を述べてみた.
  • 永武 毅
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1092-1096
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    医学の進歩は種々の免疫抑制薬,副腎皮質ホルモン,抗癌薬などを生みだすことにより,悪性腫瘍や膠原病の治療,臓器移植など新しい医療への道を開拓してきた.しかし,一方ではこれらの治療は免疫力の低下した患者群を増加させることに通じ,かかる免疫不全患者でみられる感染症は難治で致命率も高い.ここでは感染防御機構に重大な影響を及ぼす薬物,治療について,その作用点や副作用発現の傾向を知り,かつ感染防止対策についても考えてみる.
  • 喜舎場 朝和
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1097-1101
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    コンプロマイズドホストの種類と程度は千差万別であり,これらに対して感染の原因となりうる“弱毒”微生物も,ウィルス,細菌,真菌,原虫,寄生虫と多岐にわたる.その中から,一般臨床医にとっても日々の診療の中で遭遇する機会のありうる感染防御能低下の状態として,特に全身的防御能低下の代表例としては顆粒球減少,局所的防御能低下の代表例としては“異物”感染を取り上げ,対する微生物の中からは細菌(および真菌)を取り上げて,それらが引き起こしてくる菌血症・敗血症を中心に述べる.
  • 後藤 元
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1102-1106
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    コンプロマイズドホストに発症した呼吸器感染症の診断は,通常胸部X線写真によるが, CTあるいは核医学検査も重要な情報を提供する,これに加え最近は分子生物学的手法を導入した病原微生物診断法の進展が著しく,これにより幾つかの感染症では,画像所見の出現する以前にその診断,治療が可能となりつつある.
  • 浦部 晶夫
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1107-1110
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    白血病や悪性リソパ腫などの血液疾患患者は経過中に好中球が減少することが多く,重篤な感染症に罹患しやすい.感染症の予防には,無菌管理,手洗いなどの清潔操作が重要である.治療においては,起炎菌が判明する以前に抗菌薬を投与しなければならないことが多いので, empiric therapyが重要になる.好中球減少症の対策にはG-CSFの投与が有用である.
  • 権藤 久司, 原田 実根
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1111-1117
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    同種骨髄移植後の易感染状態の背景には造血不全と免疫不全があり, GVHDの合併は免疫不全をさらに助長する.移植後感染症の特徴は,病因微生物が多彩であることと,時期によって病因微生物や感染部位が異なることである.最近では,感染症による死亡率は低下しているが,骨髄移植の適応拡大にともないGVHDや感染症合併率の上昇が予想されており,移植後感染症の的確な診断・予防・治療は移植成績向上のために重要である.
  • 長瀬 光昌
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1118-1122
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    腎移植は免疫抑制療法による易感染性宿主を作ることとなり,抗生物質投与はさらに日和見感染をもたらし,医師が拒絶反応とのジレソマに悩むことになる.移植後感染はその時期により特徴がありいわゆる日和見感染は免疫抑制期間が長くなった時に発症する,日和見感染としては真菌症,ウイルス感染があるが,特に肝炎ウイルス感染は新たな問題を提起している. B型肝炎はドナー血液の抗原検出によりある程度予防が可能であるが,レシピエントの抗体が陽性でも免疫抑制により抗原の顕性化,肝炎の活性化の問題が残る.またC型肝炎では予防,管理がなお困難である.肝炎ウイルスに限らず分子生物学的手段を用いた診断,治療法は将来移植後感染克服に有力な手段となろう.
  • 石山 賢, 渡邉 千之
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1123-1127
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    外科的感染症においては,起因菌と宿主との間に感染の発症ないし悪化を促進する宿主側の悪条件が第三の因子として存在する.それは,上皮の欠損(創傷の存在),異物の介在,常在菌叢と巣の連結など局所の条件と免疫能の低下,代謝栄養障害,創傷治癒障害といったいわゆる全身状態の悪化とからなる.従ってその予防や治療にはこれらの状況に対する配慮や治療,補正処置が必須である.これに意を用いない治療では,優れた薬物が効力を十分に発揮しないばかりか,常在菌の生態系が乱れて耐性菌が出現したり,やたらに病像が複雑,難治になるぼかりである.高齢者,肝機能障害を有する患者その他riskの高い手術症例が増え続ける今日,外科的治療は基本的な考えに戻るべきであろう.
  • 矢田 純一
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1128-1132
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    IgGの欠乏がある病型には定期的に免疫グロプリン製剤を注射することが行われる.食細胞機能異常症にはST合剤の予防与薬が有用である.細胞性免疫に重大な欠陥が存在する病型の根本的な治療は現在のところ骨髄移植により正常のリンパ球幹細胞を移植しリンパ球系の再構築を図る以外にないが,それまでの間無菌的哺育が必要である.いずれの病型においても,感染の機会をさけ,感染時には早期に強力な治療を行う必要がある.
  • 毛利 洋
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1133-1140
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    HIV感染症は長い臨床的潜伏期の後に,後天性免疫不全症候群(AIDS)を発症するに至る.その経過に伴い著しい免疫不全を来し,様々な日和見感染症,日和見腫瘍,あるいは脳症などを合併してくる.患者の病期,病態を把握すると共に,抗HIV薬により病気の進行を遅らせ,また合併症の特徴を熟知して,その予防,診断,治療に努めることが大切である.
  • 大泉 耕太郎
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1141-1146
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    悪性血液疾患,臓器移植,エイズに伴う免疫不全状態に乗じて発症する日和見感染症のうち,ウイルスによるもの,とくに普遍的に存在し,かつ正常時には潜伏(不顕性)感染し,免疫能低下に伴い再活化感染の確率の高い,ヘルペス属によるものを中心に述べた.これらの中でサイトメガロウイルス肺炎がとりわけ重要である.潜伏感染から発症に至る機序の全容が解明されれば,予防と治療に大きな前進をもたらすであろう.
  • 田代 隆良
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1147-1151
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    深在性真菌症はコンプロマイズドホストに発症する重要な日和見感染であるが,近年,ミコナゾール,フルコナゾール,イトラコナゾールなどのアゾール系抗真菌薬が予防的あるいは経験的に繁用されるようになり,変化が見られ始めている.剖検例における検討では, 1986年以降,深在性真菌症は漸減傾向にある.これは主としてカンジダ症の減少によるもので,アスペルギルス症は相対的に増加している.また,最近注目されるようになったトリコスポロン症は,全深在性真菌症の8.1% (7/86)を占めていた.
  • 網谷 良一, 久世 文幸
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1152-1156
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    抗酸菌感染症は,臨床的に結核と非定型抗酸菌症(AM症)に大別されている.結核は,既感染者が初感染で獲得した結核免疫の何らかの破綻を基礎に発症すると考えられ,この機序はopportunisticで,コンプロマイズドホストの発症と捉えることが出来る.またAM症は,局所的あるいは全身的感染抵抗力減弱宿主が高率に罹患することが明らかになっており,本症については,いわゆる「一次感染型」と「二次感染型」の概念について概説した.
  • 中田 光, 島田 馨
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1157-1162
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    後天性免疫不全症候群(AIDS)の流行のために以前は希有なる疾患と考えられていたカリニ肺炎は,ますます重要になってきている.近年,基礎研究,臨床研究の進歩により,基本的に治療および予防が可能な疾患となった.その一方で,より簡便で迅速な診断や副作用が少なく有効な薬物の開発が望まれる.
  • 1994 年 83 巻 7 号 p. 1180
    発行日: 1994年
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 東 滋, 中林 肇, 皆川 冬樹, 竹田 亮祐, 岡林 陽三
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1181-1182
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は28歳と38歳の男性で,それぞれ15, 12歳頃よりばち状指,皮膚軟部組織肥厚を伴う四肢先端部の肥大が急速に出現し,両例ともに3~4年後には肥厚性骨関節症の症候が完成した.第1例は約10年の経過観察中に骨膜性骨肥厚の明らかな進展と,足底軟部組織肥厚や皮膚所見の軽度増悪を示した.両例とも,本疾患の家族歴はなく,成長ホルモンやソマトメジンCを含む内分泌・代謝異常および悪性腫瘍の合併を認めなかった.
  • 小林 寿久, 杉山 敏郎, 塚田 彰子, 山下 健太郎, 今井 浩三, 谷内 昭, 若林 淳一
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1183-1185
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    尿中にBence-Jones蛋白(κ鎖),骨髄中に形質細胞の軽度増加,胃・直腸生検にてCongored染色陽性,過マンガン酸カリウム処理抵抗性のAL型アミロイドの沈着を認め,原発性アミロイドーシスと診断され,その後便Sudan III染色陽性, D-キシロース試験, PFD試験により吸収不良症候群の合併が認められた.
  • 渡辺 朋恵, 真玉壽 美生, 伊藤 均, 近藤 一英, 菊池 新, 西元寺 克禮, 三富 弘之
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1186-1187
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性. 1年半前より難治性胃潰瘍で薬物治療をうけていた. 1992年2月,けいれん発作で他院に入院し,異所性ACTH症候群を伴ったZollinger-Ellison症候群と診断された.同年6月,当院に転院したが,肝不全が進行し, 7月に死亡した.剖検で膵頭部の主腫瘤と膵内転移,肝転移を認めた.腫瘍抽出液中のgastrin, ACTHが高値で,免疫組織化学的にgastrin, β-MSHが陽性, ACTHは陰性であった.
  • 方波見 卓行, 岡野 一年, 江口 いよ, 根本 健, 小倉 美河, 塚本 達人, 内藤 悟, 鈴木 哲, 山田 行雄, 関田 則昭, 染谷 ...
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1188-1190
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は, 28歳主婦. 13歳より排尿後の頭痛を自覚し,その後高血圧と視力低下が出現.排尿後の血圧上昇,血漿・尿中カテコラミン上昇,骨盤部MRIでの膀胱後下方の腫瘤像などより膀胱原発褐色細胞腫と診断した.膀胱全摘出術・総腸骨大腿動脈リンパ節切除術を施行し,腫瘍細胞のリンパ節,後腹膜腔などへの転移を認めた.本例は文献検索上本邦8例目の膀胱原発悪性褐色細胞腫と考えられる.
  • 樋口 大介, 近藤 承一, 山城 正明, 金城 盛男, 菊地 馨, 慶田 喜秀
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1191-1193
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    DICと急性腎不全を伴う急性妊娠性脂肪肝に対して,緊急帝王切開,血漿交換,各種補充療法,血液透析等を施行し,母児共に救命し得た.凝固障害等のために,やむなく,発症より51日目に施行した肝生検の組織像では,本症に特徴的な所見が残存していた.
  • 長崎 弘, 中島 一光, 芳賀 正治, 島田 永子, 佐藤 弘直, 速水 四郎, 都築 豊徳, 高橋 雅英
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1194-1196
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ACTH,ガストリン,カルシトニンなど多様なペプチドホルモン産生能を示した原発性肺小細胞癌の1剖検例を報告する.症例は67歳男性.縦隔原発の肺癌の化学療法の経過中にCushing徴候を呈し, ACTH,コルチゾール,ガストリン,カルシトニン高値を認めた.剖検にて肝,腹腔リンパ節,右副腎等に広範な転移巣を認め,免疫組織染色により転移巣からのACTH,ガストリン,ソマトスタチン産生を証明した.
  • 伊藤 実, 若林 昌哉, 林 直樹, 川村 英三
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1197-1198
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は37歳女性.すでに遺伝性球状赤血球症と診断されていたが,感冒様症状とともに貧血が増強した.パルボウイルス抗体が陽性で,骨髄では赤芽球系が4.8%と著減していた.パルボウイルス感染による無形成発作と考え,輸血とプレドニゾロンの投与で,貧血が改善した.先天性溶血性貧血の患者において急速に貧血が進行する場合は,パルボウイルス感染を疑う必要があると考えられた.
  • 山口 武典
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1199-1205
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    虚血性脳血管障害における血栓溶解療法の有効性に関しては,まだ国際的なコンセンサスは得られていない.血栓親和性のより強いt-PAの開発によって,本療法の研究が再び注目されてきた.わが国では,以前から脳血栓症に対するウロキナーゼの有用性は容認されており,その作用機序としては微小循環の改善と血管内血栓の進展防止が考えられている.
    ここでは, “血流再開を目的とした血栓溶解療法”の治療効果(再灌流率,改善度)と出血性合併症の危険性の有無について,これまでの成績の要約を述べ,症例の選択と治療開始時間の重要性を強調した.最近,わが国では症例を発症6時間以内の脳塞栓症に限定し,プラセボを対照薬とした二重盲検法による検討(2,000万単位, 60分間点滴静注)が行われ,再灌流率,臨床症候改善率ともにt-PA群で明らかに勝っていたという成績が得られている.これまでの全ての検討成績をまとめたmeta-analysisの結果,本療法は有効である可能性が高いという報告がなされている.
  • 川端 眞人
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1206-1211
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ライム病は野山に生息する大型のダニ(マダニ)によって媒介され,病原体はBorrelia burgdorferiである.本症は全身性感染症で,第I期症状はマダニ刺咬傷部の丘疹が遠心性に拡大し遊走性紅斑を形成する.第II期にはボレリアが血行性に全身拡散して,神経・循環器・関節などに多彩な病変を生じ,神経症状・関節炎など一部の病変は慢性化し第III期へと移行する.ライム病は1970年代にアメリカ合衆国で最初に確認された.ヨーロッパ諸国でもマダニ刺咬傷に続発する(慢性)遊走性紅斑や髄膜炎の出現は今世紀初頭から記載されており,アメリカ合衆国とヨーロッパ諸国が世界のライム病二大流行地である.東アジアも流行地のひとつで,日本にも流行が確認されている.これまでの調査から日本のライム病は臨床的および疫学的特色が次第に解明され,アメリカ合衆国やヨーロッパとの違いが指摘されている.
  • 唐澤 忠宏, 倉園 久生, 竹田 美文
    1994 年 83 巻 7 号 p. 1212-1216
    発行日: 1994/07/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    下痢を起こす大腸菌(下痢原性大腸菌)は,一括して病原(性)大腸菌と呼称されているが,病原性大腸菌,細胞侵入性大腸菌,毒素原性大腸菌,腸管出血性大腸菌,腸管粘着性大腸菌の5群に分類されていて,それぞれの群に属する下痢原性大腸菌の下痢発症機構は全く異なる.毒素原性大腸菌は,易熱性エンテロトキシンと耐熱性エンテロトキシンの2種類のエンテロトキシンを産生し,これが腸管上皮細胞の細胞内情報伝達系を介して水様性下痢を起こす.腸管出血性大腸菌は,細胞毒性を持っVero毒素(志賀毒素様毒素)を産生し,毒素が腸管粘膜組織に傷害を与えて,血性下痢を起こす.細胞侵入性大腸菌は赤痢菌と同様,腸管粘膜組織に侵入・拡散し,組織を破壊して血性下痢を起こす.病原性大腸菌と腸管粘着性大腸菌の下痢発症機構はまだ十分にわかっていないが,最近の研究によれば,病原性大腸菌の下痢発症に細胞内情報伝達系が関与している可能性がある.
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