ペリシリンの発見はグラム陽性菌感染症の治療に劇的な効果をもたらしたが,耐性菌の出現は着実に進行し,その臨床効果は次第に失われていった.その中で肺炎球菌は長い間高い感受性を示し,とくにペニシリンは優れた治療薬として長期に亘って使用されてきた.しかし, 1965年に初めてペニシリン耐性肺炎球菌が臨床材料より分離され,その後世界各地からも報告されるようになり注目された.これらの耐性株に対するペニシリンGのMIC値は0.1~1.0μg/mlと比較的低く,臨床的にはペニシリンの大量投与がなお有効であった.ところが, 1977年,南アフリカで報告されたペニシリン高度耐性株(MIC:≧2.0μg/ml)は,同時にテトラサイクリン,クロラムフェニコール,エリスロマイシン,クリンダマイシン, ST合剤などのいずれかに耐性を示す多剤耐性株であり治療上問題となった.これらの耐性株は,本邦においてもかなり高頻度で分布しており, βラクタム薬にも交差耐性を示し化学療法に対する反応が鈍いことから近年にわかに注目を浴びることになった.
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