糖尿病の長期予後を決定する因子として,近年,動脈硬化が問題となりつつある.糖尿病における動脈硬化症は非糖尿病者の2~3倍であるといわれている.明らかに糖尿病の存在がその発症を増加させており,冠動脈硬化症に基づく虚血性心疾患の発症を予防する必要がある.すでに欧米の統計では,死因の50%以上は虚血性心疾患あるいは脳血管障害である.我が国の生活の欧米化が急速であることを考える時,これらの動脈硬化症の管理の重要性を認識すべきである.
糖尿病において,しばしば高脂血症を合併することが知られている.高脂血症は動脈硬化症の重大な危険因子であり,糖尿病の死因として心血管系の障害が増加している近年では,十分な高脂血症の理解と管理が重要と考える.糖尿病患者に高脂血症を認めた場合,まずその高脂血症が糖尿病状態に由来するのか,糖尿病とは関係のない高脂血症であるのかを鑑別する必要がある.従来より報告されている点を要約すると, NIDDMでは,軽症~中等度の高トリグリセリド血症あるいは軽症の高コレステロール血症を合併し,低HDL一コレステロール血症もしばしば認める.さらに,インスリン作用不足が長期間持続すると, diabetic lipemiaと呼ばれる病態を呈することもある.
糖尿病者では他の動脈硬化の危険因子である肥満・高血圧・喫煙などをしばしば伴っていることを考え合わせると,糖尿病の代謝状態を是正して,高脂血症ともども諸種の動脈硬化症のリスクファクターを除去していくことが長期予後の改善にとって重要である.
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