日本内科学会雑誌
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86 巻, 1 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
  • 最近の動向
    福岡 正博
    1997 年 86 巻 1 号 p. 1-3
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 国兼 浩嗣, 渡辺 古志郎
    1997 年 86 巻 1 号 p. 4-9
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺癌は胸部局所症状の他に浸潤,転移によるもの,腫瘍随伴徴候など多彩な症状を呈する.初発症状としては咳,痰といった感冒,気管支炎様症状の頻度が高い.無症状で発見された肺癌患者は,症状を有する患者と比較して手術可能な頻度がより高い.肺癌の理学的所見は二次的に生じた異常によってもたらされることが多い.肺癌に特異的な症状や理学的所見はなく,肺癌を疑って診断を進めることが重要である.
  • 柿沼 龍太郎, 大松 広伸, 金子 昌弘, 江口 研二
    1997 年 86 巻 1 号 p. 10-14
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺癌検診システムとしての細胞診は,確立されている.しかし, CT検診は,まだ研究段階であり確立された方法はない.東京から肺癌をなくす会は, 1993年9月よりヘリカルCTによる1次検診を開始し, 1996年4月までに,肺癌22名中12名はヘリカルCTのみで発見した.ヘリカルCT導入前後の1期の割合は53%から82%に有意に増加し,肺野型の平均腫瘍径は, 3.0cmから1.56cmに有意に減少した.
  • 楠 洋子
    1997 年 86 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    1966年にフレキシブルブロンコファイバースコープが開発されて以後,気管支鏡検査は普及し,肺野型・肺門型早期肺癌め診断率が向上した.また内視鏡的治療への応用範囲も拡大し,気管支鏡下に行う光線力学的レーザー治療の臨床試験の成績から内視鏡的早期肺癌の定義づけがなされた. 1987年ごろからビデオ電子気管支鏡の開発が進み,画像処理による診断やファイリングシステムの臨床応用が可能となった.さらに経気管支鏡での採取材料から遺伝子検索の研究も進みつつある.
  • 桑原 正喜, 柴田 典子, 有吉 寛
    1997 年 86 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    腫瘍マーカーを,単に診断,治療効果の判定,臨床経過モニターなどの手段とするのみならず,癌細胞の生物学的性格を認識する手段として利用することは,その利用価値を高め癌診療に大いに貢献することとなる.肺癌の腫瘍マーカーをこの観点から考察した. NSE, ProGRPは癌細胞の帰属を現すマーカーである. LDHあるいはNSEは,その血清値の変動の仕方に癌の増殖速度を現す. SLXなどの糖鎖抗原は,接着因子の一つであるE-セレクチンのリガンドとしての作用を持ち,従って血行転移を起こし易いかどうかの情報を提供する意義をも持つ. GST-πは薬剤耐性と関連性を持つ腫瘍マーカーである.また,腫瘍マーカーを有効利用するためには,その物質の性状,組織内局在,血清値に影響する因子,あるいは偽陽性率などについて充分理解する必要がある.
  • 組織分類と腺癌の発生母地
    岡村 明治, 坂井田 紀子
    1997 年 86 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺は発生学的に内胚葉の前腸由来で,多種類の腺上皮が認められるので,上皮を母細胞とする肺癌の分類は当然複雑である.現在広く採用されている組織分類とその問題点を概説した.また,筆者らの肺腺癌の形質に関する成績を紹介し,腺癌の八割以上が多種類の構成上皮の形質を示すことが分かったので,肺癌を発生母細胞からではなく,分化した表現型で分類するのが妥当で,一方,腫瘍内の増殖能の高い部分も,分化度と関連しないことを述べた.
  • 池添 潤平
    1997 年 86 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    良い胸部単純写真を撮影し,それを正しく読影する事は肺癌診療の基本である.最近のフィルムースクリーン系やデジタル胸部X線画像の進歩にふれると共に,フィルムースクリーン系を用いて胸部X線写真を撮影する場合に,良いX線写真を得るための工夫を述べた.胸部X線写真読影の基本は系統的読影法であるが,著者の採用している読影法を紹介し,肺癌発見の工夫について解説した.
  • 鑑別診断とpit fall
    新美 浩, 栗原 泰之, 中島 康雄, 石川 徹
    1997 年 86 巻 1 号 p. 39-50
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    各種画像診断が進歩した現在,胸部単純X線写真の肺癌診断における相対的位置づけは変わっても,その重要性は基本的には変わりはない.しかし,胸部単純X線写真には空間分解能と濃度分解能の不足から,種々の問題点と限界がある.その点を充分認識したうえで単純X線所見の意義を理解することは,次のステップであるCT, MRIなどの適応を知り,効率的に鑑別診断を進めていくためにも,極めて重要なことである.
  • 楠本 昌彦, 河野 通雄
    1997 年 86 巻 1 号 p. 51-57
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    CTは肺腫瘤の性状診断,肺癌の病期診断において,現時点で最も重要な画像診断法である.スパイラルCTによる三次元表示は,通常の二次元のCTの補足的な診断として応用されている.一方, MRIはCTと比べて高いコントラスト分解能を有していること,特に造影前後でのコントラストが明瞭であること,さらに多断面の撮像が可能であることからその特長を生かし,肺腫瘤の診断,肺癌の進展範囲診断にCTと相補的に用いられている.
  • 今井 照彦, 佐々木 義明, 大石 元
    1997 年 86 巻 1 号 p. 58-64
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺癌の腫瘍イメージング製剤は,古くからある67Gaの他に最近では201Tl, 99mTc-MIBI, 99mTc-tetrofosmin,ポジトロン化合物などが応用され,腫瘍の局在のみならず, viability,治療効果の予測,判定さらに予後の推定まで可能性が広がってきた.また腫瘍イメージング以外にも123I-IMPによる二次性変化の鑑別や,局所肺機能にも核医学診断が用いられ,今後さらに肺癌診断において重要な役割を担うものと期待される.
  • 肺癌の治療計画とそのインフォームドコンセント
    江口 研二
    1997 年 86 巻 1 号 p. 65-72
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺癌治療におけるインフォームドコンセントでは,「医師の充分な説明と,説明内容についての患者の充分な理解」が前提となる.がん告知後の身体的,精神的な支援の充実も必要となる.肺癌などの難治がんに対し,より有用な治療方法を確立するために,精度の高い臨床試験が必要不可欠である.がん治療の臨床試験は,第I相試験から健常者でなく,がん患者を被験者としている.患者の充分な理解のためには,医療者としての話し方の修練や,肺癌に関する最新知識,標準的治療,緩和医療,実験的治療などの認識をより明確にする必要がある.
  • 河原 正明
    1997 年 86 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺癌を非小細胞癌と小細胞癌に分け,各々の化学療法につき述べた.ユニークな化学構造や作用機序を有する新規抗癌薬が近年出て来ており,これらを併用した治療成績は従来のものより優れているようである.
  • 宮本 忠昭
    1997 年 86 巻 1 号 p. 79-87
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺癌に対する最近の放射線療法の進歩を紹介する.非小細胞肺癌では肺門部早期肺癌に対してイリジウム線源を用いた小線源治療,病期I肺野型肺癌に対する重粒子線療法など放射線治療の特質を活かし高いQOL (quality of life)を目指した治療法の開発研究が進められている.一方,進行期肺癌に対しては化学療法との併用を軸に多分割および急速分割などの新しい分割照射法が試みられ肺傷害を減少し線量の増加が可能となった.この結果,局所制御率が改善し生存率の向上が期待されている.小細胞癌では,限局型に対して胸部照射に多分割照射法が導入され, PVP化療との併用タイミングの研究により中間生存期間が延長した.その結果, 3年生存率は40%以上と向上し5年生存率を云々できる時代となってきた.予防的脳照射の有効性はすでに明らかとなったが,最近は全脳照射による脳障害が問題となってきている.しかし,脳転移腫瘍に対する適正線量が明らかにされ脳障害の少ない新しい脳照射法の開発の見とおしも出てきた.
  • ステント・VATS・レーザー・腔内照射
    飯岡 壮吾
    1997 年 86 巻 1 号 p. 88-94
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    進行による中枢気道閉塞での呼吸困難は肺癌患者の耐え難い苦痛であり,気管支鏡下保存的治療は患者のQOL改善をもたらす.その治療法にはレーザー焼灼,気管支腔内照射,凍結手術,気道ステントの各種組み合わせの適用がある.一方,肺門部早期肺癌はPDTやbrachy therapyの非観血的治療法で根治が得られ,また胸腔鏡下手術(VATS)で少侵襲の肺癌切除が可能となった.適応症例の選択で,従来の開胸肺切除以外でも肺癌の根治が期待できるようになった.
  • 檜山 桂子, 檜山 英三, 石岡 伸一, 山木戸 道郎
    1997 年 86 巻 1 号 p. 95-99
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ヒト染色体の末端を構成するテロメア反復配列は,遺伝子と異なり何のタンパクもコードしていないが,細胞の増殖,内部遺伝子の発現,染色体安定性の重要な鍵を握っている.ヒト細胞の無限増殖には,分裂の度に欠落してゆくこの反復配列を延長する酵素テロメラーゼが必須と考えられ,原発性肺癌でも小細胞癌全例,非小細胞癌の8割で検出される.この活性を指標とした肺癌細胞の存在診断・悪性度の判定,活性抑制による腫瘍増殖阻止などへの応用が期待される.
  • 三笠 桂一, 澤木 政好, 喜多 英二, 浜田 薫, 坂本 正洋, 寺本 正治, 成田 亘啓
    1997 年 86 巻 1 号 p. 100-107
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    最近14員環マクロライド薬が抗菌力以外の免疫・薬理作用を有していることが注目されている.我々は本剤がbiological response modifier (BRM)活性を有することを見出し,非小細胞肺癌患者にclarithromycin (CAM)の長期投与を試み,延命効果を検討した.対象は手術不能の原発性肺癌患者100例.方法は抗癌治療後, CAM (400mg/日)投与群と非投与群を無作為に割り付けた. 2群間の背景因子には有意差は認めない.結果は,非小細胞肺癌でCAM投与群で生存期間が有意に延長した.その効果は腺癌で優れており病期は早期な程,前治療有りの症例で有効であった.作用機序として悪液質の改善,抗腫瘍性サイトカインの活性化,血管新生抑制作用など多面的な作用が考えられた.
  • 中村 哲也, 山脇 健盛, 岩田 道圭, 大友 哲, 目黒 知己, 坂内 通宏, 滝田 節, 鈴木 則宏
    1997 年 86 巻 1 号 p. 133-134
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.主訴は上肢の疼痛.両肩の痛み,脱力感と両上肢の強直が出現し当院整形外科入院.内科依頼時理学所見で皮膚の外傷や開口障害を認めず両肩から両上肢の痛みと腱反射亢進を認めた.頸部MRI所見より当初変形性頸椎症が疑われたが,嚥下障害と呼吸障害,痙攣重積等の出現と増悪を認め第3病日に破傷風と診断した.人工呼吸器管理,抗けいれん薬,ダントロレンナトリウム等の投与により一命をとりとめ,軽快退院した.
  • 滋賀 健介, 高松 一, 木谷 輝夫, 中島 健二
    1997 年 86 巻 1 号 p. 135-137
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の女性.橋出血3カ月後に眼球口蓋ミオクローヌスが出現した.電気眼振図では,共同性で緩徐相・急速相のない垂直方向性の不随意眼球運動を認め,眼球ミオクローヌスと考えた.慢性期のMRIT2強調像で両側延髄下オリーブ核に高信号域が新たに出現していた.画像所見の時間的変化は,従来報告されている病理学上の下オリーブ核仮性肥大の経時的変化と一致した.
  • 村上 理絵子, 中原 生哉, 金本 一, 鈴木 拓, 笠原 薫, 光内 正樹, 牧口 祐介, 高橋 裕樹, 遠藤 高夫, 今井 浩三
    1997 年 86 巻 1 号 p. 138-139
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は46歳の男性. 2~3年前より小麦製品摂取後の運動中に蕁麻疹の出現をみていたが,平成7年,蕁麻疹後の意識の消失を2回経験し,食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FEA)疑いにて当科に入院した.小麦70g摂取後の運動負荷により,全身性の蕁麻疹が誘発され,小麦によるFEAと診断した.テルフェナジンを5日間服用の後では,同様の負荷でも蕁麻疹は出現せずアナフィラキシーの予防が可能と考えられた.
  • 田中 一徹, 谷口 正実, 松下 兼弘, 安藤 守秀, 中村 慎吾, 佐藤 元彦, 加古 恵子, 上平 知子, 榊原 博樹, 末次 勸
    1997 年 86 巻 1 号 p. 140-142
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は全例男性.診断時の平均年齢は54歳(46歳から65歳)で, 4例が既に気管支拡張症の診断で加療を受けていた. 3例に小児期重症肺炎の既往があり,症状は下気道感染症状4例,血痰3例,胸痛2例,労作時息切れ2例,喘鳴1例であった.胸部X線上,全例で左肺の透過性亢進と肺血管の細小化を認め, CTで同様の所見がより明確にとらえられた.慢性下気道感染例や喘息の中には本症が混在している可能性があり,本症を念頭においた胸部X線撮影が診断の第一歩として重要と思われる.
  • 川崎 俊三, 兼岡 秀俊, 宮原 佳江, 田中 智一郎, 小河 原悟, 村田 敏晃, 道永 功, 内藤 説也
    1997 年 86 巻 1 号 p. 143-145
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,男性.午後3時頃蜂に左顔面を刺され,当夜より両下肢に浮腫が出現し,その後近医にて尿蛋白4+及び低蛋白血症を認めたため当科入院. 1日尿蛋白11.4g,血清アルブミン1.7g/dl,高血圧と全身性浮腫を認め,腎生検にて微少変化型であり,ネフローゼ症候群と診断した.高血圧に対するCa拮抗薬とACE阻害薬の投与により,浮腫,高血圧及び蛋白尿は消退した.本例は蜂毒により一過性に出現したネフローゼ症候群と考える.
  • 戸田 剛太郎, 奥秋 靖
    1997 年 86 巻 1 号 p. 146-153
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌は進展した肝病変,特に肝硬変を母地として発生する.肝臓は再生能のきわめて強い臓器である.肝細胞障害の持続は肝細胞に対し持続的な増殖刺激をもたらし,このような状況下,肝細胞障害因子に抵抗性で,増殖能の高い細胞が選択されていくと考えられる.この選択過程には癌遺伝子,増殖関連遺伝子,免疫抑制遺伝子,免疫細胞の分泌するサイトカイン,活性酸素(DNA損傷)などさまざまな因子が関わっていると考えられる.ウイルス由来の因子(HBV-X, preS/S遺伝子産物)による免疫抑制遺伝子p53産物の不活性化,癌遺伝子の活性化は肝炎ウイルスの発癌への関与を示唆しているという意味で注目を集めている. HCVの発癌機序にこついては依然として明らかではない.しかし,肝癌細胞内に増殖型の(一)鎖HCV-RNAが存在することは今後の肝癌治療を考えるうえで興味深い.このような肝細胞癌の分子生物学的な研究の進歩の肝細胞癌の診断と治療への応用はやっと端緒についたばかりであり,今後の展開が期待される.
  • 石川 冬木
    1997 年 86 巻 1 号 p. 154-161
    発行日: 1997/01/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年,細胞がどれだけ細胞分裂を行ったかをカウントする細胞分裂時計の候補として染色体テロメアが注目を集めている.本稿では,テロメアおよびその機能を制御するテロメラーゼと,成入病,特に悪性腫瘍と動脈硬化性疾患との間にどのような関連があるかについて述べた.
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