日本内科学会雑誌
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87 巻, 2 号
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  • 佐々木 英忠
    1998 年 87 巻 2 号 p. 207-209
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 河野 茂, 朝野 和典
    1998 年 87 巻 2 号 p. 210-216
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症は高齢者において生命予後に大きい影響を与える.従って迅速な診断と治療が重要である.最も簡便で迅速に原因菌を推定する方法は従来から用いられている喀痰のグラム染色である.さらには市中肺炎,院内肺炎など病態に分けた原因菌の推定がエンピリックテラピーのために有用である.呼吸器感染症の原因菌は使用される抗菌薬の影響により時代とともに推移し,感受性菌が減少し,耐性菌が増加する.一方で,これまでに知られていなかった新しい病原体の存在も認識されるようになってきている(新興感染症).このようにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌やペニシリン耐性肺炎球菌などの耐性菌や診断法の進歩によるレジオネラや肺炎クラミジアなどの新しい病原体にも対処した高齢者の呼吸器感染症対策が望まれる.
  • 大串 文隆
    1998 年 87 巻 2 号 p. 217-222
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    病原微生物の進入に対しマクロファージ,好中球やリンパ球を中心に生体防御機能が作動しこれらの排除が行われる.この過程では菌の種類,感染の時期などにより異なった種々のサイトカインが関与する.生体防御機構には炎症性サイトカインが主となる非特異的なものとTh1サイトカイン, Th2サイトカインが主体となる特異的防御機構がある.これらのサイトカインが複雑なネットワークを形成し病態形成に深く関与している.
  • 菅 守隆
    1998 年 87 巻 2 号 p. 223-229
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    高齢者の呼吸器感染症の診断と治療の進歩のうち呼吸器感染症の症状・検査からみた鑑別診断のポイントについて,高齢者肺炎の臨床症状の病態,一般検査所見,胸部X線などの特徴と特殊検査としての嚥下能検査とその評価を中心に概説した.高齢者呼吸器感染症のprimary careとしての診断のポイントは高齢者の生理の病態を十分把握して,病歴,臨床症状,画像,非特異的炎症反応などの従来の方法と身体所見をいかに注意深く観察するかにかかっていると言える.
  • 小場 弘之
    1998 年 87 巻 2 号 p. 230-235
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症における画像診断は, CTの普及により病変分布や病変の場,肺の構造変化がより正確に認識可能となり肺既存構造に基づいた分析が可能となってきた.気道散布性病変の分布パターンの違いや気管支血管周囲間質病変が,小葉を基本単位とする理論的な分析方法により明らかにされつつあり,呼吸器感染症の診断精度の向上が期待される.
  • 鈴木 克洋, 網谷 良一
    1998 年 87 巻 2 号 p. 236-242
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    核酸増幅法による抗酸菌の迅速診断の感度は85~90%,特異度は97~98%とまとめられる.核酸増幅法は万能ではなく,抗酸菌の塗抹・培養検査は現在も必須である.気管支洗浄を用いたサイトメガロウイルス・カリニ肺炎の遺伝子診断の感度は100%に近いが,偽陽性例が相当数存在する.マイコプラズマ・レジオネラ・クラミジア・アスペルギルスの遺伝子診断の臨床的有用性の検討は今後の重要な課題である.
  • 木田 厚瑞
    1998 年 87 巻 2 号 p. 243-248
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    救急入院となる高齢者の疾患では肺炎が最も多い.高齢者の肺炎は呼吸器症状,身体所見はともに乏しくプライマリー・ケアにおける早期診断がしばしば困難なことがある.詳細な問診,身体所見のチェックによって早期診断の精度を挙げうることを指摘したい.また診断を目的として侵襲的,非侵的な多数の検査を脈絡なく実施することは,患者にとって負担となり, QOLを低下させ,高齢者の医療費を増大させる.治療は難治化の場合を除き,大多数例でエンピリックに実施されているのが現状である.
  • 下方 薫
    1998 年 87 巻 2 号 p. 249-253
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    高齢者における肺炎は化学療法剤がいきわたった現在においてもしばしば致命的であり,その頻度が高いことからも臨床的に重要である.高齢であること自体が肺炎の予後を決定する独立因子である.さらに高齢者では多くの合併症を有することもその治療を困難にしている.高齢者では薬物の代謝や排泄機能が低下していることに加えて,多種多様の薬剤を服用していることが多い.したがって化学療法薬の相互作用を考慮するとともに,副作用の発現阻止に細心の注意を払う必要がある.
  • 橘川 桂三
    1998 年 87 巻 2 号 p. 254-258
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    高齢者は全身の臓器・組織に老化現象が進行しており,他臓器罹患の状態になっていることが多く,薬剤は多種類・多剤投与されていることも多い.薬剤の相互作用・副作用に注意し,患者の状態および臨床検査所見から薬剤の投与量・投与方法を考える.また,原因菌に対して抗菌力の強い抗菌薬の選択が重要だが,原因菌不明の場合は,高齢者は陰性桿菌,嫌気性菌が多いが,院外型・院内型に分けてempiric therapyを行う必要がある.
  • 松島 敏春
    1998 年 87 巻 2 号 p. 259-265
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症の原因となるものの主なものは数種に限られる.原因となる細菌には,本来抗菌薬に感受性のあったものが耐性を獲得していくものと,もともと多くの抗菌薬に感受性のない自然耐性のものとがある.前者の例としてペニシリン耐性肺炎球菌,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌を,後者の例として緑膿菌,モラキセラ・カタラーリスをとり上げ,その背景の考え方と対応について述べた.
  • 福地 義之助
    1998 年 87 巻 2 号 p. 266-272
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    呼吸不全の主要基礎病態であるCOPD,結核後遺症,間質性肺炎に合併する感染症の診断と治療の要点を高齢者の特徴を中心に解説した.いずれも急性増悪に伴う肺感染症の抗菌療法と併せて,低O2血症是正のための呼吸管理,高率に併存する心不全への早期対策が重要であることを指摘した.抗生物質の選択の基準を具体的に示すと共に,インフルエンザ,肺炎球菌に対するワクチン療法の臨床的有用性に深い注意を払うべきであることを述べた.
  • 古西 満, 森 啓, 成田 亘啓
    1998 年 87 巻 2 号 p. 273-278
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺癌患者に合併する呼吸器感染症の起炎菌を経気管吸引法(TTA)で解析したところ分離菌種は他の呼吸器感染症と同様であるが,抗菌薬治療歴のある症例ではPseudomonas aeruginosaやMRSAの分離頻度が高くなる.低アルブミン血症を認める肺癌患者では合併した呼吸器感染症の予後が不良であり,サイトカイン発現パターンから細胞性免疫能と好中球機能との障害が関与している可能性が示唆される.対策は適切な抗菌薬治療と発症予防とが中心になる.
  • 北村 諭, 小林 淳
    1998 年 87 巻 2 号 p. 279-284
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    従来の医療では,診療所から患者自身に向かった新たな流れとしての在宅ケアや疾患予防のための活動,病院から診療所への流れとしての病院から診療所に対する治療依頼・継続治療,病院からの経過報告を受けた診療所による経過観察やリハビリテーションなどが不十分であった.高齢者の肺結核や肺炎などの呼吸器感染症治療を効率的に行うためには診療所と病院の間で良好なコミュニケーションのもとに適時役割分担を変えながら患者に最良の医療を提供すること,つまり病診連携が今後是非とも必要である.
  • 永武 毅, 山下 広志, 出川 聡
    1998 年 87 巻 2 号 p. 285-291
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    「かぜ症候群」の原因ウイルスには気道傷害性の強いものから弱いものまであり,その後の細菌感染とも深く関係してくる.しかし,かぜ症候群の原因となるウイルス感染では基本的には自然治癒がみられるものであり,注意深い経過観察か,治療としても対症療法が中心に行われている.中でもインフルエンザウイルス感染の場合にはしばしば大流行がみられると共に肺炎発症により健康成人でも重症化することがあり,早期診断と早期治療が求められる.インフルエンザ肺炎には純粋のウイルス性肺炎,ウイルスと細菌の同時感染による混合感染型肺炎あるいはウイルス感染軽快後の二次性細菌性肺炎がある.従って,適正な病型分類をすることが適切な治療に結びつくことになる.今日「かぜ症候群」の治療に細菌感染予防と称して抗菌薬が使用されることが多い.細菌混合感染の関与が明らかな場合や基礎疾患を有する場合のウイルス感染症としての重症化が予測される場合には早期から適正に抗菌化学療法を併用することに意味があるが,いずれにしても短期間投与を心掛けるべきである.
  • 関沢 清久
    1998 年 87 巻 2 号 p. 292-296
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    人口の高齢化と共に,肺炎による高齢者の死亡率が増加している.高齢者肺炎発生の基となるのは,脳血管障害に伴う防御反射の低下とそれによる夜間の不顕性誤嚥と考えられる.とりわけ嚥下障害は重要であり,嚥下障害を改善するいろいろな方法が考えられているが,未だ有効な方法が確立されていない.有効な治療法の確立が急がれるところである.
  • 河原 伸
    1998 年 87 巻 2 号 p. 297-302
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺結核症における高齢者の占める比率は高く,近年漸増している非定型抗酸菌症も高齢者に多く認められる.上記いずれの抗酸菌症に対しても抗結核薬を中心とした治療がなされ,高齢者においても原則的には一般に行われている抗結核療法と何ら異なるものではないが,種々の合併症・機能障害を有する場合が多いこと,抗結核薬による副作用が比較的高率に認められることなどの高齢者の体質的特性を考慮に入れ,慎重に治療する必要がある.
  • 岩松 宏, 寺邑 朋子, 菊池 正俊, 吉田 和清
    1998 年 87 巻 2 号 p. 335-337
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は65歳女性.慢性腎不全の経過中,発熱を主訴に入院.入院後血小板減少,溶血性貧血,動揺するせん妄状態がみられ,血栓性血小板減少性紫斑病と診断した.血液透析,血漿輸注を施行したが,病態は改善せず.画像所見等から粟粒結核と診断し,抗結核薬を使用したところ,次第に病態は改善した.本症例の病因は臨床経過から粟粒結核が誘因であると考えた.
  • 加藤 浩二, 片山 雅夫, 深谷 修作, 浅野 眞一, 大島 久二, 吉田 俊治, 鳥飼 勝隆, 須藤 裕一郎, 吉田 憲生, 野田 康信
    1998 年 87 巻 2 号 p. 338-339
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,男性.昭和49年より高熱出没, Sjögren症候群と診断され当科通院していたが,高熱が頻回となり入院となった.筋力低下は認めなかったが筋性酵素上昇を認めたため,筋生検を施行したところ筋線維の壊死及び再生像,炎症細胞浸潤を認めた.さらにRNA免疫沈降法では抗EJ抗体が検出された.本抗体は多発性筋炎・皮膚筋炎以外の疾患で検出されておらず,本抗体の検出が多発性筋炎の診断に有用であった.
  • 岩田 道圭, 川村 直見, 北村 匡, 猿田 貴之, 金子 博, 竹内 康史, 三神 美久, 江口 豊寿
    1998 年 87 巻 2 号 p. 340-341
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例はいずれも性的活動期の女性で,下腹部痛を伴った右季肋部痛・右背部痛を主訴とし,血清抗Chlamydia trachomatis抗体価高値,腹部超音波検査で肝被膜の肥厚を認めた.胆膵や胃十二指腸,腎等の疾患を示唆する所見は認めず, Fitz-Hugh-Curtis症候群と考え, clarithromycinの投与を開始し,全例症状の軽快を認めた.右上腹部痛を訴える性的活動期の女性では本症も念頭に置く必要があり,腹部超音波検査は早期診断に有用であると考えられた.
  • 白川 太郎
    1998 年 87 巻 2 号 p. 342-349
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    1989年に英国オックスフォード大学のグループがアトピーと第11染色体の連鎖を報告して以来8年間の歳月がたちアトピーやアトピー一性疾患を規定する候補遺伝子群が続々と報告されている.現在人種的差異や方法論の問題から全人種に共通して認められるアトピーを規定する遺伝子変異は報告されていない.現在特に注目されている第5,第11染色体の最新の報告を紹介し今後のアトピー遺伝子解析の方向性について論じてみたい.
  • 星野 洋一, 永井 良三
    1998 年 87 巻 2 号 p. 350-359
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年,様々な疾患の遺伝子解析が進み,原因遺伝子の座位や同定が進んでいる.循環器領域でも肥大型心筋症,家族性QT延長症候群などの原因遺伝子の同定が精力的に行われてきた.分子遺伝学は原因遺伝子がコードする蛋白の機能を解明し,疾患の病態把握に大きな役割を果たした.こうした研究成果は,診断,疾患の分類,治療法の開発,予後予測などに反映されてきている.特に疾患の診断に関しては遺伝子診断は不可欠である.また, Fabry病でみられるように既知の遺伝性疾患が心病変を主体とする病型の発見で見直されたことも特筆される.さらに循環器領域では,特定の遺伝子変異の多型性と循環器疾患の発症との関連が注目されている.一方,遺伝子治療の面では,米国で閉塞性動脈硬化症や冠動脈再狭窄に対する治療が臨床で応用され注目されている.単一遺伝子性疾患でなく,後天性疾患に対して遺伝子治療が行われることが特徴的である.本稿では循環器領域における遺伝性疾患と遺伝子治療について最近の研究を解説する.
  • 安藤 潔, 森 毅彦
    1998 年 87 巻 2 号 p. 360-364
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    サイトメガロウイルスは健常者にはほとんど病原性を示さないが,易感染性宿主においては重篤な感染症を起こしうる.その中では造血障害の頻度は低いが,骨髄移植には特に好中球減少,血小板減少,汎血球減少,骨髄生着不全などをおこすことが報告されている.機序としては急性感染では造血前駆・幹細胞のアポトーシスによる減少,造血支持細胞の機能不全などが示されている.また持続感染状態でも造血支持能を低下させる可能性が示唆された.今後,臨床例における分子疫学と診断・治療につき検討されなければならない.現在CMV感染症に最も有効な薬剤はガンシクロビルであるが,この薬剤の副作用も好中球減少・血小板減少など骨髄抑制であるので注意が必要である。ホスカルネットは骨髄抑制をほとんど来さないと言われており,骨髄移植後のCMV感染症に対しても今後期待される薬物である.
  • 鈴木 則宏
    1998 年 87 巻 2 号 p. 365-372
    発行日: 1998/02/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    片頭痛の病態は長い研究の歴史をもつが,いまだに明らかになっていないのが現状である.それは,血管説・神経説・三叉神経血管説など病態各説がニューロトランスミッターを介して相互に関わっているためと,病変の主座である脳血管の病的変化の鍵を握る分布する神経線維のニューロトランスミッター自体の種類・作用が十分解明されていないためである.本稿では,このニューロトランスミッターに焦点をあて,最近の知見を中心に現在の片頭痛の病態研究の話題と問題点を浮き彫りにすることを目的とした.
    片頭痛に関わるニューロトランスミッターには,血管反応性に関与するものと痛覚伝達に関与するもの,およびに2つの機能を兼ね備えるものに分けられる.治療への応用という見地からもっとも注目されているものはセロトニン(5-HT)で,とくに5-HT〓受容体の刺激は血管収縮作用とともに血管周囲に生じるneurogenic inflammationをも抑制することにより片頭痛発作を抑制しうる.また, substance Pをはじめとするtachykinin, calcitonin gene-related peptideあるいは一酸化窒素(NO)などは痛覚伝達とneurogenic inflammationの発生の双方に関与している.また,最近抑制性アミノ酸GABAの片頭痛発作抑制作用が注目されている.片頭痛の病態研究は近年ニューロトランスミッターからのアプローチにより飛躍的に進展したが,いまだ全貌は明らかになっておらず今後の発展が期待される.
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