日本内科学会雑誌
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87 巻, 4 号
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  • 西谷 裕
    1998 年 87 巻 4 号 p. 599-603
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 糸山 泰人, 藤原 一男, 中島 一郎, 佐藤 滋
    1998 年 87 巻 4 号 p. 604-611
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    多発性硬化症(MS)は中枢神経症候が時間的および空間的多発性を示すユニークな臨床像を特徴とする中枢神経系の炎症性脱髄疾患である.病因は不明であるが,病因仮説として「特定の疾患感受性を有する患者にウイルス感染などが引き金になりミエリンやオリゴデンドログリアに対する自己免疫反応が生じる」と考えられている.本稿では自己免疫学説,ウイルス感染説,分子遺伝学説の最近の考えと問題点を紹介する.
  • Campylobacter jejuni腸炎の先行と抗ガングリオシド抗体
    結城 信泰
    1998 年 87 巻 4 号 p. 612-616
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Campylobacter jejuni腸炎後Guillain-Barré症候群の発症機序は, GM1様リポ多糖を有するC. jejuniに感染し, IgG抗GM1抗体が産生され,運動神経に発現しているGM1ガングリオシドに自己抗体が結合し,運動麻痺を呈すると考えられている. Guillain-Barré症候群における治療の第一選択は単純血漿交換である. 5m以上歩ける軽症例では2回,自分で立てない中等度例や人工呼吸器に装着されている重症例では4回行う.
  • 楠 進
    1998 年 87 巻 4 号 p. 617-622
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Fisher症候群は外眼筋麻痺,失調,腱反射消失を三徴とするGuillain-Barré症候群の亜型である.ほぼ全例で急性期に抗GQ1b IgG抗体が血中に上昇し,診断マーカーとして有用である.動眼神経・滑車神経・外転神経の傍絞輪部にGQ1b抗原が局在しており,抗GQ1b IgG抗体はこれらの部位に結合して外眼筋麻痺の発症因子となっている可能性がある.プラズマフェレーシスや免疫グロブリン大量静注は治療として有効である.
  • 久堀 保, 梶 龍兒
    1998 年 87 巻 4 号 p. 623-628
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    慢性炎症性脱髄性ポリニューロパチーは慢性の経過をとる運動知覚性ニューロパチーの一群で,近位部優位の末梢神経系有髄線維の障害による.診断は,臨床的・病理学的所見や脳脊髄液所見より行われるが,特に電気生理学的所見が重要である.治療は,副腎皮質ステロイドホルモン療法, azathioprine・cyclophosphamideなどの免疫抑制療法,血漿分離療法が一般的であるが,最近免疫グロブリン療法が注目されている.
  • 竹内 恵
    1998 年 87 巻 4 号 p. 629-636
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    血管炎性ニューロパチーは血管炎症候群の中で中・小型血管を傷害する結節性多発動脈炎(PN)や慢性関節リウマチ(RA)などに伴うことが多い.臨床像は多発性単ニューロパチーで四肢の非対称的な運動感覚障害であり,末梢神経伝導検査では活動電位の振幅の低下や消失を認める.病理所見は軸索変性を主体とし,虚血性変化と考えられている.近年抗好中球細胞質抗体(ANCA)の発見や免疫学的研究の進歩などにより血管炎についての新知見が得られ,それに伴って血管炎性ニューロパチーについても見直しの時期に来ている.
  • 有村 公良
    1998 年 87 巻 4 号 p. 637-642
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    筋緊張・けいれんは多く神経疾患で高頻度に見られる症状であるが,近年Isaacs症候群では末梢神経の電位依存性カリウムチャネルに対する抗体が,またstiff-man症候群ではglutamic acid decarboxylaseやampyphisinに対する抗体が病態に関与することが明らかになってきた.このことは高度の筋緊張.けいれん患者の中には自己免疫疾患の側面を持つ症例も存在することを示し,その診断・治療において留意すべきことである.
  • 齋田 恭子
    1998 年 87 巻 4 号 p. 643-647
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Crow-Fukase syndrome (CFS)では,末梢神経を含む各臓器に毛細血管内皮細胞変化,血管の内腔狭窄・閉塞が存在し,血漿成分がその血管組織周囲腔へ漏出する.これが臓器腫大と軽い実質組織破壞の原因と考えられる.患者血中では,凝固系異常,サイトカインのIL-6,ときにIL-1β, TNF-αの増加があり,とりわけvascular endothelial growth factor (VEGF)が高値で存在し,病態と関連すると考えられている.
  • 中川 正法, 松崎 敏男, 久保田 裕章, 納 光弘
    1998 年 87 巻 4 号 p. 648-654
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    HTLV-I-associated myelopathy (HAM)は, HTLV-I感染による免疫異常が関係した脊髄の慢性炎症性疾患であり,全国調査では約1200例が報告されている. HAMは,感染経路・発症様式により,輸血後発症群,非輸血成人発症群,非輸血若年発症群に分類される. HAMには,肺疾患,関節疾患, Sjögren症候群,ブドウ膜炎,大脳深部白質病変,内分泌疾患などの多彩な合併症が見られる.
  • 岩佐 和夫, 浅賀 知也, 高守 正治
    1998 年 87 巻 4 号 p. 655-663
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    重症筋無力症では,特に胸腺腫を伴った重症筋無力症では血清中に抗横紋筋抗体を認めることが知られているが,病態への関与については重要視されてこなかった.しかし,最近抗横紋筋抗体の一つとして病態を修飾する可能性のある抗リアノジン受容体抗体が見いだされた.この抗体は胸腺腫との関連が高く,重症筋無力症における胸腺腫の診断に有用であるだけではなく,筋小胞体内のCa2+がリアノジン受容体を通り筋細胞内へ放出されるのを抑制するものであった.
  • 長谷 麻子, 荒畑 喜一
    1998 年 87 巻 4 号 p. 664-669
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    多発筋炎(PM),皮膚筋炎(DM)の臨床像と病理学的特徴,および疾患の病態解明に関わる免疫病理学的な研究成果を紹介した. PM/DMの病態は,自己免疫機序による筋組織の崩壊であると考えられ, Tリンパ球による筋線維の浸潤や免疫複合体による微小血管障害の関与が示唆されている.治療の第一選択薬はprednisoloneであるが難治例では免疫抑制薬等を併用する.最後に長期治療における合併症や外来診療の注意事項について述べた.
  • 田中 正美, 田中 恵子
    1998 年 87 巻 4 号 p. 670-677
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    悪性腫瘍患者で腫瘍細胞の直接浸潤によらず,自己免疫的機序により神経症状が出現する疾患群があり,現在も新たな病態が追加されつつある.患者血中や脊髄液中に腫瘍細胞と神経細胞とに共通した蛋白に対する抗体が発見され,対応抗原の遺伝子も同定されている.神経症状が先行することが多く,背景となる腫瘍におおまかな対応があることから,腫瘍の早期発見のための腫瘍マーカーとしても利用できる.神経症状の出現機序はほとんど解明されておらず,今後の課題である.
  • 1)カルシウムチャネル分子構造と免疫
    駒井 清暢, 岩佐 和夫, 高守 正治
    1998 年 87 巻 4 号 p. 678-684
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Lambert-Eaton筋無力症候群の病原抗体として重要な抗P/Q型電位依存性カルシウムチャネル(VGCC)抗体とVGCC分子構造について概説する.抗P/Q型VGCC抗体の認識部位として,主にチャネル機能を担うα1Aサブユニットの膜外露呈部の中でdomain II (D-II)とdomain IVのS5-S6 linkerと呼ばれる部位が重要である.さらにD-IIとdomain III部の合成ペプチド免疫で疾患モデル動物の誘導が可能となり,今後の疾患研究の新しい展開となろう.
  • 2)抗力ルシウムチャネル抗体と臨床
    中尾 洋子, 本村 政勝, 末永 章人, 中村 龍文, 吉村 俊朗, 辻畑 光宏, 伊藤 正雄, 河野 茂, 江口 勝美
    1998 年 87 巻 4 号 p. 685-690
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Lambert-Eaton筋無力症候群(LEMS)は,肺小細胞癌を高率に合併する傍腫瘍性神経症候群の代表例である.一方,患者血清IgGによる動物への疾患移送が証明され,重症筋無力症と同様に自己抗体によって発症する神経筋接合部疾患でもある. 1995年, ω-conotoxin MVIICを用いた抗P/Q型VGCC抗体測定法の開発によって,この抗体がLEMSの80%以上に陽性であることが示された.これは, P/Q型VGCCを標的とする自己抗体が, LEMSの発症に重要な役割を果たしていることを示唆する所見である.しかしLEMSでは,陽性率は抵いもののP/Q型以外のVGCCあるいはVGCC関連蛋白であるシナプトタグミンに対する抗体も存在する.これらの中で,神経筋接合部での障害を引き起こしているのは何であるのかを明らかにすることが, LEMSの病因解明につながる今後の課題でもある.
  • 河合 邦幸, 祖父江 元
    1998 年 87 巻 4 号 p. 691-696
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    接着因子は自己免疫疾患における免疫応答において重要な働きをしている.リンパ球のhoming,抗原提示, costimulatory factorとしての役割,移植免疫,腫瘍免疫などに深く関与している.免疫性神経疾患である多発性硬化症状(MS)とその動物モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)につき,接着因子の病態への関与と抗接着因子抗体による治療の試みにつき概説した.接着因子のなかでもICAM-1/LFA-1 pathway, VLA-4/VCAM-1 pathway, B7/CD28 pathwayなどが発症機序に関わる重要な役割を果たしており,これらの接着因子の抗体を用いた検討でEAEにおいて適切な投与時期に用い接着因子とそのリガンドの両者に対する抗体を用いることなどによってより強い抑制効果が得られている.
  • 岡本 和彦, 梅野 守男, 高木 宏治, 永野 修司, 武田 誉久
    1998 年 87 巻 4 号 p. 727-729
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の女性患者. 55歳よりうつ病と診断され,トリプタノール®(amitryptyline) 20mg/day,アモキサン®(amoxapine) 25~75mg/dayを内服していた.平成8年8月6日,起床時から意識障害,発熱,筋強直,頻拍,発汗が出現したため,当院に入院となった.入院時の血液検査では白血球増加, CPKの上昇を認め,抗うつ薬の服用歴と臨床症状および検査成績より悪性症候群を疑い,抗うつ薬投与を中止した.しかし,第2病日目より呼吸不全,血小板減少, FDP上昇を呈し, DICの併発を考えた.これらに対して,ソルメドロール®(methylprednisolone sodium succinate)とFOY®(gabexate mesilate)の投与を行い経過は良好であった.我々は,長期にわたり少量の抗うつ薬の内服中に,明らかな誘因もなく悪性症候群を発症し呼吸不全, DICを併発し救命しえた稀な症例を経験したので報告した.
  • 竹田 慎一, 森岡 健, 牧野 博, 高桜 英輔, 原武 譲二
    1998 年 87 巻 4 号 p. 730-731
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は42歳,女性.家族歴に肝障害・腎障害なし.常用薬なし.平成5年11月肝機能異常を指摘され,肝生検にて,肉芽腫および胆管炎を伴わない小葉間胆管の消失がみられた.また,平成7年7月,蛋白尿と血清クレアチニンの上昇を指摘された.腎生検にて慢性尿細管間質性腎炎と診断され, 16ヵ月後に透析に導入された.本例は特発性の胆管消失および尿細管間質性腎炎を合併した成人例であり,両者の病因を考える上で興味深い症例であった.
  • 大井 景子, 市田 公美, 岡部 英明, 加藤 尚彦, 中村 宏二, 久保 仁, 川村 哲也, 細谷 龍男, 城 謙輔
    1998 年 87 巻 4 号 p. 732-734
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    概要症例は16歳,男性.運動後に急性腎不全となり入院.腎機能の改善にもかかわらず血清尿酸値は0.7mg/dlと低値を示した.また尿酸クリアランスは37.3ml/min, FEUA37.9と高値を示し尿酸の排泄亢進による低尿酸血症が存在し,腎性低尿酸血症に急性腎不全が合併した症例と考えられた. pyrazinamideとbenzbromaroneの負荷試験を施行し分泌再吸収障害型と診断した.腎性低尿酸血症では運動により容易に急性腎不全をきたす可能性があるため十分な日常管理が必要であると考えられ報告した.
  • 松村 敦子, 春日井 邦夫, 山本 ゆかり, 吉田 利明, 相原 真理子, 上島 紳介, 山本 雅敏, 小栗 隆, 仁田 正和, 横井 太紀 ...
    1998 年 87 巻 4 号 p. 735-737
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は43歳,女性,長野県小川村の出身.平成8年1月30日,突然頻回の嘔吐発作後に吐血をきたし当科受診,上部消化管内視鏡検査にて吐血の原因はMallory-Weiss症候群と診断した.この時に施行した胃,十二指腸の生検組織からフミロイド沈着が確認され,さらに家族歴及び遺伝子解析にてI型家族性アミロイドポリニューロパシーと診断した.吐血を契機に行った内視鏡時の消化管生検が診断に有用であった家族性アミロイドポリニューロパシーを経験した.
  • 竹平 安則, 北川 陸生, 玉腰 勝敏, 山田 正美, 中村 俊文, 川村 欣也, 平沢 弘毅, 高木 正博, 岩岡 泰志, 住吉 信一, ...
    1998 年 87 巻 4 号 p. 738-740
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,男性.刺身摂取後,腹痛・発熱・下痢を呈しショック状態となった.便・血液培養にてVibrio vulnificus (以後V. vul.と略す)が検出され,同菌による敗血症と考えられた.後日施行した大腸内視鏡で,上行結腸潰瘍と回腸末端・回盲部の浮腫を認めた.症状は早期の抗生物質投与で改善した. V. vul.感染症で,大腸潰瘍の確認例の報告はこれまでなく,また原発性敗血症型は便培養陽性例は希であり,救命し得た例が少ないことから,留意すべきと考え報告した.
  • 中里 雅光, 松倉 茂
    1998 年 87 巻 4 号 p. 741-746
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    グアニリンとウログアニリンは,グアニル酸シクラーゼ結合C型受容体(GC-C)に対する内在性リガンドとして哺乳類の腸管と尿から単離された生理活性ペプチドである.両ペプチドは腸管と腎で,水とNaClの吸収抑制と排泄促進に作用する.グアニリンは主として十二指腸以下の消化管粘膜上皮に存在し,一方,ウログアニリンは胃,腸に加え,腎,膵臓,肺にも存在している.両ペプチドは腸管管腔内と血中に分泌され,その血漿濃度はカルチノイド, Zollinger-Ellison症候群,心不全および腎不全で上昇している. NaClの経口負荷量に応じて腸管での両ペプチドの産生・分泌量は変動する.特にウログアニリンはNaCl代謝に関して,腸管と腎を内分泌的に結ぶ物質と考えられている.グアニリンペプチドファミリーは,水・NaCl代謝調節に関与している新たな生理活性ペプチドであり,体液調節の病熊生理との関連が注目される.
  • 増田 善昭
    1998 年 87 巻 4 号 p. 747-752
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    RoentgenがX線を発見し(1895年), Becquerelが放射能を発見してから(1896年),ほぼ1世紀の年月が経つ.これらの発見は体内に隠れて自に見えないものを透視する力を我々に与えてくれた.その後の種々の技術進歩により,現在では最小の侵襲により生体内の諸臓器を可視化することができるようになった.超音波断層法,核医学的方法, CT, MRI等がそれである.今日これらの画像診断は臨床医学のすべての領域において必須な検査法となっているが,循環器領域においても例外ではない.しかし,この領域では動きのある心や血管内の血流を対象とし,かつ,対象は体外とは完全に区別された閉鎖系であるため,他領域とは異なった技術的な工夫が必要である.日本循環器学会ではこのような循環器画像診断の意義,適応,安全性について1995年にガイドラインを出しているが1),ここではこのような循環器画像診断の特徴を踏まえ,最近の進歩とトピックスについて述べることにする.
  • 荒川 哲男, 樋口 和秀, 福田 隆, 松本 誉之, 黒木 哲夫, 小林 絢三
    1998 年 87 巻 4 号 p. 753-761
    発行日: 1998/04/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Helicobacter pyloriの除菌により,消化性潰瘍の再発が激減することが明らかとなり,潰瘍症に対する考え方が大きく変貌した.しかし, non H. pylori, non非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)潰瘍の存在も予想されているほどには少なくないことがわかってきた.したがって,潰瘍再発の機序を追求することは,重要不可欠である.筆者らはH. pyloriが話題に上る以前,潰瘍症が全身病の部分病変であることを認識しつつ,あえて潰瘍再発を潰瘍瘢痕局所の問題として単純化し,潰瘍治癒の質(QOUH)なる概念を提唱し,その本態が炎症であることをつきとめた.すなわち,炎症細胞浸潤の強い潰瘍瘢痕は,色素内視鏡的に結節型を示し,ほとんどが再発する.このようなQOUHの悪い潰瘍では粘膜プロスタグランジン(PG)の低下が顕著である. PG-inducerなどの防御因子増強薬がQOUHを高めるのはこのためと考えられる. H. pyloriをはじめとし, NSAID,ストレスなどの主要な再発因子は共通して炎症性サイトカイン産生を高める.最近,実験的にinterleukin-1βが潰瘍再発を誘発することが明らかとなった.潰瘍瘢痕部粘膜に存在するマクロファージが炎症を増強するキー・ファクターとして働き,好中球の傷害性によって再発にいたると考えられる.したがって, QOUHの悪い潰瘍瘢痕にストレス, H. pyloriやNSAIDsなどの炎症性サイトカインを誘導する因子が働くと,炎症は増幅され,潰瘍が再発するが, QOUHが良ければ炎症の増幅はわずかに留まり,緩解を維持することが想定できる.
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