心筋自体に虚血侵襲に対する防御機転がある.主なものに心筋ischemic preconditioning(IP)や冬眠心筋などが知られ,心筋IPとの係わりで仮死心筋も重要である.心筋IPとは,短時間の心筋虚血が先行すると,続いて生じる長時間の心筋虚血時の心筋障害は軽減し,心筋梗塞や重篤な不整脈の発生が減少する病態である.不安定狭心症のように短時間の心筋虚血が反復する場合にもIP効果を認める. 1回の虚血侵襲でみる仮死心筋でも,心機能を低下させ心仕事量を減らすことにより心筋障害の進展を遅延させるべく対応するとも解釈される.また,冬眠心筋も重要である.短期間と長期間とでその病態は少しく異なり,前者では虚血心筋の形態変化はなく,冠血流量の回復後まもなく心筋収縮能は回復する.後者では,筋原線維減少,ミトコンドリア変形,グリコーゲン貯留,コラーゲン線維網増加などの形態変化を生じ,冠血流回復後もある期間残存するため,心筋収縮能回復にはある程度の時間を要するが,基本的には可逆性である.
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