国立がんセンターでは,がんの診療および治療レベルの向上と格差の是正をめざして,情報委員会が中心となり,平成5年度から「がん診療総合支援システム」としてスーパーコンピタの導入とともに情報ネットワークを構築し,全国のがんセンターとの連携をはかっている.
このネットワークは1994年に30km離れた東京都中央区築地の国立がんセンター(中央)と,千葉県柏市の国立がんセンター(東)との間を6Mbpsの光ファイバー専用線で接続したことに始まった. 1994年12月からは国立の地方がんセンターの接続が開始され,現在では国立および県立の地方がんセンターが合計ll施設接続されている.通常のテレビ会議システムと高精細画像を用いたシステムであり,どこからでも発信することができる.
毎週木曜夕方のメディカルカンファランスでは,各施設が1つのテーマに沿った発表を持ち回りで行っている.このほかにも画像を中心としたカンファランス,病理,骨軟部腫瘍などの他,看護婦,放射線技師,薬剤師,臨床検査技師などのカンファランスも毎月開かれており,参加者は97年1月から10月末まででのべ1万人を超えている.また一部施設間だけではあるが,火曜の早朝には内科のカンファランスを毎週開いている.
このネットワークでは,高精細画像による遠隔カンファレンスとともにインターネットの接続も行っている.これを利用して国立がんセンターが提供する「最新がん情報サービス」をはじめ,インターネット上にある世界中の多数の有用な最新の医学情報を取得することが可能になっている.
また,海外からの演者の講演を多地点に中継するばかりでなく,海外との遠隔医療実験も試みている.米国Georgetown大学やArmed Forces Institute of Pathologyとの間での遠隔病理診断をはじめ,米国Duke大学との高精細画像を用いた遠隔医療実験などを行っている.
このように,これらのがん診療にとっては情報をいかに使うかがより大切になってくるが,国立がんセンター情報委員会の取り組みが全国のがん診療の進歩につながっていくことを期待する.
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