日本内科学会雑誌
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89 巻, 6 号
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  • 池田 康夫
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1053
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 西川 政勝, 渡辺 泰行, 市岡 希典
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1054-1061
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    止血血栓と異なり,病的血栓である動脈血栓症は,粥腫プラークのびらんまたは破壊とそれに伴う血栓形成により動脈閉塞や狭窄をきたす疾患で,その初期病変は速い流れの中で生ずる血小板血栓である.内皮細胞が傷害されると内皮下組織に血小板がずり速度依存性に粘着・凝集し,種々の生理活性物質を放出し,血管内腔に向かう壁在血栓が形成される.これらの反応にはvon Willebrand因子が重要な役割を演じていると考えられる.血小板は,動脈血栓形成初期に中心的役割を演じているばかりでなく,動脈硬化の進展にも密接に関係している.各種の抗血小板剤が開発され動脈血栓症の再発予防ばかりでなく急性期の虚血性疾患の治療にも用いられている.深部静脈血栓症では,血流のうっ帯などがトリガーとなり血液凝固の活性化に伴うフィブリン血栓が主体であるが,血小板も関与すると考えられる.
  • 滝沢 盛和
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1062-1068
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    出血傾向の鑑別診断をする上で,生理的な止血機序を十分に理解することが必要である.正常な止血には血管,血小板,凝固,線溶等の要素が重要であり,これらのどれに問題があるのかを判定しなければならない.まず,最も重要なアプローチとして詳細な問診,診察が必要である.正確な病歴と症状を把握した後に,診断に有用な臨床検査をオーダーすべきである.スクリーニング検査で,ある程度の出血機序を推定し,次に特殊検査を行う.
  • 瀧沢 盛和, 米野 琢哉, 長澤 俊郎
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1069-1076
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    網血小板(RNA含量の高い血小板)は産生間もない血小板(幼若血小板)と考えられ,血小板の産生の指標としての有用性が論じられている.網血小板の測定はRNA染色色素にthiazole orangeあるいはauramine Oを用いたフローサイトメトリーが実験研究,臨床研究に用いられている. ITPなどの血小板減少状態,再生不良性貧血や化学療法後の血小板産生抑制状態,本態性血小板血症など血小板産生亢進状態,骨髄移植の回復期などでその測定意義が検討されており,その有用性には一定の評価が与えられているが,トロンボポエチン投与後の血小板過剰増加を回避する指標になりうると期待される.
  • 野村 昌作
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1077-1082
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    血小板活性化指標を利用する意義は,各種血栓症の診断的意義に加えて,治療に際してのモニター的な意義があげられる.従来,血小板凝集能の測定やβトロンボグロブリン(βTG)あるいは血小板第4因子(PF-4)の測定が指標として用いられてきた.最近は,血小板活性化に関連する様々な分子マーカーが発見され,その代表的なものが, Pセレクチン, CD63,および活性型GPIIb/IIIaである.活性化された血小板は,その表面上にリン脂質を発現させ,凝固反応が促進される.血小板第3因子は,マイクロパーティクルとともに,血小板に関連したプロコアグラント活性を総称している.蛍光色素で標識したアネキシンVを用いると,フローサイトメトリーによって血小板のプロコアグラント活性を測定することができる.
  • 高見 秀樹, 玉井 佳子
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1083-1086
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    出血時間(bleeding time)は止血機能検査のひとつとして広く行われている検査であり,血小板が中心となる一次止血血栓形成能を反映している.臨床的に出血時間の延長がみられるのは血小板の量的・質的異常であり,血小板機能異常症の診断,術前のスクリーニング検査,抗血小板療法のモニタリングなどの圏的に用いられている.
  • 桑名 正隆
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1087-1092
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は血.小板に対する自己抗体により血小板破壊が亢進し,血小板減少症をきたす自己免疫疾患である.最近の研究成果により,抗血小板抗体の産生には血小板膜糖蛋白を認識する自己反応性CD4+T細胞,抗血小板抗体産生B細胞,網内系マクロファージが中心的な役割を果たしていることが明らかにされた.これらの知見はITPの診断や活動性の評価に有用で,さらに抗血小板抗体産生にかかわる免疫機構を人為的に制御する新たな治療法の開発への応用の可能性もある.
  • 冨山 佳昭
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1093-1099
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本稿では先天性血小板機能異常症に関して,それらの止血過程における分子異常および遣伝子異常を中心に概説するが,これらの解析は止血栓形成の分子機構を解明する上で極めて貴重な情報を提供しうる.さらに血栓形成の分子機溝は動脈硬化などを基盤として生じる病的血栓でも共通しており,病的血栓制御の観点からも有用であると考えられる.
  • 村田 満
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1100-1107
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    粘着や凝集など血小板機能に重要な役割を演じる血小板膜糖蛋白には遺伝子多型が見られ,この多型が受容体発現量や機能の個体差を引き起こし,脳血管障害や急性冠動脈症侯群などの動脈血栓症の易罹病性と関係する可能性が示唆されている. GPIIb/IIIa複合体(フィブリノゲン受容体)の33Leu/Pro多型, GPIb/IX/V複合体の145Thr/Metや#339-411のアミノ酸反復数多型, GPIa/Ila(コラーゲン受容体)の807T/C多型などがその代表例である.
  • 岡村 精一
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1108-1113
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本態性血小板増加症は骨髄増殖性疾患の一つであり,末梢血中に血小板が著増する.本症では造血幹細胞のクローン性増殖により,骨髄巨核球からの血小板産生が亢進している.比較的高齢者に多い稀な疾患であるが,血小板数は60万/μL以上となり,血栓症や出血傾向をきたすことが多い.病因として血小板調節因子であるトロンボポエチンやその受容体が注目されているが,原因遺伝子は不明で,現時点では反応性血小板増加症や他の骨髄増殖性疾患を除外することにより診断される.
  • 倉田 義之
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1114-1120
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    特発性血小板減少性紫斑病(ITP)治療における大きなトピックスとして腹腔鏡下摘脾術があげられる.多くの施設で実施され良好な成績が得られている.われわれの施設における腹控鏡下摘脾術の成績を紹介した.そのほか現在はまだ試験段階の治療法である脾照射,ダプソン投与,多剤併用化学療法,末梢血幹細胞移植療法や現在治験中の抗CD40Lモノクローナル抗体投与による治療法,トロンボポエチン投与による治療法なども紹介した.
  • 藤村 欣吾
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1121-1125
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    本態性血小板血症は骨髄増殖性疾患の一つであるが,他の骨髄増殖性疾患に比べ急性白血病等への病型移行の頻度は少なく慢性に経過し,クローン性の増殖が明らかにされるものとされないものがある.血小板増加による血栓症や出血傾向に起因する臨床症状が主体で,治療目的は血栓症,出血傾向の阻止である.そのためには血栓止血異常のリスクに応じて血小板減少療法,抗血小板療法,血栓症の危険因子の除去等を行う必要がある.
  • 川野 晃一
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1126-1130
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    抗血小板薬は抗凝固薬とともに血栓症の治療,予防に用いられてきた.従来より広く使われてきたアスピリンに加え,近年チクロピジン,クロピドグレルなどの抗血小板薬やインテグリンαIIbβ3 (GPIIb/IIIa)受容体阻害薬などの全く新しいタイプの抗血小板薬が次々と開発されている.本稿ではこれらの抗血小板薬を用いて施行された大規模試験を紹介しつつ,抗血小板療法の有用性について検討する.
  • 羽藤 高明
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1131-1136
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    血小板輸血は近年の強力な癌化学療法および造血幹細胞移植の普及と相まって増加の一途にあるが,現在行われている輸血療法は無作為対照比較研究によって得られたエビデンスを基に確立されたものではない.近年, Evidence-Based Medicine (EBM)の重要性が指摘されているが,血小板輸血療法も無作為対照試験で明らかになってきている科学的根拠に基づいて実践していくべきである.
  • 松本 雅則, 藤村 吉博
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1137-1142
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は溶血性貧血,血小板減少性紫斑,動揺性精神神経症状,腎機能障害,発熱の5徴候を特徴とする疾患で,鑑別困難な疾患として溶血性尿毒症症侯群(HUS)がある.最近, TTPの病因としてvon Willebrand因子(VWF)特異的切断酵素活性の低下が報告され,家族性TTPはVWF特異的切断酵素活性が先天的に欠損しており,非家族性では後天的にこの酵素に対する自己抗体が産生されていることが判明した.一方, HUSではこの酵素活性の顕著な低下は認められなかった. VWF特異的切断酵素活性測定法の確立により, TTPの診断・治療が新たな局面を迎えている.
  • 小田 淳
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1143-1148
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    強力な化学療法や臓器移植などの普及に伴い,血小板輸血使用量は増加する傾向にある.しかし,血小板輸血には感染症伝播の危険性,副作用,さらに輸血不応などの問題も内在している.遺伝子組み替え技術で作製されたトロンボポエチンなどの造血因子が血小板減少症治療に有効であれば,これらの問題の根本的解決に繋がることが期待される.しかしながら,これまでの開発過程の結果からは有効性が示唆される場合もある反面.効果の限界や副作用に関する問題点も明らかになってきた.
  • 伊藤 亘, 河田 一郎, 上岡 博
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1179-1181
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は77歳の男性.咳嗽を主訴に受診.胸部単純X線写真で左肺門部腫瘤と左上葉の無気肺が認められた.気管支鏡検査で左上幹を閉塞する腫瘤を認め,生検にて扁平上皮癌と診断された.骨転移も認めたが年齢を考慮し,原発巣と骨転移巣に対する放射線治療を開始した.経過中,徐々に増大する左大腿直筋内腫瘤が出現し,エコー下針生検の結果,肺癌の筋転移と判明された.原発性肺癌の骨格筋転移は稀であることから,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 内藤 格, 山本 和英, 中嶌 秀康, 宮木 知克, 東 克謙
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1182-1184
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は17歳,男性. 5歳時より気管支喘息に罹患し,呼吸困難を主訴に受診した.血液生化学検査では低酸素血症,炎症反応を胸部X線, CTでは縦隔気腫,皮下気腫,硬膜外気腫を認めた.酸素吸入,抗生剤およびアミノフィリン,ステロイドの投与により自他覚症状は次第に改善し,血液検査,画像所見も改善した.重症の喘息患者では皮下気腫および縦隔気腫を合併することはあるが,さらに硬膜外気腫を合併した例は稀であり,興味ある症例と思われた.
  • 伊藤 直樹, 真家 伸一, 古川 佳子, 有馬 功一郎, 秋月 哲史, 松岡 康夫, 中塚 誠之
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1185-1187
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は55歳女性.健康診断で心電図異常,胸部異常陰影を指摘され来院.心臓超音波検査で右房・右室の拡大をみたが,中隔欠損等,心腔内短絡血流は認めなかった.心プールシンチ上,左→右短絡を認め精査目的で入院.心臓カテーテル検査で左肺静脈から無名静脈を介し上大静脈へ,また左肝静脈を介し下大静脈へ還流する部分肺静脈還流異常を認めた.三次元MRAで前者は心臓前面を,後者は心臓後面を走行していることが明瞭に観察され,還流異常の解剖学的診断に三次元MRAが極めて有効と考えられた.
  • 河田 典子, 土山 準二郎, 山縣 浩一, 坪田 輝彦, 上田 裕之, 梅村 茂夫
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1188-1190
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    基礎疾患のない健康成人に発症した水痘肺炎を2例経験した. 2例とも喫煙歴を有し,皮疹の重症化,肝障害を認め,うち1例は低酸素血症を呈していた.胸部CTでは両側びまん性に小結節影がみられ,淡い肺野濃度の上昇,気管支壁の肥厚を伴っていた.画像所見より水痘肺炎の合併と診断,入院後よりacyclovirを投与し,症状,画像所見とも2週間でほぼ改善した.健康成人水痘肺炎は軽症例が多いとされているが,重症化する例もみられ,早期の的確な診断,治療が重要と考えられた.
  • 土田 知史, 小沢 尚, 岩本 正照, 秋月 正史, 土橋 健, 増田 英明, 中村 宣生, 長嶋 洋治
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1191-1193
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は61歳男性,腹部膨満を自覚,その後,腹部症状の悪化とともに乏尿を伴う腎機能障害が出現し血液透析を開始した.しかしその後も急速な経過を辿り,腎機能の改善も認められず死亡した.剖検にて悪性リンパ腫であることが判明し,剖検腎の組織所見では,ボウマン嚢内に多量の不定形物質の蓄積を認め,この中にTamm-Horsfall蛋白(THP)が同定された.従って本症例はTHPの直接的関与が強く示唆された貴重な急性腎不全例と考えられた.
  • 高齢化社会における急性ストレスのインパクト
    苅尾 七臣
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1194-1205
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年,ストレスが心血管系疾患の発症要因として注目されている.脳がストレスを認識し,どのようなメカニズムで心血管系疾患を引き起こすかを,阪神淡路大震災時のエビデンスに基づき解説した.阪神淡路大震災時には,最も被害の大きかった地域の心血管疾患死亡は高齢者を中心に,早朝から午前中に1.5倍,夜半から明け方に2倍増加した.その際,震災のストレス強度に比例し,一過性血圧上昇,血液粘度増加,凝固線溶亢進,内皮細胞刺激亢進等の急性危険因子が増悪した.これらの急性危険因子は交感神経系の影響を強く受け,日内変動を示し早朝に増悪する.震災時には,臓器障害の進行したハイリスク群に,強烈な精神的及び身体的ストレスが誘因となり急性危険因子を増悪させ,その日内変動が心血管系疾患の発症を修飾したものと推測される.本メカニズムは,今後,高齢化社会における心血管系疾患の発症予防および治療を考える上で極めて重要であろう.
  • 基本的な考え方と応用例
    新保 卓郎
    2000 年 89 巻 6 号 p. 1206-1211
    発行日: 2000/06/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年,診療行為の経済学的分析,特に費用効果分析が盛んに報告される.これは医療技術の効果だけではなく,効果を得るために必要な費用も同時に評価するものである.これにより費用対効果の優れた医療技術が見いだされ選択されれば,有限の資源が効率的に利用され社会の中で大きな効用を生み出すことができる.しかしこのような分析の結果は,社会の中での公正の原則に反したり,慢性的障害を負った患者や医療の必要性の高い患者に不利に働く危険性がある.また臨床医にとって個々の診療現場でジレンマを生む可能性がある.しかし近年普及の著しい診療ガイドラインの作成などには医療経済学的視点が欠かせない.これには臨床医が関与する必要があり,臨床医もこのような診療行為の経済学的分析に関する問題点を理解しておく必要がある.
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