日本内科学会雑誌
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89 巻, 8 号
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  • 診断から自己管理まで
    清野 裕
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1491-1492
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 南條 輝志男, 別所 寛人
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1493-1499
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    糖尿病の分類と診断基準は, 1982年の日本糖尿病学会(JDS)や1985年の世界保健機構(WHO)によるものが用いられてきたが,糖尿病研究の進歩に伴い,既存の分類や診断基準にいくつかの問題点がみられるようになった.そのため,アメリカ糖尿病協会(ADA), WHO, JDSでは, 1997年から1999年にかけてそれらの改定を行った.今回の改定の要点は,分類については臨床的分類から成因的分類への変更とインスリンの必要性に基づく臨床病期の採用,診断基準については糖尿病(型)とする空腹時血糖値基準の変更(≧140mg/dlから≧126mg/dlに)と, JDSではHbAlc値の採択である.
  • 多因子遺伝を中心に
    寺内 康夫, 戸辺 一之, 門脇 孝
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1500-1506
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    日本人の糖尿病の95%以上を占める2型糖尿病の多くは多因子遺伝病と考えられる. 2型糖尿病の疾患感受性遺伝子の役割の解明には遺伝的不均一性や多因子遺伝を考慮したアプローチ,すなわちヒト糖尿病の遺伝子の全ゲノムマッピング/候補遺伝子アプローチを組み合わせた疾患感受性遺伝子の解明, single nuc1eotide polymorphism (SNP)に関する情報の蓄積,モデル動物作製をはじめとする機能的解析による発症過程の解明,環境要因の人為的・計画的な操作による発症因子や予防法の研究など総合的な研究が必要である.
  • 1)分泌障害
    山田 祐一郎
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1507-1511
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    わが国の多くの糖尿病患者はグルコースに対するインスリン分泌能が障害されており,膵β細胞内の糖代謝の障害がその原因ではないかと考えられている.グルコースが膵β細胞からインスリンを分泌する分子機構が次々と解明され,一部の症例では,グルコース代謝経路の遺伝子変異で糖尿病が発症するが,多くの糖尿病患者ではその遺伝的背景は未だ不明である.インスリン分泌障害の遺伝素因を有する症例で,運動不足・脂肪過剰摂取などによりインスリン抵抗性が加わると糖尿病を発症しやすいのではないかと考えられる.
  • 2)抵抗性
    小川 渉
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1512-1517
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    2型糖尿病のインスリン抵抗性には,遺伝的に規定された原発性インスリン抵抗性と,可逆的な二次性インスリン抵抗性がある.原発性インスリン抵抗性として,骨格筋の糖取り込み障害が重要視されており,その原因遺伝子の検索が行われている.二次性インスリン抵抗性を惹起する因子として,グルコサミン過剰産生,高遊離脂肪酸血症, TNFαなどの関与が示唆されており,持続する高インスリン血症もインスリン感受性の低下を誘導する.
  • 阿部 隆三, 清野 弘明
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1518-1522
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    糖尿病の食事療法・運動療法は糖尿病治療の基本であり,医療経済的にも重要な治療法であることが認識されている.食事療法の基本は,日本糖尿病学会編の食品交換表(第5版)に記載されている.糖尿病の患者を診察する医師は熟読すべき教科書でもある.食事指導には,患者の食習慣などにより個々の対応が必要となる.糖尿病の食事療法を十分理解していながら,実行できない患者も多数見受けられる.こういう場合,心理的なアプローチも必要となる.
    運動療法に関しては,運動に伴う血糖低下は,インスリンによる血糖低下とは異なる機序によるAMPキナーゼ仮説が提唱されてきている.また,運動療法の生命予後に関する前向き研究の報告においても,糖尿病だけではなく,運動療法の重要性が認識されている.
  • 1)インスリン分泌促進薬
    吉元 勝彦, 石田 均
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1523-1529
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年,膵β細胞膜上にスルフォニル尿素(SU)薬が特異的かつ高親和性に結合する受容体(SUR)が同定され, SU薬によるインスリン分泌促進機構の詳細が明らかとなってきた. SU薬は糖尿病状態下で,グルコースに対するインスリン分泌が障害されている膵β細胞においてもインスリンの分泌促進作用を示すことができ,膵β細胞が脆弱でインスリン分泌不全を生じやすい日本人にとっては理にかなった血糖降下薬といえる.一方,非SU系インスリン分泌促進薬は最近上市された新たな血糖降下薬で,速効・短時間作用を特徴とする.化学構造上SU基は有さないものの, SU薬と同様の機序でインスリン分泌を促進する.しかしながら同じインスリン分泌促進薬でも体内における薬物動態が異なっており,臨床的には使い分ける必要がある.
  • 2)インスリン抵抗性改善薬
    柏木 厚典, 前川 聡
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1530-1535
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    インスリン抵抗性は, 2型糖尿病及び動脈硬化性危険因子である.本薬剤選択にあたって,肥満,高インスリ血症(空腹時IRI 12μU/m1以上),動脈硬化危険因子の集積した症例,インスリン抵抗性指標HOMA-R 1以上(特に3以上症例)の糖尿病患者が最も良い適用となる.使用に際しては,月1回の肝機能検査,浮腫の発生に注意し,一般的な有効率は約50%であるので,無効症例に長期使用することは避けるべきである.
  • 3)ビグアナイド薬とα-グルコシダーゼ阻害薬
    小沼 富男
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1536-1543
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    糖尿病治療では,種々の合併症の発症,進展を抑えることに加えて,膵β細胞のインスリン分泌能を出来るだけ疲弊させないことが重要である.ビグアナイド薬とα-グルコシダーゼ阻害薬はいずれも膵外組織に作用して血糖を低下させるため,膵β細胞に対して庇護する方向に働く.なおそれは二次的に血中インスリンの上昇を抑えることになり,インスリン抵抗性の軽減,そして高脂血症,高血圧,肥満などの是正にもつながる.
  • 開発と治療法の進歩
    佐々木 敬
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1544-1550
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    1980年代初頭に遺伝子組換え技術により高度精製ヒト・インスリン製剤が作られた.これにより安全に使用できるインスリンが安定して供給されるようになった.またペン型注入器の導入によって従来の製剤を用いたインスリン療法が完成した.現在は超速効型及び可溶性持続型ヒト・インスリン・アナログの臨床応用という,バイオテクノロジーに基づく画期的な進歩が糖尿病臨床に再び訪れている.今後,多様なライフスタイルに合わせた新しい強化インスリン療法が展開されると考えられる.
  • 永田 正男
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1551-1556
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    最近,糖尿病の合併症を指標にした大規模介入試験が, 1型糖尿病および2型糖尿病について相次いで発表された.これらの結果から,今日,合併症の発症・進行防止を目標においた糖尿病のコントロールについて考え直すことが必要と思われる.また,本邦は急激な高齢社会への移行に直面しているが,それに伴い高齢者の糖尿病患者数は増加の一途にある.高齢者糖尿病では様々な要因から若壮年者同様の厳格な血糖コントロールが困難な事例が多く,異なったコントロール指標が必要である.
  • 新城 孝道
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1557-1563
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    糖尿病足病変は軽症より重症まで多彩である.足病変の発生機序は神経障害,動脈硬化症による末梢循環障害と感染症が3大要因となる.足の循環障害はマクロアンギオパティーとマイクロアンギオパティが混在し,さらに神経障害調節障害がからみ複雑な病像を呈する.身近な生活での小外傷より足の感染がおこり,足壊疽へと進行する.日常診療のなかで足を診察項目に加え,定期的な観察とフットケアで早期発見早期治療が望まれる.
  • 中村 二郎
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1564-1569
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    糖尿病性神経障害は,糖尿病患者のQOLを著しく低下させるのみならず,生命予後をも左右することから,その早期診断と早期治療が重要である.診断基準が確立されていないため,神経障害の自覚症状に関する詳細な問診を行うとともに,様々な神経機能検査を駆使することにより診断する.治療の原則は,厳格な血糖値のコントロールにあるが,アルドース還元酵素阻害薬の有用性が確立されつつあり,今後の発展が期待される.
  • 田港 朝彦
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1570-1577
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    厳格な血糖コントロールは,細小血管合併症の発症,進展を抑制する.しかし,前増殖網膜症,増殖網膜症を有する例に血糖降下療法を開始する場合には, HbAlcが極めて高い場合, HbAlc 8.0%までは速やかに下げても良いが,それ以後は緩徐に血糖を下げて,低血糖を起こさないなどの配慮が要る.長期間放置例や,糖尿病罹病治療歴が不明の初診患者の場合も同様である.また,治療開始前から治療中の眼科医との緊密な連係が必須である.その他,高血圧,高脂血症,喫煙,肥満などのリスクファクターを取り除くこと,などが重要である.
  • 小路 眞護, 牧田 善二
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1578-1583
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    糖尿病性腎症の治療においては,早期診断と病期に応じた管理治療が重要である.現在の所,腎症に対する有効な治療として血糖管理,血圧管理,蛋白制限食が三本柱として推奨され,近年ACE阻害剤の有効性がほぼ確立された.今後各治療の病期ごとの有用性のさらなる検討と,成因の解明に立脚したAGE阻害剤, PKC阻害剤,アルドース還元酵素阻害剤などの薪薬の出現と有用性の検討が必要である.
  • 根岸 清彦
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1584-1588
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    糖尿病と高血圧はともに代表的な生活習慣病であり,両者を合併した症例に日常しばしば遭遇する.本稿では両疾患の病因・病態の関連について,また,最近の大規模臨床試験の成績を踏まえての降圧目標やそれぞれの薬剤の特徴を考えた降圧薬の選択などについて概説する.糖尿病性慢性合併症(細小血管障害および大血管症)の発症,進展の危険因子として高血圧が独立した因子であることが最近の大規模試験の結果で示された.
    したがって,糖尿病の治療上,血圧のコントロールは厳格な血糖コントロールと同等に重要であるとの認識が高まりつつある.
  • 松谷 朗
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1589-1593
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    糖尿病性急性合併症にはケトアシドーシス,非ケトン性高浸透圧性昏睡,乳酸アシドーシスがある.ケトアシドーシスでは高ケトン体血症によるアシドーシスと脱水が,非ケトン性高浸透圧性昏睡では著明な高血糖による高度の脱水が存在し,共に輸液とインスリンの持続投与による適切な治療を行わないと致命的となる.乳酸アシドーシスでは重篤な基礎疾患を有することが多く,予後は極めて不良である.
  • 荒木 栄一, 七里 元亮
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1594-1597
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者が,発熱,嘔吐,下痢等を併発すると血糖コントロールが乱れやすく,特にシックデイと呼ぶ.シックデイには糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧非ケトン性昏睡,重症低血糖発症の危険性が高く,注意を要する.特にインスリン治療中の患者では日頃からの患者教育が重要である.患者指導のポイントは(1)自己判断で治療を中止しない, (2)血糖自己測定の指導, (3)水分の十分な補充, (4)医師,病院との緊密な協力体制の確立である.
  • 太田 節, 佐藤 譲
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1598-1602
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者の低血糖は血糖の正常化を目指す場合に避けられない合併症である.厳格な血糖コントロールが,合併症の進展予防に重要なことが明白な今日,低血糖を避けるための高めの血糖コントロールは勧められない.従来不安定型と言われた患者でも簡便な注入器による強化インスリン療法と頻回の自己血糖測定により,コントロールの改善が望めるようになった.さらに低血糖時の対処に関しては患者(家族)教育が最も重要である.
  • 山崎 勝也, 小林 正
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1603-1607
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    増加してきた糖尿病患者を糖尿病専門医だけで診療するのは難しく,専門医と一般医で効率よく糖尿病診療を行う必要がある.そのためには,病院と診療所の連携,さらには保健所や市町村など行政との連携も含む地域医療に基づいた病診連携システムが必要である.また,病診連携に際し,簡潔な診療情報提供書やコンピュータを利用した病診連携システムは有用である.それらにより,病診連携はさらに推進されていくであろう.
  • 武田 倬
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1608-1612
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    糖尿病者に快適な状態と重症合併症のない健康長寿を可能にするために最も大切なことは,糖代謝をはじめとする糖尿病のよいコントロールである.糖尿病治療の基本である食事療法,運動療法そして薬物療法によって長期間よいコントロールを継続するのには,まず患者がセルフケアを実践するための知識と意欲を持つことへの援助である.このために糖尿病の患者教育は必須であり,治療そのものであるといえる.個々の患者に合った個別教育が糖尿病教育の主体であるが,集団教育をうまく組み合わせて効果的な教育を行うためにチーム医療と病診連携の充実が必要である.
  • 渥美 義仁
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1613-1617
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    糖尿病は薬物のみでは解決できず,食事療法からインスリン指導や足のケアまで幅広いチーム医療が必要である.このチーム医療に参加する看護婦(士),栄養士などの知識内容と水準が一定レベル以上となるよう講義と試験を行ない,経験と併せて糖尿病療養指導士と認定することになった(2001年春より).この療養指導士を活用してチームとしての能力を上げ,安全で適正な糖尿病治療を行なうことが医療機関に求められる.
  • 井口 具隆, 内田 淑子, 栗山 謙, 宮澤 啓介, 木村 之彦, 大屋敷 一馬, 増田 真之, 内海 裕也, 田中 智香子, 増田 剛太
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1642-1644
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年本邦では髄膜炎菌性髄膜炎は年間数例の発症を認めるのみであるが,激症型ではいわゆるWaterhouse-Friderichsen症候群をきたし予後不良であり,早期診断・治療が重要である.本例は成人の激症型の髄膜炎菌性髄膜炎として発症し,かつ,母親への家族内伝播が示唆された稀な症例である.診断上髄液サイトスピン標本による好中球内に貪食された双球菌の鏡検が重要と考えられた.
  • 小野寺 知哉, 平井 希俊, 白木 克典, 嶋根 章, 村田 耕一郎, 若原 伸行, 松永 正紀, 吹田 浩之, 金 萬石, 滝澤 明憲
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1645-1647
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    37歳女性. 7年前,両上肢の脈を触知せず,大動脈炎症候群と診断された.このころ鼻出血,鞍鼻を来した.ステロイド治療を行ったが今回再燃した.血管造影で大動脈弓部3分枝,下行胸部大動脈,左右肺動脈の狭窄を,鼻粘膜生検で細動脈炎を認めた.また, P-ANCA陽性, C-ANCA陰性であった.本例は大動脈炎症候群にANCA陽性鼻血管炎を伴ったまれな症例と考えられた.
  • 松岡 直輝, 原田 俊英, 北恵 詩穂里, 中村 重信, 佐野村 誠, 石川 勝憲
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1648-1650
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は77歳女性. 10年前より歩行障害が出現,次第に四肢の運動失調も明らかとなった.甲状腺機能低下症が存在し,頭部MRIでは高度の小脳虫部・半球の萎縮を認めた. levothyroxine sodiumの投与により運動失調に著明な改善を認め,本症例の運動失調に甲状腺機能低下症が関与していることが示唆された.頻度は少ないものの,運動失調は甲状腺機能低下症の重要な症候であると考えられた.
  • 三上 雅人, 盛 勇造, 山崎 章生, 今田 篤, 斉藤 大太, 大和田 真玄
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1651-1653
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は, 59歳女性.透析導入目的に当科入院したが,多量の血痰と呼吸困難を認あた.著明な低酸素血症のため,挿管,人工呼吸.メチルプレドニゾロン1g投与したが,低酸素の悪化を認め,体外式肺補助(ECLA)を開始した. P-ANCA 428EUと高値で,進行性の腎不全と肺胞出血から,顕微鏡的多発動脈炎と診断した. 7日でECLAを, 14日で人工呼吸器を離脱した.副腎皮質ステロイド剤が奏功するまでの治療としてECLAが有効と考えられた.
  • 三浦 心, 石黒 陽, 対馬 健一, 村田 有志, 棟方 昭博, 鎌田 義正
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1654-1656
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は72歳男性. 1998年3月胸やけ感を主訴に当科受診.胃カルチノイドの診断で4月28日胃局所切除術施行.同年8月高分化型前立腺癌の診断でホルモン療法開始.平成11年1月非ホジキンリンパ腫の診断で当科入院.右胸膜腫瘍を認め,生検にて悪性中皮腫の診断を得た.化学療法でNHLは著明に縮小,中皮腫に著変はなかった.短期間に組織型の異なる4つの悪性腫瘍が生じるのは非常に稀で,興味ある症例と考えられた.
  • 久保 惠嗣
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1657-1661
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺血栓塞栓症(PTE)は,突然の呼吸困難や循環障害を呈し急性期の死亡率の高い疾患で救急疾患として重要である.本邦でもその発生率は増加傾向にあるとされているが,本症に対する認識が低く見逃されやすい疾患である.本症の基礎疾患として骨盤部や下肢の深部静脈血栓症が最も重要である.この血栓症の原因の約半数は術後や長期臥床であり,その他心疾患,悪性疾患,膠原病などに合併するものが大部分である. PTEの基本的病態は言うまでもなく血栓形成にある.血管壁の異常,血液性状の変化(凝固能亢進),血流のうっ滞が血栓形成の3大要因である.これらのうち,血液性状の変化に対し,最近血液流動性維持機構の解明とともに分子病態からの解明が著しく進歩している.頻度は多くはないが内科的に重要な疾患がいくつか含まれている.本稿ではこれらのうち,特に再発性あるいは若年者のPTEの際に忘れてはならない疾患として抗リン脂質症候群,プロテインC欠乏症およびプロテインS欠乏症を取り上げ概説した.
  • 渡辺 弘之, 吉川 純一
    2000 年 89 巻 8 号 p. 1662-1671
    発行日: 2000/08/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    循環器疾患における新しい情報が心エコー図で得られるようになった.経胸壁冠動脈エコーは,非侵襲的かつ定量的な虚血性心疾患の診断を可能にした.リアルタイム三次元心エコー図は,二次元心エコ-図で得られるすべての断面情報を瞬時に得ることができる.コントラスト心エコー図は,ドプラ増強効果,左室造影と心筋染影像の描出を可能にした.心筋染影は,虚血性心疾患を微小循環のレベルで診断しうる可能性がある.
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