日本内科学会雑誌
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90 巻, 12 号
選択された号の論文の27件中1~27を表示しています
  • 嶋田 甚五郎
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2349-2352
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 岩本 愛吉
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2353-2359
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    地球規模の感染症について考えてみる機会を与えられた.結核やマラリア, AIDS,デング熱,麻疹やロタウイルスによる下痢症など世界的に患者数の多い感染症が思い浮かぶ.今回は幅広い先生方に少しでもなじんでいただけるように,日本という視点を入れて考えてみた.地球規模の感染症の中でも,日本国内に常在するもの,国内には発症例がない,あるいは稀ではあるが輪入感染症として重要なものの2項目にわけて記載した.
  • 審良 静男
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2360-2365
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    病原体が体内に侵入してくると, Toll-like receptors (TLRs)によって認識され,最初に自然免疫システムが作動する. TLRsを介して活性化された白血球やマクロファージは,貪食による病原体の処理や抗菌分子の産生をおこなう,その後の獲得免疫システムの誘導には,樹状細胞による抗原ペプチドのT細胞への提示が必要であるが,その際にも同時にTLRsを介する樹状細胞の活性化が必須である.このようにTLRsは,自然免疫と獲得免疫の両方で,感染防御に関わる必須の受容体である.
  • 光山 正雄
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2366-2371
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    新興再興感染原因菌のうち,結核菌は我が国でとくに問題が大きい.多剤耐性(MDR)結核菌は徐々に増加しており,その耐性機構は他菌種にみられる耐性遺伝子の獲得とは異なり,個々の菌における薬剤標的遺伝子の突然変異が主体である.一方結核菌の病原性発現には,菌体成分を特徴付ける各種糖脂質成分による宿主応答の刺激作用,未知の遺伝子を含む種々の機構によるマクロファージからの殺菌エスケープ機構が深く関与している.
  • 呼吸器感染症を中心として
    後藤 元
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2372-2378
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Immunocompromised hostとは,液性免疫,あるいは細胞性免疫に障害を持ち,このため易感染性になっているものを指す.これに加えて好中球の減少,機能低下も易感染性に関与する. 20世紀を通じてimmunocompromised hostの感染症に対する診断,治療は大きな進歩を遂げたが,耐性菌の出現など今後取り組まなければならない課題も多く残されている.
  • 岡部 信彦
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2379-2384
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    感染症が我々の目の前から少なくなり,その結果かつてのように病気=感染症(伝染病)=死に至る危険性という考え方は姿を消し,人々はこのような恐怖から逃れ安心して暮らせるようになった.その中で予防接種の果たした役割は少なくない.
    予防に勝る治療はない.予防接種は人類にとって感染症対策に重要な手段として,さらに発展していく必要がある.またそのために多くの人の理解を求める努力を続けなくてはならない.
  • 佐々木 緊
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2385-2391
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    医薬品の創薬の歴史は,化学中心の時代, in vitro研究を中心としたバイオテクノロジーによる時代,そして最近ではゲノム研究による時代へと移行している.抗菌薬以外の領域の創薬においては,その標的がヒトの疾患であるのに対して抗菌薬創薬に於いてはその標的が病原微生物である点が異なるものの,その歴史は両者共同様の展開がなされている.最近では微生物のゲノム分析が進んでおり,細菌の染色体の全塩基配列が,ここ数年間にすさまじい速さで解明され2000年現在数十種の細菌のゲノム配列が解明されつつある.この様にして解明された情報をどの様に活用し,抗菌薬開発に結びつけるのかという点についての現状を概観し,今後の進展について私見を述べる.
  • 木村 哲
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2392-2397
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    日本では病院内感染症のサーベイランスや,その対策が遅れている.これを是正するため感染制御ドクター(ICD)および感染制御ナース(ICN)の認定制度が,それぞれ1999年および2000年に発足した.いずれもできたばかりであり,その質,量において更なる改善が望まれるが,両制度の発足により,日本の病院内感染症対策が飛躍的に進歩することが期待される. ICDやICNの力が十分に発揮される為には感染制御チームを組織し,リンクナースを置くなど施設としての取り組みも重要である.
  • 1)プロウイルスと疾患
    畑中 正一
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2398-2404
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    プロウイルスとはレトロウイルスの遺伝子が宿主細胞のゲノムに組み込まれた状態をいう.レトロウイルスはRNAウイルスであるが細胞内で逆転写酵素によってRNA遺伝子からDNA遺伝子に逆転写される.逆転写されたウイルス遺伝子はインテグラーゼ酵素によって宿主のDNAに組み込まれてプロウイルスとなる.プロウイルスからレトロウイルスが複製されて増殖を開始する.感染によるプロウイルス疾患として成人T細胞白血病(ATL)とエイズ(AIDS)が知られている.この他にヒトゲノムには内在的にプロウイルスを有しており,これが発現した時には自己免疫疾患となり, I型糖尿病の発生することが知られている.
  • 2) Chlamydia pneumoniae感染症と動脈硬化症
    宮下 修行, 深野 浩史, 松島 敏春
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2405-2412
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患の最大の原因は動脈硬化症であるが,近年その成因として慢性炎症説が重要視されている.炎症を惹起させる原因として感染症,中でもChlamydia pneumoniaeの局所における慢性持続感染が動脈硬化症の新たな危険因子として注目を集めている. C. pneumoniaeが生きた状態で動脈硬化病変部位に存在することが証明され,菌体の内部抗原である熱ショック蛋白による炎症性サイトカインの産生や接着因子の増強または免疫反応などがそのメカニズムとして考えられている.
  • 3)感染後にみられる自己免疫性末梢神経疾患
    古賀 道明, 結城 伸泰
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2413-2419
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Guillain-Barré症候群は,各種感染が契機となって発症する自己免疫性末梢神経疾患である.先行感染の主要な病原体として,急性腸炎の起炎菌であるCampylobacter jejuniが同定されている.本菌菌体上には,ヒト末梢神経の構成成分であるガングリオシドと構造の類似するりポ多糖が存在することが証明されており,患者血中にはガングリオシドと反応する自己抗体が検出されることから, Guillain-Barré症候群の発症機序として分子相同性仮説が提唱されている.
  • 4) EBウイルス感染症の多様性
    原田 志津子
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2420-2425
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    EBウイルスは普遍的ヒトヘルペスウイルスの一つでありながら,癌ウイルスと呼ばれる.感染初代B細胞は無限増殖性リンパ芽球に形質転換し,その感染細胞はウイルス産生をせずゲノムを保持し限られた遺伝子産物だけを発現する潜伏感染細胞であるという特徴をもつ. EBウイルスは細胞性免疫によってコントロールされ健常人に顕性感染症は稀であるが,一方で様々の腫瘍や免疫不全での致死的病態と関連している.
  • 5) HBV, HCV肝炎の慢性化と癌化
    四柳 宏
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2426-2430
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    B型肝炎ウイルス, C型肝炎ウイルスに感染した場合,慢性肝炎から肝硬変さらに肝癌に進展する可能性がある. B型肝炎ウイルスキャリアの中で肝癌に至る例は全症例の2%程度と推察されるが,炎症が鎮静化している症例の中からも発癌してくる症例が見られる.一方C型肝炎ウイルスキャリアの場合,肝硬変例の多くが肝癌を合併してくるものと考えられる.双方のウイルスによる発癌のハイリスク群を明らかにし,抗ウイルス治療などの対策をとることが望まれる.
  • 6)慢性疲労症侯群(CFS)
    倉恒 弘彦, 近藤 一博, 生田 和良, 山西 弘一, 渡辺 恭良, 木谷 照夫
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2431-2437
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    慢性疲労症候群とは,原因不明の激しい全身倦怠感と共に微熱,頭痛,リンパ節腫脹,脱力感,関節痛,思考力の低下,抑うつ症状,睡眠異常などが続くため,健全な社会生活が送れなくなるという病気である.化学的,生物学的,社会心理的なストレスが誘因となって引き起こされた神経・内分泌・免疫系の変調に基づく病態と思われるが,潜伏感染ウイルスの再活性化やサイトカインの産生異常などが深くかかわっている.
  • 7) Airway Biofilm Diseaseと自己免疫
    小林 治
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2438-2442
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    慢性気道感染症においては,しばしば気道内に長期間にわたる緑膿菌Pseudomonas aeruginosaの定着が観察され,病態を修飾することが知られている.かかる疾患から検出された緑膿菌は多く細菌biofilmを形成し,気道表面への長期局在に関連する一方,慢性気道感染症におけるTh2優位に傾向したリンパ球反応に乗じてbiofilmの成分を抗原とした抗原抗体反応を誘導し,病勢に関与することが判明した.さらに,生体側反応として自身の好中球細胞質成分であるbactericidal/permeability-increasing protein (以下BPI)に対する自己抗体,すなわちBPI-ANCA (anti neutrophil cytoplasmic autoantibody)が産生され,細菌貪食に抑制的に作用することが判明した.本稿においてはこのような慢性感染症独自の免疫反応を出来るだけevidenceに基づいて解説する.
  • 竹内 泰代, 永田 健, 横田 敏範, 半田 満里子, 松永 勇人, 西尾 雄司, 楠神 和男
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2467-2469
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性.後腹膜及び肝の神経線維腫を伴うvon Recklinghausen病(vRD)のため経過観察していた.右側腹部痛が出現し,腹部超音波・CT・MRIにて肝内胆管拡張を伴う肝腫瘤を認め,血管造影・ERCP・エコー下針生検を施行し肝内胆管癌と診断した.また, Vater乳頭の肛側にカルチノイドを認めた. vRDは悪性腫瘍の合併の頻度が高く,定期的なサーベイランスが重要であると考えられた.
  • 村松 博士, 住吉 葉子, 栗林 景晶, 沼田 隆明, 山内 尚文, 井原 康二, 西里 卓次, 高柳 典弘, 長岡 康弘, 佐藤 勉, 松 ...
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2470-2472
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は, 52歳,女性.主訴は意識障害,発熱.入院時,著明な高血糖あり,腎盂腎炎を疑い感染症治療を開始したが, DICを併発し重症化した.感染源の検索を行ったところ,腹部CTで左腎臓が腫大し腎実質内に低吸収域を認め,気腫性腎盂腎炎と診断した.第2, 3病日の血液培養でE. coliが検出され,敗血症を合併していた.糖尿病を基礎にきわめて重篤化したが,保存的治療にて治癒した気腫性腎盂腎炎の1症例を報告した.
  • 池田 佳広, 小林 広学, 片岡 有, 林 義人, 大友 透, 西宮 孝敏
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2473-2474
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は臥床がちで老健施設入所中の80歳女性.嘔吐,低酸素血症,血圧低下を認め当院搬入.胸部X線にて心拡大,心電図ではSI QIII TIII型を示していた.更に胸部CTでは上肺動脈の拡大と一部陰影欠損像,心エコー上右心系の拡大と左室の圧排,右房内に有茎で房室間を移動する腫瘤を認めた.右房内血栓が塞栓源の肺梗塞と診断し血栓溶解療法を施行.第5病日には全身状態の改善をみ,右房内の腫瘤は消失.右心系に血栓のみられる肺血栓塞栓症は特に予後が悪く,血栓溶解療法を主体とした早期治療が必要であると思われ報告した.
  • 小畑 俊郎, 佐藤 亜由美, 南 貴恵, 水越 常徳, 村上 理絵子, 山本 博幸, 武川 睦寛, 菅谷 壽晃, 高橋 裕樹, 今井 浩三
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2475-2476
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は22歳,女性. 11歳時より若年性関節リウマチ多関節型の診断で治療中であった. 14歳頃より欠神発作を生じる様になったが放置していた. 1999年12月1日,右片麻痺をきたしたため血管造影を施行したところ大動脈炎症候群の合併と判明.若年性関節リウマチと大動脈炎症候群の合併に関しての報告は少なく貴重な症例と考え報告した.
  • 津田 栄彦, 政井 理恵, 浜井 啓子
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2477-2478
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.強皮症(SSc)の診断6カ月後に,著明な血圧上昇と腎機能障害が出現した.高レニン血症,眼底(Keith-Wagener III度)及び腎生検所見より強皮症腎クリーゼ(SRC)と診断し, ACE阻害薬(ACE-I),アンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)で治療したが腎機能の改善は得られず血液透析に導入後,消化管出血で死亡した.剖検で小腸から大腸のほぼ全域に及ぶ虚血性腸炎(IC)の所見を得た. SScでICをきたす症例は稀であり報告する.
  • 林 伸好, 上部 泰秀, 下屋 正則, 中山 美数, 杉山 圭作
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2479-2481
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は28歳,男性.咳嗽,喀痰,下痢の症状を有し,検診にて右胸水貯留等の胸部異常陰影を指摘され当科受診.モクズガニやアユ等の川魚の摂食歴があり,便虫卵検査及び免疫血清学的検査結果から,本邦では稀なウエステルマン肺吸虫症と横川吸虫症の合併と診断した.近年,食品流通の発展とグルメブームによる地域特異性のない寄生虫症の増加が危惧されている1)が,本症例のような複数の寄生虫症の合併にも注意が必要と考え,報告した.
  • 中嶋 哲也, 小沢 博和, 竹内 愛, 原田 朋彦, 古井 俊文, 近藤 哲, 沖田 極
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2482-2484
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,男性,大酒家.胸水による呼吸困難と血痰を主訴に受診.胸水および気管支鏡下の洗浄液中のアミラーゼは高値であった.内視鏡的逆行性膵管造影で頭部主膵管に結石の嵌頓と,主膵管と交通し胸腔に達する仮性嚢胞を認めた.従って膵仮性嚢胞が気管支と瘻孔を形成したと診断した.嵌頓結石に対し内視鏡的切石術などを試みたが不能であった.経過中に症状の増悪を認めたため外科的治療が行われた.慢性膵炎の稀な合併症と考え報告する.
  • 石丸 早苗, 薬師神 芳洋, 酒井 郁也, 安川 正貴, 藤田 繁
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2485-2487
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,女性.左頸部無痛性腫瘤を認め,生検の結果diffuse large B-ce11 lymphomaと診断され,生検細胞の染色体検査の結果t (8; 14)とt (14; 18)の2つの染色体異常を同時に認めた.腫瘍細胞を用いたSouthern blotでは, c-mycとbcl-2の再構成バンドを確認し, FISH法では, c-mycとIgH癒合シグナル及びbcl-2とIgH癒合シグナルを認めた. bc1-2とc-mycの転座を同時に認める過去の症例は予後不良症例が多数であり,この転座を有する症例の病態・予後を考察するうえで興味深い症例であると思われる.
  • 八木 秀介, 栗永 篤信, 美馬 伸章, 柴田 洋子, 山崎 保寛, 福田 洋, 渋谷 和彦, 川井 尚臣, 青木 秀俊
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2488-2490
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性.主訴は吐血.上部消化管内視鏡検査で食道静脈瘤と胃前庭部にびまん性に小斑状の発赤を認め,胃前庭部毛細血管拡張症(GAVE)と診断した.口腔乾燥症状があり,顔面,背部に血管拡張像,手指に皮膚硬化を認め抗セントロメア抗体,抗ミトコンドリア抗体,抗SS-A, B抗体陽性で,腹腔鏡検査,肝生検,唾液腺造影等から強皮症,原発性胆汁性肝硬変(PBC), Sjögren症候群(SjS)に合併したGAVEと診断した.
  • 土至 田勉, 阿久津 靖, 児玉 雄介, 大塚 敏彦, 斎藤 司, 小林 洋一, 片桐 敬, 松田 功, 川上 恵一郎, 友安 茂
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2491-2493
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Budd-Chiari症候群の68歳,女性が,下肢外傷の治癒遷延を生じたため入院.その後, 38度の高熱, IgG低下,著明な白血球減少および貧血を認めた.骨髄所見上,マクロファージによる血球貪食像を認め血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome: HPS)と診断した.骨髄生検では, clotのZiehl-Neelsen染色陽性桿菌および類上皮細胞肉芽腫を認め,結核起因性HPSが考えられた. Budd-Chiari症候群による脾機能亢進がHPSを助長した可能性も考えられた.ステロイド・γグロブリン投与,および抗結核薬(三薬併用)を投与開始し, HPSは治癒した.
  • 抗TNFの抗体療法を中心に
    高添 正和
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2494-2502
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    Crohn病の病態メカニズムが分子レベルで解明されつつあり,炎症性サイトカインをターゲットとした治療法,中でも抗TNF-α抗体療法がCrohn病の治療に臨床導入される予定である.抗TNF-α抗体は,炎症の中心で働くTNF-αと選択的に結合し,その作用を中和することで効果を発揮する.活動期のCrohn病患者に抗TNF抗体(infliximab)を単回静脈注射したところ,その有効性は82% (5mg/kg投与群)であった.また,排膿を示す外瘻を有する患者にinfliximabを3回投与した時の外瘻閉鎖率(半数以上閉鎖)は68%であり,主な副作用は頭痛,嘔気,上気道感染症,倦怠感などであった,抗TNF-α抗体はCrohn病の新しい治療法として期待される.
  • 北内 信太郎, 柳岡 公彦, 玉井 秀幸, 一瀬 雅夫
    2001 年 90 巻 12 号 p. 2503-2509
    発行日: 2001/12/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年の発生生物学の進歩により生体の再生修復機構の分子的解明が進み,組織,臓器,器官を再生させる新しい医学医療の分野が急速に開けつつある.組織再生に必要な三要素である細胞,細胞外基質,増殖再生因子の三要素を駆使して再生医療が行われている.すなわち,発生生物学,発生工学,幹細胞生物学,増殖再生因子研究,生体材料学,組織工学等が互いに補完し合う形で,生体に具備されている再生修復力を向上させ,損傷した臓器の再生を促進させ,あるいは機能を代替し得るハイブリッド人工臓器の開発にいたる等,現代の医学が直面する臓器機能不全症を病態の中核とする疾患群に新たな治療戦略をもたらすものと考えられる.この領域の確立,実現は今世紀の医学,医療の重要なテーマの一つである.
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