日本内科学会雑誌
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92 巻, 11 号
選択された号の論文の28件中1~28を表示しています
  • 現状と将来への展望
    嶋田 甚五郎
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2095-2096
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 舘田 一博, 石井 良和
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2097-2103
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年,黄色ブドウ球菌,肺炎球菌,緑膿菌など臨床上重要な細菌において耐性菌の増加,多剤耐性化が急速に進んでいる.耐性遺伝子の転移・獲得にはプラスミド,トランスポゾン,インテグロンなどのDNA構造が重要であり,抗菌薬による選択圧の存在下でこれら耐性菌は選択され,環境への伝播・蔓延が進行する.最近になって,欧米を中心に市中獲得型MRSA感染症の増加が報告され,耐性菌の問題は新たな局面を迎えようとしている.
  • 平松 和史, 那須 勝
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2104-2109
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ペニシリン系抗菌薬は最も歴史の古い薬剤である.近年,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)といった耐性菌が出現し,その利用価値が低下した側面もある.しかしながら,現在においても,耐性化の傾向を示していない化膿連鎖球菌などのグラム陽性球菌に対しては最も強い抗菌活性を示し,ペニシリン系薬とβ-ラクタマーゼ阻害薬との合剤はβ-ラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌に対しても強い抗菌力を有している.ペニシリン系抗菌薬の特徴を捉え,適切な使い分けをすることで,耐性菌の出現予防を考えた感染症治療は現在の医療において可能である.
  • 青木 信樹
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2110-2117
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    臨床の場で現在問題となっている耐性菌のうち,セフェム薬が抗菌活性を有しているものとしてはペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP), βラクタマーゼ非産性アンピシリン耐性インフルエンザ桿菌(BLNAR), ESBL (extended-spectrum β-lactamase)産生菌および緑膿菌があげられる.これらの菌種に対するセフェム薬の位置づけを確認し,適切に薬剤を選択し,用法・用量を考慮することは日常診療において極めて重要と考えられる.
  • 和田 光一
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2118-2122
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    β-ラクタム系抗菌薬のなかでもカルバペネム薬は最も抗菌力,抗菌スペクトルが広い.したがって,重症感染症.呼吸器感染症に対し,カルバペネム薬は有効率,救命率が最も高い.本系統の抗菌薬を早い時期に使用することにより,救命率の向上,患者のQOLの向上,治療費用の圧縮が可能である.一方,近年,カルバペネム薬にも耐性のメタロエンザイム産生グラム陰性桿菌が見られるが,これらの耐性菌を院内感染で拡げず,カルバペネム薬を使いこなすことが重要である.
  • 二木 芳人
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2123-2128
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    キノロン系薬はその強く幅広い抗菌活性や,勝れた病巣内移行性などを背景として,現在では各科領域の多くの感染症治療薬として欠くことのできない存在となっている.しかし,他の抗菌薬同様その頻用に伴ってキノロン耐性菌の増加もみられている.特有の副作用など安全性面での問題も明らかになっているので,それらに対応するためには,その選択と使用には十分な慎重さが求められる.
  • 渡辺 彰
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2129-2135
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    マクロライド薬は,内外の市中肺炎ガイドラインにおいてマイコプラズマ,クラミジアなどの非定型病原体に対する第一選択薬として高く評価されているが,呼吸器感染症の最も重要な起炎菌である肺炎球菌ではペニシリン並びにマクロライド薬耐性化が進んでいる.構造を大きく修飾したテリスロマイシンなどのケトライド薬は耐性肺炎球菌にも有効であり,安全性も高いと目されるが,新規の薬剤なので使用にあたっては十分に注意したい.
  • 坂本 光男, 佐藤 文哉, 柴 孝也
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2136-2140
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    アミノグリコシド薬はアミノ糖とアミノシクリトールがグリコシド結合した抗菌薬であり,約60年の歴史がある.抗菌スペクトルはグラム陽性菌からグラム陰性菌,結核菌に及び,濃度依存的に短時間に殺菌的に作用する.グラム陽性菌,陰性菌の双方に対しPAEを有しており, 1日1回の投与で高い臨床効果が発揮される.使用頻度は必ずしも高くないが,特徴をふまえて適切に使用すれば,耐性菌時代の今日でも優れた有用性が期待される.
  • 永武 毅
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2141-2148
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    テトラサイクリン薬は,グラム陽性球菌からグラム陰性桿菌までの種々の病原細菌から,マイコプラズマ,クラミジア,リケッチアなどの多種類の病原体に対するファースト・チョイスの化学療法治療薬である.長い臨床使用の歴史があり,多くの院外発症細菌感染症でのテトラサイクリン耐性菌が増加している一方で,院内弱毒菌感染症の起炎菌に対する抗菌力を有していることがある. β-ラクタム系無効の感染症治療で,今日なお有用性の高い抗菌薬の一つである.
  • 富田 治芳, 藤本 修平, 麻 興華, 野村 隆浩, 池 康嘉
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2149-2157
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    ヒト感染症に用いられるグリコペプチド薬には,バンコマイシン(vancomycin, VCM)とテイコプラニン(teicoplanin, TEIC)がある.日本では, MRSA感染症治療薬として承認されている.血清蛋白結合率では, VCMは30~55%と低いが, TEICは90%と非常に高く,尿中排泄率が遅い.副作用出現率は両薬剤に大きな差はない.臨床分離MRSAはVCMにすべて感受性で,問題となるような耐性菌は広がっていない.しかしながらグリコペプチドの使用量に比例してバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)が出現し,医療現場に広がり,高度先進医療の実施と発展に大きな問題となっている. 2002年に米国で初めてVREから伝達されたバンコマイシン耐性を獲得したMRSAが分離された.
  • 掛屋 弘, 宮崎 義継, 河野 茂
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2158-2164
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    我が国では欧米で見られるようなアゾール耐性Candida albicansや低感受性のnon-albicans Candida属の割合が増加する傾向は顕在化していないが,医療技術の進歩に伴い,耐性真菌はいずれ直面する問題になるものと考えられる.その対策として,アムホテリシンBの脂質製剤や新世代のアゾール系抗真菌薬, 1, 3-β-D-グルカン合成酵素阻害薬などの新規抗真菌薬が期待されている.さらに,耐性真菌を誘導しないための適正な抗真菌薬の使用など種々の臨床的研究や実践が必要である.
  • 森 亨
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2165-2169
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    結核化学療法の基本はリファンピシン+イソニアジドを主軸とした6カ月,これにはじめの2カ月はエタンブトール(またはストレプトマイシン)+ピラジナミドを追加したレジメンである.菌所見を指標として患者が規則的に治療を完遂するように,副作用への対応や基礎疾患の管理,そして脱落防止のための教育が最も重要である.この方式が適用できない患者に対してはかなり高度の専門的対応が必要になる.
  • 満屋 裕明
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2170-2181
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    AIDSとHIV感染症の病態はHAARTの導入で大きく改善,死亡者数も激減したが, HAARTは複雑・頻回・大量の薬剤の服用を強いるなど,確立された治療ではない.薬剤耐性HIV出現への対応はとりわけ重要な課題である.現在臨床で求めれらるのは(i)入手できる抗HIV薬を最も効果的な組み合わせ・方法で投与して, HIV感染者のQOLを維持しつつ,耐性発現を抑えて長期間ウイルス増殖をコントロ一ルして, (ii)耐性株に対して強力な活性を発揮しかつ耐性の発現を許さない/著しく遅延させる新規の薬剤の開発である.
  • 北原 光夫
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2182-2186
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    抗菌薬の併用療法は限られた状況においてのみ有効である.それらには(1)耐性菌の出現を抑える目的, (2)相乗効果を得るため, (3)重症感染症に対して予測的に投与する, (4)複数菌感染症への対処として使用する方法があげられる.併用療法が有用である臨床状況は限られていることを理解しておく.
  • 戸塚 恭一
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2187-2191
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    抗菌薬のPK/PDの検討は抗菌薬の効果,副作用,耐性菌のいずれの発現にも重要である.抗菌薬の効果と関連するPK/PDパラメータとしては,濃度依存性殺菌作用を示すフルオロキノロンやアミノグリコシドはAUC/MICであり,時間依存性殺菌作用を示すβラクタムやマクロライドではTime above MICである.また時間依存性殺菌作用でありながら半減期がながいか, PAEが長いアジスロマイシン,ストレプトグラミンなどではAUC/MICが効果と関連する.副作用や耐性菌の抑制についてもPK/PD検討が必要である.
  • 小林 芳夫
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2192-2197
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    抗菌薬の予防投与が確立されているのはmeningococcal infectionの予防および先天性心疾患や後天性心弁膜症等心に基礎疾患を有する患者に菌血症を惹起するような医療処置を施行後に感染心内膜炎の発症を予防するために抗菌薬を投与する事である.このほか確立されたものではないが,感冒に対してβ-溶血連鎖球菌による2次感染を防ぐ意味で抗菌薬投与をすることは許されよう,結果として急性糸球体腎炎や急性リウマチ熱の発症予防に有用であると考えられるからである.
  • 原田 和博, 嶋田 甚五郎
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2198-2206
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    抗菌薬は選択毒性(selective toxicity)の高い薬物として知られるが,副作用の頻度は高い.薬理作用に関連した中毒性副作用は血中薬物濃度の上昇が関与し,腎や肝障害時の投与や薬物相互作用などがその原因となりうる.この機序による副作用に中枢神経症状,高・低血糖, QT時間延長,尿細管障害などがある.一方,免疫が関与したアレルギー性副作用は発症予測が困難で, Stevens-Johnson症候群,無顆粒球症などの血液障害,肝障害,間質性肺炎,間質性腎炎などがある.原因薬物の同定に薬剤添加リンパ球刺激試験などが用いられる.
  • 寺田 達弘, 杉本 昌宏, 鈴木 洋司, 高橋 良知, 宮嶋 裕明, 菱田 明
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2236-2237
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    stiff-person syndromeは筋硬直と発作性有痛性筋痙攀を主症状とする神経疾患である.症例は54歳女性.腰背部痛で発症し四肢・体幹の筋硬直と発作性の有痛性筋痙攣を呈した.頭部,脊髄MRIは正常.表面筋電図で持続性筋放電を認め,ジアゼパム投与で消失した.抗GAD抗体は陰性であったが,大量免疫グロブリン療法(400mg/kg, 5日間)が著効した.
  • 長谷川 大, 長谷川 靖, 得地 令郎, 蒲池 匡文, 原田 真雄, 磯部 宏, 斉藤 朱里, 高橋 光生, 西山 典明, 明神 美弥子, ...
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2238-2240
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肺癌の経過中に稀な脈絡膜転移をきたした3症例も経験した. 3症例はいずれも脳を含む複数箇所に転移を認める進行例であったが,いずれの症例も全身状態が比較的保たれていたため,抗癌薬による化学療法および患眼に対する放射線照射を施行し,脈絡膜腫瘍の縮小および自覚症状の改善が得られた.肺癌患者の増加および予後の改善により今後このような症例の増加が予想される.
  • 西川 享, 伊藤 一貴, 高田 博輝, 椿本 恵則, 弓場 達也, 足立 芳彦, 加藤 周司
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2241-2243
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例1は心不全症状を主訴とした69歳の女性で, 99mTc-tetrofosminおよび123I-BMIPP心筋SPECTにおいて前壁中隔および下壁に集積低下所見が認められた.症例2は前胸部痛を主訴とした65歳の女性で, 99mTc-tetrofosminおよび123I-BMIPP心筋SPECTにおいて前壁中隔および心尖部に集積低下所見が認められた.両症例ともに冠動脈造影では三枝の冠動脈拡張および造影遅延,そして左室造影ではびまん性の壁運動低下が認められた.さらに心外膜血管に狭窄病変は認められなかったため,その病態に冠微小循環障害が関与していることが示唆された.
  • 藤井 光広, 足立 陽子, 角熊 俊也, 西尾 晃, 中村 充男
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2244-2246
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.小脳出血,多発性脳梗塞にて臥床状態にあり近医で在宅中心静脈栄養(IVH)管理を受けていた.徐々に貧血,白血球減少が進行するため当科入院.骨髓穿刺で血球貪食像認めたためステロイドパルス療法施行するも無効.銅欠乏状態が判明し微量元素製剤を補充したところ骨髓所見も含め速やかな改善を得た.長期間の人工栄養療法施行時には微量元素欠乏症の可能性に充分留意すべきであると考え報告した.
  • 松井 隆, 右藤 智啓, 佐野 聡, 白井 敏博, 妹川 史朗, 千田 金吾, 中村 浩淑
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2247-2249
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,男性.検診で胸部異常陰影を指摘され受診した.胸部単純写真とCTで両側下葉を中心にスリガラス様陰影が見られ,胸腔鏡下肺生検を行ったところ,間質性肺炎と気腔内のフィブリン様析出が認められた.一方,入院時検査でIgG-k型の多発性骨髄腫と診断し,術後からMP療法を行ったところ肺野陰影も消失した.以上の経過から多発性骨髄腫に合併した間質性肺炎と考えられた.多発性骨髄腫の肺病変は稀であり報告する.
  • 森 俊平, 太田 耕造, 嶋内 亜希子, 中條 和志, 木村 時久
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2250-2252
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.意識消失発作,脱力を主訴に受診.平成5年の食道癌根治術以降,食事摂取量が減少すると共に日本酒を多く摂るようになり,来院時著明な低Na, K血症を認めた.ビールを多飲し,食事を摂取しない場合,高度の低Na血症を示す症例はBeer Potomaniaとして知られている7).日本酒はビールと同様に電解質に乏しく,長期の飲酒と食事摂取量低下により同様の病態が生じ得ることを考察した.
  • 渡邊 俊司, 花塚 和伸, 吉澤 充代, 安島 厚, 天貝 賢二, 五頭 三秀, 大倉 久直, 堀 光雄
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2253-2254
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は27歳,男性,家族性門脈圧亢進症にて22歳時に脾摘の既往がある. 40°C台に至る弛脹熱を主訴に受診.比較的緩徐だが,治療抵抗性に胸水貯留と,間質影の増強を呈した.血清学的検査にてサイトメガロウイルス感染症と診断し,ステロイドパルス療法,ガンシクロビルの投与にて症状は劇的に改善した.脾摘後のサイトメガロウイルス感染症で,重症化した例であったので報告した.
  • 村松 学, 伊藤 康文, 山北 宜由
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2255-2257
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    下垂体術後汎下垂体機能低下症でグルココルチコイド(GC)補充療法中に,感染を契機に急性副腎不全を呈した4例を報告する.汎下垂体機能低下症の患者では周知されている臨床症状・検査値異常がなくても,副腎不全を発症していることがあり,また寝たきり・盲目等で意思伝達不十分な場合があるため,本症を疑った段階で迅速に即効性GCの大量静注が必要である.
  • 田中 清, 清野 裕
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2258-2265
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    骨粗鬆症治療において,真のエンドポイントは骨折抑制,代替エンドポイントは骨密度増加である.最近の大規模臨床試験の結果,骨粗鬆症治療薬は骨密度を増加させるだけではなく,実際に骨折を抑制することが示された.特に強力な骨吸収抑制剤であるビスフォスフォネート系薬剤を中心に確固たるエビデンスが集積してきた.さらに選択的エストロゲン受容体モジュレーターや, PTHを始めとする骨形成促進剤の開発も進められており,今後ますます骨折抑制のエビデンスを持った薬剤の増加が期待される.骨粗鬆症は早期診断・早期治療によって骨折を予防すべき疾患であり,成人病・生活習慣病としてとらえられる.骨粗鬆症治療に対する内科医の積極的な関与が期待される.
  • 坂下 正典, 井上 晴洋, 里館 均, 吉田 達也, 趙 柱英, 工藤 進英
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2266-2271
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    レーザー共焦点顕微鏡(Laser-scanning confocal microscopy: LCM)を用いて無固定,無染色の消化管内視鏡切除材料(食道,胃,大腸)を観察したところ,それぞれHE像によく対応した像を得ることができた.具体的には,食道,胃,大腸癌においては細胞質が高輝度に,核が低輝度に認識された.食道の正常粘膜の像は逆に細胞質が低輝度に,核が高輝度に認識された(輝度の逆転現象).また口径3.4mmのカテーテル型レーザー共焦点顕微鏡のプロトタイプを開発した.これを使ってヒト正常口腔粘膜をin vivoで観察し, LCM画像を獲得することに成功した.このカテーテル型レーザー共焦点顕微鏡の画質をさらに向上させることができれば,生検することなく病理組織を得ること(virtual biopsy:仮想生検)が可能となる.
  • 市来 俊弘, 竹下 彰
    2003 年 92 巻 11 号 p. 2272-2277
    発行日: 2003/11/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬はアンジオテンシンIIの産生とブラジキニンの分解を阻害する.アンジオテンシンIIは血管収縮以外に活性酸素の産生,インスリン抵抗性の誘導,増殖因子や細胞外基質の産生などの作用を有する. ACE阻害薬はこれらのアンジオテンシンIIの作用を抑制し,さらにブラジキニンは一酸化窒素の産生を増加させるため,降圧によって得られる効果以上の心血管保護作用を持つと考えられている.実際ACE阻害薬は高血圧治療薬の第一選択薬として幅広く用いられるほか,心血管病の予防や再発防止,予後改善に優れた作用を持つことが多くの大規模臨床試験により明らかにされてきた.特に心不全や糖尿病性腎症などにおいては正常血圧例に対するACE阻害薬投与の有用性が実証されている.本稿ではACE阻害薬の作用に関する基礎的なデータとそれに関連した大規模臨床試験の結果について概説した.
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