日本内科学会雑誌
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92 巻, 5 号
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  • 管理の実際輸液療法を中心に
    杉野 信博
    2003 年 92 巻 5 号 p. 711-713
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
  • 安藤 明利, 梁取 有紀, 遠藤 真理子
    2003 年 92 巻 5 号 p. 714-719
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    細胞,そして器官の健全な営みには,個体の内部環境としての細胞外液の浸透圧維持と,細胞,臓器を還流する循環の確保が不可欠である.種々のホルモンがその調節に預かるが,浸透圧調節系の要は抗利尿ホルモンである.しかしこのホルモンは容量調節系にも関わり,有効循環血漿量低下を示す種々の病態でも分泌され,水代謝異常をきたす.両調節系における抗利尿ホルモンの動きと水代謝異常につき述べる.
  • 玉置 清志, 奥田 誠也
    2003 年 92 巻 5 号 p. 720-727
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    B. H.スクリブナーの「体液-電解質バランス」には「細胞外液の量を決定づける基本的な因子は体内に存在するナトリウムの量である」と記され,ナトリウム(Na)が細胞外液量を規定することが示されている.即ち, Naの代謝調節異常は細胞外液量の調節障害である. Na代謝調節を行う主要臓器は腎臓であり.従って,ここではNa代謝調節に対する腎臓,特に尿細管の役割に関して病態生理を中心に概説する.
  • 武藤 重明
    2003 年 92 巻 5 号 p. 728-736
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    血漿カリウム(K+)濃度の調節は,主にK+負荷量,細胞内・外のK+の移動と,腎および大腸からの排泄によって規定されている.従って,低K+血症は, (1)偽性低K+血症, (2)細胞内へのK+の移動, (3) K+の負のバランス(摂取不足,大腸または腎からの喪失)によって,また高K+血症は, (1)偽性高K+血症, (2)細胞外液へのK+の移動, (3) K+の正のバランス(内因性・外因性K+負荷,腎からのK+排泄障害)によって起こる.
  • 池田 和人, 川口 義夫, 深川 雅史
    2003 年 92 巻 5 号 p. 737-742
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    カルシウム(Ca)とリン(P)は骨の成分としてのみならず細胞の構成成分さらに種々の細胞機能の調節因子として不可欠である.血清のCaおよびP濃度は,主に副甲状腺ホルモンと1.25水酸化ビタミンDが骨,腎臓,腸管に作用して調節されている.最近では腎臓からP排泄を亢進させる液性因子の同定,腸管および腎臓の上皮細胞に存在してCaの吸収と再吸収に関与する上皮型Caチャネルの同定などCa, P代謝調節に関わる新たな因子が解明されつつある.
  • 小沢 潔
    2003 年 92 巻 5 号 p. 743-749
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    水・電解質異常を呈する疾患をはじめとして,酸塩基調節障害の存在を疑い,血液ガス分析を実行にうつすことが最も重要なことである.
    (1)血液ガス分析を施行し, pHを調べる. (2) pH, HCO3-, PCO2の異常がどの変化に基づくものかを判断する. (3)アニオンギャップを計算して不揮発性酸の蓄積を調べる. (4)代償性機構が期待通りに働いているか調べる.の順序で単純性酸塩基調節障害か混合性かを確認し,臨床症状,所見と照合していく.
  • 菱田 明
    2003 年 92 巻 5 号 p. 750-756
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    脱水は水分と食塩の喪失によっておこり,細胞外液の浸透圧の上昇や量の減少による症状として出現する.主として食塩が喪失する低張性脱水と,主として水分が喪失する高張性脱水では評価の仕方が異なる.治療は原因の是正,脱水の進行を防止する治療,体液欠乏量の補充,の三つからなる.欠乏量の推測値は大雑把な値であるので,厳しい脱水状態でなければ緩除な補正に心がけると共に,常に病態の変化を評価して治療方針を見直すことが重要である.
  • 竹本 文美, 原 茂子
    2003 年 92 巻 5 号 p. 757-763
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    腎臓は水電解質の恒常性維持に必須の臓器であり,その機能低下によりさまざまな水電解質異常が出現する.水電解質異常を見たら常にその病態を生理学的に考察しながら是正し,治療する必要がある.また同時に使用している薬剤や,合併している水電解質異常が更に腎機能低下を進展しうる可能性についても考えることが重要である.
  • 磯部 光章
    2003 年 92 巻 5 号 p. 764-769
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    心不全は心臓のポンプ失調により,全身の臓器に十分な血液を供することが出来ないことによって生ずる一連の症候群で,日常遭遇する病態である. Frank-Starling曲線が下方に偏位し,心拍出量を維持するために,左室充満圧が上昇する.そのため,輸液は左室充満圧を上昇させ,心不全を悪化させる.心機能曲線を上方に持ち上げるには,心収縮力を回復させなければならない.一方,心不全でも高齢者などで脱水を伴う場合や,右室梗塞を伴う下壁梗塞などでは積極的な輸液が治療上重要となる.慢性うっ血性心不全でも,栄養補給,電解質補正などのため,輸液の量と組成に配慮することが必要である.
  • 吉川 雅則, 竹中 英昭, 福岡 篤彦, 玉置 伸二, 友田 恒一, 木村 弘
    2003 年 92 巻 5 号 p. 770-776
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    呼吸不全は様々な基礎疾患,原因によって惹起される複雑な病態を呈する症候群である.動脈血ガス所見に基づいて診断されるが,急性型と慢性型とでは水・電解質,酸塩基平衡の動態は異なっており,人工呼吸管理による影響も認められる.個々の病態に基づいた適切な水・電解質管理が経過・予後の改善に不可欠である.慢性型では栄養障害を高頻度に合併するが,呼吸代謝状態への影響に配慮した栄養
  • 奥平 圭輔, 三浦 総一郎
    2003 年 92 巻 5 号 p. 777-783
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    肝臓は,代謝器官であると同時に有毒物質の解毒排泄器官でもある.肝不全とはこれらの肝臓特有の働きが行われなくなった状態のことである.肝不全には劇症型に代表される急性型と慢性型に大別される.急性型は全身循環動態不全となり致命的になることも多く,肝細胞の破壊抑制と肝細胞再生を目標に治療を行う.慢性型は肝硬変の終末像であり,肝不全により生じる症状の緩和,肝臓への負担の軽減が目標となる.
  • 長谷川 浩司, 加藤 哲夫, 渡辺 毅
    2003 年 92 巻 5 号 p. 784-789
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者への水・電解質管理は,糖尿病急性合併症の治療と,糖尿病に合併した他の病態に対して体液管理を行う場合がある.糖尿病性ケトアシドーシスはインスリンの絶対的な欠乏があるため,インスリンの投与は必須である.高浸透圧性非ケトン性昏睡では投与インスリンはケトアシドーシスの場合と比較して少量で充分なことが多い.ソフトボトル・ケトーシスは初診時には1型糖尿病発症直後の病態と類似するが,インスリン分泌が保存されているのでインスリン値やC-peptide値によって鑑別が可能である.
  • 有阪 治
    2003 年 92 巻 5 号 p. 790-798
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    小児の水電解質代謝の調節機構は基本的には成人と同様であるが,小児期には(1)体内水分量・分布や体水分のturn overが年齢により変化する, (2)口渇感がうまく表現できない, (3)体水分を喪失しやすく脱水症になりやすい, (4)未熟児・新生児では体液の調節器宮である腎が未発達である,などの成人と異なる特徴がある.本稿では,日常診療でよく遭遇する疾患および重要な疾患を中心に,小児の水・電解質異常の特徴と管理について述べた.
  • 勝谷 友宏, 荻原 俊男
    2003 年 92 巻 5 号 p. 799-805
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    高齢者では,各臓器の機能が低下し,多数の薬剤を服用するため,若年者よりも水・電解質異常を惹起しやすい.無症候性に推移することの多い高齢者の水・電解質異常は,見過ごされやすく,医原性に増悪することも少なくない.水・電解質異常の機序と原疾患を把握し,個人の体調を注意深くモニタリングしながら,正しい補正を心がけることは,高齢者のQOLを改善する上でも重要である.
  • 山本 哲夫
    2003 年 92 巻 5 号 p. 806-811
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    高カロリー輸液法は,非経口的な高熱量投与または腸管安静の手段として広く普及しているが,合併症を良く認識して適応を限るべきである.特にカテーテル関連血流感染は社会問題視されつつある.投与エネルギー量と基質の設定には,症例毎の消費量算出や糖・アミノ酸・脂肪の配合計算が必要だが,実際には各キット製剤をベースとして病態に応じた調節が行われる.乳酸アシドーシス等を防ぐため,ビタミン剤の併用は欠かせない.
  • 佐々木 成
    2003 年 92 巻 5 号 p. 812-817
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    腎臓に存在するNaチャネルやClチャネルが体液の水電解質代謝に大きな役割を果たしていることが遺伝疾患や遺伝子操作マウスで実証されてきている.予想どおりの結果,さらには予想もしなかった知見が続々と得られてきており,基礎と臨症が融合した新しい分野が開けてきている.臨床的にも遺伝子診断や新しい治療法開発という期待が膨らんできている.
  • 五十嵐 隆
    2003 年 92 巻 5 号 p. 818-825
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    生体のhomeostasisを維持するため腎尿細管では種々のイオン・水のtransporterが作用している.これまで分子的実態としての原因が推定されていた先天性尿細管機能異常症の多くが,尿細管各部の管腔側膜あるいは基底膜側に位置するchannel, exchangerなどのtransporter蛋白であることが証明され,尿細管機能異常症の病態生理や尿細管各部の正常機能が容易に理解できるようになった.また,遺伝子レベルでの解析により最終診断が困難であった尿細管機能異常症の診断が可能になった.
  • 野々口 博史, 冨田 公夫
    2003 年 92 巻 5 号 p. 826-831
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    近年,遺伝子異常による原発性尿細管性アシドーシス(RTA)が報告されている.遺伝子異常が判明しているのは,近位型RTAでは, Na+-HCO3-共輸送体(kNBC-1)やNa+-H+交換輸送体(NHE-3),遠位型RTAではCl--HCO3-交換輸送体(AE1), H-ATPase,近位,遠位混合型では,細胞質型炭酸脱水素酵素(CAII),さらには高K血性遠位型のうち1型偽性低アルドステロン症では鉱質コルチコイド受容体,上皮性Naチャネル(ENaC)などである.これらの輸送体の異常が,尿酸性化機構の異常を来している.
  • 野口 光徳, 原 右, 丹田 滋, 杉山 克郎, 加来 幸生, 高橋 成一, 木内 喜孝, 下瀬川 徹
    2003 年 92 巻 5 号 p. 862-864
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は25歳,男性.潰瘍性大腸炎で重症となり,入院.緩解導入が得られ, azathioprineとステロイドを内服し通院加療中,胸腰椎圧迫骨折を生じた.手術目的で再入院後,血性下痢,関節痛や発熱など急性増悪を呈した.大腸内視鏡上,高度の浮腫や縦走潰瘍の出現を認めた.血中cytomegalovirus (CMV)抗原陽性でCMV腸炎合併の診断下にgancyclovirとガンマグロブリンを投与し,大腸亜全摘術を施行した. CMV腸炎は,潰瘍性大腸炎の急性増悪や治療抵抗性に関与し,早期の診断を要するので報告した.
  • 吉田 功, 竹内 誠
    2003 年 92 巻 5 号 p. 865-867
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.急性腰痛症にて受診.白血球増加を認め,腫瘍崩壊症候群を併発していた.骨髄検査にてt (14; 18)転座を伴de novo急性リンパ性白血病と診断した.本疾患の特徴は高頻度に8q24異常等の付加的染色体異常を呈し,治療抵抗性で高率に髄膜播種を伴うことである.本症でもBurkitt型白血病に準じた治療及びRituximabを含む化学療法を施行したが無効であった.
  • 谷口 弥生, 熊木 美登里, 原中 美環, 立川 裕史, 日野 生子, 石井 宏治, 吉松 博信, 衛藤 崇彦
    2003 年 92 巻 5 号 p. 868-870
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は42歳,女性.全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus: SLE)の精査加療目的にて入院.ループス腎炎および中枢神経ループスに対し,大量のステロイドを要したが,経過早期より中心性漿液性網脈絡膜症,さらには多発性後極部網膜色素上皮症へと進行した眼病変を合併した.眼病変は遷延化し,両眼の視力低下を来たした.多発性後極部網膜色素上皮症の成因としてステロイドや膠原病などの全身疾患に関連した報告がなされており,本疾患の発症機転を検討する上で貴重な症例と考えられた.
  • 木藤 秀章, 近藤 哲, 浦山 直樹, 山下 裕章, 小沢 博和, 中嶋 哲也, 良沢 昭銘, 沖田 極
    2003 年 92 巻 5 号 p. 871-873
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.主訴は,左側腹部痛.腹部超音波検査にて,膵体部に限局性腫瘤像と膵腹側に巨大膵仮性嚢胞を認めた.経皮的嚢胞ドレナージ,内視鏡的経鼻膵管ドレナージおよびオクトレオチド投与にて巨大嚢胞は縮小し,症状は改善した.しかし,腫瘤像と好酸球高値の持続を認めたため,限局性自己免疫性膵炎を疑いプレドニゾロンを投与した.投与後,腫瘤像は消失したため自己免疫性膵炎が考えられた.
  • 渡部 敦, 高橋 直人, 吉岡 智子, 三浦 偉久男, 澤田 賢一
    2003 年 92 巻 5 号 p. 874-876
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    52歳,女性.発熱,倦怠感,皮疹を主訴に受診.末梢血に好塩基性顆粒をもつ異型細胞の出現と汎血球減少を認めた.骨髄は異型細胞が59.6%を占め,血球貪食症を合併していた.骨髄所見よりsystemic mastocytosisと診断し,化学療法を施行したが治療抵抗性のため死亡した.腫瘍細胞のDNA解析でc-kitのpoint mutationを認めた.病理解剖所見を含め報告する.
  • 松原 弘明
    2003 年 92 巻 5 号 p. 877-883
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    骨髄細胞には血管内皮細胞,心筋細胞,平滑筋紹胞などの心血管系構成細胞の幹細胞が含まれる.さらに,骨髄細胞自身が強力な血管新生因子であるVEGFやbFGFを分泌する.ヒト虚血肢(ASO・Buerger病)に対して自己骨髄単核球細胞を利用した血管新生療法を久留米大学・自治医科大学と共同で開始した.外科的・内科的治療によっても血行再建の認めない患者45人の虚血下肢に対して自己骨髄細胞移植をdouble-blindedにて実施した. 45人中31人で下肢の血圧が1月後には10mmHg以上上昇し,トレッドミル歩行距離は約2.9倍以上増加し,下肢の終痛は45人中39人で消失した.下肢潰瘍は31人中27人で完全に治癒した(Lancet 360: 427-435, 2002).この血管新生治療は循環器領域では初めての細胞移植医療であり,内科・外科的治療の困難であった末梢性血管疾患への再生医療として注目され,冠動脈疾患への適用へと進展が期待される.
  • 大野 竜三
    2003 年 92 巻 5 号 p. 884-889
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    がんは遺伝子の異常によって発生する病気である.すべての病気に共通して言えることであるが,病因そのものに対する治療法はもっとも望ましく,そして副作用も少ないことが予測される,がんの薬物療法も同様であり,がんの病因そのものに作用する薬剤が望まれていた.メシル酸イマチニブ(STI571)は,慢性骨髄性白血病の原因となっている遺伝子異常の産物BCR/ABL蛋白に特異的に働くチロシン・キナーゼ阻害薬であり,この白血病のがん化の原因となっている分子に働くことより,理論どおりの効果を示すとともに,副作用も少ないことが判った.第一相試験では最大耐用量に到達する以前に十分な効果が得られ,第二相試験では90%以上の血液学的完全寛解と60%以上の白血病細胞が減少・消失する細胞遺伝学的効果が得られている.このようながん化の原因となっている分子に作用する分子標的療法は,がん治療のパラダイムを変える画期的な治療法であり,今世紀で目指すべきがん治療法と言える.
  • 堀川 幸男, 志原 伸幸, 武田 純
    2003 年 92 巻 5 号 p. 890-896
    発行日: 2003/05/10
    公開日: 2008/06/12
    ジャーナル フリー
    正常な血糖レベルを維持するためには,正常な膵臓,なかでもインスリン分泌を司る膵島の形成が必要である.この膵島分化,成熟過程で重要な役割を担うのが種々の転写因子である.また環境因子の関与はもちろんあるが, 2型糖尿病の表現型が極めて多様であるのは,遺伝的要因の幾つかが遺伝子カスケードの上流因子即ち転写因子であるためとも考えられる.日本人の‘ありふれた’ 2型糖尿病の一義的成因はインスリン分泌不全である.そこでインスリン分泌不全を特徴とする若年発症成人型糖尿病, MODYの解析成績はそのメカニズムを知る上での手がかりとなる.現在までに6種類の原因遺伝子(MODY1-6)が同定されているが, 6種類のうち5種類が転写因子であり, HNF関連転写因子カスケードに残りの1つを含めて属している.ここでは膵島の分化,成熟機構において重要とされ, 2型糖尿病の原因,感受性,あるいは候補遺伝子と考えられている転写因子について解説する.
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