正常な血糖レベルを維持するためには,正常な膵臓,なかでもインスリン分泌を司る膵島の形成が必要である.この膵島分化,成熟過程で重要な役割を担うのが種々の転写因子である.また環境因子の関与はもちろんあるが, 2型糖尿病の表現型が極めて多様であるのは,遺伝的要因の幾つかが遺伝子カスケードの上流因子即ち転写因子であるためとも考えられる.日本人の‘ありふれた’ 2型糖尿病の一義的成因はインスリン分泌不全である.そこでインスリン分泌不全を特徴とする若年発症成人型糖尿病, MODYの解析成績はそのメカニズムを知る上での手がかりとなる.現在までに6種類の原因遺伝子(MODY1-6)が同定されているが, 6種類のうち5種類が転写因子であり, HNF関連転写因子カスケードに残りの1つを含めて属している.ここでは膵島の分化,成熟機構において重要とされ, 2型糖尿病の原因,感受性,あるいは候補遺伝子と考えられている転写因子について解説する.
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